17 / 20
第十七話 共闘。背中合わせの元婚約者たち
しおりを挟む
「待てェェェリゼェェェ! 愛してるぞォォォ!」
地下への階段を駆け上がる私の背中に、アレクセイ殿下の熱烈な(そしてうるさい)愛の叫びが突き刺さる。 全力疾走。 10回目の人生で鍛え上げた脚力が火を吹く。 この階段を抜ければ地上だ。 地上に出れば、ミナとポチ(ドラゴン)がいる。 ポチに乗って空へ逃げれば、いくら身体能力がバグっている殿下でも、すぐには追いつけないはずだ。
「光が見えた!」
出口だ。 私は最後の力を振り絞り、地上への扉を蹴破った。
「ミナ! ポチ! 離陸準備!」
叫びながら飛び出した私を待っていたのは、まばゆい朝日と――。
「「「ワアァァァァァァァァァァッ!!!」」」
地鳴りのような大歓声だった。
「……え?」
私は急ブレーキをかけ、立ち尽くした。
目の前に広がる王都の中央広場。 そこには、数千、いや数万の群衆がひしめき合っていた。 魔物との激戦を生き延びた騎士たち、避難していた市民たち、そして怪我を治療していた聖女ミナと、その横で巨大化して威嚇(警備)していたポチ。 彼ら全員の視線が、一点に集中している。 つまり、私に。
「出てこられたぞ! リーゼロッテ様だ!」 「地下の『厄災の門』を封印されたのだ!」 「王国の救世主! 聖女リーゼロッテ万歳!」
嵐のような拍手と称賛。 花びら(どこから持ってきた?)が舞い、涙を流して拝む老人までいる。 完全に「英雄の凱旋」の図だ。
「いや、ちょっと待って。私はただの逃亡者で……」
弁解しようとしたが、歓声にかき消される。 そこへ、背後の地下通路から、煤だらけだが輝かしいオーラを放つ男が現れた。
「リゼ! なぜ止まるんだ! 愛の鬼ごっこはまだ……」
アレクセイ殿下だ。 彼が姿を見せた瞬間、広場のボルテージが限界突破した。
「殿下だ! アレクセイ殿下もご無事だ!」 「最強の王太子と、最強の公爵令嬢!」 「お二人が国を救ってくださったんだ!」 「ご結婚おめでとうございます!!」
誰だ、最後のを叫んだやつは。
「……」
殿下は状況を一瞬で把握した。 そして、ニヤリと笑った。 嫌な予感がする。 彼は私の隣に並び、私の肩をガシッと抱いた。 振り払おうとしたが、彼の腕は鉄万力のように固い。
「国民よ! よくぞ生き残った!」
殿下がよく通る美声で演説を始めた。
「この国は傷ついた! だが、絶望することはない! なぜなら、私の隣には、この国で最も美しく、最も賢く、そして私を最も愛してくれている(大嘘)女神、リーゼロッテがいるからだ!」
「「「オオオオオオオオッ!!!」」」
「彼女がいれば、復興など造作もない! 我々は今日、厄災に勝利し、そして新たな愛の伝説を刻んだのだ!」
殿下が私の手を高々と掲げる。 私は引きつった笑顔で固まるしかなかった。 ここで「離せバカ王子! 私は逃げるんだ!」と叫べば、国民の希望を粉砕し、パニックを引き起こしかねない。 空気、読みすぎた。 10回の人生で染み付いた「貴族としての処世術」が、ここに来て私の足を引っ張るとは。
「(……覚えてなさいよ、アレクセイ)」
私は小声で呪詛を吐きながら、観衆に向かって優雅に手を振った。 聖女スマイル、全開。 内心は修羅、顔は菩薩。 これがプロの悪役令嬢のスキルだ。
◇
歓喜のパレード(という名の軟禁移動)が終わり、私たちは半壊した王城の会議室に連行された。 そこに待っていたのは、書類の山に埋もれて半分ミイラ化した宰相バルロだった。
「で、殿下ぁ……リゼ様ぁ……」
バルロが涙と鼻水を垂らしながら、床を這ってすがりついてきた。
「生きて……生きておられたのですね……! 良かった……本当に良かった……!」
「バルロ、汚いぞ。鼻水を拭け」
殿下は冷静だが、私はバルロのやつれ具合に胸が痛んだ。 この状況を招いた一端は、私の家出(と封印の閉め忘れ)にある。 彼をここまで追い詰めた責任は、私にもあるのだ。
「状況は?」
私が尋ねると、バルロは震える手で報告書を差し出した。
「壊滅的です。王都の3割が倒壊、食料備蓄庫も半数が焼失、上下水道も寸断されています。魔物はあらかた駆逐されましたが、怪我人と避難民で溢れかえり、物資も人手も全く足りません……」
バルロの目が死んでいる。 「もう無理です、死なせてください」と書いてある。
「……はぁ」
私は深いため息をついた。 ここで私が「じゃあね、頑張って」と逃げたらどうなるか。 この国は間違いなく崩壊する。 そして、逃げた先でも「故郷を見捨てた女」としての罪悪感に苛まれ、美味しいご飯も喉を通らなくなるだろう。 それはスローライフの理念に反する。
「……やるわよ」
私は腕まくりをした。
「リゼ?」
殿下が驚いた顔をする。
「勘違いしないで。私が復興を手伝うのは、私の安眠のためよ。こんな騒がしい状況じゃ、昼寝もできないからね。さっさと国を立て直して、静かな環境を取り戻すの」
「おお……! やはり君は女神だ! 照れ隠しの理由すら愛おしい!」
「うるさい。あんたも働くのよ。王太子としての権限、全部私に貸しなさい」
「喜んで! 私の全ては君のものだ!」
私は即座に司令塔となった。 10回の人生経験は伊達ではない。 内政、外交、軍事、物流。 すべてのノウハウが私の頭に入っている。
「バルロ、まず騎士団を3つに分けて。1つは瓦礫撤去、1つは治安維持、残りは近隣の村への物資調達よ。第五倉庫の備蓄を開放しなさい。あそこの鍵は私が持ってるわ(以前盗みに入った時に合鍵を作った)」
「は、はい!」
「ミナ! あんたは聖女部隊を指揮して、広場に野戦病院を作りなさい。ポーションの在庫が足りないなら、私がレシピを書くから錬金術師ギルドに量産させなさい。水は薄めてもいいから、数を優先して!」
「はい! お姉さま!」
「ポチ! あんたは空から重量物の運搬よ。崩れた城壁の石材を運んで。サボったらおやつ抜きよ!」
「ワン!(了解だ!)」
そして、私は殿下に向き直った。
「アレクセイ。あんたの仕事が一番重要よ」
「なんだ? 愛の歌を歌えばいいか?」
「違う。あんたは『光』になりなさい」
「光?」
「そう。国民は不安なの。夜になれば魔物の恐怖を思い出すわ。だから、あんたは王城のテラスに立って、一晩中、光魔法で街を照らし続けるの。安心感を与えるのよ。『私がいるから大丈夫だ』って、その無駄にキラキラした笑顔で示しなさい」
「……なるほど。人間灯台ということか」
「言い方はあれだけど、そういうこと。できる?」
「愚問だな。リゼのためなら、太陽にだってなってみせるさ」
殿下はニカっと笑い、マントを翻してテラスへと向かった。 その背中は、頼もしいを通り越して、もはや神々しかった。
こうして、私たちの『復興戦争』が始まった。
◇
それから三日間。 王都は文字通り、不眠不休の戦場だった。
私は執務室に籠り、次々と持ち込まれるトラブルを処理し続けた。 食料配給のトラブル、便乗値上げをする商人への制裁(物理)、避難所での喧嘩の仲裁。 私の指示は的確かつ迅速で、バルロたち官僚は「リゼ様、以前より処理速度が上がっていませんか?」と舌を巻いていた。 そりゃそうだ。 以前は「殿下の影」として目立たないようにやっていたが、今は全力全開だ。 遠慮なんてしない。
一方、アレクセイ殿下も有言実行だった。 彼は本当に、三日間一睡もせずに光り続けていた。 夜になると、王城のテラスから放たれる温かな光が王都全体を包み込み、恐怖に震える子供たちを安眠へと誘った。 昼間は昼間で、自ら瓦礫撤去の現場に出て、10人掛かりで動かすような岩を片手で放り投げたり、橋が落ちた川に光の橋を架けたりと、人間重機として活躍していた。
「……化け物ね、あの二人」 「あの方たちが婚約者同士で本当に良かった」
国民たちの間では、そんな噂が囁かれていた。
そんな中、新たな来訪者が現れた。
「やあ。随分と賑やかだね、王国は」
王城の上空に、巨大な影が現れた。 ガレリア帝国の魔導輸送船団だ。 その旗艦から、優雅に降りてきたのは、銀髪の密偵貴族ジークフリートだった。
「帝国……! 攻めてきたのか!?」
騎士たちが色めき立つ。 しかし、ジークフリートは両手を上げて笑顔を見せた。
「誤解しないでくれたまえ。今日は救援物資を持ってきたんだ。食料、衣料品、建築資材。それに、我が国の優秀な魔導工兵隊も連れてきた」
「救援……?」
バルロが疑わしげな目を向ける。 当然だ。 敵対関係にある帝国が、ただで助けるはずがない。
「リゼ嬢との約束だからね」
ジークフリートは私を見てウインクした。
「約束通り、恩を売りに来たよ。これで王国の復興は早まるだろう? そうすれば、君も早く『帝国でのスローライフ』に戻ってこられる」
「……相変わらず商売上手ね」
私は苦笑した。 彼は、私が「復興が終わったらまた逃げる」つもりであることを知っている。 だから、復興を加速させるために協力しに来たのだ。 もちろん、王国に恩を売り、外交的優位に立つという国益も兼ねて。
「ふん。余計なお世話だ、帝国」
そこへ、全身発光状態のアレクセイ殿下が降りてきた。 まぶしい。 直視できないレベルで輝いている。
「我が国の復興は、私とリゼの愛の力だけで十分だ。貴様らの手など借りん」
「強がりだね、殿下。君は光り続けて疲労困憊、リゼ嬢も目の下にクマができている。このままでは共倒れだよ?」
ジークフリートが痛いところを突く。
「それに、君がリゼ嬢を大切に思うなら、彼女を休ませるためにも我々の手を受け入れるべきじゃないかな?」
「ぐぬぬ……」
殿下が言葉に詰まる。 「リゼを休ませる」と言われては、反論できない。
「……わかった。許可しよう」
殿下は渋々頷いた。
「ただし! リゼに近づくな! 物資を置いたらさっさと帰れ!」
「はいはい。怖い怖い」
こうして、帝国の支援部隊も加わり、復興作業は加速した。 帝国の魔導技術は凄まじく、壊れた建物があっという間に修復されていく。 さすが技術大国。 ジークフリートの手腕に、私は改めて感心した。 彼は敵に回すと厄介だが、味方(ビジネスパートナー)にするとこれほど頼もしい男はいない。
◇
その日の夕暮れ。 少しだけ時間ができた私は、王都の下町へと足を運んだ。
向かった先は、『陽だまりのベーカリー』。 私が愛してやまないクロワッサンの店だ。
店は、半壊していた。 屋根は飛び、壁には穴が開いている。 だが、厨房からは香ばしい匂いが漂ってきていた。
「……おじさん?」
私が覗き込むと、店主のおじさんが煤だらけの顔で釜の前に立っていた。
「おお、リゼ様! よくぞご無事で!」
「おじさんこそ……」
「いやぁ、店はボロボロになっちまいましたがね、釜だけは無事でした。それに、リゼ様がドラゴンに乗って助けに来てくれたおかげで、小麦粉も守れましたよ」
おじさんは笑って、焼きたてのクロワッサンを差し出した。
「さあ、どうぞ。復興第一号です」
私はそれを受け取った。 まだ熱い。 一口かじる。 バターの香りと、サクサクの層。 涙が出るほど美味しい。
「……美味しい」
「へへっ、リゼ様が食べてくれるなら、何度でも焼きますよ。この国がある限りね」
その言葉に、私は胸が詰まった。 私が守りたかったもの。 それは、ただのパンではなく、この日常だったのだ。
「……美味そうだな」
隣から声がした。 いつの間にか、アレクセイ殿下が立っていた。 彼もまた、変装もせず、ボロボロの服のままだった。
「殿下……」
「私にも一口くれないか? 三日間、光しか食べていないんだ(光合成?)」
私は半分に割ったクロワッサンを彼に渡した。 彼はそれを口に放り込み、目を細めた。
「……美味い」
「でしょう?」
「ああ。君が好きな理由がわかった気がする。……優しい味だ」
私たちは店の前の瓦礫に腰掛け、並んでパンを食べた。 夕日が沈み、一番星が光り始める。 王都のあちこちから、復興作業の音や、人々の話し声が聞こえてくる。
「ねえ、アレクセイ」
「なんだい?」
「……私、逃げたかったの」
私はポツリと言った。
「王妃教育も、公務も、全部嫌だった。自分の時間がなくて、いつも誰かの顔色を伺って……。だから、全部捨てて自由になりたかった」
「ああ」
「でも……こうして、誰かのために働くのも、悪くないかもって……少しだけ思ったわ」
おじさんの笑顔。 ミナの生き生きとした姿。 そして、泥だらけになって働く殿下の背中。 それらを見て、私の頑なな心も少し溶けていた。
「リゼ」
殿下が私の肩に頭を乗せてきた。 重い。 でも、払いのけなかった。
「私は、君がいないとダメだ。王としても、男としても」
「知ってるわよ」
「でも、君を縛り付けるのも、もうやめる。君が自由を望むなら、それを叶えるのが私の役目だ」
「……え?」
私は彼の方を見た。 彼は真剣な顔をしていた。
「この復興が終わったら、君を解放しよう」
「本気?」
「ああ。君は自由だ。どこへでも行くといい。帝国でも、エルフの里でも」
信じられなかった。 あのアレクセイが。 執着の化身が。 私を手放すと言うのか。
「……ただし」
彼はニヤリと笑った。
「私が君を『追いかけない』とは言っていない」
「は?」
「君は逃げる。私は追いかける。そして、世界中のどこかで君を見つけ出し、またこうして隣でパンを食べる。……そういう人生も、悪くないだろう?」
「……やっぱり、ストーカーじゃない」
私は呆れた。 でも、不思議と嫌な気分ではなかった。 追いかけられる恐怖ではなく、追いかけっこを楽しむ余裕。 それが、今の私たちにはある気がした。
「勝手にしなさいよ。私が本気で逃げたら、一生捕まらないわよ」
「望むところだ。私の愛は光速を超えるからな」
私たちは笑い合った。 10回の人生で初めて、私たちは「婚約者」という枠を超えて、「共犯者」になれた気がした。
その時。 空からポチが降りてきた。
「ご主人様! 大変だワン!」
「どうしたの、ポチ?」
「隣国の軍隊が、国境に集結してるって! 『王国が弱っている今が好機』だとか言って!」
「……はぁ」
私は天を仰いだ。 一難去ってまた一難。 スローライフへの道は、どこまで険しいのか。
「行くぞ、リゼ」
殿下が立ち上がった。 その目には、王者の風格が戻っていた。
「私のリゼとの食事を邪魔する不届き者どもに、目に物見せてやる」
「……仕方ないわね」
私も立ち上がり、スカートの土を払った。
「さっさと片付けて、二個目のクロワッサンを食べるわよ」
「ああ。今度は君に『あーん』をしてもらう」
「それは断る」
私たちは背中合わせに立ち、互いの気配を感じ取った。 言葉はいらない。 次にどう動くか、手に取るようにわかる。 背中を預けられる安心感。 これが、本当の「共闘」なのだ。
さあ、最後の戦いだ。 これを乗り越えれば、今度こそ私の交渉(週休5日)のターンが回ってくるはずだ。
「行くわよ、アレクセイ!」
「応! 愛しのリゼ!」
私たちは夕闇の中、新たな戦場へと駆け出した。 復興の槌音を背に受けて。
地下への階段を駆け上がる私の背中に、アレクセイ殿下の熱烈な(そしてうるさい)愛の叫びが突き刺さる。 全力疾走。 10回目の人生で鍛え上げた脚力が火を吹く。 この階段を抜ければ地上だ。 地上に出れば、ミナとポチ(ドラゴン)がいる。 ポチに乗って空へ逃げれば、いくら身体能力がバグっている殿下でも、すぐには追いつけないはずだ。
「光が見えた!」
出口だ。 私は最後の力を振り絞り、地上への扉を蹴破った。
「ミナ! ポチ! 離陸準備!」
叫びながら飛び出した私を待っていたのは、まばゆい朝日と――。
「「「ワアァァァァァァァァァァッ!!!」」」
地鳴りのような大歓声だった。
「……え?」
私は急ブレーキをかけ、立ち尽くした。
目の前に広がる王都の中央広場。 そこには、数千、いや数万の群衆がひしめき合っていた。 魔物との激戦を生き延びた騎士たち、避難していた市民たち、そして怪我を治療していた聖女ミナと、その横で巨大化して威嚇(警備)していたポチ。 彼ら全員の視線が、一点に集中している。 つまり、私に。
「出てこられたぞ! リーゼロッテ様だ!」 「地下の『厄災の門』を封印されたのだ!」 「王国の救世主! 聖女リーゼロッテ万歳!」
嵐のような拍手と称賛。 花びら(どこから持ってきた?)が舞い、涙を流して拝む老人までいる。 完全に「英雄の凱旋」の図だ。
「いや、ちょっと待って。私はただの逃亡者で……」
弁解しようとしたが、歓声にかき消される。 そこへ、背後の地下通路から、煤だらけだが輝かしいオーラを放つ男が現れた。
「リゼ! なぜ止まるんだ! 愛の鬼ごっこはまだ……」
アレクセイ殿下だ。 彼が姿を見せた瞬間、広場のボルテージが限界突破した。
「殿下だ! アレクセイ殿下もご無事だ!」 「最強の王太子と、最強の公爵令嬢!」 「お二人が国を救ってくださったんだ!」 「ご結婚おめでとうございます!!」
誰だ、最後のを叫んだやつは。
「……」
殿下は状況を一瞬で把握した。 そして、ニヤリと笑った。 嫌な予感がする。 彼は私の隣に並び、私の肩をガシッと抱いた。 振り払おうとしたが、彼の腕は鉄万力のように固い。
「国民よ! よくぞ生き残った!」
殿下がよく通る美声で演説を始めた。
「この国は傷ついた! だが、絶望することはない! なぜなら、私の隣には、この国で最も美しく、最も賢く、そして私を最も愛してくれている(大嘘)女神、リーゼロッテがいるからだ!」
「「「オオオオオオオオッ!!!」」」
「彼女がいれば、復興など造作もない! 我々は今日、厄災に勝利し、そして新たな愛の伝説を刻んだのだ!」
殿下が私の手を高々と掲げる。 私は引きつった笑顔で固まるしかなかった。 ここで「離せバカ王子! 私は逃げるんだ!」と叫べば、国民の希望を粉砕し、パニックを引き起こしかねない。 空気、読みすぎた。 10回の人生で染み付いた「貴族としての処世術」が、ここに来て私の足を引っ張るとは。
「(……覚えてなさいよ、アレクセイ)」
私は小声で呪詛を吐きながら、観衆に向かって優雅に手を振った。 聖女スマイル、全開。 内心は修羅、顔は菩薩。 これがプロの悪役令嬢のスキルだ。
◇
歓喜のパレード(という名の軟禁移動)が終わり、私たちは半壊した王城の会議室に連行された。 そこに待っていたのは、書類の山に埋もれて半分ミイラ化した宰相バルロだった。
「で、殿下ぁ……リゼ様ぁ……」
バルロが涙と鼻水を垂らしながら、床を這ってすがりついてきた。
「生きて……生きておられたのですね……! 良かった……本当に良かった……!」
「バルロ、汚いぞ。鼻水を拭け」
殿下は冷静だが、私はバルロのやつれ具合に胸が痛んだ。 この状況を招いた一端は、私の家出(と封印の閉め忘れ)にある。 彼をここまで追い詰めた責任は、私にもあるのだ。
「状況は?」
私が尋ねると、バルロは震える手で報告書を差し出した。
「壊滅的です。王都の3割が倒壊、食料備蓄庫も半数が焼失、上下水道も寸断されています。魔物はあらかた駆逐されましたが、怪我人と避難民で溢れかえり、物資も人手も全く足りません……」
バルロの目が死んでいる。 「もう無理です、死なせてください」と書いてある。
「……はぁ」
私は深いため息をついた。 ここで私が「じゃあね、頑張って」と逃げたらどうなるか。 この国は間違いなく崩壊する。 そして、逃げた先でも「故郷を見捨てた女」としての罪悪感に苛まれ、美味しいご飯も喉を通らなくなるだろう。 それはスローライフの理念に反する。
「……やるわよ」
私は腕まくりをした。
「リゼ?」
殿下が驚いた顔をする。
「勘違いしないで。私が復興を手伝うのは、私の安眠のためよ。こんな騒がしい状況じゃ、昼寝もできないからね。さっさと国を立て直して、静かな環境を取り戻すの」
「おお……! やはり君は女神だ! 照れ隠しの理由すら愛おしい!」
「うるさい。あんたも働くのよ。王太子としての権限、全部私に貸しなさい」
「喜んで! 私の全ては君のものだ!」
私は即座に司令塔となった。 10回の人生経験は伊達ではない。 内政、外交、軍事、物流。 すべてのノウハウが私の頭に入っている。
「バルロ、まず騎士団を3つに分けて。1つは瓦礫撤去、1つは治安維持、残りは近隣の村への物資調達よ。第五倉庫の備蓄を開放しなさい。あそこの鍵は私が持ってるわ(以前盗みに入った時に合鍵を作った)」
「は、はい!」
「ミナ! あんたは聖女部隊を指揮して、広場に野戦病院を作りなさい。ポーションの在庫が足りないなら、私がレシピを書くから錬金術師ギルドに量産させなさい。水は薄めてもいいから、数を優先して!」
「はい! お姉さま!」
「ポチ! あんたは空から重量物の運搬よ。崩れた城壁の石材を運んで。サボったらおやつ抜きよ!」
「ワン!(了解だ!)」
そして、私は殿下に向き直った。
「アレクセイ。あんたの仕事が一番重要よ」
「なんだ? 愛の歌を歌えばいいか?」
「違う。あんたは『光』になりなさい」
「光?」
「そう。国民は不安なの。夜になれば魔物の恐怖を思い出すわ。だから、あんたは王城のテラスに立って、一晩中、光魔法で街を照らし続けるの。安心感を与えるのよ。『私がいるから大丈夫だ』って、その無駄にキラキラした笑顔で示しなさい」
「……なるほど。人間灯台ということか」
「言い方はあれだけど、そういうこと。できる?」
「愚問だな。リゼのためなら、太陽にだってなってみせるさ」
殿下はニカっと笑い、マントを翻してテラスへと向かった。 その背中は、頼もしいを通り越して、もはや神々しかった。
こうして、私たちの『復興戦争』が始まった。
◇
それから三日間。 王都は文字通り、不眠不休の戦場だった。
私は執務室に籠り、次々と持ち込まれるトラブルを処理し続けた。 食料配給のトラブル、便乗値上げをする商人への制裁(物理)、避難所での喧嘩の仲裁。 私の指示は的確かつ迅速で、バルロたち官僚は「リゼ様、以前より処理速度が上がっていませんか?」と舌を巻いていた。 そりゃそうだ。 以前は「殿下の影」として目立たないようにやっていたが、今は全力全開だ。 遠慮なんてしない。
一方、アレクセイ殿下も有言実行だった。 彼は本当に、三日間一睡もせずに光り続けていた。 夜になると、王城のテラスから放たれる温かな光が王都全体を包み込み、恐怖に震える子供たちを安眠へと誘った。 昼間は昼間で、自ら瓦礫撤去の現場に出て、10人掛かりで動かすような岩を片手で放り投げたり、橋が落ちた川に光の橋を架けたりと、人間重機として活躍していた。
「……化け物ね、あの二人」 「あの方たちが婚約者同士で本当に良かった」
国民たちの間では、そんな噂が囁かれていた。
そんな中、新たな来訪者が現れた。
「やあ。随分と賑やかだね、王国は」
王城の上空に、巨大な影が現れた。 ガレリア帝国の魔導輸送船団だ。 その旗艦から、優雅に降りてきたのは、銀髪の密偵貴族ジークフリートだった。
「帝国……! 攻めてきたのか!?」
騎士たちが色めき立つ。 しかし、ジークフリートは両手を上げて笑顔を見せた。
「誤解しないでくれたまえ。今日は救援物資を持ってきたんだ。食料、衣料品、建築資材。それに、我が国の優秀な魔導工兵隊も連れてきた」
「救援……?」
バルロが疑わしげな目を向ける。 当然だ。 敵対関係にある帝国が、ただで助けるはずがない。
「リゼ嬢との約束だからね」
ジークフリートは私を見てウインクした。
「約束通り、恩を売りに来たよ。これで王国の復興は早まるだろう? そうすれば、君も早く『帝国でのスローライフ』に戻ってこられる」
「……相変わらず商売上手ね」
私は苦笑した。 彼は、私が「復興が終わったらまた逃げる」つもりであることを知っている。 だから、復興を加速させるために協力しに来たのだ。 もちろん、王国に恩を売り、外交的優位に立つという国益も兼ねて。
「ふん。余計なお世話だ、帝国」
そこへ、全身発光状態のアレクセイ殿下が降りてきた。 まぶしい。 直視できないレベルで輝いている。
「我が国の復興は、私とリゼの愛の力だけで十分だ。貴様らの手など借りん」
「強がりだね、殿下。君は光り続けて疲労困憊、リゼ嬢も目の下にクマができている。このままでは共倒れだよ?」
ジークフリートが痛いところを突く。
「それに、君がリゼ嬢を大切に思うなら、彼女を休ませるためにも我々の手を受け入れるべきじゃないかな?」
「ぐぬぬ……」
殿下が言葉に詰まる。 「リゼを休ませる」と言われては、反論できない。
「……わかった。許可しよう」
殿下は渋々頷いた。
「ただし! リゼに近づくな! 物資を置いたらさっさと帰れ!」
「はいはい。怖い怖い」
こうして、帝国の支援部隊も加わり、復興作業は加速した。 帝国の魔導技術は凄まじく、壊れた建物があっという間に修復されていく。 さすが技術大国。 ジークフリートの手腕に、私は改めて感心した。 彼は敵に回すと厄介だが、味方(ビジネスパートナー)にするとこれほど頼もしい男はいない。
◇
その日の夕暮れ。 少しだけ時間ができた私は、王都の下町へと足を運んだ。
向かった先は、『陽だまりのベーカリー』。 私が愛してやまないクロワッサンの店だ。
店は、半壊していた。 屋根は飛び、壁には穴が開いている。 だが、厨房からは香ばしい匂いが漂ってきていた。
「……おじさん?」
私が覗き込むと、店主のおじさんが煤だらけの顔で釜の前に立っていた。
「おお、リゼ様! よくぞご無事で!」
「おじさんこそ……」
「いやぁ、店はボロボロになっちまいましたがね、釜だけは無事でした。それに、リゼ様がドラゴンに乗って助けに来てくれたおかげで、小麦粉も守れましたよ」
おじさんは笑って、焼きたてのクロワッサンを差し出した。
「さあ、どうぞ。復興第一号です」
私はそれを受け取った。 まだ熱い。 一口かじる。 バターの香りと、サクサクの層。 涙が出るほど美味しい。
「……美味しい」
「へへっ、リゼ様が食べてくれるなら、何度でも焼きますよ。この国がある限りね」
その言葉に、私は胸が詰まった。 私が守りたかったもの。 それは、ただのパンではなく、この日常だったのだ。
「……美味そうだな」
隣から声がした。 いつの間にか、アレクセイ殿下が立っていた。 彼もまた、変装もせず、ボロボロの服のままだった。
「殿下……」
「私にも一口くれないか? 三日間、光しか食べていないんだ(光合成?)」
私は半分に割ったクロワッサンを彼に渡した。 彼はそれを口に放り込み、目を細めた。
「……美味い」
「でしょう?」
「ああ。君が好きな理由がわかった気がする。……優しい味だ」
私たちは店の前の瓦礫に腰掛け、並んでパンを食べた。 夕日が沈み、一番星が光り始める。 王都のあちこちから、復興作業の音や、人々の話し声が聞こえてくる。
「ねえ、アレクセイ」
「なんだい?」
「……私、逃げたかったの」
私はポツリと言った。
「王妃教育も、公務も、全部嫌だった。自分の時間がなくて、いつも誰かの顔色を伺って……。だから、全部捨てて自由になりたかった」
「ああ」
「でも……こうして、誰かのために働くのも、悪くないかもって……少しだけ思ったわ」
おじさんの笑顔。 ミナの生き生きとした姿。 そして、泥だらけになって働く殿下の背中。 それらを見て、私の頑なな心も少し溶けていた。
「リゼ」
殿下が私の肩に頭を乗せてきた。 重い。 でも、払いのけなかった。
「私は、君がいないとダメだ。王としても、男としても」
「知ってるわよ」
「でも、君を縛り付けるのも、もうやめる。君が自由を望むなら、それを叶えるのが私の役目だ」
「……え?」
私は彼の方を見た。 彼は真剣な顔をしていた。
「この復興が終わったら、君を解放しよう」
「本気?」
「ああ。君は自由だ。どこへでも行くといい。帝国でも、エルフの里でも」
信じられなかった。 あのアレクセイが。 執着の化身が。 私を手放すと言うのか。
「……ただし」
彼はニヤリと笑った。
「私が君を『追いかけない』とは言っていない」
「は?」
「君は逃げる。私は追いかける。そして、世界中のどこかで君を見つけ出し、またこうして隣でパンを食べる。……そういう人生も、悪くないだろう?」
「……やっぱり、ストーカーじゃない」
私は呆れた。 でも、不思議と嫌な気分ではなかった。 追いかけられる恐怖ではなく、追いかけっこを楽しむ余裕。 それが、今の私たちにはある気がした。
「勝手にしなさいよ。私が本気で逃げたら、一生捕まらないわよ」
「望むところだ。私の愛は光速を超えるからな」
私たちは笑い合った。 10回の人生で初めて、私たちは「婚約者」という枠を超えて、「共犯者」になれた気がした。
その時。 空からポチが降りてきた。
「ご主人様! 大変だワン!」
「どうしたの、ポチ?」
「隣国の軍隊が、国境に集結してるって! 『王国が弱っている今が好機』だとか言って!」
「……はぁ」
私は天を仰いだ。 一難去ってまた一難。 スローライフへの道は、どこまで険しいのか。
「行くぞ、リゼ」
殿下が立ち上がった。 その目には、王者の風格が戻っていた。
「私のリゼとの食事を邪魔する不届き者どもに、目に物見せてやる」
「……仕方ないわね」
私も立ち上がり、スカートの土を払った。
「さっさと片付けて、二個目のクロワッサンを食べるわよ」
「ああ。今度は君に『あーん』をしてもらう」
「それは断る」
私たちは背中合わせに立ち、互いの気配を感じ取った。 言葉はいらない。 次にどう動くか、手に取るようにわかる。 背中を預けられる安心感。 これが、本当の「共闘」なのだ。
さあ、最後の戦いだ。 これを乗り越えれば、今度こそ私の交渉(週休5日)のターンが回ってくるはずだ。
「行くわよ、アレクセイ!」
「応! 愛しのリゼ!」
私たちは夕闇の中、新たな戦場へと駆け出した。 復興の槌音を背に受けて。
51
あなたにおすすめの小説
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです
・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。
さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。
しかしナディアは全く気にしていなかった。
何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから――
偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。
※頭からっぽで
※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。
※夫婦仲は良いです
※私がイメージするサバ女子です(笑)
※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪
地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!
日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」
学園のアイドル、マルスからの突然の告白。
憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。
「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」
親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。
「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様
睡蓮
恋愛
ジーク伯爵は、溺愛する自身の妹レイアと共謀する形で、婚約者であるユフィーナの事を追放することを決めた。ただその理由は、ユフィーナが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしユフィーナは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、ユフィーナを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。
皆様覚悟してくださいませ。偽聖女の義妹から全て取り戻します。今まで受けた仕打ちは倍にしてお返し致します。
くろねこ
恋愛
「殴られても、奪われても、祈れば治るから大丈夫」
――そう思い込まされて育った公爵令嬢オリビア。
しかし、偽聖女を名乗る義妹に階段から突き落とされた瞬間、
彼女の中で“何か”が完全に目覚める。
奪われた聖女の立場。
踏みにじられた尊厳。
見て見ぬふりをした家族と神殿。
――もう、我慢はしない。
大地そのものに影響を与える本物の加護を持つオリビアは、知略と魔法で屋敷を制圧し、偽りを一つずつ洗い流していく。
敵意を向けた者は近づけず、逆らった義母は“環境”に叱られ、王太子は腹を抱えて大笑い。
「奪われたなら、取り戻すだけです。倍……いえ、一万倍で」
これは、偽りの聖女からすべてを奪い返し、本物が“正しい場所”に立つ物語。
ざまぁ好き必読。
静かに、確実に、格の違いを見せつけます。
♦︎タイトル変えました。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる