断罪フラグをへし折った悪役令嬢は、なぜか冷徹公爵様に溺愛されています ~スローライフはどこへいった?~

放浪人

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第41話:婚約準備と、公爵様のやきもち大作戦

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父の鶴の一声、いや、雷の一声によって、私とアレクシス公爵の婚約が、正式に決定した。
そして、私たちの戦いの舞台が、王都へと移ることも。

その決定が下された途端、穏やかだったヴァインベルクの屋敷は、にわかに、王都へ戻るための準備で、てんてこ舞いの騒がしさになった。

「イザベラ様、おめでとうございますだ!」
「公爵様と、末永く、お幸せに!」

村人たちは、私たちの婚約を、まるで自分たちのことのように、心から、祝福してくれた。
夜には、村の広場で、ささやかな、しかし、心のこもった祝宴まで、開いてくれたのだ。
その温かさが、これから、魑魅魍魎の巣窟である、王都の社交界へ戻らなければならない私の心を、じんわりと、温めてくれる。

「さて、イザベラ。王都に戻るからには、それ相応の、準備が必要だ」

父が、そう言って、王都から、腕利きの仕立て屋や、宝石商を、何人も、屋敷に呼び寄せた。
宰相派に、舐められないように、という父なりの、配慮なのだろう。
私の部屋は、たちまち、色とりどりのドレス生地や、きらびやかな宝石で、埋め尽くされた。

「イザベラ様、こちらの、深紅のシルクなど、お嬢様の、雪のようなお肌に、さぞ、お似合いかと」
「まあ、素敵ですわね」

私が、仕立て屋の差し出す生地に、目を輝かせていると。
部屋の隅のソファで、腕を組んで、その様子を、じっと見ていた、アレクシス公爵の、機嫌が、見るからに、悪くなっていくのが、分かった。

そして、事件は、採寸の時に、起こった。

「では、イザベラ様、失礼いたします」

仕立て屋の、まだ若い、優男風の男性が、そう言うと、メジャーを手に、私の体に、そっと、触れた。
ウエストのサイズを測るため、彼の腕が、私の腰に、回される。
それは、仕事上、当然の行為。

その、瞬間だった。

「――おい、貴様」

部屋の温度が、すっと、数度、下がった。
声の主は、もちろん、アレクシス公爵だ。
その、地を這うような、低い声には、絶対零度の、怒りが、込められていた。

「な、な、なんでございましょうか、シュヴァルツシルト公爵様……」

仕立て屋の青年が、顔面蒼白になって、震え上がる。

「馴れ馴れしく、俺の婚約者に、触るな」

「ひっ……!」

殺気。
本物の、殺気が、放たれている。
戦場で、幾万の敵を、屠ってきた男の、純度100パーセントの、殺気。
仕立て屋の青年は、あまりの恐怖に、腰を抜かしそうになっていた。

「こ、公爵様! おやめになってくださいまし!」

私は、慌てて、二人の間に、割って入った。

「これは、お仕事ですわ! 採寸をしなければ、ドレスが作れませんでしょう!」
「……だとしても、だ。男が、気安く、お前の体に、触れるのは、気に食わん」

彼は、むすっとした顔で、そっぽを向いてしまう。
その姿は、まるで、お気に入りのおもちゃを、取られそうになった、子供のようだ。

やきもち。
この人、やきもちを、焼いているんだわ。

その事実に、気づいた瞬間。
私の口元が、自然と、綻んでしまうのを、止められなかった。
なんだか、可笑しくて、そして、たまらなく、愛おしい。

「……分かりましたわ。では、これからは、女性の仕立て屋さんを、呼んでいただくように、お父様にお願いしましょう」
「……いや、そこまでは、言わん」
「まあ、でも、公爵様が、お嫌なのでしょう?」

私が、わざと、意地悪く、そう言うと。
彼は、ますます、気まずそうな顔をして、黙り込んでしまった。

その日の午後。
宝石商が、持ってきた、ネックレスを、私が、試着していた時のこと。
留め金が、うまく、留められないでいると、後ろから、すっと、大きな手が、伸びてきた。

「……貸せ」

アレクシス公爵が、私の後ろに立ち、ネックレスを、受け取った。
そして、その、不器用な指先で、一生懸命、留め金を、留めようとしてくれる。
彼の指が、私の、うなじに、触れるたびに。
私の、心臓が、トクン、と、小さく、跳ねた。

その、真剣な横顔を、鏡越しに見ながら。
私は、この、独占欲が強くて、不器用で、でも、誰よりも、優しい、氷の公爵様のことが。
本当に、どうしようもなく、好きになってしまっているのだと。
改めて、実感させられるのだった。
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