断罪フラグをへし折った悪役令嬢は、なぜか冷徹公爵様に溺愛されています ~スローライフはどこへいった?~

放浪人

文字の大きさ
40 / 60

第40話:強制婚約と、氷の公爵様の覚悟

しおりを挟む
「異論は、認めん、ですって……!?」

私は、思わず、叫んでいた。
目の前には、厳しい顔の父と、そして、有無を言わせぬ、真剣な眼差しのアレクシス公爵。
完全に、包囲されている。四面楚歌だ。

「お待ちになってくださいまし! 婚約というのは、家と家との、重要な結びつきであると同時に、わたくし個人の、人生を、左右する、重大な問題ですのよ!? それを、こんな、わたくしの意思も、確認せずに、勝手に、決めてしまうなど……!」

「だから、言っているだろう。これは、お前を守るためだと」

アレクシス公爵が、私の言葉を、遮った。
その瞳は、どこまでも、真剣だ。

「宰相ダリウスは、本気で、俺たちを、潰しにかかってくるだろう。その時、お前が、ただの『ヴァインベルク公爵令嬢』でいるのと、俺の『婚約者』でいるのとでは、天と地ほどの、差がある」

「それは……」

「俺の婚約者となれば、お前は、シュヴァルツシルト家の、庇護下に入ることになる。いかに、宰相といえど、この俺の女に、手を出すことは、できん」

彼の女。
その、あまりにも、直接的な言葉に、私の顔が、かあっと、熱くなる。

「だ、だからといって、政略結婚なんて……!」

私が、まだ、食い下がろうとすると。
彼は、ふ、と、その表情を、緩めた。
そして、少しだけ、意地悪そうに、口の端を、吊り上げたのだ。

「それに」
「……それに?」
「こうでもしないと、お前は、いつまで経っても、俺から、逃げようとするだろう?」

「……っ!」

図星だった。
彼の言う通りだ。
私は、心のどこかで、まだ、スローライフへの、未練を、断ち切れずにいた。
いつか、この騒動が、全て終わったら。
彼に、お礼を言って、領地の片隅で、ひっそりと……なんて、甘い考えを、抱いていた。

「お前の、その甘い考えは、全て、お見通しだ」
「……う……」

「だから、これで、いい。俺と、正式に、婚約しろ。そして、もう二度と、俺から、逃げられるなどと、思うな」

それは、まるで、プロポーズのような、言葉。
でも、その実態は、有無を言わせぬ、強制的な、命令だった。

「……ずるいですわ、あなた様」

私は、うなだれて、そう言うのが、精一杯だった。
もう、私に、勝ち目はない。

隣で、父が、満足げに、頷いている。

こうして、私の、二度目の婚約は。
私の、意思とは、全く関係のないところで、あっさりと、決定してしまった。

状況は、もはや、私の、ちっぽけなスローライフ計画など、遥かに、置き去りにして。
国家の、宰相との、全面対決という、とんでもない方向へと、猛スピードで、突き進んでいく。

「わたくしの、平穏な、老後は、一体どこへ……」

私が、頭を抱えて、天を仰ぐと。
隣に立った、アレクシス公爵が、私の肩を、優しく、抱き寄せた。

「安心しろ、イザベラ」

見上げた彼の、横顔。
その瞳には、これから始まる、激しい戦いに向けての、揺るぎない、覚悟の光が、宿っていた。

「お前の望む、平穏な暮らしは、俺が、必ず、この手で、取り戻してやる。……全ての、戦いが、終わった、後でな」

そして、彼は、私の耳元で、囁いた。

「だから、今は、大人しく、俺の隣で、見ていろ。……俺の、妻になる、お前は」

その、力強く、そして、甘い声に。
私の心は、どうしようもなく、揺さぶられて。

(……もう、仕方ないですわね)

この、不器用で、強引で、でも、誰よりも、私を、守ろうとしてくれる、この人の、隣で。
私も、共に、戦うしかないのだと。

腹を、括るしか、なかった。
私たちの、新たな戦いの舞台は、王都。
そう、心に、決めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!

ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される

鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」 王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。 すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。 頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。 「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」 冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。 公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。 だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...