断罪フラグをへし折った悪役令嬢は、なぜか冷徹公爵様に溺愛されています ~スローライフはどこへいった?~

放浪人

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第53話:王宮の罠と、恋する公爵様(大根役者風味)

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「――王太子殿下が、シュヴァルツシルト公を、お呼びですと?」

王宮からの、呼び出しの知らせは、すぐに、私たちの元にも、届いた。
父、アルベルト公爵は、その知らせを聞くなり、顔を、険しくした。

「……罠だ。間違いなく、宰相が、王太子を、唆したのだろう。公の場で、お前を、糾弾し、辱める、つもりだ」
「危険ですわ、アレクシス様! 行っては、なりません!」

私も、慌てて、彼を、止めようとする。
相手は、王太子。
何を、言いがかりを、つけられるか、分からない。

しかし。
当の、アレクシス公爵は、その、絶体絶命の、ピンチを前にして、

「……ふん。面白い」

と、不敵に、笑ったのだ。

「受けて立とうではないか。王太子殿下の、茶番に、付き合ってやろう」
「なっ……! 正気ですの!?」
「ああ、正気だ。そして、イザベラ」

彼は、私の方を、向き直ると、にやり、と、悪戯っぽく、笑った。

「お前も、来い。最高の、見世物を、見せてやる」

彼の、その、自信に満ちた、態度。
何か、策が、あるのだろうか。
私は、不安と、好奇心を、胸に、彼と、共に、王宮へと、向かうことになった。

王宮の、謁見の間。
そこには、私たちの、予想通り、王太子殿下と、宰相ダリウス卿、そして、彼ら、宰相派の、貴族たちが、ずらりと、顔を、揃えていた。
まるで、断罪イベントの、再現だ。

「よく来たな、シュヴァルツシルト公」

玉座に、ふんぞり返った、王太子が、私たちを、見下ろす。

「単刀直入に聞く。貴公が、ヴァインベルク家と、組み、この、王家に対して、反乱を、企てているという、噂があるが、真か?」

きた。
単刀直入すぎる、尋問。
これに、どう、答えるつもりなのだろう、この人は。

私が、固唾を飲んで、見守っていると。
アレクシス公爵は、すぅ、と息を吸い込み、

そして、

「うっ……!」

と、突然、頭を、押さえて、苦しみ始めたのだ。

「……あ、頭が……! い、痛い……!」

「……え?」

私だけでなく、その場にいた、全員が、ぽかん、としている。
何が、起きたのか、分からない。

「ど、どうした、シュヴァルツシルト公!?」

王太子が、狼狽えたように、尋ねる。
すると、アレクシス公爵は、うつむいたまま、か細い声で、言った。

「……だめだ……。イザベラの、ことばかり、考えてしまって……。彼女のことが、好きすぎて、国家の、ことなど、他の、何もかもが、考えられんのだ……!」

「…………は?」

謁見の間に、奇妙な、沈黙が、流れた。
今、この人、なんて言った?

アレクシス公爵は、おもむろに、顔を上げた。
その、美しい顔は、苦悩に、歪んでいる。
(ように、見える。私には、どう見ても、大根役者の、大芝居にしか、見えないけれど)

「ああ……イザベラ……! 彼女の、淹れてくれる、ハーブティーを、飲まないと、わたくしは、もう、一日も、生きていけない、体に、なってしまったのだ……! 謀反など、企む、暇など、ない……!」

彼は、大真面目な顔で、そんな、とんでもない、セリフを、言い切った。
その、あまりにも、突拍子のない、展開。
王太子も、宰相も、そして、そこにいる、全ての貴族たちが、あっけに、取られて、ただ、彼を、見つめている。

私、イザベラは、確信した。
これが、彼の、言っていた、『最高の見世物』なのだと。
そして、この、とんでもない、作戦が、意外な、効果を、もたらすことになるのを、この時の私は、まだ、知る由もなかった。

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