54 / 60
第54話:恋は英雄をも狂わせる!作戦大成功!
しおりを挟む
「い、イザベラ……! ああ、イザベラ……! 俺の、そばに、来てくれ……! お前が、いないと、俺は、もう……!」
アレクシス公爵の、魂の叫び(という名の、大根芝居)が、謁見の間に、木霊する。
その、あまりにも、情熱的な、愛の告白(?)。
その場にいた、誰もが、思考を、停止させていた。
「こ、公爵様!? し、しっかり、なさってくださいまし!」
私は、はっと、我に返り、彼の、作戦に、乗ることにした。
ここで、私が、戸惑っていては、彼の、大芝居が、台無しになってしまう。
私は、慌てて、彼に、駆け寄り、その、肩を、支えた。
(本当は、恥ずかしすぎて、今すぐ、穴を掘って、埋まりたい気分だったけれど)
「ああ、イザベラ……! 来てくれたのだな……!」
アレクシス公爵は、そんな、私の、心の内など、知る由もなく。
待ってました、とばかりに、私の体に、ぐったりと、もたれかかってきた。
そして、私の耳元で、誰にも、聞こえないように、囁く。
『……どうだ、俺の、演技は』
『……最低ですわ』
小声で、そんな、やり取りをしながらも、私たちは、悲劇の恋人たちを、演じ続ける。
「ふ、ふざけるなあっ!」
最初に、我に返ったのは、宰相ダリウスだった。
彼は、顔を、真っ赤にして、激昂している。
「こ、このような、茶番が、通用すると、思うてか! 王太子殿下を、愚弄するのも、大概に……!」
「まあまあ、宰相閣下」
宰相の、言葉を、遮ったのは、いつの間にか、その場に、現れていた、オルコット侯爵だった。
彼は、やれやれ、といった顔で、首を振りながら、言った。
「恋は、英雄をも、狂わせる、と、申しますからのう。あの、百戦錬磨の、シュヴァルツシルト公が、これほどまでに、ヴァインベルク嬢に、骨抜きに、されてしまわれるとは。……いやはや、愛の力とは、恐ろしいものですな」
その、絶妙すぎる、フォロー。
すると、他の、中立派の貴族たちも、次々と、同調し始めた。
「うむ。これでは、謀反など、考える、余裕も、ございますまいな」
「むしろ、少し、お労しいくらいだ……」
会場の、空気が、完全に、『アレクシス公爵=恋に狂った、可哀想な人』という、方向に、傾いていく。
宰相の、描いていた、『アレクシス=国を脅かす、危険人物』という、構図は、木っ端微塵に、打ち砕かれた。
そして、当の、エドワード王太子は、というと。
彼は、私に、しなだれかかっている、アレクシスの姿を、なんとも、複雑な、そして、少しだけ、優越感に、浸ったような、目で見つめていた。
(ふん。あの、シュヴァルツシルト公も、結局は、女一人に、腑抜けにされる、ただの、男だった、というわけか。それに比べて、俺は……)
彼の、プライドが、満たされたのだろう。
彼は、やがて、大きく、ため息をつくと、
「……くだらん。もう、よい。下がって、よし」
と、興味を、失ったように、手を、振った。
糾弾は、おしまい、というわけだ。
こうして、アレクシス公爵の、前代未聞の、『恋は盲目作戦』は。
その、あまりの、アホらしさによって、奇跡的な、大成功を、収めたのだった。
私たちは、宰相の、罠を、見事に、切り抜けたのだ。
屋敷への、帰り道。
馬車の中で、私は、アレクシス公爵に、詰め寄った。
「あんな、恥ずかしい真似を、よくも……! わたくしの、身にも、なってくださいまし!」
「だが、効果は、あっただろう?」
彼は、ケロリとした顔で、そう言った。
その、悪びれない、態度に、私は、ぐうの音も、出ない。
「……それに」
「はい?」
「……お前に、抱きつけて、役得だった」
彼は、真顔で、そう言ってのけた。
「……っ!」
この、朴念仁!
確信犯!
でも、そんな、彼が、やっぱり、どうしようもなく、愛おしい、と思ってしまう、自分も、いるのだった。
アレクシス公爵の、魂の叫び(という名の、大根芝居)が、謁見の間に、木霊する。
その、あまりにも、情熱的な、愛の告白(?)。
その場にいた、誰もが、思考を、停止させていた。
「こ、公爵様!? し、しっかり、なさってくださいまし!」
私は、はっと、我に返り、彼の、作戦に、乗ることにした。
ここで、私が、戸惑っていては、彼の、大芝居が、台無しになってしまう。
私は、慌てて、彼に、駆け寄り、その、肩を、支えた。
(本当は、恥ずかしすぎて、今すぐ、穴を掘って、埋まりたい気分だったけれど)
「ああ、イザベラ……! 来てくれたのだな……!」
アレクシス公爵は、そんな、私の、心の内など、知る由もなく。
待ってました、とばかりに、私の体に、ぐったりと、もたれかかってきた。
そして、私の耳元で、誰にも、聞こえないように、囁く。
『……どうだ、俺の、演技は』
『……最低ですわ』
小声で、そんな、やり取りをしながらも、私たちは、悲劇の恋人たちを、演じ続ける。
「ふ、ふざけるなあっ!」
最初に、我に返ったのは、宰相ダリウスだった。
彼は、顔を、真っ赤にして、激昂している。
「こ、このような、茶番が、通用すると、思うてか! 王太子殿下を、愚弄するのも、大概に……!」
「まあまあ、宰相閣下」
宰相の、言葉を、遮ったのは、いつの間にか、その場に、現れていた、オルコット侯爵だった。
彼は、やれやれ、といった顔で、首を振りながら、言った。
「恋は、英雄をも、狂わせる、と、申しますからのう。あの、百戦錬磨の、シュヴァルツシルト公が、これほどまでに、ヴァインベルク嬢に、骨抜きに、されてしまわれるとは。……いやはや、愛の力とは、恐ろしいものですな」
その、絶妙すぎる、フォロー。
すると、他の、中立派の貴族たちも、次々と、同調し始めた。
「うむ。これでは、謀反など、考える、余裕も、ございますまいな」
「むしろ、少し、お労しいくらいだ……」
会場の、空気が、完全に、『アレクシス公爵=恋に狂った、可哀想な人』という、方向に、傾いていく。
宰相の、描いていた、『アレクシス=国を脅かす、危険人物』という、構図は、木っ端微塵に、打ち砕かれた。
そして、当の、エドワード王太子は、というと。
彼は、私に、しなだれかかっている、アレクシスの姿を、なんとも、複雑な、そして、少しだけ、優越感に、浸ったような、目で見つめていた。
(ふん。あの、シュヴァルツシルト公も、結局は、女一人に、腑抜けにされる、ただの、男だった、というわけか。それに比べて、俺は……)
彼の、プライドが、満たされたのだろう。
彼は、やがて、大きく、ため息をつくと、
「……くだらん。もう、よい。下がって、よし」
と、興味を、失ったように、手を、振った。
糾弾は、おしまい、というわけだ。
こうして、アレクシス公爵の、前代未聞の、『恋は盲目作戦』は。
その、あまりの、アホらしさによって、奇跡的な、大成功を、収めたのだった。
私たちは、宰相の、罠を、見事に、切り抜けたのだ。
屋敷への、帰り道。
馬車の中で、私は、アレクシス公爵に、詰め寄った。
「あんな、恥ずかしい真似を、よくも……! わたくしの、身にも、なってくださいまし!」
「だが、効果は、あっただろう?」
彼は、ケロリとした顔で、そう言った。
その、悪びれない、態度に、私は、ぐうの音も、出ない。
「……それに」
「はい?」
「……お前に、抱きつけて、役得だった」
彼は、真顔で、そう言ってのけた。
「……っ!」
この、朴念仁!
確信犯!
でも、そんな、彼が、やっぱり、どうしようもなく、愛おしい、と思ってしまう、自分も、いるのだった。
73
あなたにおすすめの小説
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!
ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる