3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人

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第4話 ヒロイン(聖女候補)が来ましたが、塩対応で撃沈しました

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 私が騎士団長アレクセイを物理的に(魔法で)排除してから、およそ三十分後。  私の部屋、改め『難攻不落の聖域』に、新たな訪問者が現れた。

 ノアの情報通りだ。  廊下の向こうから、カツカツカツというヒールの音と、わざとらしいほど可憐な声が響いてくる。

「皆様、ごきげんよう! ここは空気が淀んでいますわね。わたくしの浄化魔法で綺麗にして差し上げましょうか?」

 鈴を転がすような、と言えば聞こえはいいが、糖度が高すぎて胸焼けしそうな声だ。  男爵令嬢マリア・キャンベル。  平民出身ながら希少な光魔法の使い手として男爵家に引き取られ、学園に入学するやいなや、その愛らしさと天然(という設定の計算高い)言動で王太子フレデリックを虜にした、正真正銘の『乙女ゲームのヒロイン』である。

 そして、私の1回目の人生を破滅に追い込み、2回目の人生では私の部下として配属され、書類の書き方ひとつ覚えずに「わかんなぁい☆」で済ませて私の残業時間を倍増させた、とんでもない『破壊神』でもある。

 私は、淹れたばかりの紅茶を一口すすり、ため息をついた。  手元には、先ほど急いで作成した羊皮紙の束がある。  これが、彼女に対する私の『最強の武器』だ。

 コツコツコツ。  足音がドアの前で止まる。

「エリザベート様? いらっしゃいますの? マリアですわ。王太子殿下の心を傷つけ、反省もせずに引きこもっている悪役令嬢がいると聞いて、説教……いいえ、お話しに参りましたの!」

 相変わらずだ。  自分の正義を微塵も疑っていない、その能天気な響き。  1周目の私なら、ここで激昂してドアを開け、「無礼者!」と扇子で叩いていただろう。そして、その現場をフレデリックに見られて断罪ルート一直線だ。

 だが、3周目の私は違う。  私は彼女を敵だとは思っていない。  むしろ、救世主(メシア)だと思っている。

 私は、音遮断結界を『双方向通話モード』に切り替え、努めて明るい声を作って応答した。

「あら、マリアさん。ようこそいらっしゃいました。お待ちしていましたわ」

「え……?」

 ドアの向こうで、マリアが息を呑む気配がした。  予想外の歓迎に戸惑っているようだ。  彼女の想定台本では、私がヒステリックに怒鳴り散らすか、居留守を使って怯えているはずだったのだろう。

「お、お待ちしていた、ですって? わたくしに毒でも盛るつもりですの? それとも、泣いて謝る準備ができましたの?」

「いいえ、もっと建設的なお話よ。さあ、そこに立っていないで、ドアの下の隙間を見てちょうだい」

 私は、手元の羊皮紙の束を、ドアの下のわずかな隙間(本来は手紙などを差し入れるためのもの)から、スルスルと送り出した。

 ガサッ。  廊下で紙を拾う音がする。

「な、なんですの、これは……? 『権利譲渡契約書』……?」

 マリアが怪訝な声を上げる。  そう、それこそが私が15分で書き上げた、渾身の法的文書だ。  内容はシンプルかつ大胆。  『エリザベートが持つ全ての特権と義務を、マリア・キャンベルに無償で譲渡する』というものだ。

「読んでみてちょうだい。貴女が欲しがっていたもの、全てそこに書いてあるはずよ」

「は、はあ……。ええと……第1条、『甲(エリザベート)は乙(マリア)に対し、王太子フレデリック殿下の婚約者たる地位を、即時かつ永続的に譲渡する』……えっ!?」

 マリアの声が裏返った。

「ど、どういうことですの!? あんなに殿下に執着していた貴女が、婚約者の座を譲るだなんて! なにかの罠ですの!?」

「罠じゃないわ。熨斗(のし)をつけて差し上げるわ。リボンもつけましょうか?」

「そ、そんな……。でも、殿下はわたくしを愛してくださっていますし、当然と言えば当然ですわね! ふんっ、ようやく自分の立場をわきまえたようですわね!」

 マリアは強気な態度を取り戻したようだ。  いいぞ、その調子だ。  そのまま読み進めてくれ。

「第2条、『甲は乙に対し、次期王妃としての公務、ならびに社交界における一切の権限と責任を譲渡する』……まあ! 次期王妃の座まで!?」

「ええ、もちろんよ。王太子の隣に立つのは、貴女こそふさわしいわ」

「オーッホッホッホ! 分かっていらっしゃるじゃない! そうですわ、地味で可愛げのない貴女よりも、愛されボイスのわたくしの方が、国の顔として適任ですもの!」

 マリアの高笑いが廊下に響く。  よしよし、完全に有頂天だ。  だが、ここからが本番である。  この契約書には、甘い果実の皮を被った『劇薬』が含まれているのだ。

「続きも読んでね。特に、第3条と第4条は重要よ」

「あら、まだありますの? ええと……第3条、『乙は、王太子妃の義務として、毎朝4時に起床し、王妃教育および国政の勉強を1日10時間行うこととする』……はい?」

 マリアの声が止まった。

「……え? 4時起き? 10時間勉強?」

「そうよ。王太子妃になるのなら当然でしょう? 外交儀礼、歴史、経済学、帝王学、魔法理論、ダンス、マナー……覚えることは山ほどあるわ。私は3歳からやっていたけれど、貴女なら愛の力で乗り越えられるわよね?」

「ち、ちょっと待ってくださいまし! わたくし、朝は弱いですの! それに勉強なんて、頭が痛くなりますわ!」

「大丈夫よ。フレデリック殿下の愛があれば、睡眠不足も頭痛も吹き飛ぶわ。さあ、次を読んで」

 マリアの声に動揺が混じり始める。  彼女は、王太子妃という地位の『美味しいところ(ドレスや宝石、チヤホヤされること)』しか見ていなかったのだ。  その裏にある地獄のような激務を知らない。  1周目の私は、それを完璧にこなしていたからこそ、フレデリックに「可愛げがない」「俺より優秀で鼻につく」と疎まれたのだ。理不尽極まりない。

「第4条……『乙は、聖女としての能力を開花させ、国内の結界維持、疫病対策、農作物の豊凶管理、および魔物討伐の支援を、休日なしで行うものとする』……きゅ、休日なし!?」

「ええ。聖女は国の守り神だもの。24時間365日、国民のために祈り、魔力を捧げるのが仕事よ。デートをする暇なんてないわ。トイレに行く時間すら惜しいくらいよ」

「そ、そんな……! わたくし、殿下と毎日アフタヌーンティーをして、舞踏会で踊って、幸せに暮らすつもりでしたのに……!」

「あら、それは『お飾りの人形』の仕事ね。王太子妃兼聖女というのは、国の最高責任者の一人なのよ? 責任重大だわ。もし結界が破れて魔物が入ってきたら、真っ先に前線に立って戦うのも貴女の役目よ。あ、そうそう、死ぬときは国民の盾になって死ぬの。名誉なことね」

 2周目の私の死因をさらっと盛り込んでおいた。  マリアの息遣いが荒くなっているのが分かる。  紙を持つ手が震えているのだろう。紙擦れの音がカサカサと聞こえる。

「……無理ですわ」

 蚊の鳴くような声。

「こんなの……こんなの、人間業ではありませんわ! 貴女、今までこんなことを一人でやっていたんですの!?」

「ええ、やっていたわよ。完璧にね」

 私は淡々と答えた。

「でも、もう疲れたの。だから貴女にあげる。貴女は私より優秀で、愛らしくて、人望もある『真のヒロイン』なんでしょう? なら、これくらい朝飯前よね? さあ、そこにサインをして。サインをした瞬間から、全ての栄光と激務は貴女のものよ!」

 煽る。  徹底的に煽る。  マリアのプライドを刺激しつつ、現実の重みで押し潰す。

 廊下で、長い沈黙が続いた。  マリアは葛藤しているはずだ。  王太子の婚約者というブランドは欲しい。  だが、それに付随する労働は絶対に嫌だ。  しかし、ここで断れば「私は悪役令嬢より無能です」と認めることになる。

 さあ、どうする、マリア。

「……エリザベート様」

 しばらくして、マリアが震える声で呼びかけてきた。

「貴女は……本気で、これを手放すおつもりなんですの?」

「本気よ。嘘だと思うなら、今すぐサインして王宮に持って行きなさい。誰も止めないわ」

「……どうして? どうしてそこまで無欲になれますの? これだけの権力と、次期王妃の座ですよ? 普通の貴族令嬢なら、血で血を洗ってでも奪い合うものですわ!」

 おや?  少し風向きが変わったか?

「無欲……そうね。私はただ、眠りたいだけなの。ふわふわの布団で、誰にも邪魔されず、好きなだけ眠る。それ以上の幸福なんて、この世にないわ」

 私の偽らざる本音だ。

 すると、廊下から鼻をすする音が聞こえた。

「……ぐすっ」

 泣いている?

「なんて……なんて高潔な魂……!」

 はい?

「わたくし、勘違いをしていましたわ。貴女が王太子殿下に執着し、わたくしをいじめる悪女だと思っていました。でも、違ったんですのね」

 マリアの声が、なぜか熱を帯びていく。

「貴女は、この過酷な運命を一人で背負い、誰にも弱音を吐かず、国のために尽くしてこられた……。そして今、その全てを投げ打ってでも、手に入れたいものが『安らかな睡眠』だけだなんて……!」

 いや、単にサボりたいだけなんだけど。

「これは『無欲』ではありませんわ。究極の『悟り』ですわ! 貴女こそ、俗世の欲望を超越した、真の聖女様ではありませんか!」

 なんか話が大きくなってきた。  マリアの脳内で、私が「労働に疲れ果てたOL」から「解脱した女神」にジョブチェンジしている。

「わ、わたくし、自分が恥ずかしいですわ! 表面的なきらめきだけに目を奪われ、貴女という尊い犠牲の上に成り立っていた平和に気づかなかったなんて!」

 マリアがドアにすがりつく気配がする。

「エリザベートお姉様! ……呼んでもよろしくて? いいえ、呼ばせていただきます! わたくし、決めましたわ!」

 嫌な予感がする。  サインして帰ってくれる流れじゃないのか、これ。

「この契約書にはサインできません! わたくしごとき浅はかな小娘に、聖女の重責は荷が重すぎます! ですが、貴女をお支えすることならできますわ!」

「え、いや、支えなくていいのよ。代わってほしいの」

「いいえ! 貴女は休んでいてくださいまし! 貴女が心ゆくまで眠れるように、わたくしが外の雑音をシャットアウトして差し上げます! 王太子殿下が来ても、『お姉様は睡眠という聖なる儀式の最中です!』と追い返して差し上げますわ!」

 あ、それはちょっと助かるかも。  マリアの「天然ゆえの無礼さ」は、王族相手にも発揮される最強の盾になり得る。

「そ、そう? じゃあ、お願いしようかしら……?」

「お任せください! わたくし、今日から『エリザベートお姉様安眠親衛隊』の隊長を名乗りますわ!」

 変な組織が爆誕した。  どうしてこうなった。  私はただ、面倒な役職を全部譲渡して、自由になりたかっただけなのに。  気がつけば、厄介な信者を一人増やしてしまったようだ。

 まあいい。  フレデリックやアレクセイといった男性陣は物理的な攻撃をしてくるが、マリアは精神的な崇拝で留まっている分、まだ扱いやすい。  彼女を上手く使えば、男たちを遠ざける防波堤になるかもしれない。

「ありがとう、マリア。期待しているわ。……とりあえず、今すぐ帰ってくれると、とても安眠できるのだけど」

「はっ! そうですわね! わたくしがお喋りしている間にも、お姉様の貴重な睡眠時間が削られていましたわ! 万死に値します!」

 マリアがバタバタと慌てる。

「では、出直して参ります! 次に来るときは、最高級のアイマスクとアロマキャンドルをお持ちしますわ! ごきげんよう、お姉様!」

 カツカツカツカツッ!  来た時よりも軽快な、いや、スキップでもしているかのような足音で、マリアが去っていこうとする。

 やれやれ。  嵐のような女だった。  でも、これで一安心……。

 と、思った矢先だった。

 廊下の向こうから、別の足音が近づいてくる。  重く、湿った、ビチャビチャという不快な音。

「……リズ……」

 地獄の底から響くような声。  そして、去ろうとしていたマリアの足音が止まった。

「きゃっ!? な、なんですの、貴方は!?」

「……どけ。そこは私が通る道だ」

「ひっ! 水!? 全身ずぶ濡れじゃありませんの! 汚らわしい! 近づかないでくださいまし!」

 ああ、鉢合わせしてしまったか。  池ポチャから生還したアレクセイ騎士団長と、聖女(仮)マリアの遭遇である。

 私はこっそりと、ドアの結界を「映像透過モード」にして、廊下の様子を覗き見た。

 そこには、地獄絵図が広がっていた。

 全身から水を滴らせ、頭には藻を絡ませ、瞳を赤く光らせたアレクセイ。  その姿は、沼から出てきた半魚人か、あるいは怨霊そのものだ。  対するマリアは、あまりの恐怖に顔を引きつらせ、壁にへばりついている。

「あ、アレクセイ騎士団長……ですわよね? ど、どうされましたの、そのお姿は……?」

「……愛の洗礼を受けたのだ」

 アレクセイは真顔で答えた。

「リズが私にくれたのだ。水も滴るいい男になれ、というメッセージとともに、私を池まで飛ばしてくれた。あの飛翔感……まさしく愛の放物線だった」

 マリアが「この人、頭がおかしいですわ」という顔をしている。  正解だ。その直感は正しい。

「そ、そうですか……。あ、あの、わたくし急ぎますので……」

「待て」

 アレクセイが、マリアの肩をガシッと掴んだ。  濡れた手で触られ、マリアの高級ドレスにシミができる。

「ひいいっ!?」

「貴様、今、リズと話をしていたな? リズはなんと? 私のことを心配していなかったか? 『やりすぎちゃったかしら、テヘ』と言っていなかったか?」

 言っていない。  一言も言っていない。

 マリアは震えながら、しかし必死に答えた。

「い、いいえ! お姉様は……お姉様は、安眠を求めておられましたわ! 貴方のような暑苦しい……いえ、情熱的な殿方が近づくと、お姉様の安らかな眠りが妨げられるのです!」

「なんだと?」

「ですから! お姉様を愛しているなら、そっとしておいて差し上げるのが一番ですわ! わたくし、お姉様の『安眠親衛隊長』として、貴方のその不潔な……じゃなくて、野性的な侵入を断固阻止します!」

 おおっ!  マリア、やるじゃないか!  あの筋肉ダルマ相手に、一歩も引かずに言い返している。  やはり彼女は、私の最強の盾(スケープゴート)になる素質がある。

 アレクセイは目を細め、マリアを見下ろした。  殺気が漏れている。  普通なら失神レベルのプレッシャーだ。

 だが、アレクセイはふっと口元を緩めた。

「……なるほど。一理ある」

 あるのかよ。

「確かに、今の私は濡れている。このままリズを抱きしめれば、彼女のパジャマを濡らし、風邪をひかせてしまうかもしれない。それは騎士としてあるまじき失態だ」

 そこか。  問題点はそこじゃないんだが。

「いいだろう、小娘。貴様の忠言、聞き入れてやる。一度屋敷に戻り、着替えてから出直すとしよう」

「ほ、本当ですの!?」

「ああ。だが、覚えておけ。リズの安眠を守るのは貴様ではない。この私だ。私が、リズの寝顔を一番近くで見守る権利を持っている」

「なっ……! 生意気ですわね! わたくしこそがお姉様の一番の理解者ですのに!」

 謎の対抗意識が芽生えている。  私の所有権を巡って、廊下で醜い争いが繰り広げられている。

「フン。まあいい。勝負は次回だ。……リズ! 聞いているか!」

 アレクセイがドアに向かって大声で叫んだ。  ビクッとして紅茶をこぼしそうになる。

「一旦引くが、諦めたわけではないぞ! 次は、壁を壊してでも迎えに行く! そして最高級のドライヤーで君の髪を乾かしてやるからな!」

 意味が分からないが、とりあえず帰るらしい。  アレクセイはビチャビチャと音を立てて去っていった。

 残されたマリアは、へなへなとその場に座り込んだ。

「……こ、怖かったですわ……」

 涙目のマリア。  よく頑張った。  私は心の中で彼女に拍手を送った。  報酬として、今度ドアの隙間からキャンディでも投げてあげよう。

「でも……守り抜きましたわ! お姉様の平穏を、わたくしが守りましたのよ!」

 マリアは立ち上がり、誇らしげに胸を張った。

「見ていてください、お姉様! わたくし、もっと強くなりますわ! あの筋肉ゴリラにも、勘違い王子にも負けない、最強の親衛隊長になってみせます!」

 そして彼女もまた、決意を新たに去っていった。

 廊下に静寂が戻る。  私はソファに深く沈み込み、冷めかけた紅茶を飲み干した。

「……疲れる」

 まだ昼前だ。  なのに、この疲労感。  引きこもり生活というのは、想像以上に体力を消耗するものらしい。

 しかし、成果はあった。  マリアという予期せぬ戦力を手に入れたことで、私の防御力は格段に上がったはずだ。  彼女が王宮や社交界で「エリザベート様は悟りを開かれました」と吹聴してくれれば、周囲の干渉も減るかもしれない。

 私は楽観的に考えていた。  そう、この時はまだ。

 私の行動一つ一つが、バタフライエフェクトのように国全体を巻き込む大騒動に発展しつつあることを、私はまだ知らなかったのだ。

 窓の外では、いつの間にか人々が集まり始めていた。  屋敷の周りを囲むように、人だかりができている。   「おい、聞いたか? ここにあらゆる欲望を捨て去った聖女様がいるらしいぞ」 「王太子の求婚も、騎士団長の愛も、全て拒絶して修行僧のように部屋に籠もっているとか」 「なんという高潔さだ……。拝めばご利益があるかもしれん」

 ざわざわと、そんな声が聞こえてくる。  どうやら、父や使用人たちが、王太子や騎士団長とのやり取りを面白おかしく(そして感動的に)脚色して、外に漏らしているらしい。

 私の部屋は、いつの間にか『聖地』となり、私は『生き神様』として崇められようとしていた。

「……勘弁してよ」

 私は布団を頭から被った。  明日こそは。  明日こそは、誰にも邪魔されず、静かに一日を終えるんだ。

 そう願いながら、私は昼寝という名の現実逃避へと旅立った。  夢の中でくらい、普通の引きこもりでいさせてほしい。

 だが、運命の歯車は止まらない。  明日は、私の何気ない一言が、国の農業政策を揺るがすことになるなんて、夢にも思わずに。
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