3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人

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第9話 絶対に出ない女 vs 絶対に出したい男たち

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 窓の外に広がる青空に、不穏な影が差したような気がした。  私の『引きこもり要塞』の窓から見える王都のメインストリートを、一台の漆黒の馬車が、まるで葬列のように静かに、しかし威圧的に進んでくる。  掲げられた紋章は『双頭の鷲』。  隣国アークライド王国の王家紋章だ。

「……来たわね」

 私はカーテンの隙間からその光景を覗き見ながら、手に持ったプレッツェルをバリボリと噛み砕いた。  塩気が強い。ストレスの味がする。

 私の部屋のソファーでは、ノアが優雅に足を組んで紅茶を飲んでいる。  彼は実の兄が来るというのに、どこか他人事のように楽しげだ。

「兄上――ルイス・ヴァン・アークライド第一王子。通称『氷の計算機』。彼は感情で動かない。すべての事象を『利益』と『損失』の天秤にかけて判断する、究極の合理主義者だよ」

 ノアがスラスラと兄のプロフィールを語る。

「彼が今回、わざわざ直接視察に来た理由は一つ。君の行った『王都改造計画』の経済効果が、彼のアークライド王国の予測モデルを遥かに超えたからさ。君というイレギュラーな存在を、自分の目で確かめに来たんだよ」

「……迷惑な話ね。数字なんて適当にいじっておけばいいじゃない」

「そうはいかないよ。兄上にとって、理解できない事象は『バグ』だ。バグは修正するか、削除するか、あるいは――」

 ノアは言葉を切り、琥珀色の瞳を細めた。

「――自分のシステムに組み込んで『支配』するか。そのどれかしかない」

 支配。  またその単語か。  私はため息をついた。  この世界の男たちは、どうしてこうも私を管理したがるのだろう。私はただ、野生のナマケモノのように、誰にも干渉されずに生きていたいだけなのに。

「それで? その氷の王子様が来るからには、当然、王宮では歓迎の宴が開かれるわけよね?」

「ご名答。今夜、王宮の大広間で盛大な舞踏会が開催される。そして当然、この国の『影の女帝』である君には、招待状という名の『召喚命令』が出ているよ」

 ノアが懐から一枚の封筒を取り出し、テーブルの上に置いた。  金箔で縁取られた、見るからに高そうな封筒だ。

「フレデリック殿下とアレクセイ騎士団長は張り切っているよ。『今夜こそ、リズを国民と他国の前にお披露目する絶好の機会だ!』ってね。彼らは今、君を部屋から引っ張り出すための『リズ搬出作戦会議』を開いている最中さ」

「……搬出作戦?」

 私は眉をひそめた。  まるで粗大ゴミか何かのような扱いだ。

「言っておくけど、私は絶対に行かないわよ。ドレスなんて着たら肩が凝るし、コルセットで内臓が圧迫されるし、何より知らない人と愛想笑いで会話するなんて、拷問以外の何物でもないもの」

「分かっているさ。でも、今回の彼らは本気だよ。物理的、魔術的、そして心理的、あらゆる手段を使って君を攻略しに来るはずだ。なんといっても、国の威信がかかっているからね」

 ノアは立ち上がり、窓の外の黒い馬車を見下ろした。

「忠告しておくよ、リズ。兄上は手強い。そして、フレデリック殿下たちの『愛の暴走』も、今までとは桁が違う。……今夜は、長い夜になりそうだね」

 彼はそう言い残すと、いつものように窓から飛び降りて姿を消した。  残されたのは、私と、机の上の招待状。  そして、廊下の向こうから近づいてくる、多数の足音と気配。

 ……始まったか。  私はプレッツェルを皿に戻し、戦闘態勢に入った。  パジャマの袖をまくる。  今日の私は、ただの引きこもりではない。  『籠城のプロフェッショナル』だ。

 絶対に、出ない。  このドアを開けさせるものか。

 ◇ ◇ ◇

 夕刻。  空が茜色に染まる頃、私の部屋の前は戦場と化していた。

 まずは先陣を切って、マリア率いる侍女部隊がやってきた。  彼女たちは『懐柔策』だ。

「エリザベートお姉様! マリアですわ! 今夜のドレスをお持ちしましたの!」

 ドア越しに聞こえる、弾んだ声。  本来なら私の味方であるはずのマリアだが、今回ばかりは敵に回っているようだ。  無理もない。彼女にとって「舞踏会」とは、聖なる儀式のようなものなのだから。

「見てくださいませ、このドレス! 最高級のシルクで作られた、真夜中のようなダークブルーの生地に、星屑のように散りばめられたダイヤモンド! まさにお姉様の『安眠の夜』をイメージしたデザインですわ!」

 デザインのコンセプトは評価するが、着たくはない。

「マリア、ありがとう。でも、私は風邪気味なの。咳が出るし、熱もある気がするわ」

 私はゴホゴホとわざとらしい咳をして見せた。  だが、マリアは動じない。

「あら、大変! でも大丈夫ですわ! このドレスには『自動治癒・体調管理機能』がついた魔術布が使われていますの! 着ているだけで健康になれる、魔法のドレスなんです!」

 無駄に高機能だ。  誰が開発したんだそんなもの。  ……ああ、父か。私の『快眠プロジェクト』の一環で、職人に作らせたのか。

「それに、お化粧も不要ですわ! 『幻影メイクアップ・マスク』をご用意しました! これを顔に乗せるだけで、すっぴんでも絶世の美女に見えるという優れものです!」

 技術の無駄遣いがすごい。  この国の職人たちは、私のワガママを叶えるために進化しすぎている。

「悪いけど、気分が乗らないの。今日はもう寝るわ」

「そんな! 隣国のルイス王子も楽しみにされていますのに! ……仕方ありませんわね。では、次の手段を使わせていただきます!」

 マリアが下がると、入れ替わりに重厚な足音が響いた。  第二陣。  王太子フレデリックだ。

「リズ! 私だ! 起きてくれ、愛しい人よ!」

 相変わらず声が大きい。  私は耳栓(特注品)を装着した。

「君が人前に出るのを嫌がるのは知っている。だが、今夜だけはどうしても君が必要なんだ! ルイス王子が『この国の改革者が姿を見せないのは、存在しないからではないか?』と疑っているのだ!」

 疑わせておけばいい。  私は都市伝説で十分だ。

「そこでだ、リズ。君を『楽に』連れ出すために、とっておきのアイテムを用意した!」

 シュー……。  ドアの下の隙間から、白い煙が流れ込んでくる。  甘い、花の香り。  これは……最高級の睡眠導入香か?  いや、微量だが麻痺毒の成分も混じっている。

「安心しろ、害はない! ただ、君の体を一時的に動けなくして、眠っている間に優しくお姫様抱っこで会場へ運ぶだけだ!」

 犯罪だ。  完全に誘拐の手口だ。  王太子のやることじゃない。

 私は慌てて、サイドテーブルの下から『ガスマスク(リズ特製)』を取り出し、装着した。  2周目の化学知識で作った、活性炭と魔法フィルターのハイブリッドマスクだ。  これでどんな毒ガスも無効化できる。  ついでに、換気扇の魔道具をフル稼働させる。

 ブォォォォン!!  逆回転させた換気扇が、部屋の中の煙を一気に吸い込み、ドアの隙間から廊下へと逆噴射した。

「うおっ!? け、煙が逆流して……! ゴホッ、ゴホッ! 目が、目がぁぁ!」

 廊下でフレデリックと従者たちが咳き込む音が聞こえる。  自業自得だ。  自分の撒いた種(ガス)で眠るがいい。

「……やりおる」

 煙が晴れた頃、低い声が聞こえた。  第三陣。  物理攻撃担当、アレクセイ騎士団長だ。

「さすがリズだ。毒ガス攻撃すら想定済みとは。戦場における危機管理能力が素晴らしい」

 戦場じゃない。自宅だ。

「だが、これは防げるかな?」

 ガガガガガッ!  突然、床が振動した。  地震ではない。  壁だ。  私の部屋の壁(廊下側ではない、庭に面した外壁)が、外から削られている音だ。

「正面がダメなら、壁ごとくり抜けばいい! 工兵部隊、作業急げ! リズの部屋を『コンテナ』として丸ごと切り出し、クレーンで吊り上げて会場へ運ぶのだ!」

 発想がダイナミックすぎる。  部屋から出ないなら、部屋ごと移動させる。  確かに盲点だったが、正気の沙汰ではない。

 私は窓の外を見た。  巨大な重機(魔動クレーン)が、私の部屋の外壁にフックをかけようとしている。  アレクセイが指揮を執っているのが見える。

「リズ! 揺れるぞ! 舌を噛まないように何かに掴まっていろ!」

 親切なのか乱暴なのか分からない警告。  このままでは、私は「空飛ぶ引きこもりルーム」として、王都の夜空を輸送され、舞踏会場のど真ん中に投下されてしまう。  晒し者だ。  絶対に阻止しなければ。

 私は、部屋の四隅に設置してある『重力制御の杭』に魔力を流し込んだ。  これは、ノアから買った「空間固定」の魔法陣を強化したものだ。

「発動! 【絶対不動(アンムーバブル・フォートレス)】!」

 ズゥゥゥン!!  部屋全体の質量が、魔法的に『無限大』へと固定される。  この部屋は今、概念的に『山』と同化した。

 ブチィッ!!

 クレーンのワイヤーが千切れる音がした。  重機が前のめりに傾き、アレクセイが「ぬおっ!?」と声を上げる。

「な、なんだこの重さは!? クレーンが持ち上がらないどころか、地面に沈んでいくぞ!?」

「団長! 計測不能です! この部屋、今の重量が推定100万トンを超えています!」

「馬鹿な! リズの体重が増えたとでも言うのか!? いや、これは……彼女の『ここを動きたくない』という意志の重さか!!」

 そうです。  私の意志は地球より重いのです。

 作戦失敗。  アレクセイは悔しそうにクレーンを撤退させた。

 ふぅ。  これで手詰まりだろう。  私はガスマスクを外し、勝利の紅茶を淹れようとした。

 しかし。  本当の脅威は、ここからだった。

 カツ、カツ、カツ。  廊下から、氷の上を歩くような、冷徹で規則正しい足音が聞こえてきた。  フレデリックやアレクセイの情熱的な足音とは違う。  無機質で、不気味なほど静かな足音。

 足音はドアの前でピタリと止まった。

「……茶番だね」

 ドア越しに聞こえた声は、低く、冷たく、そして美しい響きを持っていた。  ノアに似ているが、もっと硬質だ。

「毒ガスに、クレーンによる物理搬送。野蛮すぎて見ていられないよ。これだからルミナステラ王国は『感情論の国』と揶揄されるんだ」

 ルイス・ヴァン・アークライド第一王子。  彼が直接、私の部屋の前まで来てしまったらしい。  フレデリックたちは何をしているんだ。国賓をこんなゴミ屋敷(さっきまで工事現場だった廊下)に通すなよ。

「失礼するよ、エリザベート・フォン・ローゼンバーグ公爵令嬢。アークライド王国第一王子、ルイスだ」

 丁寧な口調だが、そこには絶対的な上位者としての響きがある。

「君の『効率化』の手腕、見せてもらったよ。素晴らしい。王都の静音化、断熱化、流通改革。全てが理にかなっている。君は、自分の欲望(快適性)のために、社会インフラを最適化した。これは、凡庸な為政者が掲げる『民のため』という偽善よりも、遥かに純粋で強力な動機付けだ」

 ……分析されている。  的確すぎて怖い。

「私は君に興味がある。君のような人材が、この国の感情的な男たちに囲まれて消耗するのは『損失』だ」

 ルイスの声が、少しだけ熱を帯びた気がした。

「取引をしよう、エリザベート嬢。私と共に来ないか? 我がアークライド王国へ」

 勧誘?  ノアの言っていた通りだ。  彼は私を『システム』として取り込みに来た。

「我が国に来れば、君に『国家戦略顧問』の地位を用意しよう。君の仕事は、君が最も快適だと思う環境を設計し、それを私が国全体に適用するだけだ。君は部屋から一歩も出る必要はない。食事も、衣服も、娯楽も、全て最高効率で提供することを約束する」

 甘い誘い文句だ。  フレデリックの「愛」やアレクセイの「保護」とは違う。  ビジネスライクで、実利的な提案。  正直、少し心が揺れた。  アークライド王国は技術先進国だ。ここよりも快適な引きこもり環境が手に入るかもしれない。

 だが。  私は知っている。  「効率」を追求する彼の下に行けば、私は「効率的に」管理されることになる。  睡眠時間も、食事のカロリーも、娯楽の摂取量も、全て数値化され、最適化されるだろう。  二度寝の自由も、夜更かしして本を読む背徳感も、そこにはない。  それは『飼育』だ。

 私は深呼吸をし、ドアに向かってはっきりと告げた。

「……お断りします」

 廊下に沈黙が落ちた。

「……理由は?」

「私は、管理されるのが嫌いです。私が寝たい時に寝て、起きたい時に起きる。非効率で、無駄で、自堕落な時間こそが、私にとっての『利益』なのです」

「非効率こそが利益……? 矛盾しているね」

「人間だもの。矛盾してて結構よ」

 私は言い放った。  ルイス王子が、ドアの向こうで小さく息を吸う気配がした。  怒ったか?  それとも呆れたか?

「……ふっ」

 笑い声。  冷徹な王子が、笑った。

「面白い。実に面白いサンプルだ。非効率を愛し、無駄を至高とする統治者。私の計算式にはない変数だ」

 ルイスの声に、愉悦の色が混じる。

「いいだろう。今回は引き下がろう。だが、諦めたわけではない。君という『未知の変数』を解析し、攻略する楽しみができた」

 なんか変なスイッチを入れてしまったようだ。  この兄弟、どっちも私の扱いをゲームか何かだと思っている節がある。

「エリザベート嬢。舞踏会には出なくていい。君のその『拒絶』の意志こそが、今夜の最高の余興だ。代わりに、君がこの部屋で何をしているか、想像しながら楽しませてもらうよ」

 ルイス王子はそう言い残し、踵を返した。  カツ、カツ、カツ……。  足音が遠ざかっていく。

 助かった……のか?  私はへなへなとソファに座り込んだ。  王太子、騎士団長、そして隣国王子。  三者三様の攻撃(アプローチ)を、なんとか凌ぎきった。

 だが、まだ終わっていなかった。

「……リズ、すまない」

 戻ってきたフレデリックの声。  まだいたのか。

「ルイス殿下にあそこまで言われて、我々が引き下がるわけにはいかないのだ! これは国のメンツの問題だ!」

「そうだ! リズ様を出せないとなれば、我々近衛騎士団の名折れ!」

 アレクセイも叫ぶ。  彼らはまだ諦めていなかった。  むしろ、ルイス王子の余裕の態度に火がついたらしい。

「強行突破だ! ドアを爆破してでも連れ出す!」 「結界中和術式、展開! 全魔導師部隊、構え!」

 廊下が騒がしくなる。  魔法の詠唱や、火薬の準備をする音が聞こえる。  本気だ。  こいつら、私の安眠よりも、自分たちのプライドを優先し始めた。

 どうする?  【絶対不動】で部屋は動かないが、ドアを突破されたら終わりだ。  スタンガン一本で、軍隊と戦うのは無理がある。

 その時。  私の脳裏に、マリアの言葉が蘇った。  『幻影メイクアップ・マスク』。  そして、2周目の記憶にある『遠隔操作魔法』。

 ……そうだ。  私はポンと手を叩いた。  本体が出る必要はない。  『私に見える何か』が行けばいいのだ。

 私は部屋の隅にある、大きなテディベア(フレデリックからの贈り物)を引っ張り出した。  人間サイズより少し小さいが、まあ誤差の範囲だ。  これに『幻影魔法』をかけ、私の姿に見せかける。  そして、『遠隔操作(リモートコントロール)』の術式を組み込む。

 私はテディベアに、マリアが置いていった『星屑のドレス』を着せた。  サイズが合わない部分は、安全ピンで止める。  顔には『幻影マスク』を貼り付ける。

 数分後。  そこには、少し背が低く、やけにふっくらとした体型だが、間違いなく『絶世の美女エリザベート』の姿をした人形が完成していた。  動きはぎこちないが、まあ「緊張している」と言い張れば通じるだろう。

「よし。行ってきなさい、私の分身(アバター)よ!」

 私は指先で操作しながら、人形をドアの方へ歩かせた。  そして、タイミングを見計らって結界を解除し、ドアの鍵を開ける。

 ガチャリ。

 ドアが開いた瞬間、廊下の男たちが一斉に静まり返った。

「……リズ?」

 フレデリックが目を丸くする。

 私は部屋の奥から、腹話術のように声を飛ばした。  (正確には、風魔法による音声伝達だ)

『……お待たせしました。準備ができましたわ』

 人形が、カクカクとした動きでお辞儀をする。

「お、おおお……!!」 「出てきてくれた! リズが出てきてくれたぞ!」

 男たちが歓声を上げる。  彼らの目には、この不自然な動きの人形が、神々しい聖女の姿に見えているらしい。  幻影魔法の効果というよりは、彼らの『フィルター』が強すぎるせいだろう。

「美しい……! 星空を纏った女神のようだ!」 「その少しぎこちない動きも、深窓の令嬢らしくて可憐だ!」

 アレクセイが人形の手(ぬいぐるみのもふもふの手)を取り、エスコートする。

「さあ、行きましょうリズ様。馬車が待っています」

 人形は無言で頷き、彼らに連れられて廊下を進んでいく。  私は部屋の中から、モニター越しにゲームを操作するような感覚で、その背中を見送った。

「……ちょろい」

 私はソファに身を投げ出した。  これで今夜は乗り切れる。  人形を通して会場の様子は見聞きできるし、適当に相槌を打っていればいい。  面倒になったら「貧血です」と言って、人形の電源を切れば(魔力供給を絶てば)、その場で倒れて退場できる。  完璧な作戦だ。

 私は勝利のガッツポーズをし、今度こそゆっくりと紅茶を飲む準備を始めた。

 しかし。  私は甘かった。  私の『操作スキル』は完璧だったが、人形の『物理的な耐久性』と、会場で待ち受ける『不測の事態』を計算に入れていなかったのだ。

 数時間後。  王宮の舞踏会場で。  私の分身である人形が、隣国王子ルイスとのダンス中に、『ある衝撃的な事故』を起こし、伝説を作ることになる。

 それは、私の「ミステリアスな聖女」という評判を、さらに加速させる皮肉な結果となるのだが……今はまだ、知るよしもない。

 私はパジャマ姿で、モニター(魔法の水晶)に映る華やかな会場の映像を眺めながら、ポップコーンを頬張っていた。

「さあ、見せてもらおうか。私の代理戦争を」
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