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第9話 絶対に出ない女 vs 絶対に出したい男たち
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窓の外に広がる青空に、不穏な影が差したような気がした。 私の『引きこもり要塞』の窓から見える王都のメインストリートを、一台の漆黒の馬車が、まるで葬列のように静かに、しかし威圧的に進んでくる。 掲げられた紋章は『双頭の鷲』。 隣国アークライド王国の王家紋章だ。
「……来たわね」
私はカーテンの隙間からその光景を覗き見ながら、手に持ったプレッツェルをバリボリと噛み砕いた。 塩気が強い。ストレスの味がする。
私の部屋のソファーでは、ノアが優雅に足を組んで紅茶を飲んでいる。 彼は実の兄が来るというのに、どこか他人事のように楽しげだ。
「兄上――ルイス・ヴァン・アークライド第一王子。通称『氷の計算機』。彼は感情で動かない。すべての事象を『利益』と『損失』の天秤にかけて判断する、究極の合理主義者だよ」
ノアがスラスラと兄のプロフィールを語る。
「彼が今回、わざわざ直接視察に来た理由は一つ。君の行った『王都改造計画』の経済効果が、彼のアークライド王国の予測モデルを遥かに超えたからさ。君というイレギュラーな存在を、自分の目で確かめに来たんだよ」
「……迷惑な話ね。数字なんて適当にいじっておけばいいじゃない」
「そうはいかないよ。兄上にとって、理解できない事象は『バグ』だ。バグは修正するか、削除するか、あるいは――」
ノアは言葉を切り、琥珀色の瞳を細めた。
「――自分のシステムに組み込んで『支配』するか。そのどれかしかない」
支配。 またその単語か。 私はため息をついた。 この世界の男たちは、どうしてこうも私を管理したがるのだろう。私はただ、野生のナマケモノのように、誰にも干渉されずに生きていたいだけなのに。
「それで? その氷の王子様が来るからには、当然、王宮では歓迎の宴が開かれるわけよね?」
「ご名答。今夜、王宮の大広間で盛大な舞踏会が開催される。そして当然、この国の『影の女帝』である君には、招待状という名の『召喚命令』が出ているよ」
ノアが懐から一枚の封筒を取り出し、テーブルの上に置いた。 金箔で縁取られた、見るからに高そうな封筒だ。
「フレデリック殿下とアレクセイ騎士団長は張り切っているよ。『今夜こそ、リズを国民と他国の前にお披露目する絶好の機会だ!』ってね。彼らは今、君を部屋から引っ張り出すための『リズ搬出作戦会議』を開いている最中さ」
「……搬出作戦?」
私は眉をひそめた。 まるで粗大ゴミか何かのような扱いだ。
「言っておくけど、私は絶対に行かないわよ。ドレスなんて着たら肩が凝るし、コルセットで内臓が圧迫されるし、何より知らない人と愛想笑いで会話するなんて、拷問以外の何物でもないもの」
「分かっているさ。でも、今回の彼らは本気だよ。物理的、魔術的、そして心理的、あらゆる手段を使って君を攻略しに来るはずだ。なんといっても、国の威信がかかっているからね」
ノアは立ち上がり、窓の外の黒い馬車を見下ろした。
「忠告しておくよ、リズ。兄上は手強い。そして、フレデリック殿下たちの『愛の暴走』も、今までとは桁が違う。……今夜は、長い夜になりそうだね」
彼はそう言い残すと、いつものように窓から飛び降りて姿を消した。 残されたのは、私と、机の上の招待状。 そして、廊下の向こうから近づいてくる、多数の足音と気配。
……始まったか。 私はプレッツェルを皿に戻し、戦闘態勢に入った。 パジャマの袖をまくる。 今日の私は、ただの引きこもりではない。 『籠城のプロフェッショナル』だ。
絶対に、出ない。 このドアを開けさせるものか。
◇ ◇ ◇
夕刻。 空が茜色に染まる頃、私の部屋の前は戦場と化していた。
まずは先陣を切って、マリア率いる侍女部隊がやってきた。 彼女たちは『懐柔策』だ。
「エリザベートお姉様! マリアですわ! 今夜のドレスをお持ちしましたの!」
ドア越しに聞こえる、弾んだ声。 本来なら私の味方であるはずのマリアだが、今回ばかりは敵に回っているようだ。 無理もない。彼女にとって「舞踏会」とは、聖なる儀式のようなものなのだから。
「見てくださいませ、このドレス! 最高級のシルクで作られた、真夜中のようなダークブルーの生地に、星屑のように散りばめられたダイヤモンド! まさにお姉様の『安眠の夜』をイメージしたデザインですわ!」
デザインのコンセプトは評価するが、着たくはない。
「マリア、ありがとう。でも、私は風邪気味なの。咳が出るし、熱もある気がするわ」
私はゴホゴホとわざとらしい咳をして見せた。 だが、マリアは動じない。
「あら、大変! でも大丈夫ですわ! このドレスには『自動治癒・体調管理機能』がついた魔術布が使われていますの! 着ているだけで健康になれる、魔法のドレスなんです!」
無駄に高機能だ。 誰が開発したんだそんなもの。 ……ああ、父か。私の『快眠プロジェクト』の一環で、職人に作らせたのか。
「それに、お化粧も不要ですわ! 『幻影メイクアップ・マスク』をご用意しました! これを顔に乗せるだけで、すっぴんでも絶世の美女に見えるという優れものです!」
技術の無駄遣いがすごい。 この国の職人たちは、私のワガママを叶えるために進化しすぎている。
「悪いけど、気分が乗らないの。今日はもう寝るわ」
「そんな! 隣国のルイス王子も楽しみにされていますのに! ……仕方ありませんわね。では、次の手段を使わせていただきます!」
マリアが下がると、入れ替わりに重厚な足音が響いた。 第二陣。 王太子フレデリックだ。
「リズ! 私だ! 起きてくれ、愛しい人よ!」
相変わらず声が大きい。 私は耳栓(特注品)を装着した。
「君が人前に出るのを嫌がるのは知っている。だが、今夜だけはどうしても君が必要なんだ! ルイス王子が『この国の改革者が姿を見せないのは、存在しないからではないか?』と疑っているのだ!」
疑わせておけばいい。 私は都市伝説で十分だ。
「そこでだ、リズ。君を『楽に』連れ出すために、とっておきのアイテムを用意した!」
シュー……。 ドアの下の隙間から、白い煙が流れ込んでくる。 甘い、花の香り。 これは……最高級の睡眠導入香か? いや、微量だが麻痺毒の成分も混じっている。
「安心しろ、害はない! ただ、君の体を一時的に動けなくして、眠っている間に優しくお姫様抱っこで会場へ運ぶだけだ!」
犯罪だ。 完全に誘拐の手口だ。 王太子のやることじゃない。
私は慌てて、サイドテーブルの下から『ガスマスク(リズ特製)』を取り出し、装着した。 2周目の化学知識で作った、活性炭と魔法フィルターのハイブリッドマスクだ。 これでどんな毒ガスも無効化できる。 ついでに、換気扇の魔道具をフル稼働させる。
ブォォォォン!! 逆回転させた換気扇が、部屋の中の煙を一気に吸い込み、ドアの隙間から廊下へと逆噴射した。
「うおっ!? け、煙が逆流して……! ゴホッ、ゴホッ! 目が、目がぁぁ!」
廊下でフレデリックと従者たちが咳き込む音が聞こえる。 自業自得だ。 自分の撒いた種(ガス)で眠るがいい。
「……やりおる」
煙が晴れた頃、低い声が聞こえた。 第三陣。 物理攻撃担当、アレクセイ騎士団長だ。
「さすがリズだ。毒ガス攻撃すら想定済みとは。戦場における危機管理能力が素晴らしい」
戦場じゃない。自宅だ。
「だが、これは防げるかな?」
ガガガガガッ! 突然、床が振動した。 地震ではない。 壁だ。 私の部屋の壁(廊下側ではない、庭に面した外壁)が、外から削られている音だ。
「正面がダメなら、壁ごとくり抜けばいい! 工兵部隊、作業急げ! リズの部屋を『コンテナ』として丸ごと切り出し、クレーンで吊り上げて会場へ運ぶのだ!」
発想がダイナミックすぎる。 部屋から出ないなら、部屋ごと移動させる。 確かに盲点だったが、正気の沙汰ではない。
私は窓の外を見た。 巨大な重機(魔動クレーン)が、私の部屋の外壁にフックをかけようとしている。 アレクセイが指揮を執っているのが見える。
「リズ! 揺れるぞ! 舌を噛まないように何かに掴まっていろ!」
親切なのか乱暴なのか分からない警告。 このままでは、私は「空飛ぶ引きこもりルーム」として、王都の夜空を輸送され、舞踏会場のど真ん中に投下されてしまう。 晒し者だ。 絶対に阻止しなければ。
私は、部屋の四隅に設置してある『重力制御の杭』に魔力を流し込んだ。 これは、ノアから買った「空間固定」の魔法陣を強化したものだ。
「発動! 【絶対不動(アンムーバブル・フォートレス)】!」
ズゥゥゥン!! 部屋全体の質量が、魔法的に『無限大』へと固定される。 この部屋は今、概念的に『山』と同化した。
ブチィッ!!
クレーンのワイヤーが千切れる音がした。 重機が前のめりに傾き、アレクセイが「ぬおっ!?」と声を上げる。
「な、なんだこの重さは!? クレーンが持ち上がらないどころか、地面に沈んでいくぞ!?」
「団長! 計測不能です! この部屋、今の重量が推定100万トンを超えています!」
「馬鹿な! リズの体重が増えたとでも言うのか!? いや、これは……彼女の『ここを動きたくない』という意志の重さか!!」
そうです。 私の意志は地球より重いのです。
作戦失敗。 アレクセイは悔しそうにクレーンを撤退させた。
ふぅ。 これで手詰まりだろう。 私はガスマスクを外し、勝利の紅茶を淹れようとした。
しかし。 本当の脅威は、ここからだった。
カツ、カツ、カツ。 廊下から、氷の上を歩くような、冷徹で規則正しい足音が聞こえてきた。 フレデリックやアレクセイの情熱的な足音とは違う。 無機質で、不気味なほど静かな足音。
足音はドアの前でピタリと止まった。
「……茶番だね」
ドア越しに聞こえた声は、低く、冷たく、そして美しい響きを持っていた。 ノアに似ているが、もっと硬質だ。
「毒ガスに、クレーンによる物理搬送。野蛮すぎて見ていられないよ。これだからルミナステラ王国は『感情論の国』と揶揄されるんだ」
ルイス・ヴァン・アークライド第一王子。 彼が直接、私の部屋の前まで来てしまったらしい。 フレデリックたちは何をしているんだ。国賓をこんなゴミ屋敷(さっきまで工事現場だった廊下)に通すなよ。
「失礼するよ、エリザベート・フォン・ローゼンバーグ公爵令嬢。アークライド王国第一王子、ルイスだ」
丁寧な口調だが、そこには絶対的な上位者としての響きがある。
「君の『効率化』の手腕、見せてもらったよ。素晴らしい。王都の静音化、断熱化、流通改革。全てが理にかなっている。君は、自分の欲望(快適性)のために、社会インフラを最適化した。これは、凡庸な為政者が掲げる『民のため』という偽善よりも、遥かに純粋で強力な動機付けだ」
……分析されている。 的確すぎて怖い。
「私は君に興味がある。君のような人材が、この国の感情的な男たちに囲まれて消耗するのは『損失』だ」
ルイスの声が、少しだけ熱を帯びた気がした。
「取引をしよう、エリザベート嬢。私と共に来ないか? 我がアークライド王国へ」
勧誘? ノアの言っていた通りだ。 彼は私を『システム』として取り込みに来た。
「我が国に来れば、君に『国家戦略顧問』の地位を用意しよう。君の仕事は、君が最も快適だと思う環境を設計し、それを私が国全体に適用するだけだ。君は部屋から一歩も出る必要はない。食事も、衣服も、娯楽も、全て最高効率で提供することを約束する」
甘い誘い文句だ。 フレデリックの「愛」やアレクセイの「保護」とは違う。 ビジネスライクで、実利的な提案。 正直、少し心が揺れた。 アークライド王国は技術先進国だ。ここよりも快適な引きこもり環境が手に入るかもしれない。
だが。 私は知っている。 「効率」を追求する彼の下に行けば、私は「効率的に」管理されることになる。 睡眠時間も、食事のカロリーも、娯楽の摂取量も、全て数値化され、最適化されるだろう。 二度寝の自由も、夜更かしして本を読む背徳感も、そこにはない。 それは『飼育』だ。
私は深呼吸をし、ドアに向かってはっきりと告げた。
「……お断りします」
廊下に沈黙が落ちた。
「……理由は?」
「私は、管理されるのが嫌いです。私が寝たい時に寝て、起きたい時に起きる。非効率で、無駄で、自堕落な時間こそが、私にとっての『利益』なのです」
「非効率こそが利益……? 矛盾しているね」
「人間だもの。矛盾してて結構よ」
私は言い放った。 ルイス王子が、ドアの向こうで小さく息を吸う気配がした。 怒ったか? それとも呆れたか?
「……ふっ」
笑い声。 冷徹な王子が、笑った。
「面白い。実に面白いサンプルだ。非効率を愛し、無駄を至高とする統治者。私の計算式にはない変数だ」
ルイスの声に、愉悦の色が混じる。
「いいだろう。今回は引き下がろう。だが、諦めたわけではない。君という『未知の変数』を解析し、攻略する楽しみができた」
なんか変なスイッチを入れてしまったようだ。 この兄弟、どっちも私の扱いをゲームか何かだと思っている節がある。
「エリザベート嬢。舞踏会には出なくていい。君のその『拒絶』の意志こそが、今夜の最高の余興だ。代わりに、君がこの部屋で何をしているか、想像しながら楽しませてもらうよ」
ルイス王子はそう言い残し、踵を返した。 カツ、カツ、カツ……。 足音が遠ざかっていく。
助かった……のか? 私はへなへなとソファに座り込んだ。 王太子、騎士団長、そして隣国王子。 三者三様の攻撃(アプローチ)を、なんとか凌ぎきった。
だが、まだ終わっていなかった。
「……リズ、すまない」
戻ってきたフレデリックの声。 まだいたのか。
「ルイス殿下にあそこまで言われて、我々が引き下がるわけにはいかないのだ! これは国のメンツの問題だ!」
「そうだ! リズ様を出せないとなれば、我々近衛騎士団の名折れ!」
アレクセイも叫ぶ。 彼らはまだ諦めていなかった。 むしろ、ルイス王子の余裕の態度に火がついたらしい。
「強行突破だ! ドアを爆破してでも連れ出す!」 「結界中和術式、展開! 全魔導師部隊、構え!」
廊下が騒がしくなる。 魔法の詠唱や、火薬の準備をする音が聞こえる。 本気だ。 こいつら、私の安眠よりも、自分たちのプライドを優先し始めた。
どうする? 【絶対不動】で部屋は動かないが、ドアを突破されたら終わりだ。 スタンガン一本で、軍隊と戦うのは無理がある。
その時。 私の脳裏に、マリアの言葉が蘇った。 『幻影メイクアップ・マスク』。 そして、2周目の記憶にある『遠隔操作魔法』。
……そうだ。 私はポンと手を叩いた。 本体が出る必要はない。 『私に見える何か』が行けばいいのだ。
私は部屋の隅にある、大きなテディベア(フレデリックからの贈り物)を引っ張り出した。 人間サイズより少し小さいが、まあ誤差の範囲だ。 これに『幻影魔法』をかけ、私の姿に見せかける。 そして、『遠隔操作(リモートコントロール)』の術式を組み込む。
私はテディベアに、マリアが置いていった『星屑のドレス』を着せた。 サイズが合わない部分は、安全ピンで止める。 顔には『幻影マスク』を貼り付ける。
数分後。 そこには、少し背が低く、やけにふっくらとした体型だが、間違いなく『絶世の美女エリザベート』の姿をした人形が完成していた。 動きはぎこちないが、まあ「緊張している」と言い張れば通じるだろう。
「よし。行ってきなさい、私の分身(アバター)よ!」
私は指先で操作しながら、人形をドアの方へ歩かせた。 そして、タイミングを見計らって結界を解除し、ドアの鍵を開ける。
ガチャリ。
ドアが開いた瞬間、廊下の男たちが一斉に静まり返った。
「……リズ?」
フレデリックが目を丸くする。
私は部屋の奥から、腹話術のように声を飛ばした。 (正確には、風魔法による音声伝達だ)
『……お待たせしました。準備ができましたわ』
人形が、カクカクとした動きでお辞儀をする。
「お、おおお……!!」 「出てきてくれた! リズが出てきてくれたぞ!」
男たちが歓声を上げる。 彼らの目には、この不自然な動きの人形が、神々しい聖女の姿に見えているらしい。 幻影魔法の効果というよりは、彼らの『フィルター』が強すぎるせいだろう。
「美しい……! 星空を纏った女神のようだ!」 「その少しぎこちない動きも、深窓の令嬢らしくて可憐だ!」
アレクセイが人形の手(ぬいぐるみのもふもふの手)を取り、エスコートする。
「さあ、行きましょうリズ様。馬車が待っています」
人形は無言で頷き、彼らに連れられて廊下を進んでいく。 私は部屋の中から、モニター越しにゲームを操作するような感覚で、その背中を見送った。
「……ちょろい」
私はソファに身を投げ出した。 これで今夜は乗り切れる。 人形を通して会場の様子は見聞きできるし、適当に相槌を打っていればいい。 面倒になったら「貧血です」と言って、人形の電源を切れば(魔力供給を絶てば)、その場で倒れて退場できる。 完璧な作戦だ。
私は勝利のガッツポーズをし、今度こそゆっくりと紅茶を飲む準備を始めた。
しかし。 私は甘かった。 私の『操作スキル』は完璧だったが、人形の『物理的な耐久性』と、会場で待ち受ける『不測の事態』を計算に入れていなかったのだ。
数時間後。 王宮の舞踏会場で。 私の分身である人形が、隣国王子ルイスとのダンス中に、『ある衝撃的な事故』を起こし、伝説を作ることになる。
それは、私の「ミステリアスな聖女」という評判を、さらに加速させる皮肉な結果となるのだが……今はまだ、知るよしもない。
私はパジャマ姿で、モニター(魔法の水晶)に映る華やかな会場の映像を眺めながら、ポップコーンを頬張っていた。
「さあ、見せてもらおうか。私の代理戦争を」
「……来たわね」
私はカーテンの隙間からその光景を覗き見ながら、手に持ったプレッツェルをバリボリと噛み砕いた。 塩気が強い。ストレスの味がする。
私の部屋のソファーでは、ノアが優雅に足を組んで紅茶を飲んでいる。 彼は実の兄が来るというのに、どこか他人事のように楽しげだ。
「兄上――ルイス・ヴァン・アークライド第一王子。通称『氷の計算機』。彼は感情で動かない。すべての事象を『利益』と『損失』の天秤にかけて判断する、究極の合理主義者だよ」
ノアがスラスラと兄のプロフィールを語る。
「彼が今回、わざわざ直接視察に来た理由は一つ。君の行った『王都改造計画』の経済効果が、彼のアークライド王国の予測モデルを遥かに超えたからさ。君というイレギュラーな存在を、自分の目で確かめに来たんだよ」
「……迷惑な話ね。数字なんて適当にいじっておけばいいじゃない」
「そうはいかないよ。兄上にとって、理解できない事象は『バグ』だ。バグは修正するか、削除するか、あるいは――」
ノアは言葉を切り、琥珀色の瞳を細めた。
「――自分のシステムに組み込んで『支配』するか。そのどれかしかない」
支配。 またその単語か。 私はため息をついた。 この世界の男たちは、どうしてこうも私を管理したがるのだろう。私はただ、野生のナマケモノのように、誰にも干渉されずに生きていたいだけなのに。
「それで? その氷の王子様が来るからには、当然、王宮では歓迎の宴が開かれるわけよね?」
「ご名答。今夜、王宮の大広間で盛大な舞踏会が開催される。そして当然、この国の『影の女帝』である君には、招待状という名の『召喚命令』が出ているよ」
ノアが懐から一枚の封筒を取り出し、テーブルの上に置いた。 金箔で縁取られた、見るからに高そうな封筒だ。
「フレデリック殿下とアレクセイ騎士団長は張り切っているよ。『今夜こそ、リズを国民と他国の前にお披露目する絶好の機会だ!』ってね。彼らは今、君を部屋から引っ張り出すための『リズ搬出作戦会議』を開いている最中さ」
「……搬出作戦?」
私は眉をひそめた。 まるで粗大ゴミか何かのような扱いだ。
「言っておくけど、私は絶対に行かないわよ。ドレスなんて着たら肩が凝るし、コルセットで内臓が圧迫されるし、何より知らない人と愛想笑いで会話するなんて、拷問以外の何物でもないもの」
「分かっているさ。でも、今回の彼らは本気だよ。物理的、魔術的、そして心理的、あらゆる手段を使って君を攻略しに来るはずだ。なんといっても、国の威信がかかっているからね」
ノアは立ち上がり、窓の外の黒い馬車を見下ろした。
「忠告しておくよ、リズ。兄上は手強い。そして、フレデリック殿下たちの『愛の暴走』も、今までとは桁が違う。……今夜は、長い夜になりそうだね」
彼はそう言い残すと、いつものように窓から飛び降りて姿を消した。 残されたのは、私と、机の上の招待状。 そして、廊下の向こうから近づいてくる、多数の足音と気配。
……始まったか。 私はプレッツェルを皿に戻し、戦闘態勢に入った。 パジャマの袖をまくる。 今日の私は、ただの引きこもりではない。 『籠城のプロフェッショナル』だ。
絶対に、出ない。 このドアを開けさせるものか。
◇ ◇ ◇
夕刻。 空が茜色に染まる頃、私の部屋の前は戦場と化していた。
まずは先陣を切って、マリア率いる侍女部隊がやってきた。 彼女たちは『懐柔策』だ。
「エリザベートお姉様! マリアですわ! 今夜のドレスをお持ちしましたの!」
ドア越しに聞こえる、弾んだ声。 本来なら私の味方であるはずのマリアだが、今回ばかりは敵に回っているようだ。 無理もない。彼女にとって「舞踏会」とは、聖なる儀式のようなものなのだから。
「見てくださいませ、このドレス! 最高級のシルクで作られた、真夜中のようなダークブルーの生地に、星屑のように散りばめられたダイヤモンド! まさにお姉様の『安眠の夜』をイメージしたデザインですわ!」
デザインのコンセプトは評価するが、着たくはない。
「マリア、ありがとう。でも、私は風邪気味なの。咳が出るし、熱もある気がするわ」
私はゴホゴホとわざとらしい咳をして見せた。 だが、マリアは動じない。
「あら、大変! でも大丈夫ですわ! このドレスには『自動治癒・体調管理機能』がついた魔術布が使われていますの! 着ているだけで健康になれる、魔法のドレスなんです!」
無駄に高機能だ。 誰が開発したんだそんなもの。 ……ああ、父か。私の『快眠プロジェクト』の一環で、職人に作らせたのか。
「それに、お化粧も不要ですわ! 『幻影メイクアップ・マスク』をご用意しました! これを顔に乗せるだけで、すっぴんでも絶世の美女に見えるという優れものです!」
技術の無駄遣いがすごい。 この国の職人たちは、私のワガママを叶えるために進化しすぎている。
「悪いけど、気分が乗らないの。今日はもう寝るわ」
「そんな! 隣国のルイス王子も楽しみにされていますのに! ……仕方ありませんわね。では、次の手段を使わせていただきます!」
マリアが下がると、入れ替わりに重厚な足音が響いた。 第二陣。 王太子フレデリックだ。
「リズ! 私だ! 起きてくれ、愛しい人よ!」
相変わらず声が大きい。 私は耳栓(特注品)を装着した。
「君が人前に出るのを嫌がるのは知っている。だが、今夜だけはどうしても君が必要なんだ! ルイス王子が『この国の改革者が姿を見せないのは、存在しないからではないか?』と疑っているのだ!」
疑わせておけばいい。 私は都市伝説で十分だ。
「そこでだ、リズ。君を『楽に』連れ出すために、とっておきのアイテムを用意した!」
シュー……。 ドアの下の隙間から、白い煙が流れ込んでくる。 甘い、花の香り。 これは……最高級の睡眠導入香か? いや、微量だが麻痺毒の成分も混じっている。
「安心しろ、害はない! ただ、君の体を一時的に動けなくして、眠っている間に優しくお姫様抱っこで会場へ運ぶだけだ!」
犯罪だ。 完全に誘拐の手口だ。 王太子のやることじゃない。
私は慌てて、サイドテーブルの下から『ガスマスク(リズ特製)』を取り出し、装着した。 2周目の化学知識で作った、活性炭と魔法フィルターのハイブリッドマスクだ。 これでどんな毒ガスも無効化できる。 ついでに、換気扇の魔道具をフル稼働させる。
ブォォォォン!! 逆回転させた換気扇が、部屋の中の煙を一気に吸い込み、ドアの隙間から廊下へと逆噴射した。
「うおっ!? け、煙が逆流して……! ゴホッ、ゴホッ! 目が、目がぁぁ!」
廊下でフレデリックと従者たちが咳き込む音が聞こえる。 自業自得だ。 自分の撒いた種(ガス)で眠るがいい。
「……やりおる」
煙が晴れた頃、低い声が聞こえた。 第三陣。 物理攻撃担当、アレクセイ騎士団長だ。
「さすがリズだ。毒ガス攻撃すら想定済みとは。戦場における危機管理能力が素晴らしい」
戦場じゃない。自宅だ。
「だが、これは防げるかな?」
ガガガガガッ! 突然、床が振動した。 地震ではない。 壁だ。 私の部屋の壁(廊下側ではない、庭に面した外壁)が、外から削られている音だ。
「正面がダメなら、壁ごとくり抜けばいい! 工兵部隊、作業急げ! リズの部屋を『コンテナ』として丸ごと切り出し、クレーンで吊り上げて会場へ運ぶのだ!」
発想がダイナミックすぎる。 部屋から出ないなら、部屋ごと移動させる。 確かに盲点だったが、正気の沙汰ではない。
私は窓の外を見た。 巨大な重機(魔動クレーン)が、私の部屋の外壁にフックをかけようとしている。 アレクセイが指揮を執っているのが見える。
「リズ! 揺れるぞ! 舌を噛まないように何かに掴まっていろ!」
親切なのか乱暴なのか分からない警告。 このままでは、私は「空飛ぶ引きこもりルーム」として、王都の夜空を輸送され、舞踏会場のど真ん中に投下されてしまう。 晒し者だ。 絶対に阻止しなければ。
私は、部屋の四隅に設置してある『重力制御の杭』に魔力を流し込んだ。 これは、ノアから買った「空間固定」の魔法陣を強化したものだ。
「発動! 【絶対不動(アンムーバブル・フォートレス)】!」
ズゥゥゥン!! 部屋全体の質量が、魔法的に『無限大』へと固定される。 この部屋は今、概念的に『山』と同化した。
ブチィッ!!
クレーンのワイヤーが千切れる音がした。 重機が前のめりに傾き、アレクセイが「ぬおっ!?」と声を上げる。
「な、なんだこの重さは!? クレーンが持ち上がらないどころか、地面に沈んでいくぞ!?」
「団長! 計測不能です! この部屋、今の重量が推定100万トンを超えています!」
「馬鹿な! リズの体重が増えたとでも言うのか!? いや、これは……彼女の『ここを動きたくない』という意志の重さか!!」
そうです。 私の意志は地球より重いのです。
作戦失敗。 アレクセイは悔しそうにクレーンを撤退させた。
ふぅ。 これで手詰まりだろう。 私はガスマスクを外し、勝利の紅茶を淹れようとした。
しかし。 本当の脅威は、ここからだった。
カツ、カツ、カツ。 廊下から、氷の上を歩くような、冷徹で規則正しい足音が聞こえてきた。 フレデリックやアレクセイの情熱的な足音とは違う。 無機質で、不気味なほど静かな足音。
足音はドアの前でピタリと止まった。
「……茶番だね」
ドア越しに聞こえた声は、低く、冷たく、そして美しい響きを持っていた。 ノアに似ているが、もっと硬質だ。
「毒ガスに、クレーンによる物理搬送。野蛮すぎて見ていられないよ。これだからルミナステラ王国は『感情論の国』と揶揄されるんだ」
ルイス・ヴァン・アークライド第一王子。 彼が直接、私の部屋の前まで来てしまったらしい。 フレデリックたちは何をしているんだ。国賓をこんなゴミ屋敷(さっきまで工事現場だった廊下)に通すなよ。
「失礼するよ、エリザベート・フォン・ローゼンバーグ公爵令嬢。アークライド王国第一王子、ルイスだ」
丁寧な口調だが、そこには絶対的な上位者としての響きがある。
「君の『効率化』の手腕、見せてもらったよ。素晴らしい。王都の静音化、断熱化、流通改革。全てが理にかなっている。君は、自分の欲望(快適性)のために、社会インフラを最適化した。これは、凡庸な為政者が掲げる『民のため』という偽善よりも、遥かに純粋で強力な動機付けだ」
……分析されている。 的確すぎて怖い。
「私は君に興味がある。君のような人材が、この国の感情的な男たちに囲まれて消耗するのは『損失』だ」
ルイスの声が、少しだけ熱を帯びた気がした。
「取引をしよう、エリザベート嬢。私と共に来ないか? 我がアークライド王国へ」
勧誘? ノアの言っていた通りだ。 彼は私を『システム』として取り込みに来た。
「我が国に来れば、君に『国家戦略顧問』の地位を用意しよう。君の仕事は、君が最も快適だと思う環境を設計し、それを私が国全体に適用するだけだ。君は部屋から一歩も出る必要はない。食事も、衣服も、娯楽も、全て最高効率で提供することを約束する」
甘い誘い文句だ。 フレデリックの「愛」やアレクセイの「保護」とは違う。 ビジネスライクで、実利的な提案。 正直、少し心が揺れた。 アークライド王国は技術先進国だ。ここよりも快適な引きこもり環境が手に入るかもしれない。
だが。 私は知っている。 「効率」を追求する彼の下に行けば、私は「効率的に」管理されることになる。 睡眠時間も、食事のカロリーも、娯楽の摂取量も、全て数値化され、最適化されるだろう。 二度寝の自由も、夜更かしして本を読む背徳感も、そこにはない。 それは『飼育』だ。
私は深呼吸をし、ドアに向かってはっきりと告げた。
「……お断りします」
廊下に沈黙が落ちた。
「……理由は?」
「私は、管理されるのが嫌いです。私が寝たい時に寝て、起きたい時に起きる。非効率で、無駄で、自堕落な時間こそが、私にとっての『利益』なのです」
「非効率こそが利益……? 矛盾しているね」
「人間だもの。矛盾してて結構よ」
私は言い放った。 ルイス王子が、ドアの向こうで小さく息を吸う気配がした。 怒ったか? それとも呆れたか?
「……ふっ」
笑い声。 冷徹な王子が、笑った。
「面白い。実に面白いサンプルだ。非効率を愛し、無駄を至高とする統治者。私の計算式にはない変数だ」
ルイスの声に、愉悦の色が混じる。
「いいだろう。今回は引き下がろう。だが、諦めたわけではない。君という『未知の変数』を解析し、攻略する楽しみができた」
なんか変なスイッチを入れてしまったようだ。 この兄弟、どっちも私の扱いをゲームか何かだと思っている節がある。
「エリザベート嬢。舞踏会には出なくていい。君のその『拒絶』の意志こそが、今夜の最高の余興だ。代わりに、君がこの部屋で何をしているか、想像しながら楽しませてもらうよ」
ルイス王子はそう言い残し、踵を返した。 カツ、カツ、カツ……。 足音が遠ざかっていく。
助かった……のか? 私はへなへなとソファに座り込んだ。 王太子、騎士団長、そして隣国王子。 三者三様の攻撃(アプローチ)を、なんとか凌ぎきった。
だが、まだ終わっていなかった。
「……リズ、すまない」
戻ってきたフレデリックの声。 まだいたのか。
「ルイス殿下にあそこまで言われて、我々が引き下がるわけにはいかないのだ! これは国のメンツの問題だ!」
「そうだ! リズ様を出せないとなれば、我々近衛騎士団の名折れ!」
アレクセイも叫ぶ。 彼らはまだ諦めていなかった。 むしろ、ルイス王子の余裕の態度に火がついたらしい。
「強行突破だ! ドアを爆破してでも連れ出す!」 「結界中和術式、展開! 全魔導師部隊、構え!」
廊下が騒がしくなる。 魔法の詠唱や、火薬の準備をする音が聞こえる。 本気だ。 こいつら、私の安眠よりも、自分たちのプライドを優先し始めた。
どうする? 【絶対不動】で部屋は動かないが、ドアを突破されたら終わりだ。 スタンガン一本で、軍隊と戦うのは無理がある。
その時。 私の脳裏に、マリアの言葉が蘇った。 『幻影メイクアップ・マスク』。 そして、2周目の記憶にある『遠隔操作魔法』。
……そうだ。 私はポンと手を叩いた。 本体が出る必要はない。 『私に見える何か』が行けばいいのだ。
私は部屋の隅にある、大きなテディベア(フレデリックからの贈り物)を引っ張り出した。 人間サイズより少し小さいが、まあ誤差の範囲だ。 これに『幻影魔法』をかけ、私の姿に見せかける。 そして、『遠隔操作(リモートコントロール)』の術式を組み込む。
私はテディベアに、マリアが置いていった『星屑のドレス』を着せた。 サイズが合わない部分は、安全ピンで止める。 顔には『幻影マスク』を貼り付ける。
数分後。 そこには、少し背が低く、やけにふっくらとした体型だが、間違いなく『絶世の美女エリザベート』の姿をした人形が完成していた。 動きはぎこちないが、まあ「緊張している」と言い張れば通じるだろう。
「よし。行ってきなさい、私の分身(アバター)よ!」
私は指先で操作しながら、人形をドアの方へ歩かせた。 そして、タイミングを見計らって結界を解除し、ドアの鍵を開ける。
ガチャリ。
ドアが開いた瞬間、廊下の男たちが一斉に静まり返った。
「……リズ?」
フレデリックが目を丸くする。
私は部屋の奥から、腹話術のように声を飛ばした。 (正確には、風魔法による音声伝達だ)
『……お待たせしました。準備ができましたわ』
人形が、カクカクとした動きでお辞儀をする。
「お、おおお……!!」 「出てきてくれた! リズが出てきてくれたぞ!」
男たちが歓声を上げる。 彼らの目には、この不自然な動きの人形が、神々しい聖女の姿に見えているらしい。 幻影魔法の効果というよりは、彼らの『フィルター』が強すぎるせいだろう。
「美しい……! 星空を纏った女神のようだ!」 「その少しぎこちない動きも、深窓の令嬢らしくて可憐だ!」
アレクセイが人形の手(ぬいぐるみのもふもふの手)を取り、エスコートする。
「さあ、行きましょうリズ様。馬車が待っています」
人形は無言で頷き、彼らに連れられて廊下を進んでいく。 私は部屋の中から、モニター越しにゲームを操作するような感覚で、その背中を見送った。
「……ちょろい」
私はソファに身を投げ出した。 これで今夜は乗り切れる。 人形を通して会場の様子は見聞きできるし、適当に相槌を打っていればいい。 面倒になったら「貧血です」と言って、人形の電源を切れば(魔力供給を絶てば)、その場で倒れて退場できる。 完璧な作戦だ。
私は勝利のガッツポーズをし、今度こそゆっくりと紅茶を飲む準備を始めた。
しかし。 私は甘かった。 私の『操作スキル』は完璧だったが、人形の『物理的な耐久性』と、会場で待ち受ける『不測の事態』を計算に入れていなかったのだ。
数時間後。 王宮の舞踏会場で。 私の分身である人形が、隣国王子ルイスとのダンス中に、『ある衝撃的な事故』を起こし、伝説を作ることになる。
それは、私の「ミステリアスな聖女」という評判を、さらに加速させる皮肉な結果となるのだが……今はまだ、知るよしもない。
私はパジャマ姿で、モニター(魔法の水晶)に映る華やかな会場の映像を眺めながら、ポップコーンを頬張っていた。
「さあ、見せてもらおうか。私の代理戦争を」
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