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第18話 隣国の王子(ノア)が正体を現してプロポーズ?
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王宮の地下深く。 かつて王族が緊急脱出用に建設したとされる隠し通路――実態は、カビと湿気とネズミのパラダイスである地下水道を、二つの影が進んでいた。
「……最悪」
私は、ヘドロで汚れたパジャマの裾を持ち上げながら、ドロドロの通路を歩いていた。 足元では得体の知れない液体がピチャピチャと音を立て、天井からは冷たい水滴が首筋に落ちてくる。 高級ブランド『安眠枕ギルド』特製のスリッパは、とっくの昔に泥に飲まれて消滅した。今は裸足だ。
「ねえ、リズー。まだ着かないのー? 僕、もう歩けないよー。おんぶしてー」
後ろを歩く古代人少年シオンが、情けない声を上げてへたり込んだ。 彼もまた、自慢の羊柄パジャマを泥だらけにし、手には食べかけのステーキ肉(保存用)を握りしめている。 1000年前の支配者にしては、あまりにも威厳がない。
「甘えないで。置いていくわよ」
「ひどい! 僕たちは『引きこもり同盟』の同志だろ!? 君には、年少者を保護する義務がある!」
「私には『自分の安眠を守る義務』しかないわ。……それに、ここを抜ければ『開かずの離宮』があるはずなの」
私は、2周目の記憶を頼りに進んでいた。 王宮の北側、深い森に囲まれた古びた離宮。 そこは「幽霊が出る」という噂があり、誰も近づかない場所だ。 つまり、絶好の隠れ家である。
地上では、フレデリック率いる10万人の暴徒(愛のゾンビ)が、私を探して王宮の庭を掘り返しているはずだ。 彼らに捕まれば、私は「太陽の下の聖女」として祀り上げられ、二度と日陰で眠ることはできなくなる。 それだけは阻止しなければならない。
「……あ、光だ」
シオンが指差した。 通路の奥に、ぼんやりとした明かりが見える。 出口か?
私たちは泥まみれのまま、光の方へ駆け出した。 鉄格子の嵌った扉がある。鍵は錆びて壊れている。 私は扉を蹴り開けた。
ガキィン!
扉が開いた先。 そこには、私の予想を裏切る光景が広がっていた。
「……はい?」
そこは、カビ臭い離宮の地下室……ではなかった。 磨き抜かれた大理石の床。 壁一面に埋め込まれた、青白く光る魔導サーバーの列。 中央には巨大な円卓があり、その上には湯気を立てる紅茶と、三段重ねのケーキスタンドが置かれている。 そして、部屋の隅には、最新鋭の空調設備と、ふかふかのソファセットが完備されていた。
まるで、近未来の秘密基地と、英国式のティーサロンを融合させたような空間。 地下水道の汚泥とは無縁の、清潔で快適な別世界だ。
「やあ。待っていたよ、リズ。それに、ご先祖様(シオンくん)」
ソファに座っていた人物が、優雅にカップを置いて微笑んだ。 亜麻色の髪に、人懐っこいヘーゼルナッツ色の瞳。 隣国アークライドの第3王子にして、私の腐れ縁であるスパイ、ノア・ヴァン・アークライドだ。
彼は真っ白なスーツを着こなし、泥だらけの私たちを見ても眉一つ動かさず、むしろ歓迎するように両手を広げた。
「ようこそ、僕の『秘密の隠れ家(セーフハウス)』へ。君たちがここを通る確率は98%だと計算していたよ」
「……ノア。どういうこと?」
私は警戒して後ずさった。 この男が準備万端で待ち構えているときは、ろくなことがない。
「どういうことって? 君を助けに来たのさ。地上の騒ぎ、すごいだろう? フレデリック殿下が『愛のスコップ』で岩盤を砕く音、ここまで聞こえていたよ」
ノアは立ち上がり、私に近づいてきた。 そして、パチンと指を鳴らした。
シュンッ!
一瞬で、私とシオンの体から泥や汚れが消え去った。 『浄化(クリーン)』の魔導装置が作動したらしい。 さらに、温かい風が吹き抜け、濡れた髪や服も瞬時に乾かされた。
「わあ、便利! これ欲しい!」
シオンが目を輝かせてソファに飛び込む。 即座にケーキに手を伸ばし、「うめぇ!」と頬張っている。 危機感のない古代人だ。
「……何のつもり?」
私はその場から動かず、ノアを睨んだ。 彼はいつも飄々としているが、その腹の底は読めない。 特に今回は、彼の兄であるルイス王子や、父親である国王まで絡んでいる。 彼が単なる「親切な友人」として動いているとは思えない。
「怖い顔をしないでくれよ。傷つくなあ」
ノアは苦笑しながら、私のために紅茶を淹れた。
「座りなよ。最高級のアッサムだ。君の好きなミルクたっぷりのやつだよ」
香りに釣られて、私は渋々ソファに座った。 悔しいけれど、美味しい。 地下水道の水とは大違いだ。
「……で? 単刀直入に聞きなさいよ。貴方、何を企んでいるの?」
私はカップを置き、彼を問い詰めた。
ノアは微笑みを消し、静かに私を見つめ返した。 その瞳から、いつもの「道化」のような色が消え、冷たく鋭い光が宿る。
「……リズ。君は賢いね。そして、残酷だ」
彼は静かに語り始めた。
「僕はね、ずっと観察していたんだ。君という特異点を。1回目、2回目、そして3回目の人生。君がどうあがいても、運命の渦に巻き込まれていく様をね」
ドキリとした。 彼は、私のループを知っている。 それは知っていたが、彼がそれをどう思っていたのか、深く聞いたことはなかった。
「君は『引きこもりたい』と言う。でも、その結果どうなった? 国を救い、経済を回し、民衆のカリスマになった。……皮肉だよね。君が欲望に忠実であればあるほど、世界は君を放っておかない」
ノアはテーブルに手をつき、身を乗り出した。
「フレデリック殿下も、アレクセイ殿も、兄上のルイスも、父上も……みんな君を『利用』しようとしている。あるいは、君に『理想』を押し付けている。君がただ『寝ていたい』だけの怠惰な少女だという本質(リアル)から目を背けて」
「……そうね。迷惑な話よ」
「だから、僕が提案するんだ」
ノアは私の手を取り、その甲に口づけを落とした。 ひやりとするほど冷たい唇だった。
「リズ。僕と結婚しよう」
……は?
思考が停止した。 今、なんて?
「け、結婚……?」
「そう。プロポーズだよ。僕と結婚して、アークライド王国へ来ないか?」
冗談だと思った。 いつもの彼なら、「なんてね」と笑って誤魔化すはずだ。 だが、今のノアは笑っていない。 真剣そのものの目で、私を捕らえている。
「僕なら、君の願いを100%叶えられる。君専用の『絶対不可侵要塞』を作ってあげるよ。そこは、物理的にも政治的にも、誰の手も届かない場所だ。フレデリック殿下の熱血も、アレクセイ殿の筋肉も、兄上の効率厨も、父上の野心も、全てシャットアウトできる」
甘い誘い文句だ。 私が一番欲しかった言葉だ。
「君はそこで、死ぬまで寝ていればいい。お菓子も、本も、ゲームも、全て僕が供給する。君が指一本動かさなくてもいいように、僕が君の手足となる」
「……対価は?」
私は尋ねた。 タダより高いものはない。 彼がそこまでするメリットが分からない。
「対価? 簡単さ」
ノアは歪んだ笑みを浮かべた。
「君を『コレクション』することだよ」
背筋が凍った。
「僕はね、珍しいものが大好きなんだ。世界で唯一の『ループ経験者』。そして、世界で一番『無気力な聖女』。こんな面白い素材、他にはないだろう? 君を誰にも渡したくない。僕だけのガラスケースに入れて、永遠に観察していたいんだ」
……本性が出た。 こいつもだ。 こいつも、フレデリックたちとはベクトルが違うだけで、狂っている。 「愛」ですらない。「収集欲」だ。 私を、珍しい昆虫標本か何かのように思っているのだ。
「あ、僕もついでにコレクションされる感じ?」
空気を読まないシオンが、ケーキを頬張りながら口を挟んだ。
「もちろんさ、ご先祖様。君も貴重なサンプルだ。リズとセットで飾ってあげるよ」
「やだー。ガラスケースとか狭そうだし。Wi-Fiあるなら考えるけど」
こいつ、危機感ゼロか。
私はノアの手を振り払った。
「……お断りよ」
「へえ? どうして? 条件は悪くないはずだよ。君の望む『安眠』は保証される」
「確かに条件はいいわ。でもね」
私は彼を睨み返した。
「私は『物』じゃない。私は私の意志で寝たいの。誰かに管理されて、観察されながら寝るなんて、そんなの『安眠』じゃないわ。『展示』よ」
「……ふうん」
ノアは残念そうに肩をすくめた。
「君ならそう言うと思ったよ。でも、残念だな。君に『拒否権』があると思っていたのかい?」
カチャリ。 部屋の入り口――私たちが蹴り開けた鉄扉に、幾重もの魔法鍵がかかる音がした。 さらに、壁のサーバーが赤く点滅し、防御システムが起動する。
「ここは僕のテリトリーだ。君の『絶対領域』でも、この空間干渉結界の中では発動できないはずだよ」
試してみる。 ……魔力が練れない。 結界が展開できない。 完全に封じられている。
「さあ、リズ。大人しく契約書(婚姻届)にサインしてくれ。そうすれば、ここから専用の転移ゲートで、僕の私有地(無人島)へ直行だ」
ノアが羊皮紙とペンを差し出す。 詰んだ。 地下水道で泥まみれになるのと、変態王子のコレクションになるのと、どっちがマシか。 究極の二択だ。
その時。
ズドォォォォォンッ!!!!!
天井が、爆音とともに崩落した。 巨大な岩塊が、ノアの自慢のティーテーブルを直撃し、粉砕する。 ケーキが飛び散る。紅茶が舞う。
「なっ……!?」
常に冷静なノアが、目を見開いて後退った。
土煙の中から、二つの人影が降り立った。 逆光を背負い、瓦礫を踏みしめる勇ましい姿。
「見つけたぞぉぉぉッ!! リズゥゥゥッ!!」
右手にスコップ、左手に愛の炎を宿した王太子フレデリック。
「リズ様ァァァッ!! ご無事ですかァァァッ!!」
全身泥まみれになりながらも、その筋肉はパンプアップして輝いている騎士団長アレクセイ。
彼らは、王宮の庭から地下牢、さらに地下水道を経て、この秘密基地の真上まで、物理的に掘り進んできたのだ。 愛の力(と筋力)恐るべし。
「ゲホッ、ゲホッ! ……フレデリック殿下!? アレクセイ!」
私は驚きと、ほんの少しの安堵(と、多大なる疲労感)を感じて叫んだ。
「リズ! 無事か! 怪我はないか!」
フレデリックが駆け寄ってくる。 しかし、彼は私の前に立ちはだかるノアを見て、足を止めた。
「……隣国の第3王子、ノア殿か。なぜここにいる?」
「……やあ、殿下。奇遇ですね」
ノアは一瞬で表情を取り繕い、いつもの飄々とした笑顔に戻った。 だが、その服は埃まみれで、額には青筋が浮かんでいる。
「ここは僕の秘密基地でしてね。迷子になったリズ嬢を保護していたんですよ」
「保護? その手にある『婚姻届』は何だ?」
フレデリックの目が、ノアの手元の紙を捉えた。 視力良すぎだろ。
「……ちっ」
ノアが舌打ちをした。 キャラが崩れている。
「見たなら仕方ないですね。……そうです。僕は彼女に求婚していました。彼女を、貴方たちのような野蛮なストーカーから救い出し、僕の国で幸せにするためにね」
「なんだと……!?」
フレデリックの全身から、殺気が噴き出した。 アレクセイも剣を抜く。
「聞き捨てなりませんな。ストーカーとは心外。我々は『護衛』です」 「それに、リズを幸せにできるのは僕だ! 彼女の寝顔を一番近くで見守る権利は、婚約者である僕にある!」
「ふん。笑わせますね」
ノアも負けじと、懐から短剣(魔導ナイフ)を取り出した。
「貴方たちの『愛』は重すぎるんです。彼女は窒息しそうになっている。僕なら、彼女をガラスケースに入れて、適度な空調管理下で永遠に愛でてあげられるのに」
「ガラスケース!? 貴様、リズを物扱いするか!」
「お前も似たようなもんだろ!」
三人の男たちが、私を中心にして対峙した。 一触即発。 地下の秘密基地が、恋のバトルフィールドと化した。
私はシオンと共に、部屋の隅に避難した。
「ねえリズ。これ、どうなるの?」 「知らないわよ。勝手に潰し合えばいいわ」
私はポテチ(無事だった袋)を開けた。 高みの見物だ。
「リズ! 選んでくれ!」
突然、フレデリックが叫んだ。
「僕か、アレクセイか、それともノアか! 君は誰の『鳥籠』に入りたいんだ!」
は? 選択肢が全部「鳥籠」なんだけど。
「私の籠は『純金製』だ! 何不自由ない生活を約束する!」(フレデリック) 「私の籠は『オリハルコン製』です! どんな外敵からもお守りします!」(アレクセイ) 「僕の籠は『透明な強化ガラス製』だよ。外からも中からも美しく見える」(ノア)
地獄の三択だ。 どれを選んでも監禁ルート確定。
「……どれも嫌よ!」
私は叫んだ。
「私は籠に入りたいんじゃないの! 自分の部屋で、自分の布団で、鍵をかけて寝たいだけなの! どうしてそれが分からないのよ!」
「「「リズ……」」」
三人が同時に切なそうな顔をした。
「分かっていないのは君だ、リズ。君はあまりにも尊い。君を野放しにすれば、世界中の悪意が君を狙うだろう。だからこそ、誰かが管理しなければならないんだ!」
大きなお世話だ。 私は今まで、悪意(ゲオルグとか)を自分で撃退してきたじゃないか。
「もういい! 力づくで決める!」
フレデリックが魔法の杖を構えた。 アレクセイが剣を構えた。 ノアがナイフを構えた。
「勝者がリズを手に入れる! いざ、勝負!」
ドガァァァンッ!!
三つ巴の戦いが始まった。 フレデリックの炎魔法が炸裂し、アレクセイがそれを剣で斬り裂き、ノアが影から隙を突く。 秘密基地が崩壊していく。 高いサーバーが爆発し、シャンデリアが落ちる。
「あーあ。もったいない」
シオンがつまらなそうに呟く。
「リズ、逃げようか」
「そうね。馬鹿につける薬はないわ」
彼らが殺し合っている隙に、私とシオンは、部屋の奥にある「非常口」と書かれた扉へ向かった。 ノアの基地だ。脱出ルートくらいあるはずだ。
扉を開けると、そこには上へと続く螺旋階段があった。 風が吹き込んでくる。地上の風だ。
「行くわよ、シオン」
「うん。……でもリズ、外に出たら、またあの『暴動』の中じゃない?」
「……うっ」
そうだった。 上には10万人のリズ信者が待っている。 下では変態三銃士が戦っている。 逃げ場がない。
その時。 螺旋階段の上から、冷ややかな声が降ってきた。
「……やれやれ。騒がしいと思えば、こんなところで『聖女争奪戦』を開催していたとはね」
見上げると、階段の踊り場に、腕を組んで仁王立ちしている人物がいた。 アークライド王国の第一王子、ルイスだ。 そして、その隣には、屈強な男たちに担がれた『棺(時の揺り籠)』がある。
「ルイス!?」
「やあ、エリザベート嬢。それに古代の少年。……君たちを探していたんだよ」
ルイスは眼鏡を光らせた。
「父上(国王)からの勅命だ。『我が国の同盟相手である聖女リズとシオン少年を、丁重に保護せよ』とね。……要するに、君たちをアークライド本国へ『招待(連行)』しろということさ」
またか。 今度は国家権力の介入か。
「下の三人は放っておきたまえ。彼らが疲弊するのを待って、君たちを悠々と連れ去るのが、最も効率的な作戦だ」
ルイスが指を鳴らすと、棺の蓋が開いた。
「さあ、入りたまえ。この棺は修理しておいた。コールドスリープ機能はまだ使えないが、移動用の『カプセルホテル』としては使える」
……カプセルホテル。 狭い。 でも、頑丈そうだ。 そして何より、あの中に入れば、外の騒音から遮断される。
私はシオンを見た。 彼は「カプセルホテル? 漫画喫茶みたいなもん?」と興味を示している。
「……乗るわ」
私は決断した。 下の三人に捕まるよりは、ルイスの方がまだ話が通じる(ビジネスライクだから)。 それに、アークライドに行けば、ノアの言っていた「無人島」の権利書くらいは手に入るかもしれない。
「賢明な判断だ」
ルイスが満足げに頷く。
私とシオンは、棺の中へと潜り込んだ。 狭い。密着状態だ。 でも、蓋が閉まると、外の爆発音が嘘のように消えた。 完全防音。さすがアークライド製。
「……出航だ」
ルイスの合図とともに、棺が持ち上げられた。 私たちは運ばれていく。 地下の戦場を後にし、地上の混乱をすり抜け、どこか遠くへ。
◇
数時間後。 棺の蓋が開けられた時、私は潮の香りを感じた。
「……海?」
体を起こすと、そこは港だった。 夜の海に、巨大な黒い船が停泊している。 アークライド王国の最新鋭魔導戦艦だ。
「ようこそ、洋上の要塞へ」
ルイスが甲板で出迎えた。
「これから我が国へ向かう。……と言いたいところだが、少し予定が変わった」
彼は海図を広げた。
「フレデリック殿下たちが、国境を封鎖したようだ。『リズを返すまで、アークライドとの国交を断絶する!』と息巻いている」
国交断絶。 私のせいで戦争が起きそうだ。
「なので、陸路も空路も使えない。我々は海路を行く。……しばらくの間、この船で『クルージング』を楽しんでもらうことになるね」
クルージング。 響きはいい。 要するに、海上漂流生活だ。
「まあ、悪くないわね」
私は甲板のデッキチェアに座った。 海の上なら、誰も追いかけてこられないだろう。 波の音だけが聞こえる、静かな夜。
……と、思ったのだが。
ザバァァァァッ!!
海面が割れた。 水しぶきとともに、巨大な影が飛び出した。
「リズゥゥゥゥ――ッ!!」
水の中から現れたのは、巨大な『潜水服(騎士団仕様)』を着たアレクセイだった。 そして、その後ろには、サーフボード(風魔法推進)に乗ったフレデリック。 さらに、小型ボートで追ってくるノア。
「逃がさんぞぉぉぉ! 地の果てまでもぉぉぉ!」
……しつこい。 こいつら、陸海空すべて制覇する気か。
「全速前進! 振り切れ!」
ルイスが叫ぶ。 戦艦が加速する。
私の安眠の旅は、今度は『海上チェイス』へと突入した。 もう、どこへ行けばいいの。 月か? 月に行けばいいのか?
私は夜空の月を見上げて、本気で宇宙開発を検討し始めた。 シオンは「船酔いしたー」と吐いている。
次こそは。 次こそは、本当に静かな場所へ……。 私の戦い(逃亡)は、まだ終わらない。
「……最悪」
私は、ヘドロで汚れたパジャマの裾を持ち上げながら、ドロドロの通路を歩いていた。 足元では得体の知れない液体がピチャピチャと音を立て、天井からは冷たい水滴が首筋に落ちてくる。 高級ブランド『安眠枕ギルド』特製のスリッパは、とっくの昔に泥に飲まれて消滅した。今は裸足だ。
「ねえ、リズー。まだ着かないのー? 僕、もう歩けないよー。おんぶしてー」
後ろを歩く古代人少年シオンが、情けない声を上げてへたり込んだ。 彼もまた、自慢の羊柄パジャマを泥だらけにし、手には食べかけのステーキ肉(保存用)を握りしめている。 1000年前の支配者にしては、あまりにも威厳がない。
「甘えないで。置いていくわよ」
「ひどい! 僕たちは『引きこもり同盟』の同志だろ!? 君には、年少者を保護する義務がある!」
「私には『自分の安眠を守る義務』しかないわ。……それに、ここを抜ければ『開かずの離宮』があるはずなの」
私は、2周目の記憶を頼りに進んでいた。 王宮の北側、深い森に囲まれた古びた離宮。 そこは「幽霊が出る」という噂があり、誰も近づかない場所だ。 つまり、絶好の隠れ家である。
地上では、フレデリック率いる10万人の暴徒(愛のゾンビ)が、私を探して王宮の庭を掘り返しているはずだ。 彼らに捕まれば、私は「太陽の下の聖女」として祀り上げられ、二度と日陰で眠ることはできなくなる。 それだけは阻止しなければならない。
「……あ、光だ」
シオンが指差した。 通路の奥に、ぼんやりとした明かりが見える。 出口か?
私たちは泥まみれのまま、光の方へ駆け出した。 鉄格子の嵌った扉がある。鍵は錆びて壊れている。 私は扉を蹴り開けた。
ガキィン!
扉が開いた先。 そこには、私の予想を裏切る光景が広がっていた。
「……はい?」
そこは、カビ臭い離宮の地下室……ではなかった。 磨き抜かれた大理石の床。 壁一面に埋め込まれた、青白く光る魔導サーバーの列。 中央には巨大な円卓があり、その上には湯気を立てる紅茶と、三段重ねのケーキスタンドが置かれている。 そして、部屋の隅には、最新鋭の空調設備と、ふかふかのソファセットが完備されていた。
まるで、近未来の秘密基地と、英国式のティーサロンを融合させたような空間。 地下水道の汚泥とは無縁の、清潔で快適な別世界だ。
「やあ。待っていたよ、リズ。それに、ご先祖様(シオンくん)」
ソファに座っていた人物が、優雅にカップを置いて微笑んだ。 亜麻色の髪に、人懐っこいヘーゼルナッツ色の瞳。 隣国アークライドの第3王子にして、私の腐れ縁であるスパイ、ノア・ヴァン・アークライドだ。
彼は真っ白なスーツを着こなし、泥だらけの私たちを見ても眉一つ動かさず、むしろ歓迎するように両手を広げた。
「ようこそ、僕の『秘密の隠れ家(セーフハウス)』へ。君たちがここを通る確率は98%だと計算していたよ」
「……ノア。どういうこと?」
私は警戒して後ずさった。 この男が準備万端で待ち構えているときは、ろくなことがない。
「どういうことって? 君を助けに来たのさ。地上の騒ぎ、すごいだろう? フレデリック殿下が『愛のスコップ』で岩盤を砕く音、ここまで聞こえていたよ」
ノアは立ち上がり、私に近づいてきた。 そして、パチンと指を鳴らした。
シュンッ!
一瞬で、私とシオンの体から泥や汚れが消え去った。 『浄化(クリーン)』の魔導装置が作動したらしい。 さらに、温かい風が吹き抜け、濡れた髪や服も瞬時に乾かされた。
「わあ、便利! これ欲しい!」
シオンが目を輝かせてソファに飛び込む。 即座にケーキに手を伸ばし、「うめぇ!」と頬張っている。 危機感のない古代人だ。
「……何のつもり?」
私はその場から動かず、ノアを睨んだ。 彼はいつも飄々としているが、その腹の底は読めない。 特に今回は、彼の兄であるルイス王子や、父親である国王まで絡んでいる。 彼が単なる「親切な友人」として動いているとは思えない。
「怖い顔をしないでくれよ。傷つくなあ」
ノアは苦笑しながら、私のために紅茶を淹れた。
「座りなよ。最高級のアッサムだ。君の好きなミルクたっぷりのやつだよ」
香りに釣られて、私は渋々ソファに座った。 悔しいけれど、美味しい。 地下水道の水とは大違いだ。
「……で? 単刀直入に聞きなさいよ。貴方、何を企んでいるの?」
私はカップを置き、彼を問い詰めた。
ノアは微笑みを消し、静かに私を見つめ返した。 その瞳から、いつもの「道化」のような色が消え、冷たく鋭い光が宿る。
「……リズ。君は賢いね。そして、残酷だ」
彼は静かに語り始めた。
「僕はね、ずっと観察していたんだ。君という特異点を。1回目、2回目、そして3回目の人生。君がどうあがいても、運命の渦に巻き込まれていく様をね」
ドキリとした。 彼は、私のループを知っている。 それは知っていたが、彼がそれをどう思っていたのか、深く聞いたことはなかった。
「君は『引きこもりたい』と言う。でも、その結果どうなった? 国を救い、経済を回し、民衆のカリスマになった。……皮肉だよね。君が欲望に忠実であればあるほど、世界は君を放っておかない」
ノアはテーブルに手をつき、身を乗り出した。
「フレデリック殿下も、アレクセイ殿も、兄上のルイスも、父上も……みんな君を『利用』しようとしている。あるいは、君に『理想』を押し付けている。君がただ『寝ていたい』だけの怠惰な少女だという本質(リアル)から目を背けて」
「……そうね。迷惑な話よ」
「だから、僕が提案するんだ」
ノアは私の手を取り、その甲に口づけを落とした。 ひやりとするほど冷たい唇だった。
「リズ。僕と結婚しよう」
……は?
思考が停止した。 今、なんて?
「け、結婚……?」
「そう。プロポーズだよ。僕と結婚して、アークライド王国へ来ないか?」
冗談だと思った。 いつもの彼なら、「なんてね」と笑って誤魔化すはずだ。 だが、今のノアは笑っていない。 真剣そのものの目で、私を捕らえている。
「僕なら、君の願いを100%叶えられる。君専用の『絶対不可侵要塞』を作ってあげるよ。そこは、物理的にも政治的にも、誰の手も届かない場所だ。フレデリック殿下の熱血も、アレクセイ殿の筋肉も、兄上の効率厨も、父上の野心も、全てシャットアウトできる」
甘い誘い文句だ。 私が一番欲しかった言葉だ。
「君はそこで、死ぬまで寝ていればいい。お菓子も、本も、ゲームも、全て僕が供給する。君が指一本動かさなくてもいいように、僕が君の手足となる」
「……対価は?」
私は尋ねた。 タダより高いものはない。 彼がそこまでするメリットが分からない。
「対価? 簡単さ」
ノアは歪んだ笑みを浮かべた。
「君を『コレクション』することだよ」
背筋が凍った。
「僕はね、珍しいものが大好きなんだ。世界で唯一の『ループ経験者』。そして、世界で一番『無気力な聖女』。こんな面白い素材、他にはないだろう? 君を誰にも渡したくない。僕だけのガラスケースに入れて、永遠に観察していたいんだ」
……本性が出た。 こいつもだ。 こいつも、フレデリックたちとはベクトルが違うだけで、狂っている。 「愛」ですらない。「収集欲」だ。 私を、珍しい昆虫標本か何かのように思っているのだ。
「あ、僕もついでにコレクションされる感じ?」
空気を読まないシオンが、ケーキを頬張りながら口を挟んだ。
「もちろんさ、ご先祖様。君も貴重なサンプルだ。リズとセットで飾ってあげるよ」
「やだー。ガラスケースとか狭そうだし。Wi-Fiあるなら考えるけど」
こいつ、危機感ゼロか。
私はノアの手を振り払った。
「……お断りよ」
「へえ? どうして? 条件は悪くないはずだよ。君の望む『安眠』は保証される」
「確かに条件はいいわ。でもね」
私は彼を睨み返した。
「私は『物』じゃない。私は私の意志で寝たいの。誰かに管理されて、観察されながら寝るなんて、そんなの『安眠』じゃないわ。『展示』よ」
「……ふうん」
ノアは残念そうに肩をすくめた。
「君ならそう言うと思ったよ。でも、残念だな。君に『拒否権』があると思っていたのかい?」
カチャリ。 部屋の入り口――私たちが蹴り開けた鉄扉に、幾重もの魔法鍵がかかる音がした。 さらに、壁のサーバーが赤く点滅し、防御システムが起動する。
「ここは僕のテリトリーだ。君の『絶対領域』でも、この空間干渉結界の中では発動できないはずだよ」
試してみる。 ……魔力が練れない。 結界が展開できない。 完全に封じられている。
「さあ、リズ。大人しく契約書(婚姻届)にサインしてくれ。そうすれば、ここから専用の転移ゲートで、僕の私有地(無人島)へ直行だ」
ノアが羊皮紙とペンを差し出す。 詰んだ。 地下水道で泥まみれになるのと、変態王子のコレクションになるのと、どっちがマシか。 究極の二択だ。
その時。
ズドォォォォォンッ!!!!!
天井が、爆音とともに崩落した。 巨大な岩塊が、ノアの自慢のティーテーブルを直撃し、粉砕する。 ケーキが飛び散る。紅茶が舞う。
「なっ……!?」
常に冷静なノアが、目を見開いて後退った。
土煙の中から、二つの人影が降り立った。 逆光を背負い、瓦礫を踏みしめる勇ましい姿。
「見つけたぞぉぉぉッ!! リズゥゥゥッ!!」
右手にスコップ、左手に愛の炎を宿した王太子フレデリック。
「リズ様ァァァッ!! ご無事ですかァァァッ!!」
全身泥まみれになりながらも、その筋肉はパンプアップして輝いている騎士団長アレクセイ。
彼らは、王宮の庭から地下牢、さらに地下水道を経て、この秘密基地の真上まで、物理的に掘り進んできたのだ。 愛の力(と筋力)恐るべし。
「ゲホッ、ゲホッ! ……フレデリック殿下!? アレクセイ!」
私は驚きと、ほんの少しの安堵(と、多大なる疲労感)を感じて叫んだ。
「リズ! 無事か! 怪我はないか!」
フレデリックが駆け寄ってくる。 しかし、彼は私の前に立ちはだかるノアを見て、足を止めた。
「……隣国の第3王子、ノア殿か。なぜここにいる?」
「……やあ、殿下。奇遇ですね」
ノアは一瞬で表情を取り繕い、いつもの飄々とした笑顔に戻った。 だが、その服は埃まみれで、額には青筋が浮かんでいる。
「ここは僕の秘密基地でしてね。迷子になったリズ嬢を保護していたんですよ」
「保護? その手にある『婚姻届』は何だ?」
フレデリックの目が、ノアの手元の紙を捉えた。 視力良すぎだろ。
「……ちっ」
ノアが舌打ちをした。 キャラが崩れている。
「見たなら仕方ないですね。……そうです。僕は彼女に求婚していました。彼女を、貴方たちのような野蛮なストーカーから救い出し、僕の国で幸せにするためにね」
「なんだと……!?」
フレデリックの全身から、殺気が噴き出した。 アレクセイも剣を抜く。
「聞き捨てなりませんな。ストーカーとは心外。我々は『護衛』です」 「それに、リズを幸せにできるのは僕だ! 彼女の寝顔を一番近くで見守る権利は、婚約者である僕にある!」
「ふん。笑わせますね」
ノアも負けじと、懐から短剣(魔導ナイフ)を取り出した。
「貴方たちの『愛』は重すぎるんです。彼女は窒息しそうになっている。僕なら、彼女をガラスケースに入れて、適度な空調管理下で永遠に愛でてあげられるのに」
「ガラスケース!? 貴様、リズを物扱いするか!」
「お前も似たようなもんだろ!」
三人の男たちが、私を中心にして対峙した。 一触即発。 地下の秘密基地が、恋のバトルフィールドと化した。
私はシオンと共に、部屋の隅に避難した。
「ねえリズ。これ、どうなるの?」 「知らないわよ。勝手に潰し合えばいいわ」
私はポテチ(無事だった袋)を開けた。 高みの見物だ。
「リズ! 選んでくれ!」
突然、フレデリックが叫んだ。
「僕か、アレクセイか、それともノアか! 君は誰の『鳥籠』に入りたいんだ!」
は? 選択肢が全部「鳥籠」なんだけど。
「私の籠は『純金製』だ! 何不自由ない生活を約束する!」(フレデリック) 「私の籠は『オリハルコン製』です! どんな外敵からもお守りします!」(アレクセイ) 「僕の籠は『透明な強化ガラス製』だよ。外からも中からも美しく見える」(ノア)
地獄の三択だ。 どれを選んでも監禁ルート確定。
「……どれも嫌よ!」
私は叫んだ。
「私は籠に入りたいんじゃないの! 自分の部屋で、自分の布団で、鍵をかけて寝たいだけなの! どうしてそれが分からないのよ!」
「「「リズ……」」」
三人が同時に切なそうな顔をした。
「分かっていないのは君だ、リズ。君はあまりにも尊い。君を野放しにすれば、世界中の悪意が君を狙うだろう。だからこそ、誰かが管理しなければならないんだ!」
大きなお世話だ。 私は今まで、悪意(ゲオルグとか)を自分で撃退してきたじゃないか。
「もういい! 力づくで決める!」
フレデリックが魔法の杖を構えた。 アレクセイが剣を構えた。 ノアがナイフを構えた。
「勝者がリズを手に入れる! いざ、勝負!」
ドガァァァンッ!!
三つ巴の戦いが始まった。 フレデリックの炎魔法が炸裂し、アレクセイがそれを剣で斬り裂き、ノアが影から隙を突く。 秘密基地が崩壊していく。 高いサーバーが爆発し、シャンデリアが落ちる。
「あーあ。もったいない」
シオンがつまらなそうに呟く。
「リズ、逃げようか」
「そうね。馬鹿につける薬はないわ」
彼らが殺し合っている隙に、私とシオンは、部屋の奥にある「非常口」と書かれた扉へ向かった。 ノアの基地だ。脱出ルートくらいあるはずだ。
扉を開けると、そこには上へと続く螺旋階段があった。 風が吹き込んでくる。地上の風だ。
「行くわよ、シオン」
「うん。……でもリズ、外に出たら、またあの『暴動』の中じゃない?」
「……うっ」
そうだった。 上には10万人のリズ信者が待っている。 下では変態三銃士が戦っている。 逃げ場がない。
その時。 螺旋階段の上から、冷ややかな声が降ってきた。
「……やれやれ。騒がしいと思えば、こんなところで『聖女争奪戦』を開催していたとはね」
見上げると、階段の踊り場に、腕を組んで仁王立ちしている人物がいた。 アークライド王国の第一王子、ルイスだ。 そして、その隣には、屈強な男たちに担がれた『棺(時の揺り籠)』がある。
「ルイス!?」
「やあ、エリザベート嬢。それに古代の少年。……君たちを探していたんだよ」
ルイスは眼鏡を光らせた。
「父上(国王)からの勅命だ。『我が国の同盟相手である聖女リズとシオン少年を、丁重に保護せよ』とね。……要するに、君たちをアークライド本国へ『招待(連行)』しろということさ」
またか。 今度は国家権力の介入か。
「下の三人は放っておきたまえ。彼らが疲弊するのを待って、君たちを悠々と連れ去るのが、最も効率的な作戦だ」
ルイスが指を鳴らすと、棺の蓋が開いた。
「さあ、入りたまえ。この棺は修理しておいた。コールドスリープ機能はまだ使えないが、移動用の『カプセルホテル』としては使える」
……カプセルホテル。 狭い。 でも、頑丈そうだ。 そして何より、あの中に入れば、外の騒音から遮断される。
私はシオンを見た。 彼は「カプセルホテル? 漫画喫茶みたいなもん?」と興味を示している。
「……乗るわ」
私は決断した。 下の三人に捕まるよりは、ルイスの方がまだ話が通じる(ビジネスライクだから)。 それに、アークライドに行けば、ノアの言っていた「無人島」の権利書くらいは手に入るかもしれない。
「賢明な判断だ」
ルイスが満足げに頷く。
私とシオンは、棺の中へと潜り込んだ。 狭い。密着状態だ。 でも、蓋が閉まると、外の爆発音が嘘のように消えた。 完全防音。さすがアークライド製。
「……出航だ」
ルイスの合図とともに、棺が持ち上げられた。 私たちは運ばれていく。 地下の戦場を後にし、地上の混乱をすり抜け、どこか遠くへ。
◇
数時間後。 棺の蓋が開けられた時、私は潮の香りを感じた。
「……海?」
体を起こすと、そこは港だった。 夜の海に、巨大な黒い船が停泊している。 アークライド王国の最新鋭魔導戦艦だ。
「ようこそ、洋上の要塞へ」
ルイスが甲板で出迎えた。
「これから我が国へ向かう。……と言いたいところだが、少し予定が変わった」
彼は海図を広げた。
「フレデリック殿下たちが、国境を封鎖したようだ。『リズを返すまで、アークライドとの国交を断絶する!』と息巻いている」
国交断絶。 私のせいで戦争が起きそうだ。
「なので、陸路も空路も使えない。我々は海路を行く。……しばらくの間、この船で『クルージング』を楽しんでもらうことになるね」
クルージング。 響きはいい。 要するに、海上漂流生活だ。
「まあ、悪くないわね」
私は甲板のデッキチェアに座った。 海の上なら、誰も追いかけてこられないだろう。 波の音だけが聞こえる、静かな夜。
……と、思ったのだが。
ザバァァァァッ!!
海面が割れた。 水しぶきとともに、巨大な影が飛び出した。
「リズゥゥゥゥ――ッ!!」
水の中から現れたのは、巨大な『潜水服(騎士団仕様)』を着たアレクセイだった。 そして、その後ろには、サーフボード(風魔法推進)に乗ったフレデリック。 さらに、小型ボートで追ってくるノア。
「逃がさんぞぉぉぉ! 地の果てまでもぉぉぉ!」
……しつこい。 こいつら、陸海空すべて制覇する気か。
「全速前進! 振り切れ!」
ルイスが叫ぶ。 戦艦が加速する。
私の安眠の旅は、今度は『海上チェイス』へと突入した。 もう、どこへ行けばいいの。 月か? 月に行けばいいのか?
私は夜空の月を見上げて、本気で宇宙開発を検討し始めた。 シオンは「船酔いしたー」と吐いている。
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