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第三話:予定外の領地視察と、新たな出会い
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ヴァレンシュタイン公爵領。
王都から馬車で三日ほどの距離にある、広大で豊かな土地だ。
……というのが、表向きの話。
馬車の窓から見える景色は、私の知る「豊か」という言葉とは程遠かった。
痩せた土地、活気のない村、そして道行く人々の暗い表情。
(ゲームでは、こんな描写なかったのに……)
セレスティナの視点では、領地なんてものは「収入源」でしかなく、その実情など描かれることはなかった。
けれど、実際に来てみると、問題は山積みのようだ。
「お嬢様、間もなく最初の村、ミルラに到着いたします」
護衛騎士のレオナルドが、馬車の窓の外から声をかけてくる。
彼は、ヴァレンシュタイン家に仕える騎士の中でも腕利きで、私の護衛兼お目付け役として同行してくれていた。
「わかったわ、レオ。ありがとう」
「それにしても……酷い状況ですな。報告にはありましたが、これほどとは」
レオナルドが苦々しげに呟く。
今回の視察は、表向きは「若き次期当主による領民への顔見せ」。
しかし、父の真の目的は、先日の言葉通り「不穏分子の炙り出し」だ。
最近、ヴァレンシュタイン公爵領では、不作が続き、税の取り立てを巡って不満が高まっているらしい。
その裏で、反公爵派の貴族が領民を扇動している、というのだ。
(私にそんな大役、務まるわけないじゃない……)
憂鬱な気分で、馬車を降りる。
村長だという、人の良さそうなお爺さんに出迎えられ、村の問題点についてヒアリングを開始した。
「……というわけでして。日照りが続いたせいで、川の水が干上がってしまい、作物が育たないのですじゃ」
村長は、深いため息をつく。
川の水……。
私は、前世の知識を必死に思い出す。
地理、農業、土木……断片的な知識を繋ぎ合わせる。
「村長、この村の近くに、もっと大きな川や湖はありますか?」
「へ? い、いえ……一番近いのは、森を抜けた先にある『霧の湖』ですが、あそこは呪われた湖と噂でして……」
霧の湖。
その名前に、ピンと来た。
ゲームのマップで見たことがある!
確か、特定のイベントでしか行けない場所だったはず。
そして、その湖の水は、地下水脈でこのあたりの土地と繋がっている、という設定があったはずだ。
「その湖から、この村まで用水路を引くことはできませんか?」
「よ、用水路ですと!? し、しかし、お嬢様、そのような大掛かりな工事は……」
「費用はこちらで持ちます。測量や設計も、専門の者を王都から呼びましょう」
前世でかじった土木知識と、ゲームの設定。
それが、思わぬ形で役に立った。
私の提案に、村長や村人たちは最初こそ半信半疑だったが、私が具体的な計画を立て、父の名で資金援助を約束すると、彼らの顔にみるみる希望の色が差していく。
「おお……!」「ありがてえ……!」
感謝の言葉に、胸が温かくなる。
悪役令嬢として断罪されるはずだった私が、誰かの役に立てている。
それが、素直に嬉しかった。
いくつかの村を回り、同じように問題を解決していく。
井戸の掘削を提案したり、新しい農法を教えたり。
前世の知識が、この世界ではチート級に役立った。
領民たちの私を見る目は、最初こそ「傲慢な公爵令嬢」を見る目だったが、数日もすると、尊敬と親愛の情がこもったものに変わっていった。
(なんだか、悪くないかも)
悪役令嬢としてではなく、一人の人間として、誰かに必要とされること。
それは、私が前世でも得られなかった、満たされた感覚だった。
しかし、物事はそう簡単には進まない。
視察の帰り道。
王都へと続く、少し薄暗い森の中を馬車で進んでいた時だった。
ヒュンッ!
鋭い風切り音と共に、一本の矢が馬車の壁に突き刺さる。
「――ッ! 敵襲だ!」
レオナルドの鋭い声が響く。
馬車が急停止し、外から剣戟の音が聞こえてきた。
「お嬢様! 馬車から出ないでください!」
レオナルドと数人の護衛騎士たちが応戦しているが、敵の数が多いようだ。
次々と襲い来る黒装束の男たち。
その剣筋は、素人のものではない。プロの暗殺者だ。
(やっぱり、私を狙ってきたんだ……!)
父の言っていた「不穏分子」。
私が領地で評判を上げたことが、彼らの気に障ったのだろう。
ガシャン!という音と共に、馬車の扉が破壊される。
黒装束の男が、ギラリと光る剣を手に、中に乗り込んできた。
「きゃあ!」
悲鳴を上げるのが精一杯だった。
もうダメだ、殺される。
そう覚悟して、ギュッと目を瞑った、その瞬間。
ザシュッ!!!
生々しい音と共に、目の前の男が崩れ落ちた。
何が起こったのかわからず、恐る恐る目を開ける。
そこに立っていたのは――
闇色のマントを翻し、返り血を浴びた漆黒の剣を携えた、一人の男。
月明かりに照らされたその横顔は、私が狂おしいほどに焦がれた、あの人のものだった。
しなやかな黒髪。
血のように赤い、冷たい輝きを放つ瞳。
「……ゼノン、様……?」
信じられない光景に、私の声が震える。
ゲームの世界で、画面越しに何度も見た、私の最推し。
敵国の皇子、ゼノン・アークライトが、なぜ、ここに?
なぜ、私を助けたの?
ゼノンは、崩れ落ちた男を一瞥もせず、その血の色の瞳で、私を――セレスティナを、じっと見つめた。
王都から馬車で三日ほどの距離にある、広大で豊かな土地だ。
……というのが、表向きの話。
馬車の窓から見える景色は、私の知る「豊か」という言葉とは程遠かった。
痩せた土地、活気のない村、そして道行く人々の暗い表情。
(ゲームでは、こんな描写なかったのに……)
セレスティナの視点では、領地なんてものは「収入源」でしかなく、その実情など描かれることはなかった。
けれど、実際に来てみると、問題は山積みのようだ。
「お嬢様、間もなく最初の村、ミルラに到着いたします」
護衛騎士のレオナルドが、馬車の窓の外から声をかけてくる。
彼は、ヴァレンシュタイン家に仕える騎士の中でも腕利きで、私の護衛兼お目付け役として同行してくれていた。
「わかったわ、レオ。ありがとう」
「それにしても……酷い状況ですな。報告にはありましたが、これほどとは」
レオナルドが苦々しげに呟く。
今回の視察は、表向きは「若き次期当主による領民への顔見せ」。
しかし、父の真の目的は、先日の言葉通り「不穏分子の炙り出し」だ。
最近、ヴァレンシュタイン公爵領では、不作が続き、税の取り立てを巡って不満が高まっているらしい。
その裏で、反公爵派の貴族が領民を扇動している、というのだ。
(私にそんな大役、務まるわけないじゃない……)
憂鬱な気分で、馬車を降りる。
村長だという、人の良さそうなお爺さんに出迎えられ、村の問題点についてヒアリングを開始した。
「……というわけでして。日照りが続いたせいで、川の水が干上がってしまい、作物が育たないのですじゃ」
村長は、深いため息をつく。
川の水……。
私は、前世の知識を必死に思い出す。
地理、農業、土木……断片的な知識を繋ぎ合わせる。
「村長、この村の近くに、もっと大きな川や湖はありますか?」
「へ? い、いえ……一番近いのは、森を抜けた先にある『霧の湖』ですが、あそこは呪われた湖と噂でして……」
霧の湖。
その名前に、ピンと来た。
ゲームのマップで見たことがある!
確か、特定のイベントでしか行けない場所だったはず。
そして、その湖の水は、地下水脈でこのあたりの土地と繋がっている、という設定があったはずだ。
「その湖から、この村まで用水路を引くことはできませんか?」
「よ、用水路ですと!? し、しかし、お嬢様、そのような大掛かりな工事は……」
「費用はこちらで持ちます。測量や設計も、専門の者を王都から呼びましょう」
前世でかじった土木知識と、ゲームの設定。
それが、思わぬ形で役に立った。
私の提案に、村長や村人たちは最初こそ半信半疑だったが、私が具体的な計画を立て、父の名で資金援助を約束すると、彼らの顔にみるみる希望の色が差していく。
「おお……!」「ありがてえ……!」
感謝の言葉に、胸が温かくなる。
悪役令嬢として断罪されるはずだった私が、誰かの役に立てている。
それが、素直に嬉しかった。
いくつかの村を回り、同じように問題を解決していく。
井戸の掘削を提案したり、新しい農法を教えたり。
前世の知識が、この世界ではチート級に役立った。
領民たちの私を見る目は、最初こそ「傲慢な公爵令嬢」を見る目だったが、数日もすると、尊敬と親愛の情がこもったものに変わっていった。
(なんだか、悪くないかも)
悪役令嬢としてではなく、一人の人間として、誰かに必要とされること。
それは、私が前世でも得られなかった、満たされた感覚だった。
しかし、物事はそう簡単には進まない。
視察の帰り道。
王都へと続く、少し薄暗い森の中を馬車で進んでいた時だった。
ヒュンッ!
鋭い風切り音と共に、一本の矢が馬車の壁に突き刺さる。
「――ッ! 敵襲だ!」
レオナルドの鋭い声が響く。
馬車が急停止し、外から剣戟の音が聞こえてきた。
「お嬢様! 馬車から出ないでください!」
レオナルドと数人の護衛騎士たちが応戦しているが、敵の数が多いようだ。
次々と襲い来る黒装束の男たち。
その剣筋は、素人のものではない。プロの暗殺者だ。
(やっぱり、私を狙ってきたんだ……!)
父の言っていた「不穏分子」。
私が領地で評判を上げたことが、彼らの気に障ったのだろう。
ガシャン!という音と共に、馬車の扉が破壊される。
黒装束の男が、ギラリと光る剣を手に、中に乗り込んできた。
「きゃあ!」
悲鳴を上げるのが精一杯だった。
もうダメだ、殺される。
そう覚悟して、ギュッと目を瞑った、その瞬間。
ザシュッ!!!
生々しい音と共に、目の前の男が崩れ落ちた。
何が起こったのかわからず、恐る恐る目を開ける。
そこに立っていたのは――
闇色のマントを翻し、返り血を浴びた漆黒の剣を携えた、一人の男。
月明かりに照らされたその横顔は、私が狂おしいほどに焦がれた、あの人のものだった。
しなやかな黒髪。
血のように赤い、冷たい輝きを放つ瞳。
「……ゼノン、様……?」
信じられない光景に、私の声が震える。
ゲームの世界で、画面越しに何度も見た、私の最推し。
敵国の皇子、ゼノン・アークライトが、なぜ、ここに?
なぜ、私を助けたの?
ゼノンは、崩れ落ちた男を一瞥もせず、その血の色の瞳で、私を――セレスティナを、じっと見つめた。
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