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第17話:魔の山を越えて――氷雪の絆
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「……息が、凍りそうです」
私が呟くと、吐き出した白い息は瞬時に凍りつき、キラキラとしたダイヤモンドダストとなって空気に溶けていきました。
標高三千メートル。 『竜の山脈』の中腹。 そこは、人間が生存することを許されない、神々の領域でした。
猛吹雪が視界を白一色に染め上げています。 一メートル先も見えないホワイトアウトの世界。 ゴーグル越しに見えるのは、前を歩くクラウス様の背中と、腰に結び付けられた命綱だけ。
私たちは、その命綱一本で繋がれ、垂直に近い氷の壁を登っていました。
「アリア、大丈夫か! 意識を飛ばすなよ!」
風切り音に負けないよう、クラウス様が叫びます。
「平気、です! これくらい、屋敷での雑巾がけに比べれば……!」
私は強がって叫び返しましたが、実際には足の感覚がありませんでした。 専用の防寒具を着込み、魔力を帯びたカイロを懐に入れていますが、この極寒は骨の髄まで侵食してきます。
「無理をするな! 辛かったら言え! 俺が背負う!」
「お断り、します! ここで甘えたら……貴方の隣に立つ資格がありませんから!」
私はピッケルを氷壁に突き立て、体を持ち上げました。 手袋の中の指先が痺れています。 でも、止まるわけにはいきません。 王都では、エリザベート王女の処刑までのカウントダウンが進んでいるのですから。
「……閣下! この先は『風の回廊』です! 突風に注意してください!」
後方から、精鋭部隊の一人である山岳兵のハンスが警告しました。
「分かっている! 全員、重心を低くしろ! アリア、俺のベルトを掴め!」
クラウス様が手を差し伸べ、私はその手を強く握りしめました。
その瞬間。 ゴォォォォッ!! 巨大な龍の咆哮のような音が響き、山肌を削り取るような烈風が吹き荒れました。
「きゃぁぁっ!?」
体が木の葉のように舞い上がりそうになります。 私は必死にクラウス様にしがみつきました。 彼のブーツには、氷魔法で生成されたスパイクが食い込んでおり、微動だにしません。
「捕まっていろ! 絶対に離すな!」
クラウス様は私を抱きかかえ、自身の体で風を遮ってくれました。 私の頬に、彼の冷たいコートの感触と、力強い心音が伝わってきます。
数分後、風が少しだけ弱まりました。
「……助かりました」
「礼には及ばん。……おい、ハンス。ルートは合っているか?」
「はい。ですが、この吹雪で目印の『双子岩』が見えません。コンパスも魔力嵐の影響で狂っています。……このまま進むのは危険かと」
ハンスの声には焦りが混じっていました。 この雪山で迷うことは、死を意味します。
「……右です」
私が声を上げました。
「なに?」
「右へ三十度、修正してください。風の音が変わりました。……『影の書庫』にあった古い文献によれば、この山脈には特殊な『鳴き風』が吹く洞窟があります。その音が右側から聞こえます」
「鳴き風だと? そんな音、俺たちには聞こえんが……」
兵士たちが顔を見合わせます。
「聞こえます。……ヒュウ、という高い音です。その先には、かつてドワーフ族が使っていた坑道の入り口があるはずです。そこを通れば、山頂付近まで安全に登れます!」
私の記憶力と、聴覚を信じるか。 それとも、経験豊富な山岳兵の勘を信じるか。
クラウス様は私を見ました。 ゴーグル越しのアイスブルーの瞳が、私を射抜きます。
「……アリア。自信はあるか?」
「あります。私の命を懸けて」
「いいだろう。……全軍、右へ進路変更! アリアの指示に従え!」
「はッ!」
クラウス様は私の判断に、一瞬の迷いもなく全軍の命運を預けてくれました。 その信頼が、凍えかけた私の体に熱い活力を与えてくれました。
◇
私の指示通りに進むと、やがて巨大な岩の割れ目が見えてきました。 そこからは確かに、笛のような風の音が響いていました。
「すげえ……本当にあったぞ!」 「嬢ちゃんの耳は地獄耳だな」
兵士たちが感嘆の声を上げます。
「中へ入るぞ! ここで休憩だ!」
私たちは洞窟の中へと逃げ込みました。 外の猛吹雪が嘘のように遮断され、静寂が訪れます。 気温も少しだけ高い気がしました。
「……ふぅ」
私はその場にへたり込みました。 緊張の糸が切れた途端、疲労がどっと押し寄せてきます。
「よくやった、アリア」
クラウス様が隣に座り、水筒を渡してくれました。 中身は、蜂蜜と生姜を溶かした温かいお湯です。
「ありがとうございます……生き返ります」
「お前の知識がなければ、今頃俺たちは雪崩に巻き込まれていただろう。……やはり、お前を連れてきて正解だった」
「当然です。私は閣下の『北極星』ですから」
私が悪戯っぽく笑うと、クラウス様は「口の減らない奴だ」と苦笑し、私の手を取って自分の両手で包み込みました。 そして、冷え切った指先に、フゥーッと温かい息を吹きかけてくれます。
「……指の感覚はあるか?」
「はい、少し戻ってきました」
「凍傷にならなくてよかった。……綺麗な指だ。傷つけたくない」
彼は私の指一本一本を丁寧にマッサージしてくれます。 兵士たちが遠くでニヤニヤしながら見ている気配がしましたが、私は手を引っ込めませんでした。 この温もりだけが、今の私を支えているのですから。
「閣下。……この坑道を抜ければ、いよいよ『竜の巣』です」
私は地図を広げました。
「この山脈の主、『氷雪竜(アイス・ドラゴン)』の縄張りです。奴らは音と熱に敏感です。戦闘になれば、雪崩を誘発する恐れがあります」
「戦わずに抜ける必要がある、ということか」
「はい。……幸い、この時期の竜は冬眠に近い状態です。刺激しなければ、やり過ごせるはずです」
「分かった。……全員、武器の音をさせるな。会話は手信号だ。いいな?」
クラウス様の指示に、全員が無言で頷きました。
◇
坑道を抜けると、そこは広大なカルデラのような場所でした。 すり鉢状の地形の中心には、透き通るような青い氷の湖があり、その周囲を太古の遺跡のような岩山が囲んでいます。
そして、その岩山の一つ一つに、巨大な影がうごめいていました。
ワイバーン。 翼長十メートルを超える、飛竜の群れです。 その数、数十。 彼らは岩の上で丸くなり、眠っているようでした。
私たちは息を殺し、岩陰に身を隠しながら進みました。 雪を踏む音さえ立ててはいけません。
(怖い……)
心臓の音がうるさいくらいに鳴っています。 もし一匹でも目覚めれば、一斉に襲いかかってくるでしょう。 そうなれば、全滅です。
先頭を行くクラウス様が、右手を挙げて停止の合図を出しました。
目の前の通路を、一匹の巨大なワイバーンが塞いでいました。 他の個体よりも一回り大きく、鱗が黒光りしています。 番人(ガーディアン)クラスの個体です。
完全に道を塞いでいます。 迂回ルートはありません。
どうする? 戦うか? いや、魔法を使えば、その魔力波動で他の竜も起きる。
クラウス様が腰の剣に手をかけようとした、その時。
私は彼の袖を引きました。 そして、懐からあるものを取り出しました。
それは、先ほどの洞窟で採取した『硫黄石』の粉末と、私が持っていた携帯食料の干し肉でした。
私は身振りで伝えました。 『私が囮になります』
クラウス様が目を見開き、首を激しく横に振りました。 『馬鹿な!』という声が聞こえてくるようです。
でも、私は引きませんでした。 『大丈夫です。任せてください』
私は干し肉に硫黄石の粉末をまぶしました。 竜種は硫黄の匂いを嫌う……と本で読んだことがあります。 でも、同時に強烈な肉の匂いには抗えないとも。
私は岩陰から身を乗り出し、風下に向かって思い切り干し肉を投げました。 ポーンと弧を描いた肉塊は、ワイバーンの鼻先から少し離れた場所に落ちました。
ピクリ。 ワイバーンの鼻が動きました。 そして、ゆっくりと瞼が開かれ、爬虫類特有の金色の瞳がギョロリと動きました。
(気づいた……!)
ワイバーンはのっそりと起き上がり、肉の匂いに釣られて移動を始めました。 しかし、肉に近づくと、今度は硫黄の刺激臭に顔をしかめ、大きくくしゃみをしました。
「ブフォッ!」
ワイバーンは不快そうに首を振り、その場を離れて風通しの良い高台へと飛び去っていきました。
道が空いた。
クラウス様が私を見て、親指を立てました。 私たちはその隙に、駆け足で通り抜けました。
◇
最大の難所を越え、私たちは山頂付近に到達しました。 あとは下るだけです。 王都までは、あと一日。
しかし、自然は最後の最後に最大の試練を用意していました。
「……閣下! 空を見てください!」
ハンスが叫びました。
見上げると、先ほどまで晴れ間が見えていた空が、急速にどす黒い雲に覆われていました。 そして、遠くから地鳴りのような音が近づいてきます。
「『魔力嵐(マナ・ストーム)』だ……!」
クラウス様が呻きました。 それは、竜の山脈特有の自然現象。 大気中の魔力が暴走し、雷と吹雪が入り混じった破壊の渦が発生するのです。
「まずいぞ……隠れる場所がない!」
ここは吹きっさらしの尾根です。 洞窟も岩陰もありません。 嵐に巻き込まれれば、私たちは魔力の奔流に引き裂かれて消滅します。
「走れ! あそこの岩壁まで行けば凌げる!」
クラウス様が叫び、私たちは全速力で走り出しました。
バリバリバリッ!! 紫色の雷が、すぐ近くの地面を焦がします。 強風が体を押し戻そうとします。
「きゃっ!」
私は足元の氷に滑って転倒しました。
「アリア!」
クラウス様が駆け寄ろうとした瞬間、私たちの間に雷が落ち、氷の大地が割れました。
ズズズズズ……!
クレバス(氷の割れ目)が発生し、私は崩れ落ちる氷と共に奈落へと滑り落ちていきました。
「アリアァァァッ!!」
クラウス様の絶叫が聞こえました。 私の体は宙に浮き、そして暗闇へと落ちて――。
ガシッ!!
強い衝撃と共に、私の腕が掴まれました。 見上げると、崖の縁ギリギリで、クラウス様が私の手首を掴んでいました。
「離すもんか……ッ!」
クラウス様は片手で岩にしがみつき、もう片方の手で私を支えています。 しかし、足元の氷は崩れかけており、このままでは二人とも落ちてしまいます。
「閣下……! 手を、離してください!」
私は叫びました。
「私が重りになっています! このままでは貴方まで……!」
「黙れ! 私の半身を切り離して、どうやって生きろと言うんだ!」
クラウス様の顔は、血管が浮き出るほど必死でした。 嵐の風が、彼の手を容赦なく打ち付けます。
「お願いです、離して! 貴方は王女を助けなければならないのでしょう!? こんなところで死んではいけません!」
「王女など知らん! 国などどうでもいい! お前がいなければ、世界など救う価値もない!」
クラウス様は叫び返しました。 その言葉に、私の涙腺が崩壊しました。 こんな時だというのに、嬉しくて、愛おしくてたまらない。
「……バカな人」
「ああ、バカだ! お前に惚れたあの日から、私はずっと大バカ者だ!」
クラウス様の瞳が、蒼く輝き始めました。 魔力の暴走ではありません。 彼の魂の力が、極限まで高まっているのです。
「うおおおおおおッ!!」
彼は気合一閃、ありったけの力で私を引き上げました。 その反動で、私たちは二人もつれ合って岩場の安全な場所へと転がり込みました。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
私たちは雪の上に大の字になって、荒い息をつきました。 生きてる。 助かった。
クラウス様はすぐに私を抱き起こし、強く、骨が折れるかと思うほど強く抱きしめました。
「……二度と、離せなどと言うな」
彼の体は震えていました。 恐怖で震えていたのではありません。 私を失うかもしれないという、絶望的な予感に震えていたのです。
「はい……ごめんなさい……」
私は彼の背中に腕を回し、泣きじゃくりました。
嵐はまだ吹き荒れていましたが、私たちは岩陰で互いの体温を分け合い、嵐が過ぎ去るのを待ちました。 その時間は、永遠のようでもあり、一瞬のようでもありました。
◇
翌朝。 嵐は嘘のように晴れ渡っていました。
私たちは山頂を越え、下山ルートに入りました。 眼下には、広大な平原と、その先に小さく見える王都の姿がありました。
「……見えた」
クラウス様が呟きました。
「ああ。あれが私たちの戦場だ」
王都からは、黒い煙が立ち上っていました。 おそらく、処刑の準備のための焚き火か、あるいは暴動の煙か。 平和だったあの街は、今やギリアードの圧政の下で苦しんでいるのです。
「行きましょう、クラウス様」
私は立ち上がり、服の雪を払いました。 ドレスはボロボロで、泥だらけです。 でも、私の心はかつてないほど澄み渡っていました。
「ええ。……終わらせに行こう」
私たちは山を駆け下りました。 もはや、隠れる必要はありません。 ここからは、正面突破です。
王都の城門前。 そこに到着したのは、夕暮れ時でした。
「止まれ! 何者だ!」
門番の兵士たちが槍を構えます。 彼らの装備は、ギリアードの私兵団のものです。
クラウス様は馬(麓の村で調達しました)の上から、冷徹に見下ろしました。
「道を開けろ」
「な、なんだ貴様は! 浮浪者の分際で……!」
「私の顔を見忘れたか?」
クラウス様が髪をかき上げ、その美貌を露わにしました。 夕日を背負ったその姿は、まさに降臨した魔王のようでした。
「ラ、ラインハルト公爵……!?」
「な、なぜここに!? 死んだはずでは……!」
兵士たちが動揺し、後ずさります。
「アリア、合図だ」
「はい!」
私は懐から、信号弾を取り出し、空へと打ち上げました。 ヒュルルルル……ドンッ!! 赤い花火が、王都の空に咲きました。
それは、潜伏していた『影』たちと、私の手配した商人組合、そして民衆への一斉蜂起の合図でした。
「うおおおおおッ!!」 「公爵様が帰ってきたぞ!」 「悪徳宰相を倒せ!」
王都の中から、怒涛のような歓声が上がりました。 民衆が、武器を持って立ち上がったのです。 城門の内側から混乱が生じ、門が少しずつ開き始めました。
「行くぞ!」
クラウス様が馬を走らせます。 私もその背中にしがみつきました。
「目指すは中央広場! 処刑台だ!」
私たちは開かれた門を突破し、王都へと雪崩れ込みました。 沿道からは、市民たちが私たちに声援を送ってくれます。
「アリア様! 公爵様!」 「お願いだ、この国を救ってくれ!」
その声援が、私たちの力になります。 泥だらけのドレスも、乱れた髪も、今や「戦う乙女」の象徴として、彼らの目に焼き付いているようでした。
「見ろ、アリア。……これが、お前が蒔いた種だ」
クラウス様が言いました。
「お前が『国一番の淑女』として積み上げてきた信頼が、今、剣となって私たちを守ってくれている」
「……いいえ、違います」
私は首を振りました。
「これは、貴方がこの国を守ってきた結果です。私はただ、その背中を押しただけ」
「フッ、謙虚だな」
馬は石畳を蹴り、王宮へと続く大通りを疾走します。
前方に、処刑台が見えてきました。 そこには、縛り付けられたエリザベート王女と、処刑執行人の姿。 そして、高みの見物を決め込むギリアード宰相の姿がありました。
「間に合った……!」
処刑の時間は、日没。 あと数分しかありません。
「邪魔だぁぁッ!!」
クラウス様が剣を振り抜き、立ち塞がる兵士たちを氷の衝撃波で吹き飛ばしました。 私たちは一直線に、処刑台へと突っ込んでいきます。
これが、最後の戦いです。
私が呟くと、吐き出した白い息は瞬時に凍りつき、キラキラとしたダイヤモンドダストとなって空気に溶けていきました。
標高三千メートル。 『竜の山脈』の中腹。 そこは、人間が生存することを許されない、神々の領域でした。
猛吹雪が視界を白一色に染め上げています。 一メートル先も見えないホワイトアウトの世界。 ゴーグル越しに見えるのは、前を歩くクラウス様の背中と、腰に結び付けられた命綱だけ。
私たちは、その命綱一本で繋がれ、垂直に近い氷の壁を登っていました。
「アリア、大丈夫か! 意識を飛ばすなよ!」
風切り音に負けないよう、クラウス様が叫びます。
「平気、です! これくらい、屋敷での雑巾がけに比べれば……!」
私は強がって叫び返しましたが、実際には足の感覚がありませんでした。 専用の防寒具を着込み、魔力を帯びたカイロを懐に入れていますが、この極寒は骨の髄まで侵食してきます。
「無理をするな! 辛かったら言え! 俺が背負う!」
「お断り、します! ここで甘えたら……貴方の隣に立つ資格がありませんから!」
私はピッケルを氷壁に突き立て、体を持ち上げました。 手袋の中の指先が痺れています。 でも、止まるわけにはいきません。 王都では、エリザベート王女の処刑までのカウントダウンが進んでいるのですから。
「……閣下! この先は『風の回廊』です! 突風に注意してください!」
後方から、精鋭部隊の一人である山岳兵のハンスが警告しました。
「分かっている! 全員、重心を低くしろ! アリア、俺のベルトを掴め!」
クラウス様が手を差し伸べ、私はその手を強く握りしめました。
その瞬間。 ゴォォォォッ!! 巨大な龍の咆哮のような音が響き、山肌を削り取るような烈風が吹き荒れました。
「きゃぁぁっ!?」
体が木の葉のように舞い上がりそうになります。 私は必死にクラウス様にしがみつきました。 彼のブーツには、氷魔法で生成されたスパイクが食い込んでおり、微動だにしません。
「捕まっていろ! 絶対に離すな!」
クラウス様は私を抱きかかえ、自身の体で風を遮ってくれました。 私の頬に、彼の冷たいコートの感触と、力強い心音が伝わってきます。
数分後、風が少しだけ弱まりました。
「……助かりました」
「礼には及ばん。……おい、ハンス。ルートは合っているか?」
「はい。ですが、この吹雪で目印の『双子岩』が見えません。コンパスも魔力嵐の影響で狂っています。……このまま進むのは危険かと」
ハンスの声には焦りが混じっていました。 この雪山で迷うことは、死を意味します。
「……右です」
私が声を上げました。
「なに?」
「右へ三十度、修正してください。風の音が変わりました。……『影の書庫』にあった古い文献によれば、この山脈には特殊な『鳴き風』が吹く洞窟があります。その音が右側から聞こえます」
「鳴き風だと? そんな音、俺たちには聞こえんが……」
兵士たちが顔を見合わせます。
「聞こえます。……ヒュウ、という高い音です。その先には、かつてドワーフ族が使っていた坑道の入り口があるはずです。そこを通れば、山頂付近まで安全に登れます!」
私の記憶力と、聴覚を信じるか。 それとも、経験豊富な山岳兵の勘を信じるか。
クラウス様は私を見ました。 ゴーグル越しのアイスブルーの瞳が、私を射抜きます。
「……アリア。自信はあるか?」
「あります。私の命を懸けて」
「いいだろう。……全軍、右へ進路変更! アリアの指示に従え!」
「はッ!」
クラウス様は私の判断に、一瞬の迷いもなく全軍の命運を預けてくれました。 その信頼が、凍えかけた私の体に熱い活力を与えてくれました。
◇
私の指示通りに進むと、やがて巨大な岩の割れ目が見えてきました。 そこからは確かに、笛のような風の音が響いていました。
「すげえ……本当にあったぞ!」 「嬢ちゃんの耳は地獄耳だな」
兵士たちが感嘆の声を上げます。
「中へ入るぞ! ここで休憩だ!」
私たちは洞窟の中へと逃げ込みました。 外の猛吹雪が嘘のように遮断され、静寂が訪れます。 気温も少しだけ高い気がしました。
「……ふぅ」
私はその場にへたり込みました。 緊張の糸が切れた途端、疲労がどっと押し寄せてきます。
「よくやった、アリア」
クラウス様が隣に座り、水筒を渡してくれました。 中身は、蜂蜜と生姜を溶かした温かいお湯です。
「ありがとうございます……生き返ります」
「お前の知識がなければ、今頃俺たちは雪崩に巻き込まれていただろう。……やはり、お前を連れてきて正解だった」
「当然です。私は閣下の『北極星』ですから」
私が悪戯っぽく笑うと、クラウス様は「口の減らない奴だ」と苦笑し、私の手を取って自分の両手で包み込みました。 そして、冷え切った指先に、フゥーッと温かい息を吹きかけてくれます。
「……指の感覚はあるか?」
「はい、少し戻ってきました」
「凍傷にならなくてよかった。……綺麗な指だ。傷つけたくない」
彼は私の指一本一本を丁寧にマッサージしてくれます。 兵士たちが遠くでニヤニヤしながら見ている気配がしましたが、私は手を引っ込めませんでした。 この温もりだけが、今の私を支えているのですから。
「閣下。……この坑道を抜ければ、いよいよ『竜の巣』です」
私は地図を広げました。
「この山脈の主、『氷雪竜(アイス・ドラゴン)』の縄張りです。奴らは音と熱に敏感です。戦闘になれば、雪崩を誘発する恐れがあります」
「戦わずに抜ける必要がある、ということか」
「はい。……幸い、この時期の竜は冬眠に近い状態です。刺激しなければ、やり過ごせるはずです」
「分かった。……全員、武器の音をさせるな。会話は手信号だ。いいな?」
クラウス様の指示に、全員が無言で頷きました。
◇
坑道を抜けると、そこは広大なカルデラのような場所でした。 すり鉢状の地形の中心には、透き通るような青い氷の湖があり、その周囲を太古の遺跡のような岩山が囲んでいます。
そして、その岩山の一つ一つに、巨大な影がうごめいていました。
ワイバーン。 翼長十メートルを超える、飛竜の群れです。 その数、数十。 彼らは岩の上で丸くなり、眠っているようでした。
私たちは息を殺し、岩陰に身を隠しながら進みました。 雪を踏む音さえ立ててはいけません。
(怖い……)
心臓の音がうるさいくらいに鳴っています。 もし一匹でも目覚めれば、一斉に襲いかかってくるでしょう。 そうなれば、全滅です。
先頭を行くクラウス様が、右手を挙げて停止の合図を出しました。
目の前の通路を、一匹の巨大なワイバーンが塞いでいました。 他の個体よりも一回り大きく、鱗が黒光りしています。 番人(ガーディアン)クラスの個体です。
完全に道を塞いでいます。 迂回ルートはありません。
どうする? 戦うか? いや、魔法を使えば、その魔力波動で他の竜も起きる。
クラウス様が腰の剣に手をかけようとした、その時。
私は彼の袖を引きました。 そして、懐からあるものを取り出しました。
それは、先ほどの洞窟で採取した『硫黄石』の粉末と、私が持っていた携帯食料の干し肉でした。
私は身振りで伝えました。 『私が囮になります』
クラウス様が目を見開き、首を激しく横に振りました。 『馬鹿な!』という声が聞こえてくるようです。
でも、私は引きませんでした。 『大丈夫です。任せてください』
私は干し肉に硫黄石の粉末をまぶしました。 竜種は硫黄の匂いを嫌う……と本で読んだことがあります。 でも、同時に強烈な肉の匂いには抗えないとも。
私は岩陰から身を乗り出し、風下に向かって思い切り干し肉を投げました。 ポーンと弧を描いた肉塊は、ワイバーンの鼻先から少し離れた場所に落ちました。
ピクリ。 ワイバーンの鼻が動きました。 そして、ゆっくりと瞼が開かれ、爬虫類特有の金色の瞳がギョロリと動きました。
(気づいた……!)
ワイバーンはのっそりと起き上がり、肉の匂いに釣られて移動を始めました。 しかし、肉に近づくと、今度は硫黄の刺激臭に顔をしかめ、大きくくしゃみをしました。
「ブフォッ!」
ワイバーンは不快そうに首を振り、その場を離れて風通しの良い高台へと飛び去っていきました。
道が空いた。
クラウス様が私を見て、親指を立てました。 私たちはその隙に、駆け足で通り抜けました。
◇
最大の難所を越え、私たちは山頂付近に到達しました。 あとは下るだけです。 王都までは、あと一日。
しかし、自然は最後の最後に最大の試練を用意していました。
「……閣下! 空を見てください!」
ハンスが叫びました。
見上げると、先ほどまで晴れ間が見えていた空が、急速にどす黒い雲に覆われていました。 そして、遠くから地鳴りのような音が近づいてきます。
「『魔力嵐(マナ・ストーム)』だ……!」
クラウス様が呻きました。 それは、竜の山脈特有の自然現象。 大気中の魔力が暴走し、雷と吹雪が入り混じった破壊の渦が発生するのです。
「まずいぞ……隠れる場所がない!」
ここは吹きっさらしの尾根です。 洞窟も岩陰もありません。 嵐に巻き込まれれば、私たちは魔力の奔流に引き裂かれて消滅します。
「走れ! あそこの岩壁まで行けば凌げる!」
クラウス様が叫び、私たちは全速力で走り出しました。
バリバリバリッ!! 紫色の雷が、すぐ近くの地面を焦がします。 強風が体を押し戻そうとします。
「きゃっ!」
私は足元の氷に滑って転倒しました。
「アリア!」
クラウス様が駆け寄ろうとした瞬間、私たちの間に雷が落ち、氷の大地が割れました。
ズズズズズ……!
クレバス(氷の割れ目)が発生し、私は崩れ落ちる氷と共に奈落へと滑り落ちていきました。
「アリアァァァッ!!」
クラウス様の絶叫が聞こえました。 私の体は宙に浮き、そして暗闇へと落ちて――。
ガシッ!!
強い衝撃と共に、私の腕が掴まれました。 見上げると、崖の縁ギリギリで、クラウス様が私の手首を掴んでいました。
「離すもんか……ッ!」
クラウス様は片手で岩にしがみつき、もう片方の手で私を支えています。 しかし、足元の氷は崩れかけており、このままでは二人とも落ちてしまいます。
「閣下……! 手を、離してください!」
私は叫びました。
「私が重りになっています! このままでは貴方まで……!」
「黙れ! 私の半身を切り離して、どうやって生きろと言うんだ!」
クラウス様の顔は、血管が浮き出るほど必死でした。 嵐の風が、彼の手を容赦なく打ち付けます。
「お願いです、離して! 貴方は王女を助けなければならないのでしょう!? こんなところで死んではいけません!」
「王女など知らん! 国などどうでもいい! お前がいなければ、世界など救う価値もない!」
クラウス様は叫び返しました。 その言葉に、私の涙腺が崩壊しました。 こんな時だというのに、嬉しくて、愛おしくてたまらない。
「……バカな人」
「ああ、バカだ! お前に惚れたあの日から、私はずっと大バカ者だ!」
クラウス様の瞳が、蒼く輝き始めました。 魔力の暴走ではありません。 彼の魂の力が、極限まで高まっているのです。
「うおおおおおおッ!!」
彼は気合一閃、ありったけの力で私を引き上げました。 その反動で、私たちは二人もつれ合って岩場の安全な場所へと転がり込みました。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
私たちは雪の上に大の字になって、荒い息をつきました。 生きてる。 助かった。
クラウス様はすぐに私を抱き起こし、強く、骨が折れるかと思うほど強く抱きしめました。
「……二度と、離せなどと言うな」
彼の体は震えていました。 恐怖で震えていたのではありません。 私を失うかもしれないという、絶望的な予感に震えていたのです。
「はい……ごめんなさい……」
私は彼の背中に腕を回し、泣きじゃくりました。
嵐はまだ吹き荒れていましたが、私たちは岩陰で互いの体温を分け合い、嵐が過ぎ去るのを待ちました。 その時間は、永遠のようでもあり、一瞬のようでもありました。
◇
翌朝。 嵐は嘘のように晴れ渡っていました。
私たちは山頂を越え、下山ルートに入りました。 眼下には、広大な平原と、その先に小さく見える王都の姿がありました。
「……見えた」
クラウス様が呟きました。
「ああ。あれが私たちの戦場だ」
王都からは、黒い煙が立ち上っていました。 おそらく、処刑の準備のための焚き火か、あるいは暴動の煙か。 平和だったあの街は、今やギリアードの圧政の下で苦しんでいるのです。
「行きましょう、クラウス様」
私は立ち上がり、服の雪を払いました。 ドレスはボロボロで、泥だらけです。 でも、私の心はかつてないほど澄み渡っていました。
「ええ。……終わらせに行こう」
私たちは山を駆け下りました。 もはや、隠れる必要はありません。 ここからは、正面突破です。
王都の城門前。 そこに到着したのは、夕暮れ時でした。
「止まれ! 何者だ!」
門番の兵士たちが槍を構えます。 彼らの装備は、ギリアードの私兵団のものです。
クラウス様は馬(麓の村で調達しました)の上から、冷徹に見下ろしました。
「道を開けろ」
「な、なんだ貴様は! 浮浪者の分際で……!」
「私の顔を見忘れたか?」
クラウス様が髪をかき上げ、その美貌を露わにしました。 夕日を背負ったその姿は、まさに降臨した魔王のようでした。
「ラ、ラインハルト公爵……!?」
「な、なぜここに!? 死んだはずでは……!」
兵士たちが動揺し、後ずさります。
「アリア、合図だ」
「はい!」
私は懐から、信号弾を取り出し、空へと打ち上げました。 ヒュルルルル……ドンッ!! 赤い花火が、王都の空に咲きました。
それは、潜伏していた『影』たちと、私の手配した商人組合、そして民衆への一斉蜂起の合図でした。
「うおおおおおッ!!」 「公爵様が帰ってきたぞ!」 「悪徳宰相を倒せ!」
王都の中から、怒涛のような歓声が上がりました。 民衆が、武器を持って立ち上がったのです。 城門の内側から混乱が生じ、門が少しずつ開き始めました。
「行くぞ!」
クラウス様が馬を走らせます。 私もその背中にしがみつきました。
「目指すは中央広場! 処刑台だ!」
私たちは開かれた門を突破し、王都へと雪崩れ込みました。 沿道からは、市民たちが私たちに声援を送ってくれます。
「アリア様! 公爵様!」 「お願いだ、この国を救ってくれ!」
その声援が、私たちの力になります。 泥だらけのドレスも、乱れた髪も、今や「戦う乙女」の象徴として、彼らの目に焼き付いているようでした。
「見ろ、アリア。……これが、お前が蒔いた種だ」
クラウス様が言いました。
「お前が『国一番の淑女』として積み上げてきた信頼が、今、剣となって私たちを守ってくれている」
「……いいえ、違います」
私は首を振りました。
「これは、貴方がこの国を守ってきた結果です。私はただ、その背中を押しただけ」
「フッ、謙虚だな」
馬は石畳を蹴り、王宮へと続く大通りを疾走します。
前方に、処刑台が見えてきました。 そこには、縛り付けられたエリザベート王女と、処刑執行人の姿。 そして、高みの見物を決め込むギリアード宰相の姿がありました。
「間に合った……!」
処刑の時間は、日没。 あと数分しかありません。
「邪魔だぁぁッ!!」
クラウス様が剣を振り抜き、立ち塞がる兵士たちを氷の衝撃波で吹き飛ばしました。 私たちは一直線に、処刑台へと突っ込んでいきます。
これが、最後の戦いです。
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