追放された悪役令嬢は、氷の辺境伯に何故か過保護に娶られました ～今更ですが、この温もりは手放せません！？～

第四幕：長い夜の後の夜明け

第22話：報い／下される正義

私たちがグレイウォールで新たな生活を築き始めてから数ヶ月が過ぎた頃、王都から正式な知らせが届いた。アラリック王子とイゾルデに対する裁きが下されたのだ。

知らせによると、イゾルデは、私に対する数々の悪行――虚偽の告発、機密文書窃盗の教唆、そして王家に対する欺瞞――の罪で、貴族の位を剥奪され、王都から追放、修道院への終身禁固刑に処せられたという。彼女が望んだ華やかな生活とは程遠い、孤独で厳しい結末だった。

一方、アラリック王子は、イゾルデの口車に乗せられたとはいえ、その愚かさと判断力の欠如を厳しく咎められ、王位継承権を剥奪された上で、辺境の小領地へと左遷されることになったという。彼が夢見たであろう国王としての栄光は、脆くも崩れ去ったのだ。

「……当然の報いですわね」

知らせを聞いた私は、静かにそう呟いた。彼らが犯した罪を考えれば、むしろ寛大な処分とさえ言えるかもしれない。しかし、私にとっては、それで十分だった。彼らが二度と私の前に現れ、私の人生を脅かすことがないのなら。

エラーラ様もまた、イゾルデの悪行に加担したとして、ヴァレリウス公爵家から離縁され、実家へと送り返されたという。父は、ようやく長年の呪縛から解放されたのかもしれない。

「これで、全てが終わったのだな」

カシアン様は、私の肩を抱き寄せながら言った。

「はい。長かったですけれど……ようやく、本当の平穏が訪れましたわ」

私は、カシアン様の胸に顔を埋めた。彼の温かい腕の中で、私は心の底から安堵していた。

イゾルデたちの「ざまぁ」は、私にとってカタルシスというよりも、むしろ一つの区切りだった。過去の悪夢が完全に終わりを告げ、新しい未来が始まるための。

グレイロック城の家臣たちも、この知らせを喜び、祝杯を挙げた。彼らにとっても、イゾルデたちの存在は脅威だったのだ。城の中には、かつてないほどの明るい笑顔が溢れていた。

その夜、私はカシアン様と共に、城壁の上から星空を眺めた。北の地の空は澄み渡り、無数の星々がダイヤモンドのように輝いている。

「……美しいですわね」

「ああ。この景色を、お前と共に見られることが、俺にとって何よりの幸せだ」

カシアン様は、私の手を強く握りしめた。その温もりが、私の心に深く染み渡る。

長い夜が明け、ようやく訪れた夜明け。それは、私にとって、真の幸福の始まりを告げる光だった。