偽聖女と蔑まれた私、冷酷と噂の氷の公爵様に「見つけ出した、私の運命」と囚われました 〜荒れ果てた領地を力で満たしたら、とろけるほど溺愛されて

放浪人

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第27話:氷狼の牙と、下される裁き

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「さて、国王陛下」

私の手を固く、しかし優しく握りしめたまま、アレクシス様は、国王へと向き直った。
その声は、先ほどまでの甘さなど微塵も感じさせない、絶対支配者の、冷徹な響きに戻っていた。
そのギャップに、私は少しだけ、どきりとした。

「言い訳は、お聞きになりましたかな? この、***あなたの愚かな息子***と、***魔族と通じた偽聖女***の」

その言葉の一つ一つが、鋭い氷の刃となって、国王と王太子に突き刺さる。
国王は、苦虫を百匹ほど噛み潰したような顔で、唇を震わせた。

「ヴァインベルク公爵……。今回の件、我が息子の非であることは認めよう。だが、これも、あの女に唆されたことであり……」

「ですが、何です?」

アレクシス様の追及は、容赦がない。
氷の瞳は、一切の言い訳を許さないと語っていた。

「私の唯一の光を、私の命そのものであるこの女性を、あなた方は偽物と蔑み、王都から追放した。それだけでは飽き足らず、再びその身柄を拘束し、その力を己の欲望のために利用しようとした。……これは、私個人への侮辱に留まらず、ヴァインベルク公爵家そのものへの、許しがたい挑戦だ。違いますかな?」

彼の言葉に、その場にいた宰相や大臣たちの顔が、一斉に青ざめる。
もしここでヴァインベルク公爵家が王家を見限れば、この国は、北と南に分断され、血で血を洗う内乱状態に陥るだろう。
いや、圧倒的な軍事力を持つヴァインベルクが本気になれば、この国が滅びる可能性さえある。
そのことを、ここにいる誰もが知っていた。

「そ、それは……!」

国王が、必死に弁解の言葉を探す。
その姿は、一国の王というより、ただ狼狽する一人の父親にしか見えなかった。

アレクシス様は、そんな国王を一瞥すると、今度は、地面で狂ったように蹲るイザベラに、虫けらでも見るかのような冷たい視線を向けた。

「そして、その女。聖女を騙り、王太子を唆し、魔族の力を以てこの国を内側から蝕もうとした大罪人。……生かしておく理由がありますかな?」

その言葉は、事実上の、そして揺るぎない死刑宣告だった。

イザベラは、ヒッと甲高い悲鳴を上げ、後ずさろうとするが、すでにアレクシス様の兵士に両脇を固められ、逃げ場はどこにもなかった。

「陛下、ご裁断を」

アレクシス様は、全ての選択を、国王に委ねた。
しかし、それは形だけのもの。
答えは、すでに決まっていた。
ここでアレクシス様の要求を呑まなければ、王家は、そしてこの国は終わる。

国王は、深く、深く、ため息をつくと、苦渋に満ちた、そして一気に老け込んだ顔で、ゆっくりと口を開いた。
それは、自らの息子と、息子が愛した女を見捨てる、王としての、非情な決断だった。

「……イザベラ・フォン・カークランドを、捕らえよ」

国王の厳かな声が、儀式場に響く。

「聖女の称号を剥奪の上、魔族と通じ、国家転覆を謀った大罪人として、終生、地下牢の最下層、光の届かぬ『忘れられた牢獄』に幽閉するものとする」

「いやぁぁぁっ! 離して! 私は、私は聖女よぉぉぉっ! 殿下、殿下ぁぁぁっ!」

イザベラの最後の絶叫も虚しく、彼女は兵士たちに引きずられていく。
その顔は、涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになり、もはやかつての美貌の面影はどこにもなかった。
自業自得、という言葉が、これほど似合う光景もないだろう。

そして、国王は、震える声で、最後の裁きを下した。
その目は、ただ一点、自分の息子だけを見つめていた。

「アルフォンス・フォン・エルグランドよ。お前は……」

全ての視線が、王太子に注がれる。
彼の運命が、今、決まろうとしていた。
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