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サブストーリー(アレクシス視点):氷解の刻
俺の世界は、物心ついた時から、冷たく、色褪せていた。
ヴァインベルクの次期当主を苛むという、古からの呪い。
それは、ただ肉体を苛むだけでなく、心を、魂を、分厚い氷で覆い尽くす、絶望そのものだった。
愛する者に触れれば、その命を奪う。
故に、俺は誰にも心を開かず、誰にも触れさせず、ただ一人、氷の玉座に座り続けてきた。
感情は邪魔だ。温もりは毒だ。
そう己に言い聞かせ、心を殺して生きてきた。
永遠に続くと思われた、終わらない冬の中で。
そんな俺の前に、彼女は現れた。
リリアーナ。
雨に濡れた路地裏で、絶望の淵にいながらも、その瞳の奥の光を、決して失っていなかった少女。
最初は、ただの興味だったのかもしれない。
彼女が持つという「植物を元気にする力」。
それが、この死んだ土地に、そして俺の呪いに、何か変化をもたらすのではないかという、淡い、そして愚かな期待。
だが、彼女がこの城に来て、俺の世界は、少しずつ、しかし確実に変わり始めた。
彼女が触れた枯れ木が、息を吹き返す。
彼女が歩いた大地が、緑を取り戻していく。
彼女の笑顔が、凍てついた城の空気を、温めていく。
俺の心の氷が、ミシリ、と音を立てて、ひび割れていくのを感じた。
気づけば、俺は執務室の窓から、庭で無心に働く彼女の姿を、目で追うようになっていた。
土にまみれた、小さな背中。
太陽のような、屈託のない笑顔。
その全てが、眩しくて、愛おしくて、たまらなかった。
欲しい、と思った。
この光を、俺だけのものにしたい、と。
だが、その想いは、呪いという名の絶望によって、常に打ち砕かれた。
彼女に触れたい。その温もりを感じたい。
しかし、触れれば、この手で彼女を壊してしまう。
その恐怖と葛藤は、呪いの苦痛よりも、遥かに俺の心を苛んだ。
彼女が王都へ連れ去られた日、俺の世界は、再び闇に閉ざされた。
いや、光を知る前よりも、もっと深い、底なしの闇だった。
怒りと、絶望と、そして、彼女を守れなかった自分への激しい憎悪。
だが、彼女は、そんな俺を、見捨てなかった。
遠く離れた牢獄の中から、彼女は、俺に光を送ってくれたのだ。
魂を震わせるほどの、温かく、優しい光。
その光が、俺を縛り付けていた、何百年という呪いの歴史を、いとも容易く、消し去ってくれた。
ああ、そうか。
彼女は、俺の聖女などではない。
俺の、生命の女神だったのだ。
再会した時、彼女の涙を見た時、俺の心は決まった。
もう、ためらわない。もう、離さない。
この命の全てを懸けて、彼女を幸せにしよう、と。
領民たちの前で、俺は彼女に跪いた。
それは、俺が、俺の人生で下した、最も正しく、そして、最も幸福な決断だった。
「喜んで……!」
涙で濡れた笑顔で、そう答えてくれた彼女。
その瞬間の喜びを、俺は生涯、忘れることはないだろう。
初めて触れた、彼女の唇。
とろけるように甘く、そして、温かかった。
俺の長い、長い冬が、ようやく終わりを告げた瞬間だった。
リリアーナ。
俺の、唯一の春。
これからは、永遠に、君の隣で。
ヴァインベルクの次期当主を苛むという、古からの呪い。
それは、ただ肉体を苛むだけでなく、心を、魂を、分厚い氷で覆い尽くす、絶望そのものだった。
愛する者に触れれば、その命を奪う。
故に、俺は誰にも心を開かず、誰にも触れさせず、ただ一人、氷の玉座に座り続けてきた。
感情は邪魔だ。温もりは毒だ。
そう己に言い聞かせ、心を殺して生きてきた。
永遠に続くと思われた、終わらない冬の中で。
そんな俺の前に、彼女は現れた。
リリアーナ。
雨に濡れた路地裏で、絶望の淵にいながらも、その瞳の奥の光を、決して失っていなかった少女。
最初は、ただの興味だったのかもしれない。
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それが、この死んだ土地に、そして俺の呪いに、何か変化をもたらすのではないかという、淡い、そして愚かな期待。
だが、彼女がこの城に来て、俺の世界は、少しずつ、しかし確実に変わり始めた。
彼女が触れた枯れ木が、息を吹き返す。
彼女が歩いた大地が、緑を取り戻していく。
彼女の笑顔が、凍てついた城の空気を、温めていく。
俺の心の氷が、ミシリ、と音を立てて、ひび割れていくのを感じた。
気づけば、俺は執務室の窓から、庭で無心に働く彼女の姿を、目で追うようになっていた。
土にまみれた、小さな背中。
太陽のような、屈託のない笑顔。
その全てが、眩しくて、愛おしくて、たまらなかった。
欲しい、と思った。
この光を、俺だけのものにしたい、と。
だが、その想いは、呪いという名の絶望によって、常に打ち砕かれた。
彼女に触れたい。その温もりを感じたい。
しかし、触れれば、この手で彼女を壊してしまう。
その恐怖と葛藤は、呪いの苦痛よりも、遥かに俺の心を苛んだ。
彼女が王都へ連れ去られた日、俺の世界は、再び闇に閉ざされた。
いや、光を知る前よりも、もっと深い、底なしの闇だった。
怒りと、絶望と、そして、彼女を守れなかった自分への激しい憎悪。
だが、彼女は、そんな俺を、見捨てなかった。
遠く離れた牢獄の中から、彼女は、俺に光を送ってくれたのだ。
魂を震わせるほどの、温かく、優しい光。
その光が、俺を縛り付けていた、何百年という呪いの歴史を、いとも容易く、消し去ってくれた。
ああ、そうか。
彼女は、俺の聖女などではない。
俺の、生命の女神だったのだ。
再会した時、彼女の涙を見た時、俺の心は決まった。
もう、ためらわない。もう、離さない。
この命の全てを懸けて、彼女を幸せにしよう、と。
領民たちの前で、俺は彼女に跪いた。
それは、俺が、俺の人生で下した、最も正しく、そして、最も幸福な決断だった。
「喜んで……!」
涙で濡れた笑顔で、そう答えてくれた彼女。
その瞬間の喜びを、俺は生涯、忘れることはないだろう。
初めて触れた、彼女の唇。
とろけるように甘く、そして、温かかった。
俺の長い、長い冬が、ようやく終わりを告げた瞬間だった。
リリアーナ。
俺の、唯一の春。
これからは、永遠に、君の隣で。
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