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第5話:『浜辺で倒れているイケメンを発見。不審者かと思ったら、どうやら「お忍び」の事情あり物件のようです』
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「あの……生きてますか?」
波打ち際で倒れている謎の男性の肩を、私は恐る恐る揺すってみた。 反応はない。 ただ、濡れたシャツ越しに伝わってくる体温は、彼がまだ現世に留まっていることを示していた。 温かい。というより、少し熱いくらいだ。
「……死んではいないみたい」
私は胸を撫で下ろし、改めて彼の様子を観察した。 夕日に照らされたその横顔は、彫刻のように整っていた。 濡れて頬に張り付いた金色の髪。 長く伸びた睫毛。 スッと通った鼻筋に、血色の良い唇。
着ている服は上質な麻のシャツと、仕立ての良いズボン。 ただ、海水を含んで重そうに肌に張り付いており、その下にある鍛え上げられた肉体のラインを露わにしている。 ……あらやだ。 こんな緊急事態だというのに、つい「いい筋肉ね」なんて思ってしまった。 いけない、いけない。元・悪女たるもの、もっと冷徹でなければ。
「おい、起きなさい。ここで寝ていたら潮が満ちて溺れるわよ」
私は少し強めに彼の頬をペチペチと叩いた。 王都の令嬢なら悲鳴を上げて逃げ出すか、あるいは気絶したふりをして殿方の助けを待つところだろうけれど、あいにく私は実家のトラブル処理で「酔っ払った父を叩き起こす」という荒行を日常的にこなしてきた。 この程度の人命救助(物理)、お手の物である。
「う……」
何度か叩くと、彼が微かに唸り声を上げた。 眉間にシワが寄り、苦しげに喘いでいる。
「うぅ……み、ず……」
「水?」
どうやら脱水症状を起こしているらしい。 この炎天下だ。浜辺で倒れていれば当然だろう。 私は周囲を見回した。 ここは屋敷の敷地内にあるプライベートビーチの端。屋敷に戻って水を持ってくるには少し距離がある。
「影の人! いますよね?」
私は誰もいない虚空に向かって声をかけた。 すると、シュタッ! という音と共に、岩陰から黒装束の男が現れた。 祖父がつけてくれた護衛の一人だ。
「はっ! ここに」
「お水を持ってきて。あと、塩分を含んだものも。急いで!」
「御意!」
影の男は風のように姿を消し、そして数秒後(本当に数秒だった。彼らは人間なのだろうか?)には、水筒と小瓶を持って戻ってきた。
「こちらを」
「ありがとう。下がっていて」
私は水筒を受け取り、男の上半身を抱き起こした。 ずっしりと重い。 でも、脱力しているせいか、頭がカクンと私の胸元にもたれかかってくる。
「ちょっと、しっかりしなさい。お水よ、飲める?」
私は水筒の口を彼の唇に当て、ゆっくりと傾けた。 冷たい水が、渇いた唇を潤していく。 最初はむせそうになったが、本能が水分を求めているのか、彼はゴクゴクと喉を鳴らして飲み始めた。
「ぷはっ……!」
しばらくして、彼は大きく息を吐き、ゆっくりと目を開けた。 その瞳の色に、私は一瞬、息を呑んだ。 鮮やかな、それでいて深みのある、アメジストのような紫色の瞳。 夕日を反射してキラキラと輝くその瞳が、ぼんやりと私を捉えた。
「……て、んし……?」
彼は掠れた声で呟いた。
「え?」
「迎えが……来たのか……。そうか、俺は死んだのか……」
「勝手に殺さないでちょうだい。私は天使じゃなくて、通りすがりの人間よ」
私は呆れてため息をついた。 まだ意識が朦朧としているようだ。 「ここはフェルゼン辺境伯領の海岸よ。貴方、熱中症で倒れていたの。わかる?」
「へんきょう……はく……?」
彼は瞬きを繰り返し、次第に焦点が合ってきたようだった。 そして、自分が若い女性(私)に抱きかかえられている状況を認識したのか、ガバッと身体を起こそうとした。
「っ! す、すまない!」
しかし、急に動いたせいで立ちくらみを起こしたのか、再びグラリと体勢を崩す。 私は慌てて彼を支えた。
「無理しないで。まだ身体が熱いわ。座ったままでいて」
「あ、ああ……感謝する……」
彼は岩場に背中を預け、荒い息を整えた。 その仕草一つ一つに、隠しきれない気品がある。 育ちの良さは、極限状態にこそ現れるものだ。 父のように「おい水だ! もっと持ってこい!」と喚かないあたり、彼はまともな教育を受けた人間に違いない。
「それで? 貴方、誰ですか? どうしてこんなところに?」
私は単刀直入に尋ねた。 ここは私有地だ。不法侵入者なら、護衛につまみ出してもらわなければならない。 まあ、こんな無防備な侵入者も珍しいけれど。
彼はバツが悪そうに視線を逸らし、ポリポリと頬を掻いた。
「あー……その……俺は、レオンという。しがない旅人だ」
「旅人?」
「ああ。休暇をとって、噂の美しい海を見に来たんだが……ちょっとしたドジを踏んでな」
彼は苦笑いしながら、海の方を指差した。
「岩場で足を滑らせて、海に落ちたんだ。這い上がったのはいいが、財布も荷物も全部、波にさらわれてしまった」
「ええっ、全部?」
「ああ。一文無しだ。おまけに朝から何も食べていなくてな……空腹と日差しで、意識が飛んでしまったというわけだ」
グゥ~~~~……。
彼の言葉を裏付けるように、腹の虫が盛大に鳴り響いた。 それはもう、波の音を掻き消すほどの音量だった。
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。 レオンと名乗った男は、耳まで真っ赤にして顔を覆った。
「……忘れてくれ」
「ふふっ」
私は思わず吹き出してしまった。 こんなに整った顔立ちの男性が、お腹を鳴らして恥じらっている姿。 そのギャップがおかしくて、可愛らしくて。 警戒心が少しだけ解けていくのを感じた。
「忘れてあげたいけど、そのお腹の音は緊急事態を告げているわね」
私は立ち上がり、先ほど散歩の途中で庭師たちから貰った果物が入った籠(護衛が持っていた)を取り寄せた。 「はい、これ。バナナとマンゴーよ。とりあえず糖分を摂って」
私は完熟したバナナの皮を剥き、彼に差し出した。 彼は「いいのか?」と瞳を揺らし、そして震える手でそれを受け取った。
「かたじけない……!」
彼はバナナを一口で半分ほど頬張った。 よほどお腹が空いていたのだろう。リスのように頬を膨らませて必死に咀嚼している。 続いてマンゴーも、私がナイフ(護衛から借りた)でカットして渡すと、皮ごと吸い付くように食べた。
「うまい……! こんなに美味い果物は食べたことがない……!」
「ふふ、ここの領地の特産品よ。ゆっくり食べて、喉に詰まらせるわよ」
私はさらに、バスケットに入っていたサンドイッチも取り出した。 これは私が小腹が空いた時のために、シェフが持たせてくれたものだ。 厚切りのハムとチーズ、シャキシャキのレタスが挟まっている。
「サンドイッチもあるわよ。食べる?」
「!!」
彼の目が、獲物を狙う肉食獣のように輝いた。 無言で頷く彼にサンドイッチを手渡すと、彼はそれを宝物のように両手で持ち、ガブリと噛み付いた。
「……ッ!!」
感動で言葉が出ないらしい。 目を見開き、天を仰いでいる。
見ているこっちが気持ちよくなるほどの食べっぷりだ。 元婚約者のカイルは、食事のたびに「味が薄い」だの「肉が硬い」だのと文句ばかり言っていたけれど、この人は出されたものを心から感謝して食べてくれる。 食事を作る側(今回はシェフだけど)としては、こういう人にご飯を食べさせたいものだ。
あっという間にサンドイッチ三切れと、バナナ二本、マンゴー一個が彼の胃袋に消えた。 彼は満足げに息を吐き、改めて私に向き直った。
「……生き返った。本当にありがとう。君は命の恩人だ」
彼は真っ直ぐな瞳で私を見つめた。 その眼差しには、媚びも、邪な計算もない。 純粋な感謝の色だけが宿っていた。
「礼には及ばないわ。目の前で野垂れ死にされたら、私の目覚めが悪くなるもの」
私はそっけなく答えた。 そう、これは人助けというより、私の精神衛生上の問題だ。 私は悪女なのだから、優しさなんて売りにしていない。
「ところで、これからどうするつもり? 一文無しなんでしょう?」
「う……痛いところを突くな」
レオンは苦渋の表情を浮かべた。
「正直、困ったことになった。宿も取れないし、帰りの馬車賃もない。王都の知り合いに連絡を取ろうにも、通信手段すら海の中だ」
「……まさか、この浜辺で野宿するつもり?」
「それしかないかもしれん。幸い、ここの気候は暖かいし、星を見ながら寝るのも悪くない」
彼は強がって笑ってみせたが、その笑顔はどこか頼りない。 ここの夜は冷え込むこともあるし、何より蚊が多い。 こんな綺麗な肌のイケメンが、翌朝には虫刺されだらけになっている姿なんて想像したくもない。
(はぁ……)
私は心の中で溜め息をついた。 見捨てればいい。 私はもう、誰かの世話を焼くのはこりごりなのだ。 面倒事はごめんだ。
そう思っているのに。 私の口は、勝手に動いていた。
「……仕方ないわね」
「え?」
「ついてらっしゃい。屋敷に来れば、客室くらい貸してあげるわ」
「えっ!? いや、しかし、そんな迷惑をかけるわけには……! 君は貴族の令嬢なのだろう? どこの馬の骨とも知れない男を屋敷に入れるなど……」
彼は慌てて手を振った。 やっぱり常識人だ。 普通なら「ラッキー!」と飛びつくところを、私の立場を心配して断ろうとするなんて。
「あら、私はただの『追放された』令嬢よ? 世間体なんて気にしてないわ」
私はニヤリと笑ってみせた。
「それに、うちは広いから空き部屋なんていくらでもあるの。人手が足りないなら、庭の草むしりでも手伝ってもらえば宿代代わりになるしね」
「草むしり……?」
「嫌ならいいのよ。ここでカニと一緒に寝れば」
私が歩き出そうとすると、彼は慌てて立ち上がった。
「ま、待ってくれ! 草むしりでも皿洗いでも何でもする! どうか、一晩の宿を頼みたい!」
必死な顔で頭を下げる彼を見て、私は思わず笑ってしまった。
「交渉成立ね。じゃあ、まずはその濡れた服を着替えましょう。おじい様の若い頃の服が入るかしら……ちょっと胸板が厚すぎるかもしれないけど」
私は彼の鍛え上げられた胸板をジロリと見た。 彼はまた顔を赤くして、シャツの襟を合わせた。
「そ、そうまじまじと見ないでくれ……」
「あら、減るもんじゃないでしょ。さ、行くわよ」
私は彼を先導して、屋敷への道を歩き始めた。 背後から、彼がついてくる気配がする。
(……何やってるんだろ、私)
拾ってしまった。 犬や猫ならまだしも、大の大人の男を。 おじい様に知られたら、きっと大騒ぎになるだろう。 「どこの虫だ! 消毒だ!」と火炎魔法が飛んでくるかもしれない。
でも。 彼と話していると、不思議と心が軽くなる気がした。 実家の人間たちのようなドロドロとした欲望を感じないからだろうか。 それとも、彼のあの無防備な笑顔のせいだろうか。
「……まあ、いいわ。退屈しのぎにはなりそうだし」
私は自分に言い訳をして、前を向いた。
◇
レオン視点
彼女の背中を見つめながら、俺――レオンハルト・フォン・アークライト第二王子は、密かに安堵のため息をついていた。
助かった。 本当に、死ぬかと思った。
公務の激務から逃げ出し、お忍びでこのリゾート地に来たのは良かったが、まさか到着早々にボートから転落し、全てを失って漂流するとは。 王宮の者が知れば卒倒するような大失態だ。
だが、そのおかげで俺は出会うことができた。 この、不思議な女性に。
彼女――エリザと言ったか。 最初は高慢な貴族令嬢かと思った。 言葉遣いはぞんざいだし、態度は大きい。
だが、彼女の行動は、驚くほど的確で、温かかった。 俺が脱水で苦しんでいる時、すぐに水と塩分を用意させた判断力。 飢えている俺に、躊躇なく自分の食事を分け与えた慈悲深さ。 そして何より、どこの誰とも知れない俺を「放っておけない」と屋敷に招き入れる、その危ういほどの優しさ。
王宮にいる貴族たちは、皆仮面を被っている。 俺の「王子」という地位に媚びへつらい、腹の中では利益のことしか考えていない。
しかし彼女は、俺をただの「レオン」として扱った。 俺の地位も名誉も知らないまま、一人の人間として助けてくれた。
「……面白い」
俺は口元を緩めた。 彼女は自分を「悪女」だと言った。 「追放された」とも。
一体、どんな事情があるのだろう。 これほど美しく、賢く、優しい女性を追放するなんて、どこのどいつだ? その節穴の目をくり抜いてやりたいくらいだ。
彼女のことが知りたい。 もっと話したい。 この胸の高鳴りは、単なる吊り橋効果なのだろうか。それとも――。
「ねえ、早くしないと夕飯の時間に遅れるわよ!」
前を行く彼女が振り返り、呆れたように俺を呼んだ。 夕日に照らされたその笑顔は、どんな宝石よりも眩しく、俺の心臓を鷲掴みにした。
「ああ、今行く!」
俺は駆け出した。 この出会いが、俺の、いや、この国の運命を大きく変えることになるなんて、まだ知らずに。
ただ一つ確かなことは。 俺の「バカンス」は、ここからが本番だということだ。
◇
エリザ視点に戻る
屋敷の勝手口からこっそりと入ろうとしたが、甘かった。 玄関ホールには、仁王立ちした祖父と、腕組みをした祖母が待ち構えていたのだ。
「エリザ! 遅いぞ! 心配して捜索隊を出そうかと……む?」
祖父の鋭い視線が、私の後ろにいる濡れ鼠のレオンを捉えた。 瞬間、室内の温度が五度くらい下がった気がした。
「……エリザよ。その後ろにいる、泥まみれの野良犬はなんだ?」
「ひっ」
レオンが小さく悲鳴を上げた。 祖父の放つ『覇気』は、一般人(という設定の王子)には刺激が強すぎる。
「おじい様、言葉が過ぎますわ。野良犬じゃなくて、遭難者さんよ」
私はレオンの前に立ち、彼を庇った。
「浜辺で倒れていたの。放っておいたら死んじゃいそうだったから、連れてきたわ。一晩だけ泊めてあげて」
「ならん! 男を連れ込むなど、淑女のすることではない! 今すぐつまみ出せ!」
「おじい様!」
私が抗議しようとした時、それまで黙っていた祖母が口を開いた。 祖母はレオンの顔をじっと見つめ、そしてハッとしたように目を見開いた。 「あら……? 貴方、もしかして……」
祖母は元公爵令嬢で、王家とも繋がりが深い。 まさか、レオンの正体に気づいた?
レオンが焦ったように祖母に目配せをした。 『頼む、黙っていてくれ』という懇願の視線だ。
祖母は一瞬キョトンとした後、扇子で口元を隠して「うふふ」と笑った。
「まあ、いい男じゃないの。若い頃のあなたにそっくりだわ、ギルバート」
「なっ……わ、わしにか!?」
祖父が動揺する。 祖母の「あなたに似ている」という言葉は、祖父にとって最強のキラーワードだ。
「う、うむ……そう言われてみれば、この鼻筋あたりが、わしの若い頃の聡明さを彷彿とさせる……かもしれん」
「でしょう? エリザが拾ってきたのも何かの縁。泊めてあげましょうよ」
「ぐぬぬ……エレオノーラがそう言うなら……」
祖父は渋々といった様子で頷いた。 ちょろい。 さすがはおばあ様だ。
「感謝します、閣下、奥様!」
レオンが深々と頭を下げる。 その礼儀正しい所作を見て、祖父の機嫌も少し直ったようだった。
「ふん、礼儀はなっているようだな。おい、執事! この男を客室へ案内しろ! あと、わしの古着を貸してやれ!」
「はっ」
執事がレオンを連れていく。 去り際に、レオンは私を振り返り、音のない口パクで『ありがとう』と伝えてきた。 その笑顔が、不覚にもドキッとするほど素敵で。
「……もう」
私は熱くなりそうな頬を叩いて誤魔化した。
こうして、私のリゾート生活に、謎のイケメン居候が加わることになった。 波乱の予感しかしないけれど、まあ、退屈するよりはマシよね?
一方その頃。 王都の実家では、私の予言通り、最初の「崩壊」が始まろうとしていた。
波打ち際で倒れている謎の男性の肩を、私は恐る恐る揺すってみた。 反応はない。 ただ、濡れたシャツ越しに伝わってくる体温は、彼がまだ現世に留まっていることを示していた。 温かい。というより、少し熱いくらいだ。
「……死んではいないみたい」
私は胸を撫で下ろし、改めて彼の様子を観察した。 夕日に照らされたその横顔は、彫刻のように整っていた。 濡れて頬に張り付いた金色の髪。 長く伸びた睫毛。 スッと通った鼻筋に、血色の良い唇。
着ている服は上質な麻のシャツと、仕立ての良いズボン。 ただ、海水を含んで重そうに肌に張り付いており、その下にある鍛え上げられた肉体のラインを露わにしている。 ……あらやだ。 こんな緊急事態だというのに、つい「いい筋肉ね」なんて思ってしまった。 いけない、いけない。元・悪女たるもの、もっと冷徹でなければ。
「おい、起きなさい。ここで寝ていたら潮が満ちて溺れるわよ」
私は少し強めに彼の頬をペチペチと叩いた。 王都の令嬢なら悲鳴を上げて逃げ出すか、あるいは気絶したふりをして殿方の助けを待つところだろうけれど、あいにく私は実家のトラブル処理で「酔っ払った父を叩き起こす」という荒行を日常的にこなしてきた。 この程度の人命救助(物理)、お手の物である。
「う……」
何度か叩くと、彼が微かに唸り声を上げた。 眉間にシワが寄り、苦しげに喘いでいる。
「うぅ……み、ず……」
「水?」
どうやら脱水症状を起こしているらしい。 この炎天下だ。浜辺で倒れていれば当然だろう。 私は周囲を見回した。 ここは屋敷の敷地内にあるプライベートビーチの端。屋敷に戻って水を持ってくるには少し距離がある。
「影の人! いますよね?」
私は誰もいない虚空に向かって声をかけた。 すると、シュタッ! という音と共に、岩陰から黒装束の男が現れた。 祖父がつけてくれた護衛の一人だ。
「はっ! ここに」
「お水を持ってきて。あと、塩分を含んだものも。急いで!」
「御意!」
影の男は風のように姿を消し、そして数秒後(本当に数秒だった。彼らは人間なのだろうか?)には、水筒と小瓶を持って戻ってきた。
「こちらを」
「ありがとう。下がっていて」
私は水筒を受け取り、男の上半身を抱き起こした。 ずっしりと重い。 でも、脱力しているせいか、頭がカクンと私の胸元にもたれかかってくる。
「ちょっと、しっかりしなさい。お水よ、飲める?」
私は水筒の口を彼の唇に当て、ゆっくりと傾けた。 冷たい水が、渇いた唇を潤していく。 最初はむせそうになったが、本能が水分を求めているのか、彼はゴクゴクと喉を鳴らして飲み始めた。
「ぷはっ……!」
しばらくして、彼は大きく息を吐き、ゆっくりと目を開けた。 その瞳の色に、私は一瞬、息を呑んだ。 鮮やかな、それでいて深みのある、アメジストのような紫色の瞳。 夕日を反射してキラキラと輝くその瞳が、ぼんやりと私を捉えた。
「……て、んし……?」
彼は掠れた声で呟いた。
「え?」
「迎えが……来たのか……。そうか、俺は死んだのか……」
「勝手に殺さないでちょうだい。私は天使じゃなくて、通りすがりの人間よ」
私は呆れてため息をついた。 まだ意識が朦朧としているようだ。 「ここはフェルゼン辺境伯領の海岸よ。貴方、熱中症で倒れていたの。わかる?」
「へんきょう……はく……?」
彼は瞬きを繰り返し、次第に焦点が合ってきたようだった。 そして、自分が若い女性(私)に抱きかかえられている状況を認識したのか、ガバッと身体を起こそうとした。
「っ! す、すまない!」
しかし、急に動いたせいで立ちくらみを起こしたのか、再びグラリと体勢を崩す。 私は慌てて彼を支えた。
「無理しないで。まだ身体が熱いわ。座ったままでいて」
「あ、ああ……感謝する……」
彼は岩場に背中を預け、荒い息を整えた。 その仕草一つ一つに、隠しきれない気品がある。 育ちの良さは、極限状態にこそ現れるものだ。 父のように「おい水だ! もっと持ってこい!」と喚かないあたり、彼はまともな教育を受けた人間に違いない。
「それで? 貴方、誰ですか? どうしてこんなところに?」
私は単刀直入に尋ねた。 ここは私有地だ。不法侵入者なら、護衛につまみ出してもらわなければならない。 まあ、こんな無防備な侵入者も珍しいけれど。
彼はバツが悪そうに視線を逸らし、ポリポリと頬を掻いた。
「あー……その……俺は、レオンという。しがない旅人だ」
「旅人?」
「ああ。休暇をとって、噂の美しい海を見に来たんだが……ちょっとしたドジを踏んでな」
彼は苦笑いしながら、海の方を指差した。
「岩場で足を滑らせて、海に落ちたんだ。這い上がったのはいいが、財布も荷物も全部、波にさらわれてしまった」
「ええっ、全部?」
「ああ。一文無しだ。おまけに朝から何も食べていなくてな……空腹と日差しで、意識が飛んでしまったというわけだ」
グゥ~~~~……。
彼の言葉を裏付けるように、腹の虫が盛大に鳴り響いた。 それはもう、波の音を掻き消すほどの音量だった。
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。 レオンと名乗った男は、耳まで真っ赤にして顔を覆った。
「……忘れてくれ」
「ふふっ」
私は思わず吹き出してしまった。 こんなに整った顔立ちの男性が、お腹を鳴らして恥じらっている姿。 そのギャップがおかしくて、可愛らしくて。 警戒心が少しだけ解けていくのを感じた。
「忘れてあげたいけど、そのお腹の音は緊急事態を告げているわね」
私は立ち上がり、先ほど散歩の途中で庭師たちから貰った果物が入った籠(護衛が持っていた)を取り寄せた。 「はい、これ。バナナとマンゴーよ。とりあえず糖分を摂って」
私は完熟したバナナの皮を剥き、彼に差し出した。 彼は「いいのか?」と瞳を揺らし、そして震える手でそれを受け取った。
「かたじけない……!」
彼はバナナを一口で半分ほど頬張った。 よほどお腹が空いていたのだろう。リスのように頬を膨らませて必死に咀嚼している。 続いてマンゴーも、私がナイフ(護衛から借りた)でカットして渡すと、皮ごと吸い付くように食べた。
「うまい……! こんなに美味い果物は食べたことがない……!」
「ふふ、ここの領地の特産品よ。ゆっくり食べて、喉に詰まらせるわよ」
私はさらに、バスケットに入っていたサンドイッチも取り出した。 これは私が小腹が空いた時のために、シェフが持たせてくれたものだ。 厚切りのハムとチーズ、シャキシャキのレタスが挟まっている。
「サンドイッチもあるわよ。食べる?」
「!!」
彼の目が、獲物を狙う肉食獣のように輝いた。 無言で頷く彼にサンドイッチを手渡すと、彼はそれを宝物のように両手で持ち、ガブリと噛み付いた。
「……ッ!!」
感動で言葉が出ないらしい。 目を見開き、天を仰いでいる。
見ているこっちが気持ちよくなるほどの食べっぷりだ。 元婚約者のカイルは、食事のたびに「味が薄い」だの「肉が硬い」だのと文句ばかり言っていたけれど、この人は出されたものを心から感謝して食べてくれる。 食事を作る側(今回はシェフだけど)としては、こういう人にご飯を食べさせたいものだ。
あっという間にサンドイッチ三切れと、バナナ二本、マンゴー一個が彼の胃袋に消えた。 彼は満足げに息を吐き、改めて私に向き直った。
「……生き返った。本当にありがとう。君は命の恩人だ」
彼は真っ直ぐな瞳で私を見つめた。 その眼差しには、媚びも、邪な計算もない。 純粋な感謝の色だけが宿っていた。
「礼には及ばないわ。目の前で野垂れ死にされたら、私の目覚めが悪くなるもの」
私はそっけなく答えた。 そう、これは人助けというより、私の精神衛生上の問題だ。 私は悪女なのだから、優しさなんて売りにしていない。
「ところで、これからどうするつもり? 一文無しなんでしょう?」
「う……痛いところを突くな」
レオンは苦渋の表情を浮かべた。
「正直、困ったことになった。宿も取れないし、帰りの馬車賃もない。王都の知り合いに連絡を取ろうにも、通信手段すら海の中だ」
「……まさか、この浜辺で野宿するつもり?」
「それしかないかもしれん。幸い、ここの気候は暖かいし、星を見ながら寝るのも悪くない」
彼は強がって笑ってみせたが、その笑顔はどこか頼りない。 ここの夜は冷え込むこともあるし、何より蚊が多い。 こんな綺麗な肌のイケメンが、翌朝には虫刺されだらけになっている姿なんて想像したくもない。
(はぁ……)
私は心の中で溜め息をついた。 見捨てればいい。 私はもう、誰かの世話を焼くのはこりごりなのだ。 面倒事はごめんだ。
そう思っているのに。 私の口は、勝手に動いていた。
「……仕方ないわね」
「え?」
「ついてらっしゃい。屋敷に来れば、客室くらい貸してあげるわ」
「えっ!? いや、しかし、そんな迷惑をかけるわけには……! 君は貴族の令嬢なのだろう? どこの馬の骨とも知れない男を屋敷に入れるなど……」
彼は慌てて手を振った。 やっぱり常識人だ。 普通なら「ラッキー!」と飛びつくところを、私の立場を心配して断ろうとするなんて。
「あら、私はただの『追放された』令嬢よ? 世間体なんて気にしてないわ」
私はニヤリと笑ってみせた。
「それに、うちは広いから空き部屋なんていくらでもあるの。人手が足りないなら、庭の草むしりでも手伝ってもらえば宿代代わりになるしね」
「草むしり……?」
「嫌ならいいのよ。ここでカニと一緒に寝れば」
私が歩き出そうとすると、彼は慌てて立ち上がった。
「ま、待ってくれ! 草むしりでも皿洗いでも何でもする! どうか、一晩の宿を頼みたい!」
必死な顔で頭を下げる彼を見て、私は思わず笑ってしまった。
「交渉成立ね。じゃあ、まずはその濡れた服を着替えましょう。おじい様の若い頃の服が入るかしら……ちょっと胸板が厚すぎるかもしれないけど」
私は彼の鍛え上げられた胸板をジロリと見た。 彼はまた顔を赤くして、シャツの襟を合わせた。
「そ、そうまじまじと見ないでくれ……」
「あら、減るもんじゃないでしょ。さ、行くわよ」
私は彼を先導して、屋敷への道を歩き始めた。 背後から、彼がついてくる気配がする。
(……何やってるんだろ、私)
拾ってしまった。 犬や猫ならまだしも、大の大人の男を。 おじい様に知られたら、きっと大騒ぎになるだろう。 「どこの虫だ! 消毒だ!」と火炎魔法が飛んでくるかもしれない。
でも。 彼と話していると、不思議と心が軽くなる気がした。 実家の人間たちのようなドロドロとした欲望を感じないからだろうか。 それとも、彼のあの無防備な笑顔のせいだろうか。
「……まあ、いいわ。退屈しのぎにはなりそうだし」
私は自分に言い訳をして、前を向いた。
◇
レオン視点
彼女の背中を見つめながら、俺――レオンハルト・フォン・アークライト第二王子は、密かに安堵のため息をついていた。
助かった。 本当に、死ぬかと思った。
公務の激務から逃げ出し、お忍びでこのリゾート地に来たのは良かったが、まさか到着早々にボートから転落し、全てを失って漂流するとは。 王宮の者が知れば卒倒するような大失態だ。
だが、そのおかげで俺は出会うことができた。 この、不思議な女性に。
彼女――エリザと言ったか。 最初は高慢な貴族令嬢かと思った。 言葉遣いはぞんざいだし、態度は大きい。
だが、彼女の行動は、驚くほど的確で、温かかった。 俺が脱水で苦しんでいる時、すぐに水と塩分を用意させた判断力。 飢えている俺に、躊躇なく自分の食事を分け与えた慈悲深さ。 そして何より、どこの誰とも知れない俺を「放っておけない」と屋敷に招き入れる、その危ういほどの優しさ。
王宮にいる貴族たちは、皆仮面を被っている。 俺の「王子」という地位に媚びへつらい、腹の中では利益のことしか考えていない。
しかし彼女は、俺をただの「レオン」として扱った。 俺の地位も名誉も知らないまま、一人の人間として助けてくれた。
「……面白い」
俺は口元を緩めた。 彼女は自分を「悪女」だと言った。 「追放された」とも。
一体、どんな事情があるのだろう。 これほど美しく、賢く、優しい女性を追放するなんて、どこのどいつだ? その節穴の目をくり抜いてやりたいくらいだ。
彼女のことが知りたい。 もっと話したい。 この胸の高鳴りは、単なる吊り橋効果なのだろうか。それとも――。
「ねえ、早くしないと夕飯の時間に遅れるわよ!」
前を行く彼女が振り返り、呆れたように俺を呼んだ。 夕日に照らされたその笑顔は、どんな宝石よりも眩しく、俺の心臓を鷲掴みにした。
「ああ、今行く!」
俺は駆け出した。 この出会いが、俺の、いや、この国の運命を大きく変えることになるなんて、まだ知らずに。
ただ一つ確かなことは。 俺の「バカンス」は、ここからが本番だということだ。
◇
エリザ視点に戻る
屋敷の勝手口からこっそりと入ろうとしたが、甘かった。 玄関ホールには、仁王立ちした祖父と、腕組みをした祖母が待ち構えていたのだ。
「エリザ! 遅いぞ! 心配して捜索隊を出そうかと……む?」
祖父の鋭い視線が、私の後ろにいる濡れ鼠のレオンを捉えた。 瞬間、室内の温度が五度くらい下がった気がした。
「……エリザよ。その後ろにいる、泥まみれの野良犬はなんだ?」
「ひっ」
レオンが小さく悲鳴を上げた。 祖父の放つ『覇気』は、一般人(という設定の王子)には刺激が強すぎる。
「おじい様、言葉が過ぎますわ。野良犬じゃなくて、遭難者さんよ」
私はレオンの前に立ち、彼を庇った。
「浜辺で倒れていたの。放っておいたら死んじゃいそうだったから、連れてきたわ。一晩だけ泊めてあげて」
「ならん! 男を連れ込むなど、淑女のすることではない! 今すぐつまみ出せ!」
「おじい様!」
私が抗議しようとした時、それまで黙っていた祖母が口を開いた。 祖母はレオンの顔をじっと見つめ、そしてハッとしたように目を見開いた。 「あら……? 貴方、もしかして……」
祖母は元公爵令嬢で、王家とも繋がりが深い。 まさか、レオンの正体に気づいた?
レオンが焦ったように祖母に目配せをした。 『頼む、黙っていてくれ』という懇願の視線だ。
祖母は一瞬キョトンとした後、扇子で口元を隠して「うふふ」と笑った。
「まあ、いい男じゃないの。若い頃のあなたにそっくりだわ、ギルバート」
「なっ……わ、わしにか!?」
祖父が動揺する。 祖母の「あなたに似ている」という言葉は、祖父にとって最強のキラーワードだ。
「う、うむ……そう言われてみれば、この鼻筋あたりが、わしの若い頃の聡明さを彷彿とさせる……かもしれん」
「でしょう? エリザが拾ってきたのも何かの縁。泊めてあげましょうよ」
「ぐぬぬ……エレオノーラがそう言うなら……」
祖父は渋々といった様子で頷いた。 ちょろい。 さすがはおばあ様だ。
「感謝します、閣下、奥様!」
レオンが深々と頭を下げる。 その礼儀正しい所作を見て、祖父の機嫌も少し直ったようだった。
「ふん、礼儀はなっているようだな。おい、執事! この男を客室へ案内しろ! あと、わしの古着を貸してやれ!」
「はっ」
執事がレオンを連れていく。 去り際に、レオンは私を振り返り、音のない口パクで『ありがとう』と伝えてきた。 その笑顔が、不覚にもドキッとするほど素敵で。
「……もう」
私は熱くなりそうな頬を叩いて誤魔化した。
こうして、私のリゾート生活に、謎のイケメン居候が加わることになった。 波乱の予感しかしないけれど、まあ、退屈するよりはマシよね?
一方その頃。 王都の実家では、私の予言通り、最初の「崩壊」が始まろうとしていた。
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