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第28話 言葉が届かない
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鉄格子の嵌(は)まった窓から、四角く切り取られた空を見る。
雪は止んだが、空は相変わらずどんよりと灰色だ。
私はこの部屋に閉じ込められて三日が経っていた。
快適だ。
部屋は暖かく、食事は美味しく、欲しい本や衣服は言えばすぐに出てくる。
レージは完璧に私を世話し、完璧に私を管理している。
外からの情報は一切入ってこない。
村がどうなったのか、あの爆発の原因は何だったのか。
聞いても、「ご心配には及びません」とはぐらかされるだけ。
(……息が詰まる)
喉の奥に、硬い塊がつかえているような感覚。
これは「守られている」のではない。
「飼われている」のだ。
ガチャリ。
鍵が開く音がして、レージが入ってきた。
手には銀の盆。午後のお茶だ。
「顔色が優れませんね。少し窓を開けて換気しましょうか」
彼は私の返事を待たず、窓に近づく。
その背中があまりに当然のように振る舞うことに、私の中で何かが切れた。
「……ねえ」
「はい」
「私、あの時……処刑台の上で、何を考えていたと思う?」
レージの手が止まる。
彼はゆっくりと振り返った。
その表情が、さっと色を失っていく。
私は今まで、彼にさえ前回の死の瞬間のことを話していなかった。
話せば、それが現実になってしまいそうで怖かったから。
でも、今は話さなければならない。
この過剰な守りが、私を別の意味で殺そうとしていることを伝えるために。
「寒かったわ。すごく」
声が震える。
喉が痛い。
言葉にするたびに、あの日の蝋の匂いと、血の鉄臭さが蘇る。
「誰も私の目を見てくれなかった。みんな、私が死ぬのをショーとして楽しんでいた。……でもね、一番怖かったのは」
私はレージの目を真っ直ぐに見つめた。
「私が何か言おうとしても、誰も聞いてくれなかったことよ。『黙れ』って。私の言葉なんて、最初からなかったことにされた」
涙が頬を伝う。
レージは動けない。彫像のように固まっている。
「今のあなたとおなじよ、レージ」
「……ッ」
「あなたは私を守ると言って、私の耳を塞ぎ、目を覆い、口を封じている。……それは、あの断罪と同じよ」
残酷な言葉を投げつける。
彼を傷つけるとわかっていて。
レージは一度口を開きかけ、そして閉じた。
何かを言おうとして、言葉が見つからないように。
彼は抱きしめてはくれなかった。
ただ、私との間に引かれた見えない線を守るように、一歩下がって深く頭を下げた。
「……申し訳、ございません」
絞り出すような謝罪。
けれど、彼は鍵を開けようとはしなかった。
彼の恐怖は、私の言葉よりもまだ深いところにある。
私たちは互いに傷を見せ合いながら、触れ合うことができない。
部屋の空気は温かいはずなのに、私の心臓だけが凍えたままだった。
雪は止んだが、空は相変わらずどんよりと灰色だ。
私はこの部屋に閉じ込められて三日が経っていた。
快適だ。
部屋は暖かく、食事は美味しく、欲しい本や衣服は言えばすぐに出てくる。
レージは完璧に私を世話し、完璧に私を管理している。
外からの情報は一切入ってこない。
村がどうなったのか、あの爆発の原因は何だったのか。
聞いても、「ご心配には及びません」とはぐらかされるだけ。
(……息が詰まる)
喉の奥に、硬い塊がつかえているような感覚。
これは「守られている」のではない。
「飼われている」のだ。
ガチャリ。
鍵が開く音がして、レージが入ってきた。
手には銀の盆。午後のお茶だ。
「顔色が優れませんね。少し窓を開けて換気しましょうか」
彼は私の返事を待たず、窓に近づく。
その背中があまりに当然のように振る舞うことに、私の中で何かが切れた。
「……ねえ」
「はい」
「私、あの時……処刑台の上で、何を考えていたと思う?」
レージの手が止まる。
彼はゆっくりと振り返った。
その表情が、さっと色を失っていく。
私は今まで、彼にさえ前回の死の瞬間のことを話していなかった。
話せば、それが現実になってしまいそうで怖かったから。
でも、今は話さなければならない。
この過剰な守りが、私を別の意味で殺そうとしていることを伝えるために。
「寒かったわ。すごく」
声が震える。
喉が痛い。
言葉にするたびに、あの日の蝋の匂いと、血の鉄臭さが蘇る。
「誰も私の目を見てくれなかった。みんな、私が死ぬのをショーとして楽しんでいた。……でもね、一番怖かったのは」
私はレージの目を真っ直ぐに見つめた。
「私が何か言おうとしても、誰も聞いてくれなかったことよ。『黙れ』って。私の言葉なんて、最初からなかったことにされた」
涙が頬を伝う。
レージは動けない。彫像のように固まっている。
「今のあなたとおなじよ、レージ」
「……ッ」
「あなたは私を守ると言って、私の耳を塞ぎ、目を覆い、口を封じている。……それは、あの断罪と同じよ」
残酷な言葉を投げつける。
彼を傷つけるとわかっていて。
レージは一度口を開きかけ、そして閉じた。
何かを言おうとして、言葉が見つからないように。
彼は抱きしめてはくれなかった。
ただ、私との間に引かれた見えない線を守るように、一歩下がって深く頭を下げた。
「……申し訳、ございません」
絞り出すような謝罪。
けれど、彼は鍵を開けようとはしなかった。
彼の恐怖は、私の言葉よりもまだ深いところにある。
私たちは互いに傷を見せ合いながら、触れ合うことができない。
部屋の空気は温かいはずなのに、私の心臓だけが凍えたままだった。
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