緊急! 超獣鋼猟 ウイークエンダー・ラビット ~パーフェクト朱墨の山~

リューガ

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21.こん棒と、決断

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 アーリンくんが、手を上げた。
「佐竹さん」
 おずおずと尋ねてきた。
「炭素繊維は、こちらの世界でも新しいもののはずです。
 霊的な使われ方をするのに、技術が確立しているのですか?」
 やっぱり、そこが気になりますか。
 いい傾向だ、よね。
「ゆるキャラにも使われてますから」
 アーリンくんはオズオズとうなずきながら下がっていった。
 ……本当にいいのだろうか。
 炭素繊維のリボンは、器用に歯の入る穴をよけてまかれていく。
 巻き終わったところには、筆やヘラでウルシがぬられていく。
「スムーズだね。本当に」
 朱墨ちゃんもそう思うんだね。
「先輩の人柄がわかるでしょ。
 機械は旦那様の、漆器は職人さんの技術が必要だったはず。
 それをしっかり結びつけるのは、あの人の人徳なのよ」
 誇らしい、という気持ちが、少し心を軽くしてくれた。
 朱墨ちゃんも、そうだといいな。
 こん棒は薄く塗りおわり、茶色になった。
 再び時間加速ルームに入っていく。
「乾燥したら、磨き、ウルシ塗り。それをくりかえします」
 お札と、歯がやってきた。
 紙は白く、絵も色鮮やかになってる。
 デコボコした、たぶん空へ真っ直ぐのびた棒。
 その先にはモコモコと広がるものが、立体的に描かれている。
 あれは、聖なる木だね。
 歯も、真っ白。
 歯の入っていた穴が、再びドリルで開けられる。
 新しいウルシでしっかり固定される。
 お札も張りなおされ、最後に全体がウルシでコーティングされた。
 最後の時間加速。
 そして、磨き上げられていく。
「これで完成です」
 ベルトコンベアから取りだしたそれは、ツヤのある黒みを帯びた茶色。
 しっかりとした輝き。
 さわり心地は、なめらかで気持ちイイ。
「佐竹さん、不調法でも押し分けないのですが」
 次に訪ねてきたのは、おつきの女性騎士。
「ウルシ漆器のことについて、少し調べたことがありました。
 確か、金ぱくや貝殻を砕いたもので装飾を施していたと思うのですが。
 ウルシにも、色を付けていたはずですが」
 だんだん元気がでてきたみたい。
「もともと施された魔法を、邪魔しないためだと聞いてます。
 魔法陣に勝手に手を加えてとんでもない結果になることは、ありますから」
 魔法の力というのは、機械を狂わせることが多いんです」
 修理マシンのとなりに、自動販売機がある。
 別売りのケースをこん棒のサイズに合わせて選んでくれる。
 こっちの支払いは、前ほどストレスを感じなくてよかった。
「それで、このこん棒はどうするんですか」
 女性騎士が再び聴いてきた。
 きやすく質問してくれるのは、いい変化だな。
「いわゆる、お守りです」
 イタい出費なのは変わらないけど。
 出てきたのは、野球バットのケースだった。
 それに収めてから、説明を続ける。
「機械で使えなければ困るものといえば、まずスマホです。
 ケータイとも言います」
 私のを見せながら、続ける。
「遠くの人とも連絡をとるための機械です。
 景色を写し取って、送ることもできます」
 説明していて、不安になってきた。
 これで意味が通じているのかな?
 暗号世界の人に似たようなことは何度もやっているけど、何度も不安になるよ。
「これが使えるだけで、生き延びる可能性は格段に高まります」
 ここは事実。力を込めて伝えた。
 私はアーリンくんに近づく。
「この世界には、異能力者は少ないし、専門の教育を受けていない人もたくさんいます。
 でも、そういう事件に巻き込まれる人はたくさんいます」
 そこで、こん棒をわたす。
「これは、さしあげます。
 だれか、必要としている人にわたしてくれたら、うれしいです」
 アーリンくんは、受けとった。
「心して、受け取らせていただきます」
 そう、力強くうなづいた。
 きっと、これが本来の彼なんだ。
「感動した!!」
 ビックリした!
 パチパチと大きな拍手とともに、叫ぶ声!
 昴さんだ。
「ピーンと閃いたことがある。
 佐竹くん。これを今日のお礼にしたい。
 今日は無理になったけど細かい点は、次の機会に知らせるよ」
 昴さんは、そう言うと説明が必要そうなお客の方へ向かっていった。
(一体なんだろう)
 と思ったら、「そう言えば」と言いながら振り向いた。
「地球と接触を持った暗号世界は、約7割がノーマルには使えない物を持ってるんだ。
 俺もそんな世界の出身だ。
 だから、言いきれると思う。絶対挽回できる」
 そう言うと、お客に向かっていく。
(そうだ。そうですよね)
 心の底からカッコイイと思いながら、昴さんが期待をかけた人たちを見る。
「それで、何ができるか、決まった?」
 朱墨ちゃんがアーリンくんに話しかけてる。
 さっきの、ロボルケーナの件とは180度ちがう、親しげな様子で。
「まだ、アイディア段階ですけどね。
 人が大勢関わることだし、すぐには答えられません」
 自分の不利になりそうなこと。
 それでも、はっきり口にだしている。
「それでも、われわれは……」
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