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第2章
帝国の正体
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俺は胸に顔を埋めてまだ少し泣いているユイの頭を撫でながら考えた。
(ユイの家族を皆殺しにした国か......
この依頼が終わったら色々調べないとな)
⦅その事でしたら私にお任せ下さい⦆
「のわっ!」
いきなり脳内で話しかけてきたものだからびっくりしてしまった。
(そういえばお前に聞けば大体の答えは返ってくるんだよな)
⦅えぇ、貴方様が知ろうと思ったことは私にお任せを⦆
(そうだな、言わなくてもわかること思うがユイの国、5年くらい前にエルフの国を滅ぼしたのは誰だ?)
俺はあえて『国』とは聞かなかった。
理由は簡単だ。この世界には色々な集団がある。宗教団体や過激派組織、盗賊などもあるので、一概に『国』がやったとは思いたくない。『ひとつの集団』と『ひとつの国』では、もし戦いになった時の状況も変わる。
下手をすれば国家転覆罪という一家皆殺しの最重罪になりかねない。その中にはメイドや、執事なども含まれるため、俺の場合、親が侯爵なのでかなりの人が死ぬことになる。
そんな事を心配していたのだが、次の言葉で全て意味がなくなった。
⦅エルフの国、『メアリ国』を滅ぼしたのは、この国、『リエルタ王国』の隣にある『ネガル帝国』です⦆
(ネガル帝国か.........)
その名前は何度が聞いたことがある。
お父さんは侯爵になってから政治に深く関わるようになった。
この国では公爵が1人、侯爵が3人いる。
その中に、外交担当、内政担当など役職が与えられている。そして、信頼のある伯爵位を持っている人にもそのような役職が与えられる。
お父さんは伯爵の時に外交のことを少し手伝っていたので、ネガル帝国の事は何度か愚痴っていた。
(お父さんの影響であまりいい印象はないんだよなぁ)
⦅印象だけでなく、実際にあまり好ましくないことをしています⦆
(どんなことだ?)
⦅あの国は軍事国家で他の国を攻め、領地を広げ、その国から金を奪い、奪った領地の税金をかなり高くしているそうです。割と普通に暮らせるのは帝国の帝都、そしてその周辺くらいだそうです。
その他の地域は税金が馬鹿みたいに高く、とても暮らしていくには難しいほどだそうです。⦆
(それだったら帝都、もしくはその周辺の土地に引っ越す、それか他の国に移り住めばいいのに)
⦅それができたら今の帝国はほとんど力を失っていますよ⦆
(考えたくなかったんだが────
もしかして、その人達はその場所から引っ越せないのか?)
⦅それだけではありません。その場所から『出られない』のです。取引などは帝都の人が仲介に入るのでほんとに出る機会が無いのです⦆
(そこまでなのか?)
それは日本の昔、江戸時代より酷いんじゃないか?その場所から移り住むどころか出られないなんて......
(とりあえず、ありがとな)
⦅いえ、これが私の役目ですので⦆
「ふぅ~~」
(まさかそこまでだったとはな......)
今度機会があれば乗り込んでみようと思う俺であった。
「すー、すー」
そんな声が聞こえ、胸元を見てみるとユイがそのまま寝てしまっていた。
「ありゃりゃ、寝ちゃってるし。仕方ない、連れていくか」
俺はユイをお姫様抱っこした。
「なんかデジャブ感が半端ないけど......まぁいっか」
そんな事を言いながらユイをベッドへ連れていき、寝かした。
その頃、王都では。
王城の豪華な部屋────
そこは応接室兼王様の執務室だ。
中には国王が椅子に座ってまとめられている書類に目を通していた。
その人の名前はレクト・ミラ・リエルタ。
見た目50歳くらいの白髪、そして少しヒゲを生やしている。
体は公爵とあまり変わらない180センチくらいだ。服は国王ということもありかなり豪華な服を着ている。
そこに一人の男が入ってきた。
「し、失礼します、陛下!」
「どうしたんじゃ、ノックもなしに...
リックよ」
そこに入ってきたのはリック、エリックの父親であり、侯爵位を持っているリック・ミラ・アウィーズだった。
今は仕事で領地を離れて王都にいる。
「陛下!この書類を見てください!」
「なんじゃ?」
レクトはリックに渡された書類に目を通す。
読み終わった時には目を大きく見開き、驚きの表情を隠せないでいた。
「また国がひとつ滅びたのか」
「えぇ、『ネガル帝国』の手によって、またひとつの国が失われました」
「この5年間でおよそ10の国が滅びるとはな......」
「私も驚いております。これでこの大陸の東側に残された国はあと2つです」
「エルフの国と魔族の国...か」
この国がある大陸は一番でかい大陸だ。
東側にはネガル帝国があり、東の殆どを領地として持っている。
そして中央から西にかけてあるのがこの国、リエルタ王国だ。リエルタ王国の西側にはいくつもの国があり、それぞれの領地を持ち、国家間の連携もしっかり取れている。
東側と西側では治安の良さを含め、雲泥の差がある。
そして残っているエルフの国はリエルタ王国の東側の下の方に隣合って領地を持っているため、侵略は何とか免れていた。
「はい。もしかすると、近日中にもどちらかの国が攻められるかと......」
「何っ!それは本当か!」
「あくまで推測ですが今回の戦争でネガル帝国は大きな損失はないのです。」
「どういう事じゃ?」
「今回は、ネガル帝国が経済的に圧力をかけ、軍事関係にあまりお金が回せない状況を作った上で攻めたので、相手もほぼ素手の状態だったそうです......」
リックが言いにくそうに話す。
「そうか...」
レクトは少し考え、話し始めた。
「他国のことに関してはあまり口出しすることではない。ネガル帝国はそういう国なのじゃから。じゃがのぅ、そういう国だからこそこの国、リエルタ王国に攻めてくる日もそう遠くないということじゃろう」
「早ければここ2、3年で攻めてくるでしょう。もしかしたら来年という可能性も......」
「そうじゃな、とにかく会議を開く!政治に関わっているものを全員呼んでこい!早ければ来週にも会議を行う!」
「ははっ!」
そう言ってリックは部屋を出ていき、王都にある屋敷に戻った。
帰ってきて早々執務室の中に入り、数人の従者と会議に参加する者への手紙を書き、気がつけば次の日の朝になっていた。
「ふぅ~、やっと終わったか。」
リックは執務室の窓から朝日を眺めながら言った。
手紙は既に従者に渡し、届ける準備をしてもらっているのであとは会議の日まで待つだけだった。
「エリックのやつ、今頃は何してるかな?初めは王都に行くって言ってたからまだいるかもな」
そんなことを考えながらかなりでかいベッドに入り、仮眠をとった。
エリックside
俺は昨日の晩、ユイを寝かせ、自分の布団に行こうとしたら少女、そう黒龍がいた。
「あ、忘れてた。俺のベッドにこいつを寝かしてたんだったな」
そして俺はもうひとつベッドを作って寝た。
普通ではできないことを平気でやってのけるエリックであった。
(ユイの家族を皆殺しにした国か......
この依頼が終わったら色々調べないとな)
⦅その事でしたら私にお任せ下さい⦆
「のわっ!」
いきなり脳内で話しかけてきたものだからびっくりしてしまった。
(そういえばお前に聞けば大体の答えは返ってくるんだよな)
⦅えぇ、貴方様が知ろうと思ったことは私にお任せを⦆
(そうだな、言わなくてもわかること思うがユイの国、5年くらい前にエルフの国を滅ぼしたのは誰だ?)
俺はあえて『国』とは聞かなかった。
理由は簡単だ。この世界には色々な集団がある。宗教団体や過激派組織、盗賊などもあるので、一概に『国』がやったとは思いたくない。『ひとつの集団』と『ひとつの国』では、もし戦いになった時の状況も変わる。
下手をすれば国家転覆罪という一家皆殺しの最重罪になりかねない。その中にはメイドや、執事なども含まれるため、俺の場合、親が侯爵なのでかなりの人が死ぬことになる。
そんな事を心配していたのだが、次の言葉で全て意味がなくなった。
⦅エルフの国、『メアリ国』を滅ぼしたのは、この国、『リエルタ王国』の隣にある『ネガル帝国』です⦆
(ネガル帝国か.........)
その名前は何度が聞いたことがある。
お父さんは侯爵になってから政治に深く関わるようになった。
この国では公爵が1人、侯爵が3人いる。
その中に、外交担当、内政担当など役職が与えられている。そして、信頼のある伯爵位を持っている人にもそのような役職が与えられる。
お父さんは伯爵の時に外交のことを少し手伝っていたので、ネガル帝国の事は何度か愚痴っていた。
(お父さんの影響であまりいい印象はないんだよなぁ)
⦅印象だけでなく、実際にあまり好ましくないことをしています⦆
(どんなことだ?)
⦅あの国は軍事国家で他の国を攻め、領地を広げ、その国から金を奪い、奪った領地の税金をかなり高くしているそうです。割と普通に暮らせるのは帝国の帝都、そしてその周辺くらいだそうです。
その他の地域は税金が馬鹿みたいに高く、とても暮らしていくには難しいほどだそうです。⦆
(それだったら帝都、もしくはその周辺の土地に引っ越す、それか他の国に移り住めばいいのに)
⦅それができたら今の帝国はほとんど力を失っていますよ⦆
(考えたくなかったんだが────
もしかして、その人達はその場所から引っ越せないのか?)
⦅それだけではありません。その場所から『出られない』のです。取引などは帝都の人が仲介に入るのでほんとに出る機会が無いのです⦆
(そこまでなのか?)
それは日本の昔、江戸時代より酷いんじゃないか?その場所から移り住むどころか出られないなんて......
(とりあえず、ありがとな)
⦅いえ、これが私の役目ですので⦆
「ふぅ~~」
(まさかそこまでだったとはな......)
今度機会があれば乗り込んでみようと思う俺であった。
「すー、すー」
そんな声が聞こえ、胸元を見てみるとユイがそのまま寝てしまっていた。
「ありゃりゃ、寝ちゃってるし。仕方ない、連れていくか」
俺はユイをお姫様抱っこした。
「なんかデジャブ感が半端ないけど......まぁいっか」
そんな事を言いながらユイをベッドへ連れていき、寝かした。
その頃、王都では。
王城の豪華な部屋────
そこは応接室兼王様の執務室だ。
中には国王が椅子に座ってまとめられている書類に目を通していた。
その人の名前はレクト・ミラ・リエルタ。
見た目50歳くらいの白髪、そして少しヒゲを生やしている。
体は公爵とあまり変わらない180センチくらいだ。服は国王ということもありかなり豪華な服を着ている。
そこに一人の男が入ってきた。
「し、失礼します、陛下!」
「どうしたんじゃ、ノックもなしに...
リックよ」
そこに入ってきたのはリック、エリックの父親であり、侯爵位を持っているリック・ミラ・アウィーズだった。
今は仕事で領地を離れて王都にいる。
「陛下!この書類を見てください!」
「なんじゃ?」
レクトはリックに渡された書類に目を通す。
読み終わった時には目を大きく見開き、驚きの表情を隠せないでいた。
「また国がひとつ滅びたのか」
「えぇ、『ネガル帝国』の手によって、またひとつの国が失われました」
「この5年間でおよそ10の国が滅びるとはな......」
「私も驚いております。これでこの大陸の東側に残された国はあと2つです」
「エルフの国と魔族の国...か」
この国がある大陸は一番でかい大陸だ。
東側にはネガル帝国があり、東の殆どを領地として持っている。
そして中央から西にかけてあるのがこの国、リエルタ王国だ。リエルタ王国の西側にはいくつもの国があり、それぞれの領地を持ち、国家間の連携もしっかり取れている。
東側と西側では治安の良さを含め、雲泥の差がある。
そして残っているエルフの国はリエルタ王国の東側の下の方に隣合って領地を持っているため、侵略は何とか免れていた。
「はい。もしかすると、近日中にもどちらかの国が攻められるかと......」
「何っ!それは本当か!」
「あくまで推測ですが今回の戦争でネガル帝国は大きな損失はないのです。」
「どういう事じゃ?」
「今回は、ネガル帝国が経済的に圧力をかけ、軍事関係にあまりお金が回せない状況を作った上で攻めたので、相手もほぼ素手の状態だったそうです......」
リックが言いにくそうに話す。
「そうか...」
レクトは少し考え、話し始めた。
「他国のことに関してはあまり口出しすることではない。ネガル帝国はそういう国なのじゃから。じゃがのぅ、そういう国だからこそこの国、リエルタ王国に攻めてくる日もそう遠くないということじゃろう」
「早ければここ2、3年で攻めてくるでしょう。もしかしたら来年という可能性も......」
「そうじゃな、とにかく会議を開く!政治に関わっているものを全員呼んでこい!早ければ来週にも会議を行う!」
「ははっ!」
そう言ってリックは部屋を出ていき、王都にある屋敷に戻った。
帰ってきて早々執務室の中に入り、数人の従者と会議に参加する者への手紙を書き、気がつけば次の日の朝になっていた。
「ふぅ~、やっと終わったか。」
リックは執務室の窓から朝日を眺めながら言った。
手紙は既に従者に渡し、届ける準備をしてもらっているのであとは会議の日まで待つだけだった。
「エリックのやつ、今頃は何してるかな?初めは王都に行くって言ってたからまだいるかもな」
そんなことを考えながらかなりでかいベッドに入り、仮眠をとった。
エリックside
俺は昨日の晩、ユイを寝かせ、自分の布団に行こうとしたら少女、そう黒龍がいた。
「あ、忘れてた。俺のベッドにこいつを寝かしてたんだったな」
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