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最終回 ~~理想のエンドロールを眺めながら~~
しおりを挟む――センは、嬉しさを抱きしめて泣きじゃくるサイを抱えたまま、アダムに視線を向けて、
「アダム、今日からサイはお前の部下だ。以降は、上司としてサイと接しろ。もし、サイが、俺との約束をやぶって、愚かしく暴れるような事があれば、その時はお前の手でキチンと始末をつけろ。言うまでもないことだが、一応、言っておく。裁量は与えるが、何をしてもいいわけではない。いいな」
「かしこまりました」
返事をするアダムに頷いてみせてから、センは天を仰いだ。
「……ふぅ」
と、一度、溜息をついて、
(さて、それじゃあ、本題だ。終わり方を考えようか)
腕の中ですすり泣いているサイの頭をなでながら、
(この世界の謎とか伏線とか、色々と残っている気がするが、『そんなことはなかったぜ』って事で、オールスルーだドンっ)
うーんと、大きく伸びをしながら、
(……アダムには、『守ってやれなかった詫び』兼『形見』として、究極超神器をいくつかやろう。ユンドラは……放置だな。情報とか、もういらん。ここからは、好きにしてくれや。世界でもなんでも見に行けばいい。サイの解析能力は、俺のフィナーレに使えそうだったら使う。俺が積み上げてきた力を全てパーンと分解させてハデに散る……アイディアとしては、なかなか悪くない。もし、望むなら、そのまま、『俺の全部』をくれてやってもいい。サイは、俺の目を見て約束してくれたんだ。きっと、もう、愚かな事はしないだろ……それに、この先、俺の力が、どこかで必要になることもあるかもしれないしな)
センは、自分に関わった者たちの後処理を考える。
ここまできて、いまだ残っている日本人気質。
変なところで律儀。
(ラムドは普通に解放しないとな。あとは、神連中にも別れの挨拶をした方がいいかな……いや、別にいいか。『死ねるようになったよ』と伝えたところで、あいつら、『ああ、そう』しか言わないだろうし)
関わりの強い神は何柱かいるが、仲が良かったかと言われれば微妙なところ(というか、神々からは、若干、嫌われている)。
(……魂の系譜に連なっている連中も……放っておいていいだろう。何人か泣くだろうが、知らん、知らん)
全員、立場のあるいい大人。
師匠の死なんて、乗り越えてナンボ。
しめっぽいのも嫌いだし――とセンは、弟子たちの事をサラっと流す事にした。
――他に果たすべき責任はなかったかと、色々考えてから、
(うん、そんなもんだろう。もう、何も問題はない。あとは終わるだけだ)
ニッコリと微笑んで、
(盛大に、綺麗に、あとくされなく、幕を閉じよう)
心の中でそうつぶやいた。
とても晴れやかな顔。
美しく最終回を飾れる事に対する喜びをかみしめる。
気まぐれにふいた風が、ボコボコになった交差点をかけていった。
気の利いた雲が、柔らかく重なって、日差しを薄く伸ばす。
まだ全然明るいけれど、いくつか空に星が見えた。
そこには、澄んだ輝きが、ボヤけながら、けれど確かにあったんだ。
長い、長い、長い、闘いだった。
ふいに、たくさんの思い出がこみあげてきた。
はじめてスライムを倒した日の事。
はじめて魔王を倒した日の事。
はじめて神になった日の事。
今となっては、すべてが悪くない思い出だと思えた。
「もう飽きてしまったけれど……異世界転生……うん、いろいろ、楽しかった! 俺は間違いなく幸せだったよ!!」
腹の底から出した大きな声で、
全ての世界に別れの挨拶を。
心の底から溢れた想いで締めくくる。
幸せだったよ。
楽しかったよ。
――最後だから、ほんのちょっぴり本音を――
命には、意味があったよ。
正しく使えたかどうかは分からないけれど、
救えた命はたくさんあったんだ。
この手からこぼれた命も多いけれど、
この手は、たくさんの『やさしい想い』をすくってきた。
それだけは、事実なんだ。
だから、センは、
「――バイバイ」
世界を見渡しながら、満面の笑顔で、そう言う事ができた。
――こうして、センの無限転生は終わった。
――永い旅の終わりは、唐突で、呆気なくて、けれど、それなりに綺麗だった。
少しだけ雑に、けれど、やっぱり美しく、
――鮮やかに舞い散った――
これは、そんな優しい閃光の物語。
めでたく、かんけつ。
これにて、ジエンド。
めでたし、めでたし。
ありがとう、セン。
――さようなら、何よりも最強で、誰よりも最高だった、究極の神様――
ここまで、たくさんの人に読んでもらえて、メチャメチャ嬉しかったです。
これにて、センの無限転生はおしまいです。
ここまで読んでくださった全ての人に、心からの感謝を!!
――まあ、無限転生はおしまいですけど、センの物語は、まだ始まってさえいませんけどねぇ。
ここは、まだまだ超序盤です。
というわけで、
次回予告!!
「いい度胸だ、気に入った、死ね! 『究極超神化5』!!! 」
おたのしみに。
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