異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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『愛』

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 事前に創っておいた器(淡く輝いている、ソフトボールくらいの球)を取り出して、その奥に、アダムのコアオーラを収めた。




 ブーーーンと、次元が震えるような音がして、耀きを放つ器が、

 美しい女性の姿へと変わっていく。




「しゅ……主上様……」




 元の美貌を取り戻したアダムは、途切れ途切れに、




「このたびは……ご迷惑を……」




 約束を忘れて謝ろうとするアダムを、センは、ギュウっと強く抱きしめて、




「俺のミスだ。すまなかった」




「……っ……ぉ、おやめく……」




「命令だ。少し休め。今から、アレを終わらせる」







「…………はっ……」







 心の底から満たされたような、蕩けた顔で返事をするアダム。




 センは、アダムの返事を聞いてから、彼女を優しく横たわらせて、
















「……ころ……こ……ころして……ください……」
















 壊れたサイケルのもとに瞬間移動する。




「俺の無限転生が組み込まれているせいだろうが……お前の顔、俺の性転換みたいになっているな。けど、体はアダムを幼くした感じ……で、頭には犬耳と……なんか、外見が渋滞を起こしているな」




 レイプ目で呆けている髪の毛まっしろな犬耳の女子小学生。

 それが今のサイケルの姿だった。







「……ころ……して……」







「てめぇは死なない。というより死ねない。自業自得だ。永遠に罰を受け続けろ」







「……たす……けて……」










 ポロ……ポロ……と、大粒の涙をこぼしながら、










「……おね……がい……します……」







「お前を助けるって選択肢は絶対にありえない。俺の頭の中は『お花畑』じゃないんでね。……ただ、お前は、俺の無限転生を殺してくれた。それに、お前の解析能力は、今後、何かの役にたつかもしれない。お前を助ける義理はないが、お前を拾う事による利益は無くもない。もし、ほんのわずかでも、勇気を出すのなら、お前のコアをブチ壊したあとの話にはなるが、拾ってやっても構わないぞ」







「……っ?!」







「さっきのは、確実にアダムを回収するため、初見殺しのハメ技で心を崩壊させただけ。『闘い』とは言えない。少なくとも、お前が言うところの、『ちゃんとした闘い』ではなかっただろう」




 センは、サイケルに右手を向ける。




「いまだ定義はあいまいだが……あえてソコのところはシカトして、俺の名のもとに、ここからは、『ちゃんと闘って』やる。キチンと俺に負けてみろ。そうすれば……最下級のドレイとして使いつぶしてやる」




 緑色のオーラがユラユラと、サイケルの体を包み込んでいく。




 即座に、崩壊と再生を繰り返すだけだったボロボロのサイケルの体が、完全な状態に戻る。







「俺に立ち向かってみろ。出来たら、考えてやる」







「……ぃ……ひっ……ひっ……」







 恐怖という鎖でがんじがらめになっているサイケル。




 起き上がる事さえできない。







 サイケルは、ただただビビっていた。

 センが恐かった。

 恐くて怖くて仕方がない。







 それは、とても純粋な感情。




 本能が、目の前にいる敵に逆らってはいけないと叫んでいる。







「ひゅ……ひゅぅ……」










 だが、サイケルは立った。




 ブルブル震えながら、涙と鼻水を垂れ流しながら、それでも両手の拳を握りしめる。




 その姿を見て、







「その気概が、本物なら、最後まで立っていられるはずだ。耐えてみせろ。もし折れたら、もう知らん。この先、永遠に死に狂い続けろ」







 センはそう言いながら、『荒ぶる助手のポーズ』をとって、




「彷徨う魂を祝福しよう。

 終わりなき常闇に、安らかな終焉を与えよう。

 さあ、詠おう。詠おうじゃないか。

 抗えぬ恐怖と、狂える絶望に敬意を表し、

 たゆたう死神の杯を献じながら、凍える死を、いざ称えん。

 俺は、センエース。

 闇の後光を背負い舞う漆黒の煌めき」




 地獄コール(いろんな意味で)を使い、次の一手のマインドブレイク値を極限まで上昇させる。




 そのまま、迷いなく、サイケルの胸部めがけて、










「――『慨然殺し』――」










 閃拳よりも綺麗な型。

 心にあてる、寸止めの拳。




 圧も何もない、ただまっすぐに向かってくる『巨大な絶望』を前にして、サイケルは、










(――コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ――)










 圧縮された時間の中で、繰り返される恐怖。




 それを、







「……こ……わい……」







 つい、ボソっとそう呟きはしたが、










 パリィィン!!










 巨大なガラスが砕けるような爆音。

 サイケルを纏っていた無数の、『見えない鎖』がはじけ飛んだ。




 寸止め。

 しかし、全てを砕く拳。




 サイケルという『個』は、今、吹き飛んだ。




「やっぱ、『無限蘇生』そのものを殺す事は出来なかったか……流石、俺の無限転生をベースにしただけあって強固だな。しかし、コアオーラは殺した。俺の手によって創り変えられたお前は、もう、あの無意味に長ったらしい名前のカスじゃない。名もないただのカスになった」




「……ひっ……ひゅぃぃ……」




 サイケルは耐えた。

 踏ん張った。




 ボロボロと涙と鼻水を垂れ流しながら、ペタンと両膝をつき、うなだれる。







「ぁあ……ぁああああ……ぅあああ」




 みっともなく号泣するサイケル。




「ごめんなさい……ごめんなさい…………ごめんなさいぃいい……ゆるしてぇ」




 ひたすらに頭を地面にすり続けるその姿を見下ろして、




「許すわけねぇだろ。お前、仮に俺が助けを求めていたら、俺を助けていたか? 自分がやらない事を、他人に求めるな」







「ひっぐ……ふぐ……ごめんな……さい……」







「許しはしない……が、憎みもしない。感情を向けるにも値しないカス。それがお前だ。俺の手によって生まれ変わった、新たな命よ。お前の名前は、サイだ。それ以外の何者でもない。ただのサイ。分かったか?」




「……は、い……」




「忘れるな、サイ。俺は、お前を道具として拾うだけだ。壊れたら終わりの消耗品。家畜以下のドレイ。いいな」










「……は……ぃ……」










 ポロポロと泣きながら、心底から悲しそうに、

 小さく震えながら、コクコクと何度も頷くだけのサイ。







 全部が壊れて、すべてを無くして、

 わずかに残った一粒は、

 言葉にできない想いの欠片は、




 すべてをなくしたサイの中に、少しだけ残っていたモノ。







 // ……アイサレ…… //

 // ……タカッタノ…… //







 涙の奥にある、たった一つの想い。

 大きくなって、けれど、形にならない、感情の結晶。




 もっとはやくに気付いていれば、

 もしかしたら、










 ――アイシテモラエタノカナ――










 脆い涙を抱えて、小さくなって、ひたすらに後悔して、







 ――そんなサイの姿を見て、










「……はぁ」










 センは、小さな溜息をついた。







 土下座の姿勢で震えているサイの両脇を、




「……」




 優しく掴んで、ヒョイっと持ち上げて立たせる。




 センは、サイの膝の土をはらってやって、




「これは、最後の譲歩。二度目は絶対にない。それを頭に刻み込め。……刻み込んだか? なら、よく聞け」




 クシャクシャの顔で泣いているサイの頭を、

 軽く、なでながら、










「一度だけ、許そう。この先、『俺に与えられたその命』を、『正しく全うさせるため』に『最善の努力をし続ける』と約束するのなら、お前の創造主として」




 センは、微笑んで、




「お前のすべてを愛そう」




 ハッキリとそう言った。







「……ぅ……ぅ……」







「約束できるか? ……サイ」
















「ぅぁああ……はいぃぃ……っっ!!」
















 サイは、ヒシっと、センに抱きついて、




「ぜったい……ぜったい……やくそく、まもるぅ……うぁあ……あぁぁあ……」







 いっぱい、いっぱい、泣いて、







「……ぁり……がとう……」







 下らない勘違いなんかじゃない、本当の、ありがとうを口にする。




 その柔らかな結晶を、センは受け止める。




 命なんてかけなくたって、




 愛して、愛されて、




 そんな、




 たった、それだけで、
















 ――自由になれるの。

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