異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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魔法

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(……やべぇ……ダメージが通らねぇ)




 2回ほど、こん棒で殴りつけたのだが、ザーノのHPはほとんど減っていなかった。




 それに引き換え、ゼンの生命力バリアは、ザーノの拳を受けるたび、ゴリゴリと減っていく。




(どうやら、この空間内では武器を使えないってルールもあるみたいだな……おかげで、大ダメージは受けていないが……このままだと、俺が死ぬのは、時間の問題……)




 ザーノは、腰にもう一本さしているが、それを抜く気配がない。




(魔法を一切使ってこないって事は、それも関係して…………って、バカか、俺は。あいつ、MPないだろうが……ちっ、集中しろよ、命の取り合いやってんだぞ)




 『痛み』に慣れてきたせいで、『殺し合い』という意識が少しだけ薄れてきていた。

 『激痛』はあるが、『死を想起させる痛み』は感じないため、気を抜くと、スポーツをやっているような気分になってくる。

 それに加えて、息が上がってきたものだから、頭の動きが鈍くなる。




 ゼンの問題点。

 単純な火力の低さもそうだが、

 なによりも、継戦能力の低さ。




 スタミナの低さという、決定的なウィークポイント。

 今のゼンには問題が山積み。
















「やはり、弱い!」
















 戦闘の途中で、ザーノがニィと笑いながら、







「生命力は異常に高い。だが、それ以外には何もない! どうやら、攻撃系の魔法も使えない! わけがわからない構成だが、しかし、お前に関する詳細なんざどうでもいい。お前じゃオレに勝てない……それだけ分かっていればいい」










(言われっぱなしで、しゃくだが、返す言葉がねぇ。バリバリのジリ貧。死は時間の問題……どうする……どうしよう……)










 つい奥歯をかみしめてしまう。




 スタミナが減るというのは、動きが鈍くなる以上に、頭が動かなくなるのが一番の問題になってくる。

 その大問題の奥では、さらに、恐怖という問題も浮かび上がってくる。




 負ければ死ぬ。

 覚悟を決めていようがどうしようが、頭にはこびりつく。




 余計に動きが鈍くなる。




 不のスパイラル。

 今のゼンには、あまりにも、『全て』が足りない。




(くそ……えっと、えっと……こいつは、魔法防御力が低い……だから、えっと、魔法を使えば、どうにか……なったりしないかな……)




 そこで、ゼンは、右の掌を上に向けて、




「――雷術、ランク1」




 魔法を使った。




 パチっと掌に静電気が走る。




 その瞬間、ザーノの顔に、一瞬だけ緊張が走った――が、




「ああ、もう、消えた。せめて、火ゴブリンがやっていたみたいに、『投げつける』くらいはさせてくれよ、くそったれ」




 ゼンが、そう嘆いたのを耳にして、ニっと笑い、しかし、すぐにその顔を収めた。




 ――『その一連の流れ』を、実は、










(見ていたぞ)










 ゼンは、横目でしっかりと観察していた。

 叫びはフェイク。




 頭の動きは鈍くなっているが、本物のおバカさんになった訳ではない。




(お前は、確かに、一瞬、俺の魔法にビビった……ランク1ってのは聞こえていたはずだ。それなのに、ビビって、そして、その感情をすぐに殺した……)




 その意味は、




(あるな? 雷術には、『正しい使い方』がある……さっきの火ゴブリンの炎の玉とは決定的に『違う』使い方……考えろ、考えろ、考えろ……ここが正念場だ。もうここしかない……ここで打開策を見つけるしか、生き残る術はない……全力で頭を回せぇ!)




 ゼンは、回転が鈍くなっている頭を必死にまわし、




(雷術……雷撃じゃない……術……静電気……ぶつけるんじゃないなら……纏わせるか? 体に……いや、武器か? だが、あんな小さな静電気をまとわせたところで……そもそも、この『こんぼう』って素材はなんだ? 骨か? もしかして、軽めの石? ちょっと金属っぽくもある……持っている感じだと、なんかすげぇ帯電しにくそう……んー、でも、もう、この手しかないか……)




 そこで、ゼンは、こんぼうに、魔力を注ぎ込むイメージを抱きながら、雷術を使ってみた。




 すると、







 こんぼうが、パチパチィっと音をたてはじめた。







「おいおい、なんか、めちゃめちゃ電気を纏いだしたんだが……これ、『ちょっと電子が移動した』とか、そんなレベルじゃねぇぞ……」




 さらに、




「なんか……もっと溜められそうな……」




 魔法を使ってみた際の感覚から、ゼンは、『コツ』を感じとった。




 『スポーツ』でも『勉強』でも、なんでもそうだが、やってみて、触れてみて、『溺れて』みて、初めてつかめる『核に接続できた感覚』というのが実在する。

 ゆえに、




「雷術、ランク1」




 もっと、もっと、とイメージしながら、グググっと、魔力を込めていくと、







 バチバチバチバチィイイ!!!







(……おぉ、小さな静電気をためただけじゃありえねぇ状態になってきたな。物理に詳しい訳じゃないが、一応、理科でも九割はとっていたんでね。これが異常って事くらいは理解できる。どうやら、この世界では、随分と『おかしな法則』が働いているらしい……これが、どういう計算式を経て生じた現象か、具体的には知らんが……とにかく、これが、魔法ってやつだって事は理解できた。ふむ。訳の分からん干渉を受けて増大する力……面白いじゃねぇか。『空間がどう』とかよりも、こっちの方がよりダイレクトに異常性を感じられる。想像できるか出来ないかってのは大きいね。……はは……ああ、おもしれぇ)




 心の中で、テンション高くぶつぶつ言いながら、ゼンは、腰を落とした。
















「とにかく助かった……これなら、少しくらいはダメージも通るだろ」

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