異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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この絶望を覆す、とっておきの切り札

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シグレの情報に触れた時、最初に思ったのは、『似ている』だった。




 本質は違うけれど、枝葉は似ている――そんな事を思った相手は初めてだった。




 だから、最初に感じたのは、やはり、同族嫌悪。




 なんか、ムリ。

 ちょっと、イヤ。




 ある種、当たり前で、少し歪んでいる、ゾワゾワとした不の感情。







 けど、会ってみて、行動の一部を目の当たりにして、言動を少し聞いてみて、




 不の感情は一周した。

 二週したかもしれない。

 そのぐらいの衝撃は受けた。










 ――変な女だ――










 もちろん違う存在だけれど、

 同じ方向を見ていると思えた。







 ――『出会えた』とすら思ったんだ――







 元から少し壊れていて、大事なものを失って、

 孤独を愛しながら、孤高を求めながら、

 逃げるのを嫌い、『あの場所』を憎みながら、

 『あそこではないどこか』を夢見ながら、

 それでも、『逃げなかったという証』だけをバカみたいに必死こいて求めて、

 要らない重荷を背負って、無意味に傷つきながら、悪意に鈍感なふりを通して、

 それでも『譲れない何か』を抱いて、

 質量のない血を吐きながら、

 『脆い心』をどうにか守っていた。
















 ――だから、
















 そうだよな?

 ロジックじゃねぇよな。
















 属性が決まったらそれっきり――な訳ねぇよな。

 筋書き通り、フローチャート通り、決められた0と1の通り。

 な訳ねぇだろ!




 孤独を愛しているのは事実。




 だから、孤独じゃなきゃいけない?







 そんな訳ねぇよな!!







 わかんねぇよ、心。

 わかんないよ、感情。




 どうしたいのか、マジで不明。

 理解なんて、永遠にできる気がしねぇ。




 どうしたい?

 何がしたい?




 しるか。




 言葉で決められるかよ。




 だって、不完全だもん。







 ――ただ、イヤだっておもった――







 感情。

 うぜぇ。




 ムカつくぜ。




 きもちわりぃ。







 ――知ったこっちゃねぇんだよ。







 取り繕おうとした分だけ、どんどんほつれていく。

 『お前はこうだろ?』って言葉に反発する――そんなキャラクター?




 性格?

 人間性?




 くだらねぇ。

 くだらねぇ。




 変に外装だけ整っている人格を否定して、

 積み重ねてきた想いをミキサーにかけるの。




 そうして、

 バラバラになって、




 あとに、何が残るの?







 知らん、知らん。







 だから、聞かれても答えられねぇ。







 ――なんで動いたの?







 もし、そう聞かれても、答えられねぇ。










 そんな『一連』を通して思った事は一つ。
















 ――俺って男は、想定を遥かに下回るクソバカ野郎だった――
















 そんだけ。










 ★










 呪縛の魔法を、実際に使ってみて分かった事が二つあった。




 まずは、予想通り、相手を拘束する魔法だったって事。

 そして、もうひとつは、







(拘束している間、動けねぇのかよ! コンボ、できねぇじゃねぇかああ!!)







 イメージとしては、『結べないロープで相手を縛っている』といったところ。




 両手を放せば、相手の拘束は解けてしまう。




 それが感覚で分かる。




(おまけに、MPがガンガン減っていっている……相手が強ぇからか? それとも、デフォ?)




 雷術の時は『魔力消費量』に関してイマイチよく分からなかったが、呪縛は、色々と法則が違うのか、『MPが減っていく感覚』がダイレクトに感じられた。




(やべぇ……この調子じゃあ、一分も、もたねぇ……)







 拘束されているホルスドは、『己の状況』に一瞬だけ戸惑ったが、

 しかし、それも一秒程度のわずかな時間で、

 変に焦ったり、慌てたりはせず、むしろ、戸惑った分だけ冷静に世界を見つめた。




 ゆえに、その視線は、即座に対象ゼンをとらえた。




 だから、ニっと微笑む。




「同じ波形……貴様もイレギュラーの眷属だな。もう一匹いたのか。ふんっ。驚きはしないさ。二匹いようが、三匹いようが、たいして違いはないからな」




 抵抗の魔法は使わずに動こうとしてみた。

 おそらく低位の呪縛。




 ならば、と、

 筋力だけで動こうとするが――動けない。




 また、ニっと笑うホルスド。




「この行動一つだけでもわかる。貴様は頭が非常に悪い。しかし、魔力はそれなりにある……腐ってもイレギュラーの眷属といったところか。くく……拘束されたのは久しぶりだな。そして、見事に動かない……たいしたものだ……が、どれだけ持つのかな? ずいぶんと苦しそうだぞ?」




 ホルスドの言葉を耳には入れず、ゼンは、大声で、




「田中シグレ、失せろ!! 邪魔だ!!! はやく消えろ!!」










「……ぇ?」










 何がなんだか分からず、茫然としているシグレに、ゼンは、たたみこむように、







「俺は救援要請を受けて、神様から派遣されたものだ! で、お前がそこにいたら、『とっておきの切り札』が使えないんだよ! というわけで、はやく、そこから離れろ! なに、ボーっとしてるんだ、動けぇ! 邪魔ぁあ!  俺を殺す気かあああああ!!」

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