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異世界大戦編 前編
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それは、突然の出来事だった。
在る日、第2~第9アルファの全てが、『謎のゲート』で繋がった。
なぜ、そんな事が起きたのか、未だに理由は分かっていない。
突然、世界が繋がって、
当然のように、人々は大混乱に陥った。
そして、その大混乱の中で、当り前のように、異世界間のいさかいが起こり始めた。
最初は小さな火種。
しかし、すぐにその火は燃えあがった。
『どこ』の世界の『だれ』が原因か。
そんなものは、もはや関係がなかった。
倒せば終わりのラスボスなんていう都合のいい敵なんかいなかった。
世界の全てが、互いにとっての加害者となり、誰もかれもが被害者ぶった。
へたに力が拮抗していたのがまずかった。
どこかの世界が飛びぬけて強ければ問題はなかった。
圧倒的な強者に支配されて終わり――ならば、どれだけ楽だっただろう。
しかし、そうはならなかった。
どの世界にも天帝はいて、どの世界の天帝も、凶悪な切り札を隠し持っていた。
第2アルファが頭一つ抜けていたのは事実だが、異世界戦争という規模になれば、頭一つのアドバンテージではこころもとなく、完全なる全面戦争となれば、状況しだいで、結果はどちらにでも転んだ。
覇権を奪われかねないという恐怖が、
よけいに、第2アルファを孤立させたりもした。
どの世界が優位か。
そんなものはなかった。
ゆえに、まとまらない。
力は拮抗していながら、思想はバラバラ。
当然、グダグダにこじれていく。
『われわれはただ、世界の安寧を――』
『踏みとどまらなければならぬのだ。ここを超えられては、我が世界が、やつら獣牙に――』
『殺せ、殺せ、殺せ!』
『世界の全てを我がモノに――』
『すべての王を代表し、朕ちんは、皆に、世界間の危難を除去するため、最も気高き我が第5アルファに、全ての権限を委任する案を――』
『どいつもこいつもバカばっかりだ!』
『裏切りやがった、裏切りやがった、裏切りやがった――』
『未来を守るためだ! そのためならば、朕ちんはなんでも――』
『ただパンを分かち合うだけの事が、なぜ、貴様らはできんのか――』
『違う! 誤解だ! 朕は……私はただ、この戦争を止めようと――』
『とにかく話し合いの場を――』
『われわれは、もう戦争には介入しない。武力を用いるのは自衛の際のみと――』
『ああ、そうだ。血を流すのはもうやめよう。ここに全世界統一連合の設立を――』
『終わる。終わるぞ。この不毛な闘いが、ついに――』
『ワールドシンボルが……破壊された……』
『違う! 本当に違うんだ! ちゃんと考えてくれ! 我々が、あえて破壊活動を起こす意味などないだろう! あの痛ましい事件の主犯は確かに我が世界に産まれたクズ共だが、決して、第七アルファの総意ではない! その証拠に、すでに――』
『そういう問題ではないのだ! 責任は必ず――』
『バカ正直に告白しないで、知らぬ存ぜぬを通せばよかったものを――』
『ここが……チャンスか?』
『愚かしい。本質となる問題は――』
『どいつだ……どいつのせいで、こうなった……なぜ、まだ戦争は続いている。終わるはずだっただろぉおおお! くそったれぇええええええええ!!!』
決して『世界全ての支配を望む者』が多かった訳ではない。
いなかったとは言わないが、やはり、それが最も大きい原因ではないのだ。
戦争を加速させた感情のトップは、やはり、
『このままでは喰われる』
『無抵抗は貫けない』
という当たり前の恐怖。
単純な話に変換すれば、やはり、
『愛』と『勇気』が足りなかったのだ。
愛と勇気。
バカにするだけでいいなら、実にちょうどいい概念だが、どちらも、
本物を掴みとろうとすると、その難易度の高さに誰であろうと必ず目眩を覚える。
疑心暗鬼も重なれば具体的な悪鬼になる。
人の数が増えれば、それだけ思想も増える。
中には、混沌を望む『強者』もいた。
ただイタズラに、世界の終わりを望むサイコパス。
恐怖を盾にして、全霊で民衆を煽ったパラノイア。
全ての感情が、ないまぜになって、
狂気は終わりなく膨らんで、落とし所を完全に見失った。
戦争は加速して、泥沼化していった。
死者の数は、けた違いで、数十億を超えた。
終わらせようとあがいた者は多い。
『まともな者』は、みな、きちんと平和を望んでいた。
バカばかりではない。
絶望を望むクズばかりではない。
平和を叫ぶ者は確かにいたんだ。
その数は、少なくなかった!
決して!
少なくなかったのに!
だが、終わらない。
終わる気配を見せない。
どう終わらせたらいいのか、誰にも見えなくなっていた。
多くが死んだ。
多くが壊れた。
世界は荒れに荒れた。
鮮血時代。
死の70年。
どの世界の教科書にも、大文字で記されている最悪の『全世界史』。
どの聖典にも記されている、神の伝説。
ゆえに、その戦争を終わらせた大英雄の名を知らぬ者はいない(センが表舞台から完全に姿を消した6千年ほど前から、神帝陛下という概念が、方法論的に、『三至天帝を合わせた名前』として扱われる場合が多くなってしまったため、『センエース神帝陛下』という『記号』を知らぬ者はいなくとも、『その正式な立ち位置』を理解している者は少ない)。
荒れ狂う乱世に立ち向かった、
『かつてはまだ神ではなかった大英雄』
舞い散る閃光センエース。
在る日、第2~第9アルファの全てが、『謎のゲート』で繋がった。
なぜ、そんな事が起きたのか、未だに理由は分かっていない。
突然、世界が繋がって、
当然のように、人々は大混乱に陥った。
そして、その大混乱の中で、当り前のように、異世界間のいさかいが起こり始めた。
最初は小さな火種。
しかし、すぐにその火は燃えあがった。
『どこ』の世界の『だれ』が原因か。
そんなものは、もはや関係がなかった。
倒せば終わりのラスボスなんていう都合のいい敵なんかいなかった。
世界の全てが、互いにとっての加害者となり、誰もかれもが被害者ぶった。
へたに力が拮抗していたのがまずかった。
どこかの世界が飛びぬけて強ければ問題はなかった。
圧倒的な強者に支配されて終わり――ならば、どれだけ楽だっただろう。
しかし、そうはならなかった。
どの世界にも天帝はいて、どの世界の天帝も、凶悪な切り札を隠し持っていた。
第2アルファが頭一つ抜けていたのは事実だが、異世界戦争という規模になれば、頭一つのアドバンテージではこころもとなく、完全なる全面戦争となれば、状況しだいで、結果はどちらにでも転んだ。
覇権を奪われかねないという恐怖が、
よけいに、第2アルファを孤立させたりもした。
どの世界が優位か。
そんなものはなかった。
ゆえに、まとまらない。
力は拮抗していながら、思想はバラバラ。
当然、グダグダにこじれていく。
『われわれはただ、世界の安寧を――』
『踏みとどまらなければならぬのだ。ここを超えられては、我が世界が、やつら獣牙に――』
『殺せ、殺せ、殺せ!』
『世界の全てを我がモノに――』
『すべての王を代表し、朕ちんは、皆に、世界間の危難を除去するため、最も気高き我が第5アルファに、全ての権限を委任する案を――』
『どいつもこいつもバカばっかりだ!』
『裏切りやがった、裏切りやがった、裏切りやがった――』
『未来を守るためだ! そのためならば、朕ちんはなんでも――』
『ただパンを分かち合うだけの事が、なぜ、貴様らはできんのか――』
『違う! 誤解だ! 朕は……私はただ、この戦争を止めようと――』
『とにかく話し合いの場を――』
『われわれは、もう戦争には介入しない。武力を用いるのは自衛の際のみと――』
『ああ、そうだ。血を流すのはもうやめよう。ここに全世界統一連合の設立を――』
『終わる。終わるぞ。この不毛な闘いが、ついに――』
『ワールドシンボルが……破壊された……』
『違う! 本当に違うんだ! ちゃんと考えてくれ! 我々が、あえて破壊活動を起こす意味などないだろう! あの痛ましい事件の主犯は確かに我が世界に産まれたクズ共だが、決して、第七アルファの総意ではない! その証拠に、すでに――』
『そういう問題ではないのだ! 責任は必ず――』
『バカ正直に告白しないで、知らぬ存ぜぬを通せばよかったものを――』
『ここが……チャンスか?』
『愚かしい。本質となる問題は――』
『どいつだ……どいつのせいで、こうなった……なぜ、まだ戦争は続いている。終わるはずだっただろぉおおお! くそったれぇええええええええ!!!』
決して『世界全ての支配を望む者』が多かった訳ではない。
いなかったとは言わないが、やはり、それが最も大きい原因ではないのだ。
戦争を加速させた感情のトップは、やはり、
『このままでは喰われる』
『無抵抗は貫けない』
という当たり前の恐怖。
単純な話に変換すれば、やはり、
『愛』と『勇気』が足りなかったのだ。
愛と勇気。
バカにするだけでいいなら、実にちょうどいい概念だが、どちらも、
本物を掴みとろうとすると、その難易度の高さに誰であろうと必ず目眩を覚える。
疑心暗鬼も重なれば具体的な悪鬼になる。
人の数が増えれば、それだけ思想も増える。
中には、混沌を望む『強者』もいた。
ただイタズラに、世界の終わりを望むサイコパス。
恐怖を盾にして、全霊で民衆を煽ったパラノイア。
全ての感情が、ないまぜになって、
狂気は終わりなく膨らんで、落とし所を完全に見失った。
戦争は加速して、泥沼化していった。
死者の数は、けた違いで、数十億を超えた。
終わらせようとあがいた者は多い。
『まともな者』は、みな、きちんと平和を望んでいた。
バカばかりではない。
絶望を望むクズばかりではない。
平和を叫ぶ者は確かにいたんだ。
その数は、少なくなかった!
決して!
少なくなかったのに!
だが、終わらない。
終わる気配を見せない。
どう終わらせたらいいのか、誰にも見えなくなっていた。
多くが死んだ。
多くが壊れた。
世界は荒れに荒れた。
鮮血時代。
死の70年。
どの世界の教科書にも、大文字で記されている最悪の『全世界史』。
どの聖典にも記されている、神の伝説。
ゆえに、その戦争を終わらせた大英雄の名を知らぬ者はいない(センが表舞台から完全に姿を消した6千年ほど前から、神帝陛下という概念が、方法論的に、『三至天帝を合わせた名前』として扱われる場合が多くなってしまったため、『センエース神帝陛下』という『記号』を知らぬ者はいなくとも、『その正式な立ち位置』を理解している者は少ない)。
荒れ狂う乱世に立ち向かった、
『かつてはまだ神ではなかった大英雄』
舞い散る閃光センエース。
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