異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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主文はあとまわし。

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「自分が負けた理由が分からないって顔をしているな。種明かしをしてやる。俺はさっき、空間でスプーン曲げをやったんだよ」




「……?」




「理解できないって顔だな。じゃあ、少しかみくだこうか。……どこから言おうかな。ちゃんと教えるとなると、やっぱり、最初からになるか……」




 センは、数秒だけ、虚空を眺めて、




「まず、神闘には、『虚実挟雑きょじつきょうざつの型』っていう戦闘方法があってな。メチャメチャ簡単に言えば――虚に見えて実、実に見えて虚、そのどちらかと思わせておいて、実はそれ以外、さてどれでしょうっつー、ふざけた択たくを押しつける神の戦闘スタイルの一つ」




 神の戦闘スタイルは山ほどある。

 虚実挟雑は、その中の、ほんの一つでしかない。




「それを応用して、次元の指向性を歪ませて、お前の志向性を曲げた」




 センの話を聞いて、アダムは当然のように怪訝顔を浮かべた。

 『何がなんだかサッパリ』と言いたげな顔。

 そんなアダムの『?顔』を見たセンは、ニっと微笑んで、




「まだ理解できないって? 当たり前だろ。俺が、その神髄を理解するのに何年かかったと思っていやがる」




 知って、より深く学んで、本当に理解して、経験を積んで、

 『分からない』と絶望して、それでももがいて、

 気の遠くなる膨大な時間を積むことで、どうにか、

 『少しだけ掴めた』と思ったものの、

 結局のところ、それはただの勘違いでしかなくて、

 絶望して、嘆いて、苦しんで

 それでも、まだもがいて、

 『わからない』と苦悩して、

 『これ、一生わからないんじゃ』と焦って、

 それでも、たくさん、たくさん、がんばって、

 けれど、やっぱり分からなくて、

 『わからない、わからない、わからない』

 と、もがき苦しむことにも飽き飽きして、

 それでも積んで積んで積んだ先に、

 ほんの少しだけ見えてきて、

 ――そうして、ようやく、







 ジャンケンになる力。







 『けっきょく、これも、必勝法じゃなく、ただのジャンケンかい!』

 と、最後に嘆くまでがワンセット。

 それが神闘の神髄。




 なんと、バカバカしい話か。

 しかし、

 『そのバカバカしさを体験した者』にしか見えない風景というものが確かにある。




 センは、その風景を見ている。

 今のアダムには、何も見えていない。







「神の戦闘スタイルってのは、たいがい、初見殺しだ。磨き抜かれた武の極限、その結晶。理解し、盗み、研究し、鍛錬を重ねて、ようやく対処方法が見えてくる」




 存在値にどれだけ差があっても、今のアダムならば、封殺するのは難しくない。







 だってルール知らないんだもん。







 今のアダムは、目の前にチョキを出されて、『?』と首をかしげている状態。

 そんなヤツを相手にしている状態で、

 逆に、どうやって、負けろってんだ。




「今のお前の状況を丁寧に教えてやる。『スペックだけなら確実に俺より上のS級キャラ』を使っていて、ゲームの腕前も抜群だが、今の俺たちがやっている『この格ゲー』には慣れていないヤツ。ハッキリ言ってやる。その程度のヤツには負ける方が難しい」







 存在値が増えれば増えるほど出来る事は増えていく。

 可能性は爆発的に広がっていく。

 それはすなわち、型の種類が膨大になっていくという事。

 パターンとその派生が指数関数的に増えていく。

 そうなれば、根柢のルールそのものが変わっていく。




 『現世のお遊戯』と『神闘』は全くの別物。




 『ボウズめくり』と『歌ガルタ』の違い、

 『はさみ将棋』と『将棋』の違い、

 『五目並べ』と『囲碁』の違――




 センが、隅で地を囲っている間、アダムは、天元に黒を置いて、そこから横一列に五目並べようとしていたようなもの。







 一言で言えば、最初から、勝負になどなっていなかったのだ。







「言うまでもないが、俺の腕は全一級だぜ。使っているキャラは、お前と比べれば、かなりの弱キャラだが、関係ねぇ。ゲームが上手いだけの初心者なんざ一蹴だ」




 キャラスペックという点だけで見ればアダムの方が上。

 今のアダムは凄まじい。

 間違いなく『Sキャラ』といえる。

 誰が使っても強い、修正必須の優遇されすぎている最強キャラ。

 対して、センは、今のアダムと比べれば評価的には『A-』が精々の、玄人向けキャラ。







 神闘に関しての説明はよくわからなかったが、『Sキャラどうこう』という、そっち方面の説明は理解できた。

 それは、先ほどの拳や蹴りに乗せて、『格ゲーという概念』について、むりやり流しこまれたからだ。




(つまりは、それだけの余裕があったという事……私など、相手にもなっていなかったという……こと……)




 キャラ的に、どっちが強いかといえば、アダムの方が強い。

 しかし、

 どっちが勝つかと言えば、もちろん、他の要素が多大にからんでくるわけで……




「初心者狩りは趣味じゃねぇが……マヌケに絡んできたのはそっちだ。その報いは受けてもらう」







 センのオーラに殺意がにじむ。

 センの頭は決してお花畑ではない。




「さぁて、説教はここまで。ここからは、――罰の時間だ」







 圧力が増していく。

 空気が冷たくなっていく。







「あれだけナメた態度をかましてきたんだ……まさか、ちょっと説教されて終わりだなんて思ってねぇよなぁ?」







 今のセンの声に、




「判決をいいわたす。主文はあとまわし。先に判決理由を述べる。お前は、俺を侮蔑した。ナメた口をきき、ナメた要求をしてきて、ナメた目で見てきた……ああ、あと二回殴られたな。あれは痛かった。……痛かったぞぉおおおおお! ……というわけで――」







 温かみは一切ない。

 軽口をはさみながら、しかし、表情は凍てついたまま。







「死刑を執行する。慈悲はない」







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