異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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本気を出すといったが、あれは嘘だ。

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センは、アダムに右手を向けた。

 その瞬間、鈍い痛みが、アダムを襲う。

 すぐに理解できた。

 この痛みは、時間と共にキツくなっていく。

 真綿で、首をしめるように、ジワジワと――
















(……死ぬ……)







 抵抗する気はなかったが、抵抗しようとしても無駄だろうと、アダムは思った。

 勝てない。

 何をしようと絶対に。




 ギチギチと音をたてだした『軋み』という激痛の中で、アダムは思う。




(……この御方の強さは、私ごときが理解できる範疇になかった……)




 『初めて闘った時』とは根本的に状況が違う。

 あの時は、同じキャラを使い、慣れ親しんだ『同じゲーム』で闘った。




 すなわち、かつてのセンは、

 『子供と遊ぶ時』のように、

 アダムのレベルに合わせて、

 坊主めくり、はさみ将棋、五目並べという、

 シンプルなルールで『闘ってあげた』のだ。

 和歌を丸暗記する必要も、駒の動きを理解する必要も、石の取り方を覚える必要すらない、とことんまでシンプルな世界で『キャッキャウフフ、たのしーねー』と遊んであげた。




 アダムは、『その時の手並み』を、『センの器』だと判断した。

 その判断を元にして、互いを測った。

 ゆえに、存在値がハネ上がった現状だと、『己の方が強い』と認識した。

 『その遊び方』しか知らないのだから、そう思ってしまうのは仕方がない――が、調子こいてナメた口をきいてしまったのだから、もはや、『仕方がない』ではすまされない。




 無知という恥が産んだ罪。

 あまりにも重い。










(はじめて闘った時は……遊ばれていただけ……あれだけの差を見せつけられていながら……あの眩まばゆい輝きすら……ちょっとしたお遊びでしかないと……)










 かつての闘いでは、全ての条件が同じだった。

 ゆえにハッキリと理解できた、圧倒的な力の差。







(いったい……この御方は……どれほど遠いのだ……)







 現状は、あの時よりも遥かに酷い敗北。

 あの時は、『あんなにも遠い』と理解できた。

 しかし、今は、




(……『どこにいるのか』すら……分からない……何も見えない……)




 前方にいるのか、空上にいるのか、深淵にいるのか。

 影すら見えない。

 何もわからない。







 アダムは、これまでの諸々で、センを理解した気になっていた。

 『あの辺りに御座す神様だろう』と勝手に推測していた。

 『あんなにも遠い場所に御座すとは、なんと素晴らしい御方だ』などと、そんな下らない勘違いをしていた。

 全部、思いこみ。

 ただの妄想。

 完全に見誤っていた。

 まったく理解できていなかった。

 『この御方を理解する事など出来ない』という事すら理解できていなかったマヌケ。







(私ごときに……測れる御方では……なかった……)







 アダムは、『神』を知らなすぎた。

 まるで、『何かによって削られでも』したかのように、

 まるで、それが『代償』だったかのように、




 アダムは、神について、あまりにも無知だった。







「アダム。お前は、所詮、『神の戦い』を知らない現世の天才」




 先に同じ色の石を五個並べれば勝てると思っている、カワイイお嬢ちゃん。

 『地』という概念を理解する事すら出来ていないお子様。




 将棋で言えば、王をとった方が勝ちだという事すら知らない状態。







 そんな女の子が、全冠の神と対峙している。

 本気で勝てると――絶対に勝てると思いこんで、神の前に座したのだ。

 『私、あなたより強いよー』

 『私が勝ったら、あなたは私のものねー』




 『そうかい、そうかい。すごいねー、ところで、飛車の動かし方わかる?』

 『飛車ってなにー?』







「……当たり前だが、俺の足下にも及ばない。経験量の不足、無知の差。あまりにも大きい」







 アダムは、思わず目を閉じてしまった。

 理解できたから。

 自分が情けなくて、情けなくて……




(距離は理解できない……が……しかし、『今の自分では、まともな相手にすらならない』という事だけは理解できた……遠すぎる……何もかも……)




 積み重ねてきたモノの質の違いを、ただガツンと思い知らされた。

 アダムは赤面した。

 そして、青くなる。

 また、赤くなる。

 感情があっちこっち。




 ――しめつけが強くなってきた。

 ――痛みは増していく。

 ――けれど、痛みを感じている余裕などないほどの羞恥。




(……私は……どれだけ愚か……)







 結果だけが全て。

 テキトーに遊ばれた。

 それだけの話。




「さっき俺は、お前に、『二撃くらったから、本気を出すという約束は守る』と言ったな? あれは嘘だ。お前ごときに俺が本気を出すわけないだろ」




「……」
















「お嬢ちゃん、身の程を知りまちょうねぇ」
















 シューリのマネをして、そんな事を言うセン。

 口調だけではなく、シューリの気持ち・心理もトレースできている。




 ――赤ちゃん言葉は、大人が赤子に使う言語。
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