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俺が世界を守る
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『他者とは関わらない』と決めればそれで済んだ小中高大学時代と違い、
社会に出れば、他者と関わらずに済むことはない。
力がなければ、合理は叫ぶだけ虚しくなる。
それでも合理を叫ばずにはいられない性さが。
ふざけた不条理と衝突する毎日――すなわち『社会生活』の中で、ゴートの心は薄汚れていった。
『折れて目をつぶればそれで済んだ』という案件は多かった。
『そうすれば楽に生きられた』と理解もできていた――が、できなかった。
どんなに苦しくても、『それでも逃げてやらねぇ』という覚悟。
よく言えば高潔だが、悪く言えば、マッドなキ○ガイ。
『逃げたくない』『諦めたくない』という、その底意地は、重たい鎖となって、ゴートを地獄に縛り付け、ジュクジュクと腐らせていった。
目は濁り、魂はくすんだ。
それでも、絶対に、『抱いた信念・己の哲学』だけは、誰にも譲らなかった人生。
多くの人間に嫌われて、それでも意地を張って、
プライベートは完全に独りだったが、
実際のところ、ソコだけが救いで、
そして、最後には、当然のように、世界から見捨てられて、
――そんな人生だった。
――言うまでもなく、クソみたいな人生だった。
――まるで、どこかのクズい王子様みたいな……
だからだ。
だから、ゴートは、本気で、UV1を尊敬した。
折れるとは思っていなかった。
ぶっちゃけ、引っ込みがつかなくなっていた。
もう、マジで殺されるしかないかもしれないとまで思っていた。
だが、UV1は折れた。
その理由は、
(ゼノリカの秩序か……)
非常に短い付き合いだが、彼女の性格は、だいたい理解できた。
あれは折れないタイプだ。
頑固な我を持っているタイプ。
しかし、彼女は折れた。
その理由は一つ。
絶対に守りたいものがあったから。
それが、ゼノリカの秩序。
(ゼノリカねぇ……どうやら、ただのヤバい宗教団体じゃなさそうだ……)
まだ、最終的な判断はできない。
しかし、ここまでに得た情報だけを整理した限りでは、決して気分の悪い組織ではない。
(秩序を重んじるってのは、結局のところ、命を重んじているってこと)
そこをないがしろにしていくと、かつて在籍していた組織みたいに、壊れて歪んで腐ってしまう。
秩序を建前にして、つまんねぇエゴと既得権益を守ろうとするだけのブタ小屋になりさがる。
だが、腐り切ったあの組織に一発入れてくる救世主はいなかった。
自分がそうなろうと奮起した結果、
ゴミのように捨てられた。
『最低限の信念は持っている』――そう思えた連中からも裏切られた。
結果、
センエースは、巨悪に殺された。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『――ついには、君が唯一信頼していた【俺対策チーム】まで、君を見放した。ねぇ、センくん。最も信頼していた連中に売られた今、君は、どんな気分なんだい?』
『――蝉原。その力があれば、完璧な秩序の統合や、人類の倫理的な完成すらも可能だった。お前はバカじゃない。他人の痛みが分かる賢い人間だ。【バグ】の力が使える今のお前なら、誰もが理想とする本当の完全世界だって創れた。完全なる王になれた。誰もが崇め奉る、究極を超えた真の神にだってなれた! なのに! ……どうして……なんで、わざわざ無益な混沌を撒き散らす? その行為に、いったい、なんの意味があるというんだ』
『俺にとっては、現状が完璧な世界さ。この世の誰もが、この蝉原勇吾に恐怖している。蝉原勇吾という無秩序な恐怖に染まったこの世界こそが俺の理想。ヤクザの一等賞で終わるはずだったこの俺が、今や、恐怖の大王そのもの。今の俺なら、この世界を滅ぼす事だって容易い。すごくない? すごいよね。最高だ。現状こそが、これ以上ない理想郷』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~
――すべては、ゴートに力がなかったから。
巨悪を滅する力を有していなかったから。
第一アルファにおいて、ゴートはあまりにも無力だった。
だが、ここでなら違う。
(見極めるための力がいる……)
ゴートは、より強く決意する。
『ここでなら前提が違う』――が、『今のまま』では前と同じ結末になる。
それだけは絶対に回避しなければ。
(ゼノリカを超える。それは絶対の目標だ。しかし、ゼノリカが、本当の意味で秩序を重んじる組織なら、俺は、補強要員として、この命を賭してゼノリカのために働こう……)
もし、ゼノリカが、『センエースの望む理想』だったなら、かき乱す必要はない。
無意味な混沌を産む理不尽の権化に堕ちる気はない。
センエースは、蝉原勇吾とは違う。
UV1の態度を受けて、ゴート(センエース)は、ゼノリカに夢を見た。
もし、ゼノリカが『本物』なら、ゴートは『ゼノリカのために尽力しよう』と決意する。
――だが、
(だが、そうでなかった時は、俺がゼノリカを改革する。ゼノリカは、間違いなく、この世界で最も大きな組織)
もはや疑う気はなかった。
UV1やバロールが在籍する組織。
それだけで、世界一の組織だと確信できる。
(根本となる軸、世界の中枢だ。そこが腐っていたら何もかもが終わり。UV1の発言で、ゼノリカの意思は理解できた)
しかし、ゴートはあまりにも、組織の腐り方について知り過ぎていた。
世界史を散々勉強したことで『人が潜在的に有する愚かさ』についての知識を得て、警察という組織の中核にあった事で『人の根源的な醜さ』について体感した。
人が集まれば、必ず、どこがが腐敗する。
それは、もはや仕方がない。
今更、そんな生命の深層についてワーワーいう気はない。
そこまで若くはないし、愚かでもない。
つまり、問題は部位――それがドコか。
単なる末端の綻びなのか、それとも末期ガンなのか。
(……もし、ゼノリカの上が腐っていたら、丸ごとぶっつぶして、この俺の手で、ゼノリカを本物にしてやる)
ゼノリカは強大な組織。
もう理解できた。
ちょっとレベルを上げただけでどうにかなる組織ではない。
それはもう分かった。
しかし、諦めない。
決して折れないと、もう決めた。
(今回は折れない。何があろうと必ず達成する。俺が、世界を守る。『あんな想い』をするのは、二度とごめんだ)
社会に出れば、他者と関わらずに済むことはない。
力がなければ、合理は叫ぶだけ虚しくなる。
それでも合理を叫ばずにはいられない性さが。
ふざけた不条理と衝突する毎日――すなわち『社会生活』の中で、ゴートの心は薄汚れていった。
『折れて目をつぶればそれで済んだ』という案件は多かった。
『そうすれば楽に生きられた』と理解もできていた――が、できなかった。
どんなに苦しくても、『それでも逃げてやらねぇ』という覚悟。
よく言えば高潔だが、悪く言えば、マッドなキ○ガイ。
『逃げたくない』『諦めたくない』という、その底意地は、重たい鎖となって、ゴートを地獄に縛り付け、ジュクジュクと腐らせていった。
目は濁り、魂はくすんだ。
それでも、絶対に、『抱いた信念・己の哲学』だけは、誰にも譲らなかった人生。
多くの人間に嫌われて、それでも意地を張って、
プライベートは完全に独りだったが、
実際のところ、ソコだけが救いで、
そして、最後には、当然のように、世界から見捨てられて、
――そんな人生だった。
――言うまでもなく、クソみたいな人生だった。
――まるで、どこかのクズい王子様みたいな……
だからだ。
だから、ゴートは、本気で、UV1を尊敬した。
折れるとは思っていなかった。
ぶっちゃけ、引っ込みがつかなくなっていた。
もう、マジで殺されるしかないかもしれないとまで思っていた。
だが、UV1は折れた。
その理由は、
(ゼノリカの秩序か……)
非常に短い付き合いだが、彼女の性格は、だいたい理解できた。
あれは折れないタイプだ。
頑固な我を持っているタイプ。
しかし、彼女は折れた。
その理由は一つ。
絶対に守りたいものがあったから。
それが、ゼノリカの秩序。
(ゼノリカねぇ……どうやら、ただのヤバい宗教団体じゃなさそうだ……)
まだ、最終的な判断はできない。
しかし、ここまでに得た情報だけを整理した限りでは、決して気分の悪い組織ではない。
(秩序を重んじるってのは、結局のところ、命を重んじているってこと)
そこをないがしろにしていくと、かつて在籍していた組織みたいに、壊れて歪んで腐ってしまう。
秩序を建前にして、つまんねぇエゴと既得権益を守ろうとするだけのブタ小屋になりさがる。
だが、腐り切ったあの組織に一発入れてくる救世主はいなかった。
自分がそうなろうと奮起した結果、
ゴミのように捨てられた。
『最低限の信念は持っている』――そう思えた連中からも裏切られた。
結果、
センエースは、巨悪に殺された。
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『――ついには、君が唯一信頼していた【俺対策チーム】まで、君を見放した。ねぇ、センくん。最も信頼していた連中に売られた今、君は、どんな気分なんだい?』
『――蝉原。その力があれば、完璧な秩序の統合や、人類の倫理的な完成すらも可能だった。お前はバカじゃない。他人の痛みが分かる賢い人間だ。【バグ】の力が使える今のお前なら、誰もが理想とする本当の完全世界だって創れた。完全なる王になれた。誰もが崇め奉る、究極を超えた真の神にだってなれた! なのに! ……どうして……なんで、わざわざ無益な混沌を撒き散らす? その行為に、いったい、なんの意味があるというんだ』
『俺にとっては、現状が完璧な世界さ。この世の誰もが、この蝉原勇吾に恐怖している。蝉原勇吾という無秩序な恐怖に染まったこの世界こそが俺の理想。ヤクザの一等賞で終わるはずだったこの俺が、今や、恐怖の大王そのもの。今の俺なら、この世界を滅ぼす事だって容易い。すごくない? すごいよね。最高だ。現状こそが、これ以上ない理想郷』
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――すべては、ゴートに力がなかったから。
巨悪を滅する力を有していなかったから。
第一アルファにおいて、ゴートはあまりにも無力だった。
だが、ここでなら違う。
(見極めるための力がいる……)
ゴートは、より強く決意する。
『ここでなら前提が違う』――が、『今のまま』では前と同じ結末になる。
それだけは絶対に回避しなければ。
(ゼノリカを超える。それは絶対の目標だ。しかし、ゼノリカが、本当の意味で秩序を重んじる組織なら、俺は、補強要員として、この命を賭してゼノリカのために働こう……)
もし、ゼノリカが、『センエースの望む理想』だったなら、かき乱す必要はない。
無意味な混沌を産む理不尽の権化に堕ちる気はない。
センエースは、蝉原勇吾とは違う。
UV1の態度を受けて、ゴート(センエース)は、ゼノリカに夢を見た。
もし、ゼノリカが『本物』なら、ゴートは『ゼノリカのために尽力しよう』と決意する。
――だが、
(だが、そうでなかった時は、俺がゼノリカを改革する。ゼノリカは、間違いなく、この世界で最も大きな組織)
もはや疑う気はなかった。
UV1やバロールが在籍する組織。
それだけで、世界一の組織だと確信できる。
(根本となる軸、世界の中枢だ。そこが腐っていたら何もかもが終わり。UV1の発言で、ゼノリカの意思は理解できた)
しかし、ゴートはあまりにも、組織の腐り方について知り過ぎていた。
世界史を散々勉強したことで『人が潜在的に有する愚かさ』についての知識を得て、警察という組織の中核にあった事で『人の根源的な醜さ』について体感した。
人が集まれば、必ず、どこがが腐敗する。
それは、もはや仕方がない。
今更、そんな生命の深層についてワーワーいう気はない。
そこまで若くはないし、愚かでもない。
つまり、問題は部位――それがドコか。
単なる末端の綻びなのか、それとも末期ガンなのか。
(……もし、ゼノリカの上が腐っていたら、丸ごとぶっつぶして、この俺の手で、ゼノリカを本物にしてやる)
ゼノリカは強大な組織。
もう理解できた。
ちょっとレベルを上げただけでどうにかなる組織ではない。
それはもう分かった。
しかし、諦めない。
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