恋愛小説の悪役令嬢に転生しました!~借金のために皇子と婚約したけど、返済目処が立ったので婚約破棄されてさしあげます~

夢・風魔

文字の大きさ
12 / 54

12:ひとりで妄想の世界に入っていたわ

しおりを挟む
「はぁー、これで別荘の件はなんとかなりそう。ありがとうエリーシャさん。私ひとりで話を広めるのは大変だったから、手伝って貰えて助かったわ」
「いえ、この程度でお役に立てるのでしたらいつでも! でもそんなに別荘があるのですか?」
「えぇ……ざっと二十以上……」
「えぇぇ!? う、凄いです。さすが侯爵家ですね」

 ふ、ふふふ。買い過ぎて借金してんだけどね。

 ご令嬢たちの輪からも、大人たちの輪からも抜け出し、今はエリーシャと二人で庭園に来ている。
 庭園にも人はいるけど、私たちは少し奥の、誰もいない所で寛いでいた。

「いろんな人と挨拶をしたり話をしたり、結構疲れたでしょ、エリーシャ」
「はい……でもルシアナ様が傍にいてくださったので、楽しむ事も出来ました」
「そう。よかった」

 うーんっと伸びをして空を仰ぐ。
 こっちの夏は湿度がそうでもないから、カラっとした暑さでまだマシだわ。
 とはいえ、あんまり長時間、本気モードのドレスなんて着ていたくない。

「はぁ、早く帰ってドレス脱ぎたいわぁ」
「ぷふっ。ルシアナ様もそんなこと、思うんですね」
「あったりまえよ。暑いものは暑いもん」
「ですよねぇ。ほんっと、暑いです」

 二人で笑いあって、それからご令嬢たちから聞いた面白そうな話題を振り返った。
 まぁだいたい恋話なんだけどね。

「私、貴族の方って幼い頃から婚約者が決まっているものだとばかり思っていました」
「ふふ、確かにそういう方もいるけれど、んー、一割ぐらいかしら?」
「少ないのですね。男性は二十歳を過ぎても独身の方が多かったですし」
「あー、男ねぇ。若いうちからさっさと結婚するより、遊びまわってからのしたいのよきっと」
「ぶふっ。そ、そうなんですか?」

 女は二十歳までに結婚してなきゃ売れ残りだと言われてる。
 でも男は三十までにって話をよく耳にする。
 だから貴族の夫婦は歳の差が十歳なんて、わりとザラだった。

 帝国の第一皇子ベンジャミン殿下も、今年で二十五歳。
 私は十七歳だから、八歳差だ。
 まぁ皇子の場合は、次期皇后となる相手選びだから慎重になるのは当然なんだけど。

 あぁ、それにしても。
 エリーシャと話していると楽しいなぁ。
 平民育ちっていうのもあって、飾らない所がいいのよ。
 媚びへつらうこともなく、素直な気持ちを伝えてくれるところとか。

 私の──ルシアナの理想の友達像なんだわ。

 それでもルシアナは彼女を虐めた。
 そうしなければ侯爵家が、弟が惨めな人生を送ることになるから。

 きっと原作のルシアナも辛かったんだと思う。
 友達になりたかったはずよね。

 はぁ……このままだと私、ベンジャミン皇子をあっさり諦めちゃいそう。
 二人が出会わなければ一目惚れイベントは発生しない。
 だけどいつかどこかで出会ってしまうことだってあり得る。

 そう、一目惚れ。
 そうよ、一目惚れよ!

 よく考えたらさ、婚約者がいる身で他の女の子を一目惚れするなんてあり得ないっしょ!
 しかも婚約破棄後は、戦争を吹っ掛けてきた隣国の王女にこれまた一目惚れしちゃう訳よ。

 尻かるっ。
 え? もしかして婚約破棄しちゃっていいんじゃない?
 
 我が家の没落を避けるためにって思ったけど、もし別荘の売却が上手くいったら借金返済の目処も立つんじゃ。

 プランB、考えちゃう?

「──様、ルシアナ様」
「は!? ご、ごめんなさい。ひとりで妄想の世界に入っていたわ」
「ぷふっ。そうなんですね。表情がころころ変わっていたので、もしかしてと思いましたが。何か面白い想像でもございましたか?」
「ん……ちょっとね。でも内しょ──」

 にこやかに笑って目を開いた瞬間、視界に飛び込んできたのは見知らぬ男に口元を押さえられているエリーシャの姿だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

乙女ゲームに転生した悪役令嬢! 人気が無い公園で出歯亀する

ひなクラゲ
恋愛
 私は気がついたら、乙女ゲームに転生していました  それも悪役令嬢に!!  ゲーム通りだとこの後、王子と婚約させられ、数年後には婚約破棄&追放が待っているわ  なんとかしないと…

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸
恋愛
 仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。  彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。  その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。  混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!    原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!  ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。  完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

処理中です...