Loop✳Resonance

夜空奏音

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-重く消えない記憶(メモリア)-

Episode21 -8月8日-

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検査室の重い扉が開いたのは、夜が完全に白み始めた頃だった。

一晩中、待合室の硬い椅子で祈り続けていた私は、ストレッチャーの音に弾かれたように顔を上げた。けれど、運ばれてきた双葉を見て、私は言葉を失った。

蒼葉​「……双葉?」

​声をかけたが、彼女からの返答はない。

病室に戻ると、二人の女性看護師が手際よく双葉をベッドへ移し、まるでお人形に接するように彼女の体を拭き、着替えさせ始めた。

​看護師A「さあ、双葉ちゃん。少し我慢してね。お袖通しましょうね」

看護師B「いい子ね、えらいわよ。……あら、やっぱりこっちも汚れちゃったわね、拭きましょうね」

​看護師たちの声はどこまでも優しく、事務的だった。双葉はされるがままになっていた。視線はどこにも合わず、虚空を彷徨っている。

昨夜、あんなに私を「泣き虫」だと笑い、楓くんに照れていた彼女は、もうどこにもいなかった。

看護師が顔を覗き込んでも、まともに目を向けることさえしない。その姿は、重い難病を抱え、自我を喪失してしまった幼い子供そのものだった。

​蒼葉「……先生、妹はどうなったんですか? あんなに元気だったのに、急に……」

​私は、廊下へ出てきた担当医の袖を掴んだ。

医師は苦渋に満ちた表情で、手に持ったカルテを見つめたまま首を振った。

​医師「……正直に申し上げて、昨夜の激しい腹痛以降、身体的な異常は見当たらないんです。検査の結果、内臓に損傷も炎症もありません。しかし……」

​医師はチラリと、看護師にお世話をされている双葉の方を見た。

​医師「……激しい苦痛によるショックからか、極度の『幼児退行』、あるいは解離性障害のような状態にあります。医学的な分析では重度の精神疾患の範疇に入りますが、これほど急激に、しかも一晩で人間性がここまで後退する例は……私も見たことがありません」

精神疾患……。

その言葉が、虚しく廊下に響く。

​蒼葉(違う。そんなの、絶対に違う……)

​私の脳裏に、冬姫の冷徹な声が蘇る。

──『蝶は記憶を食べるの。それは人間としての時間の拒絶……』

​双葉は幼児退行したのではない。

蝶によって、彼女が積み上げてきた「14年間の記憶」と「自分という意識」を食い荒らされ、中身を空っぽにされ始めているのだ。

看護師が双葉の髪を優しく梳かしている。

看護師C「双葉ちゃん、綺麗になったわよ。お姉ちゃん見てるから、笑ってあげて?」

それでも双葉は、人形のように無機質な瞳で天井を見つめ続けていた。

その瞳の奥には、もう私への愛も、昨日までの思い出も、何も残っていないように見えて、私は唇を噛み締め、崩れ落ちそうになるのを必死で堪えた。

数分後、病室のドアが勢いよく開き、楓くんが飛び込んできた。

楓「蒼葉! 双葉ちゃんは……!?」

彼の目には明らかな動揺が走っていた。昨夜、笑顔で「また明日」と別れたはずの少女が、今や看護師たちにされるがまま、虚空を見つめているのだから。

​蒼葉「……楓、くん……」

私は、医師から告げられた「原因不明の幼児退行」という残酷な診断を、震える声で彼に伝えた。楓くんは絶句し、ふらつく足取りでベッドの脇へと歩み寄った。

​楓「そんな……嘘だろ。双葉ちゃん、分かるか? 俺だよ、楓だ。イチゴオレ、買ってきたから……」

​楓くんが、震える手で双葉の細い肩に触れようとした、その時だった。

​双葉「……っ!!」

​人形のように静かだった双葉の体が、ビクリと大きく跳ねた。

彼女は喉の奥から「あ、あぅ……っ!」という、言葉にならない悲鳴を漏らし、全力で楓くんの手を振り払ったのだ。

​楓「双葉ちゃん?」 

双葉「いや……っ、い、やぁぁぁ!!」

​双葉は布団を掴んでベッドの隅へと後ずさり、獣のような怯えきった瞳で楓くんを睨みつけた。

まともな言葉はもう出ない。ただ、激しく首を振り、涙を流しながら、自分に近づく「異物」を拒絶し続けている。

​楓「待って、俺だよ、双葉ちゃん! 落ち着いて……」

双葉「やだぁっ! あ、う……っ、ん、んんー!!」

​彼女が発するのは、意味を持たない拒絶の音だけだった。楓くんが手を伸ばせば伸ばすほど、彼女のパニックはひどくなり、ついには自分の耳を塞いで、シーツに顔を押し付けて激しく泣き叫び始めた。

楓「……くっそ……!何でだよ…!」

​その光景は、あまりに無惨だった。

昨夜、彼に対して見せていたあの可愛らしい「ツンデレ」も、微かな恋心のような煌めきも、蝶によってすべて「不純物」として消去されてしまったのだ。

​蒼葉「……もう、やめて、楓くん」

​私は、呆然と立ち尽くす楓くんの腕を掴んだ。

蒼葉「今の双葉には……私たちが誰なのか、もう分からないんだよ。……怖いだけの、知らない人なんだ」

​楓くんの手から、買ってきたばかりのイチゴオレが滑り落ちそうになる。

彼の瞳には、言いようのない絶望と、そして自らへの怒りが渦巻いていた。

看護師たちが慌てて双葉を宥めに入る。

看護師A「双葉ちゃん、大丈夫よ、怖くないわよ。……すみません、今は刺激しないでいただけますか。双葉ちゃんの精神状態が非常に不安定なので……」

​家族であるはずの私たちが、「患者を刺激する外部の人間」として扱われる。

双葉の泣き叫ぶ声が、閉ざされた病室の中に、虚しく響き渡っていた。

楓くんを極端に嫌う。そして、お姉ちゃんである私に目を合わせてくれない。

きっと、楓くんと同じことをしたら、間違いなく同じ反応をされるだろう。

-✳-

結局、私と楓くんにできたのは、病室の隅にある丸椅子に身を寄せ合い、看護師さんたちが双葉を「管理」する様子を、ただ黙って見守ることだけだった。

​そこには、私たちが知っている双葉との対話はない。ただ、決められた時間に、決められた手順で、双葉という「個体」が処理されていく光景があるだけだった。

​看護師A「はい、双葉ちゃん。10時になったから、お顔拭きましょうね。右から失礼しますよ」

ベテランの看護師が、温かいタオルで双葉の頬を撫でる。

双葉は抵抗もしなければ、感謝の眼差しを向けることもない。ただ、拭かれるがままに首を預け、焦点の合わない目で窓の外を見つめている。

​看護師A「次は点滴の交換ね。……あら、少し腫れてきちゃったかな。痛かったら教えてね」

​針が刺し直される瞬間、双葉の眉がわずかにピクリと動く。けれど、彼女は声すら上げない。かつての彼女なら「痛いってば!」と怒鳴っていたはずの刺激にさえ、彼女の心は反応を放棄していた。

​11時。今度は別の看護師がトレイを持って現れる。

看護師B「お食事の時間よ。今日は柔らかいリンゴのコンポート。一口ずつ、ゆっくり食べようね」

​スプーンが双葉の唇に触れる。双葉は赤ん坊のように、反射だけで口を開き、咀嚼し、飲み込む。

看護師さんはそのたびに「えらいわね」「上手よ」と、幼稚園児に言い聞かせるような高いトーンで声をかける。 

​その光景を、楓くんは拳を白くなるほど握りしめて見つめていた。

私もまた、胸が抉られるような思いだった。

私たちが愛していた、生意気で、元気で、時には繊細だった双葉。その魂の輝きは、この「効率的で優しい介護」というルーティンの中に、一欠片も残っていなかった。

​楓「……まるで、壊れたお人形の手入れをしてるみたいだ」

​楓くんが、隣で消え入りそうな声で呟いた。

その通りだった。

看護師さんたちはプロだ。彼女たちに落ち度はない。けれど、彼女たちが向き合っているのは「双葉」という一人の少女ではなく、「原因不明の幼児退行を起こした、管理が必要な患者」という記号なのだ。

​双葉は一度も、こちらを見ようとはしなかった。

彼女のルーティンの中に、私たちはもう存在していない。

その事実が、昨日までの幸せな記憶を、剥製のように冷たいものに変えていく。

​蒼葉「……私、一回、家に戻るね」

​私は、絞り出すように言った。

この「止まった時間」の中にこれ以上いたら、私の心まで壊れてしまいそうだった。 

冬姫に頼まれた、双葉の「一番幸せだった頃の写真」を取りに行かなければならない。

​今の、空っぽになってしまった双葉を救い出すために。この無機質なルーティンを、私の手でぶち壊すために。

-✳-

午後12時半頃、私は冬姫の家に「双葉の写真」を持っていく為に、自分の家に帰ってきていた。

双葉の部屋の中は、何が放っているのか分からないが、キツい刺激臭がした。

刺激臭に耐えながらも、私は双葉の写真を探し続けた。

蒼葉「えっと……あっ…!あった!」

私が見つけたのは、双葉が幼稚園生の時の写真が入ったアルバムだった。

私は、興味本位で中を見てみたが、可愛いという気持ちよりも、今の双葉と比較してしまい、心が重くなってしまう。

蒼葉「双葉……」

双葉のアルバムを抱きかかえ、部屋を出ようとした瞬間、足元にノートが落ちていた。

蒼葉「何これ…?」

拾ってみると、それはお父さんの日記だった。ここで、私はある事を思い出した。

(回想)
双葉『………来ないで……』

双葉『触らないでっ!!』

双葉『関係ない…』

双葉『お姉ちゃんには関係ない!!』

(現在)
あの雨の夜の時、双葉は私に見せたくなくて、あんなことを言っていた。

双葉が隠していた箱、それは紛れもなくお父さんの遺品が入った箱だったのだ。

何故、こんな単純なことに今まで気づかなかったのだろう。そんな自分が、とても悔しかった。

蒼葉「…っ!ごめんね双葉……お姉ちゃん、気づいてあげられなくて……!」

私は涙を流しながら、そこに座り込み、只々、後悔することしかできなかった。

蒼葉「……いや、泣いてる場合なんかじゃない。私はあの時卒業するって決めたんだから…!」

あの日、楓くんの前で約束した事を思い出し、私は再び立ち上がって自分の服で涙を拭いた。

服は、あれからずっと着替えていない。

蒼葉「そろそろ着替えないとな……」

私は、自室に向かい、クローゼットを開けた。そして、最初に目に入ったのは、あの「白いワンピース」だった。

蒼葉(これを着れば…双葉は私を「お姉ちゃん」だって認識してくれるはず…!)

そう思った私は、着替えて双葉のアルバムと、お父さんの日記を持って、冬姫の家へと向かった。

-✳-

冬姫の家へ着くと、彼女は相変わらず資料の山に埋もれていた。

けれど、私の姿──あの白いワンピースを着た私を見た瞬間、彼女のペンが止まった。

​冬姫「……蒼葉? その格好、どうしたの」

蒼葉「ううん、なんでもない。……これ、頼まれていた双葉のアルバム。それから、これもお父さんの遺品の中から見つけたの。日記みたい」

​私が差し出したものを、冬姫は慎重に受け取った。私はそのまま、彼女に今の病院の惨状を淡々と報告した。

​蒼葉「……双葉が、幼児退行した。私のことも楓くんのことも分からなくて、怯えて、叫んで……。今は看護師さんたちに、まるでお人形みたいにお世話されてる。嘔吐は2回、激しい発作は1回。……でも、医師は原因不明の精神疾患だって言うばかりなの」

​冬姫は無言で、私が見つけたお父さんの日記をパラパラとめくり始めた。その表情は、報告を聞くほどに険しくなっていく。

​冬姫「……なるほどね。幼児退行は、蝶が宿主ふたばの『現在』を食い尽くし、時間を巻き戻している証拠。発作が起きているのも、羽化が近いサインかも。」

​冬姫は日記の数ページを指でなぞりながら、冷たく言い放った。

冬姫「双葉ちゃんの発作の内容、具体的に教えてもらってもいい?」

蒼葉「うん、8月7日、つまり昨日の夜、夕食後に双葉が急にお腹が痛いって言い始めたの。最初は食あたりかなって思ったけど、後々どんどん激しくなってただの食あたりじゃないって分かってきたの。……それ以降は分からない……」

冬姫「なるほどね…ありがとう蒼葉」

​冬姫「それと、このアルバムと日記は私が預かる。あなたは病院に戻って、双葉ちゃんから目を離さないで」

​蒼葉「……分かった。お願いね、冬姫」

私は彼女に背を向け、再び外へと出た。夏の陽射しに照らされた白いワンピースが、眩しすぎて視界がチカチカする。

病院の廊下を歩く私を、すれ違う人たちが不思議そうに見ているのが分かった。無機質な病院の中で、この夏祭りのような格好はあまりにも浮いている。

けれど、今の私にはこれしかなかった。

思い出の服を着て、妹の前に立つ。それが、蝶に支配された彼女の心を取り戻すための、私なりの「反逆」だった。

-✳-

​病室のドアを開けると、そこにはまた、あのルーティンの時間が流れていた。

午後2時。自由時間。双葉はまた、何も見えない瞳で、じっと天井を眺めていた。

蒼葉「双葉~お姉ちゃんだよ…」

話しかけても、返事はない。

楓「双葉ちゃん、さっきからずっとこの調子だよ…看護師さんの話も聞かなくなってる」

蒼葉「…そっか……」

その時だった。看護師の人が双葉の様子を見に来た。というよりかは、双葉と遊びに来たと言った方が近いだろう。

病室のドアが軽やかに開き、一人の若い看護師が入ってきた。その手には、色とりどりの折り紙と、幼児向けの絵本が抱えられている。

​看護師A「双葉ちゃん、お待たせ。お外は暑いけど、ここなら涼しいわよ。一緒に遊びましょう?」

看護師さんは、保育園の先生のような明るいトーンで双葉に呼びかけた。

すると、今まで楓くんや私の声にさえ反応しなかった双葉の瞳が、わずかに揺れた。

​看護師A「……あ。……う」

​双葉が、小さい、けれど確かな声を漏らした。看護師さんがベッドの横に座り、赤い折り紙を取り出す。

​看護師A「ほら見て、赤色よ。これで何を作りましょうか。お花かな? それとも、お耳が長いウサギさんかな?」

看護師さんの手際よい指先で、紙が形を変えていく。双葉はそれを、穴が開くほど見つめていた。

まるで、生まれて初めて見る魔法を目撃しているかのような、無垢な、あまりにも無垢すぎる眼差しで。

​双葉「……う、うさ……」

看護師A「そう、ウサギさんよ。はい、どうぞ」

差し出された折り紙のウサギを、双葉はおぼつかない手つきで受け取った。

そして、それを自分の頬にすり寄せ、ふにゃりと、弱々しく笑ったのだ。

​その笑顔を見た瞬間、私の胸はナイフで突き立てられたような痛みに襲われた。

嬉しいはずなのに。笑ってくれたことが、何よりも救いのはずなのに。

目の前にいるのは、私の知らない、別の誰かだ。

かつて私と喧嘩をし、恋に悩み、冬姫の家で難しい「理」について考え込んでいた、あの聡明な双葉の面影は、その「遊び」の中に微塵も存在していなかった。

楓​「……信じられない」

​楓くんが、絞り出すように呟いた。彼の目には、昨夜の絶望とはまた違う、言いようのない空虚さが浮かんでいる。

​看護師A「次はこれね。この絵本、双葉ちゃん好きでしょう?」

​看護師さんが絵本を開き、抑揚をつけて読み聞かせを始める。

双葉はその声に合わせて、時折「あうー」と楽しそうに相槌を打つ。

看護師さんの優しい指が、双葉の頭を撫でる。

​看護師A「えらいわね、双葉ちゃん。ちゃんとお話聞けて。いい子ね」

​それは、完成された一つの世界だった。献身的な看護師と、それに応える従順な患者。

その幸福な「ルーティン」の中に、私たち家族が入り込む余地はない。

白いワンピースを着た私は、まるで舞台裏で取り残されたエキストラのように、その光景をただ眺めているしかなかった。

​双葉「お…おねぇ…ちゃ…」

​双葉が、不意にこちらを向いた。私は、心臓が跳ね上がるのを感じた。思い出してくれた。この服を見て、私のことを──。

​双葉「……あ、う……あ、う……」

​けれど、彼女が差し出したのは、先ほどの赤いウサギだった。彼女は、私が「お姉ちゃん」であることを認識して呼んだのではない。

ただ、目の前にいる「自分に優しくしてくれそうな他人」に対して、手元にある宝物を自慢しているだけの、幼い子供の仕草だった。

​私は、その折り紙を受け取ることができなかった。震える指先で、ただ自分のスカートをぎゅっと握りしめる。

​──蝶が、食べてしまったのだ。

彼女の14年間の軌跡を。私と一緒に歩んできた、すべての時間を。

​蒼葉「……ごめんね、双葉。お姉ちゃん、もう、見てられないよ……」 

​私は、逃げるように病室の隅へ視線を逸らした。

看護師さんの「上手よ」「いい子ね」という優しい声が、今の私には、死刑宣告のような音にしか聞こえなかった。
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