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番外編 虎さんと涙
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俺、彩月涼は普段なら絶対に行かないであろう場所。美術館に向かって歩みを進めていた。
(……べっつにぃ?たまたまタイムラインに流れてきて見ちまっただけだし……調べてたわけじゃねぇし?……ストーカーなんかじゃねぇもんな……たまたま見ちまったもんは仕方ねぇもんな!)
心の中で言い訳を並べ立てながら、展示室へと足を踏み入れた。
◇
『第53回 絵画芸術コンクール受賞作品』
……トッ…トッ…トッ……
……ピタッ
最優秀賞━『虎さん』結城 日向
「ぶっ……ふ……っ…」
(虎さん…?あははははっ!お前っ……なんで最優秀賞のタイトルがっ……虎さんっ……ぶっ……ははははっ!なんでっ……なんでこんなタイトルで最優秀賞なんて取れたんだよっ…!)
バッ!と顔をあげる。すると、吹き出しそうになっていた俺の笑いは、一瞬で、消え失せた。
「……は」
息を呑む。黒と青がメインで、所々に赤と紫が混ざり合っている。混沌としているようで、どこか静寂を感じさせる色彩。真ん中にいる虎が、こっちを見ている……いや…見てない?でも、この吸い込まれるような黒い瞳から、目が、離せない。
(……なんだ……これ…)
……てく…てく…
……コツ…コツ…
二つの足音が近づいてくる。
(…誰か……来てる?)
後ろを振り返る。するとそこに、一番会いたかった、けれど会いたくなかった存在がいた。
「え……」
(……ひな…た?……それに……あの…ヤクザ…)
「っ……」
(ぼーっとしてる場合か!)
走って一気に距離を取る。
(こっからなら……大丈夫…だろ……)
角に隠れて、チラリと二人の様子を覗く。
絵の前に立つ二人。
(くそっ……コソコソ何話してやがんだあのヤクザッ……こっからじゃ聞こえねぇ……)
「ふっ……」
ヤクザが、日向の頭に手を置いた。ポンポンと優しく撫でる。
「っ…!?」
(あのヤクザ!何堂々と頭ポンポンとかやってやがんだっ!離せ!)
俺が心の中で叫んだ、その時だった。
「……えへへ」
「……っ」
日向がふにゃりと浮かべたその笑顔は、まるでそこに日が差し込んだような、俺が一度も見たことない、心の底から幸せそうな顔だった。
(……お前……そんな顔……できたのかよ…)
(……俺の前では一度だって笑ったことなんか無かったのに…)
ギュッと、胸の奥が締め付けられる。
(…………そりゃ…そうか……俺はお前を助けるとか言っときながら……真逆のことしかしてなかったんだから……)
目の前の二人の間には、俺が入る隙間なんて、1ミリも、なかった。あの絵の中の虎と同じ、誰も寄せ付けない、けれど、温かい、絆。
(………あんな顔見ちまったら……助けるだのなんだの言ってたのが馬鹿みてぇだな………お前はとっくに……あいつに救われてたんだからよ…)
「………っ…」
…ジワッ……ツーーッ… 熱いものが頬を伝う。
(……幸せになれよ……日向っ…)
俺は背を向けた。二人の邪魔をしないように、静かに、でも、早足で。
……タッ…タッ…タッ…タッ…
俺の足音は、美術館の静寂の中へと、消えていった。
(……べっつにぃ?たまたまタイムラインに流れてきて見ちまっただけだし……調べてたわけじゃねぇし?……ストーカーなんかじゃねぇもんな……たまたま見ちまったもんは仕方ねぇもんな!)
心の中で言い訳を並べ立てながら、展示室へと足を踏み入れた。
◇
『第53回 絵画芸術コンクール受賞作品』
……トッ…トッ…トッ……
……ピタッ
最優秀賞━『虎さん』結城 日向
「ぶっ……ふ……っ…」
(虎さん…?あははははっ!お前っ……なんで最優秀賞のタイトルがっ……虎さんっ……ぶっ……ははははっ!なんでっ……なんでこんなタイトルで最優秀賞なんて取れたんだよっ…!)
バッ!と顔をあげる。すると、吹き出しそうになっていた俺の笑いは、一瞬で、消え失せた。
「……は」
息を呑む。黒と青がメインで、所々に赤と紫が混ざり合っている。混沌としているようで、どこか静寂を感じさせる色彩。真ん中にいる虎が、こっちを見ている……いや…見てない?でも、この吸い込まれるような黒い瞳から、目が、離せない。
(……なんだ……これ…)
……てく…てく…
……コツ…コツ…
二つの足音が近づいてくる。
(…誰か……来てる?)
後ろを振り返る。するとそこに、一番会いたかった、けれど会いたくなかった存在がいた。
「え……」
(……ひな…た?……それに……あの…ヤクザ…)
「っ……」
(ぼーっとしてる場合か!)
走って一気に距離を取る。
(こっからなら……大丈夫…だろ……)
角に隠れて、チラリと二人の様子を覗く。
絵の前に立つ二人。
(くそっ……コソコソ何話してやがんだあのヤクザッ……こっからじゃ聞こえねぇ……)
「ふっ……」
ヤクザが、日向の頭に手を置いた。ポンポンと優しく撫でる。
「っ…!?」
(あのヤクザ!何堂々と頭ポンポンとかやってやがんだっ!離せ!)
俺が心の中で叫んだ、その時だった。
「……えへへ」
「……っ」
日向がふにゃりと浮かべたその笑顔は、まるでそこに日が差し込んだような、俺が一度も見たことない、心の底から幸せそうな顔だった。
(……お前……そんな顔……できたのかよ…)
(……俺の前では一度だって笑ったことなんか無かったのに…)
ギュッと、胸の奥が締め付けられる。
(…………そりゃ…そうか……俺はお前を助けるとか言っときながら……真逆のことしかしてなかったんだから……)
目の前の二人の間には、俺が入る隙間なんて、1ミリも、なかった。あの絵の中の虎と同じ、誰も寄せ付けない、けれど、温かい、絆。
(………あんな顔見ちまったら……助けるだのなんだの言ってたのが馬鹿みてぇだな………お前はとっくに……あいつに救われてたんだからよ…)
「………っ…」
…ジワッ……ツーーッ… 熱いものが頬を伝う。
(……幸せになれよ……日向っ…)
俺は背を向けた。二人の邪魔をしないように、静かに、でも、早足で。
……タッ…タッ…タッ…タッ…
俺の足音は、美術館の静寂の中へと、消えていった。
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