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1話
しおりを挟む「ノーブル様、冗談でしょう……? 婚約破棄なんて……」
「冗談なわけがあるか、エリス。お前は身分が私よりも低いくせに身持ちが固い。そんなお前に辟易していたんだ。早く私の物になればいいものを……」
伯爵であるノーブルと婚約をして1カ月。たったこれだけの期間で彼の性格がわかってしまった。外面はとてもいい人だけれど内面は違う。ここまで違う人はめずらしいくらいだ。
私のことを子爵令嬢だと馬鹿にして自らが伯爵家の当主になったことを自慢している。年齢は私と同じ19歳だけれど。父親が病気になったのでその代わりとしての務めが早まったのだった。それと同時に結婚が完了しているわけではないのに、身体の関係を迫って来ていた。私は断っていたけれど、まさかこんな事態になるなんて……。
「そんなわけでお前とは婚約破棄だ。ああ、慰謝料なんてものは支払わないからな。身体の関係を拒否したお前が悪いんだ」
「別に身体の関係を拒否しているわけでは……」
時が来れば身体の関係にはなる。それはわかっているはずなのに、ノーブルは我慢できないらしい。まったく……どこまで子供なのかしら?
「うるさい! お前となんか結婚してやるものか! すぐに私の屋敷から出て行け!」
「ノーブル様……」
その後のノーブルは完全にわがままな子供に成り下がっていた。私とは婚約破棄だと言って全く聞く耳をもってくれない。最低限の荷物だけを纏めて私は彼の屋敷から追い出された……。これからどうすればいいんだろうか。
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「お父様やお母様になんて言えばいいんだろう……」
私は自分の屋敷に帰ることも出来ずにいた。子爵令嬢が伯爵様と一緒になれた。それを喜んでくれた両親の顔。それを忘れられずにいたからだ。どれだけ失望されるかわかったものじゃない。私の身持ちが固すぎるばかりに……もっと早くノーブルに身体を許していればこんなことにはならなかっただろうか?
「でも、あのノーブルの性格だったら、他の些細なことでも婚約破棄だと言いそうよね」
例え身体の問題が解決されたとしても、他の問題で彼とは衝突していただろう。結婚生活がうまく行くとはとても思えなかった。そう考えればここで婚約破棄になったのは良かったと言えるだろうか?
「本当にこれからどうしよう」
私は教会内で祈りを捧げながら考えていた。すると後ろから人影が──。
「エリスか? もしかして……」
「えっ?」
突然、声を掛けられた私はその人影に向かって視線をむけた。そこには……間違いない。幼馴染の姿があったのだ。
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