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4話
しおりを挟む「はあ……どうしたらいいのかな」
シュゴー侯爵家……カイルの屋敷に住まわせてもらって5日が経過していた。5日間は矢のように過ぎて行ったけれど……どうしたらいいのか私にはわからない。その要因が……。
「おはようございます、エリス様」
「おはよう……メリーさん」
「私のことはメリーと呼び捨てにしてくださいと申したと思いますが」
「う~ん……なかなか難しくて」
メリーが私の専属のメイドとして選ばれた。昔の私を知っているからというのがその理由みたいだけれど。確かにメリーは完璧な人だった。礼儀的にはもちろん、私の内面もサポートしてくれている。おかげでこの5日間は快適に過ごせたのだけれど。
「私の呼び方についてはまあとりあえずはいいです。しかし……カイル様のことはどのように考えているのでしょうか?」
「えっ? カイルのこと?」
「そうです」
メリーに対しての悩みの種はそこにあった。やたらと私とカイルの仲のことを聞いて来るのだ。確か昔もそんな感じだったような気がするわね。私とカイルはそもそも何も始まっていない。身分の差からそんな話は出なかったからだ。侯爵令息と子爵令嬢では離れすぎている。昔からそのように思われていたはずだ。
ノーブルと婚約できただけでもラッキーだと言われていたのに……それ以上の立場の人と婚約なんて考えられなかった。でも、今のメリーは違うようだ。
「またその話? 前にも言ったけれど、私とカイルは単なる幼馴染で……」
「それは聞いております。ですが昔の話であることも事実。今はどのようにお考えでしょうか?」
「今はって……それは……」
久しぶりに会ったカイルは随分と男前になっていた。一瞬だったけれど見惚れてしまうほどに。ああダメだわ……そんなこと考えたらいけない。
「私はノーブルと婚約していた身だし……カイルとの仲なんてかんがえられないわ」
「ノーブル様との仲は既に終わっているはず。そう考えればカイル様との関係も冷静に対応できるのではないですか?」
「いえ、そんな簡単には……」
私は周りの貴族から見れば婚約破棄された捨てられた子爵令嬢でしかない。そんな悪名がわいている私と一緒に居ること自体が新たな噂になりかねないのに……カイルはこの5日間まったく態度を変えていなかった。
「本来なら、私が近くにいるだけでもカイルの迷惑になりそうなのに……」
「カイル様は迷惑だと考えていないということでしょう。エリス様、もしもカイル様が一緒になりたいと言ったらその時は……応じていただけるのでしょうか?」
「ええっ? そんなこと……」
メリーの発言は一人のメイドとしてはあまりにも大きな内容だった。真剣にカイルの将来を考えているのかもしれない。彼には恋人はいないらしいし。私はなんて答えたらいいんだろうか?
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