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3話
しおりを挟む「し、失礼致します……」
「お帰りなさいませ、カイル様」
シュゴー侯爵家にお邪魔することになった。教会でのカイルの言葉通り、私はこの屋敷に案内されることになったのだ。つい数時間前まではノーブルの屋敷にいたのに……なんだろうこれは。こんなにも早く他の殿方の屋敷に赴くなんて。
「ありがとう、メリー」
カイルと私を出向いてくれたのはメリーという方だった。シュゴー家のメイドだろうけれど……昔、お世話になった記憶があるわ。
「そちらのお方はもしや……」
「メリーは知っているだろう? エリスだよ」
私をエリスだと認識したのかメリーはとても驚いた表情を見せていた。
「エリス様……? それではカイル様の幼馴染の……!」
「そういうことになるかな。教会で偶然会ったんだ。まさかこんな偶然になるとは思わなかったよ」
「なるほど……それは確かに。運命的ですね」
「私もそう思うよ」
メリーは私のことを覚えているようだった。私の方は記憶がおぼろげだけれど……。とりあえず愛想笑いを浮かべておく。
「しかし、どういう事情でエリス様がお越しになったのですか?」
「色々と事情があってね。詳しくは後程話すよ。とりあえず、エリスの部屋を用意してくれないか」
「かしこまりました、用意させていただきます」
メリーはそれ以上聞くことをしなかった。流石は一流のメイドといったところかしら。私達に事情があることを悟ってくれたのね。それにしても……。
「カイル、部屋ってどういうこと? そんなの用意してもらわなくても……大丈夫よ」
本当は大丈夫じゃないけれど、とりあえず強がってみることにした。
「自宅に帰りづらいんだろう? 今日1日で完結するとは思えないしな。しばらく泊っていくといいさ」
「ええ……!? でも、迷惑になるんじゃ……」
久しぶりに会った旧友の家に泊まる……少し前の私では考えられないことだった。婚約者がいる身で他の男性の家に泊まることなどあってはならないのだから。それが我が国の貴族の常識だ。
「それに……殿方の家に泊まるなんていうのは……」
「エリスが嫌じゃなければ気にすることはないよ。だって君はもう婚約破棄されている身だろう? 誰の家に泊まろうと関係ないはずさ」
「それは確かに……まあ、そういうことかしら?」
「ああ」
婚約破棄はされたばかりとはいえ、ノーブルにはっきり言われたのは事実だ。今の状態は貴族の常識外の出来事ということになる。
「どうしても嫌なら、街で宿を取るけどどうかな?」
「いえ、そこまでしてもらうのは申し訳ないわ。ええと……よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ。短い間かもしれないけどよろしくな」
「はい」
流石に街の宿を取ってもらうのは気が引ける。シュゴー侯爵家の財政なら余裕だろうけど決して安くはない出費になるだろうから。私はカイルの家に住まわせてもらうことになった。
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