妹に婚約者を奪われました。後悔してももう遅い。

マルローネ

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1話

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「本日を持って、お前との婚約は破棄だ。異論はないだろうな? アリス・グレート」

「はい……シーザー様。とても残念ではございますが……異論はございません……」


 私は婚約者であるシーザー・カンタゴル侯爵の部屋に訪れていた。彼から言われた言葉は……婚約破棄だ。

 シーザー様の隣には、妹のレイナの姿があった。彼女は私と同じく子爵令嬢に該当する。


「シーザー様! 幸せになりましょうね!」

「うむ、その通りだな。ふはははははっ」

「うふふふふふ!」


 この状況だけを見ると、レイナによって私は嵌められたように映ると思う。確かにレイナはシーザー様の二枚目の外見をとても気に入っていた。だからことあるごとに、私に対して文句を言っていた。「お姉ちゃんだけ、あんな二枚目の侯爵様と結婚なんてズルい! 私に頂戴!」といった具合にだ。

「ごめんね、お姉ちゃん……シーザー様は私のことが好きみたいだから!」

「ふふふ、やはり男は美人を好むのだよ」

「まあ、シーザー様ったら!」

「あはははははっ」


 耳を覆いたくなる会話が目の前で繰り広げられている。見た目だけなら、二人とも美男美女と呼んで差し支えないけれど。でも性格的には二人とも、決して良いとは言えなかった。

 レイナは昔から、わがままし放題で私やお父様達を非常に悩ませていたし、シーザー様は対外的には普通だけれど、裏の性格は高圧的だった。女性を物としか扱わない態度や、変態プレイを強要してくるなどといったこともあるくらいで。

 私は本日まで、なんとか貞操を守っていたけれど、それも限界に近づいていた。

 今、シーザー様を別の女性に引き渡すのは気が引ける。もしかしたら、そろそろ我慢の限界に達して野獣になるかもしれないから。でも……可愛い妹の為なら、それも仕方ないわね。これはレイナが望んだ結果なのだから。

 レイナは目的の物が手に入り、とても満足しているようだった。17歳のレイナと19歳の私……婚約という年代に入ってきているのは確かだ。レイナが満足しているのなら、私は心を鬼にしてこの場を立ち去るとしよう。


「それでは……私はこれで、失礼いたします」

「うむ……ではまたな」

「お姉ちゃん、またね~~~~!」


 貴族らしからぬ言動のレイナ……シーザー様にとっては民間人に近い存在に映っているかもしれない。だからこそ、より気楽に接することが出来る。それはレイナの魅力でもあるけれど……。

 まあなんにせよ、私は重圧から解放された気分になっていた。妹と婚約者からのダブルのプレッシャー……それが一気になくなったのだから。

 明日からはもっと自由に生きて行けるはず……私はそのことがとても嬉しかった。
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