4 / 20
4話
しおりを挟む
「ワンワンワンッ!」
「こら、ジョセフ! そんなに走り回らないの!」
私は貴族街を愛犬のジョセフと共に走っていた。ジョセフは10歳になるけど、全長は私よりも大きいくらいに育っている。ただの犬ではなくて、魔犬に該当するから当然ではあるけれど。
私を護衛してくれている者達も、なんだか苦笑いしているようだった。最近では私の方が振り回されている……これではどちらが主人か分からない。でももちろん、私が主人には相違ない。
ジョセフの前に立つと手を差し伸べる。
「グルルルルルル……」
「はいはい、よ~しよし」
「わうぅぅぅぅぅぅ……」
差し伸べた手をジョセフは舐めまわしていた。私や周囲に居る護衛には懐いているジョセフだけれど、無関係の人には牙を剥き出しにする可能性を秘めていた。実際に噛みつくことはないけれど、番犬としての地位は確立されているというか……。
私は護衛と共にジョセフを連れて、貴族街の一画に辿り着いた。事前に向かうことは伝えているけれど、幼馴染のジェームズ・ルーグナー公爵令息の屋敷だ。新築特有の匂いがしており、本邸と比べても遜色がない程に大きかった。
次期当主を務めているジェームズの威厳を体現した屋敷なのかもしれない。
------------------------------
貴族街にあるルーグナー家の正門のベルを鳴らした。ベルの音とほぼ同時に、使用人と思われる複数の人物が姿を現す。私を歓迎してくれているようだ。
「これはアリス・グレート様! お待ち申し上げておりました。ジェームス様がお待ちしております……ささ、どうぞ中へお入りくださいませ!」
「あ、ありがとう……それでは遠慮なく」
「はいっ」
想像以上に好待遇……というよりも、丁寧なおもてなしを受けて逆に恐縮してしまった。よくよく見ると、ルーグナー家に居る使用人達には見覚えがある。子供の頃にジェームズと遊んでいた時に見かけた使用人達なのかもしれないわね。
「ジェームズ様は奥の貴賓室にいらっしゃいます」
「ありがとうございます。早速、向かわせていただきます」
私は使用人達にお礼をすると護衛達と共に奥の部屋を目指した。何年振りかしら彼に会うのは……私が13歳の頃が最後だったから6年振りくらいになるわね。
途中でルーグナー家は長期遠征をした時もあったから、より会えない期間が長くなっていた。緊張の一瞬だ。
ノックをして貴賓室の中へと入った。
「失礼いたします……」
中へ入ると長身の人物が私を迎えてくれていた……面影は多少変わっているけれど、間違いない。彼がジェームズ・ルーグナー本人だ。
「久しぶり、かな? アリス」
「ジェームズ……本当に久しぶりね」
「ああ、そうだな。元気にしていたか?」
「もちろんよ……!」
私は自然と涙を流し、幼馴染との6年振りの再会を喜んでいた。
「こら、ジョセフ! そんなに走り回らないの!」
私は貴族街を愛犬のジョセフと共に走っていた。ジョセフは10歳になるけど、全長は私よりも大きいくらいに育っている。ただの犬ではなくて、魔犬に該当するから当然ではあるけれど。
私を護衛してくれている者達も、なんだか苦笑いしているようだった。最近では私の方が振り回されている……これではどちらが主人か分からない。でももちろん、私が主人には相違ない。
ジョセフの前に立つと手を差し伸べる。
「グルルルルルル……」
「はいはい、よ~しよし」
「わうぅぅぅぅぅぅ……」
差し伸べた手をジョセフは舐めまわしていた。私や周囲に居る護衛には懐いているジョセフだけれど、無関係の人には牙を剥き出しにする可能性を秘めていた。実際に噛みつくことはないけれど、番犬としての地位は確立されているというか……。
私は護衛と共にジョセフを連れて、貴族街の一画に辿り着いた。事前に向かうことは伝えているけれど、幼馴染のジェームズ・ルーグナー公爵令息の屋敷だ。新築特有の匂いがしており、本邸と比べても遜色がない程に大きかった。
次期当主を務めているジェームズの威厳を体現した屋敷なのかもしれない。
------------------------------
貴族街にあるルーグナー家の正門のベルを鳴らした。ベルの音とほぼ同時に、使用人と思われる複数の人物が姿を現す。私を歓迎してくれているようだ。
「これはアリス・グレート様! お待ち申し上げておりました。ジェームス様がお待ちしております……ささ、どうぞ中へお入りくださいませ!」
「あ、ありがとう……それでは遠慮なく」
「はいっ」
想像以上に好待遇……というよりも、丁寧なおもてなしを受けて逆に恐縮してしまった。よくよく見ると、ルーグナー家に居る使用人達には見覚えがある。子供の頃にジェームズと遊んでいた時に見かけた使用人達なのかもしれないわね。
「ジェームズ様は奥の貴賓室にいらっしゃいます」
「ありがとうございます。早速、向かわせていただきます」
私は使用人達にお礼をすると護衛達と共に奥の部屋を目指した。何年振りかしら彼に会うのは……私が13歳の頃が最後だったから6年振りくらいになるわね。
途中でルーグナー家は長期遠征をした時もあったから、より会えない期間が長くなっていた。緊張の一瞬だ。
ノックをして貴賓室の中へと入った。
「失礼いたします……」
中へ入ると長身の人物が私を迎えてくれていた……面影は多少変わっているけれど、間違いない。彼がジェームズ・ルーグナー本人だ。
「久しぶり、かな? アリス」
「ジェームズ……本当に久しぶりね」
「ああ、そうだな。元気にしていたか?」
「もちろんよ……!」
私は自然と涙を流し、幼馴染との6年振りの再会を喜んでいた。
30
あなたにおすすめの小説
妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです
藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。
――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。
妹は父の愛人の子。
身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、
彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。
婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、
当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。
一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。
だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。
これは、誰かが罰した物語ではない。
ただ、選んだ道の先にあった現実の話。
覚悟のなかった婚約者が、
自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。
わざわざ証拠まで用意してくれたみたいなのですが、それ、私じゃないですよね?
ここあ
恋愛
「ヴァレリアン!この場をもって、宣言しようではないか!俺はお前と婚約破棄をさせていただく!」
ダンスパーティの途中、伯爵令嬢の私・ヴァレリアンは、侯爵家のオランジェレス様に婚約破棄を言い渡されてしまった。
一体どういう理由でなのかしらね?
あるいは、きちんと証拠もお揃いなのかしら。
そう思っていたヴァレリアンだが…。
※誤字脱字等あるかもしれません!
※設定はゆるふわです。
※題名やサブタイトルの言葉がそのまま出てくるとは限りません。
※現代の文明のようなものが混じっていますが、ファンタジーの物語なのでご了承ください。
両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。
一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。
更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
私よりも姉を好きになった婚約者
神々廻
恋愛
「エミリー!お前とは婚約破棄し、お前の姉のティアと婚約する事にした!」
「ごめんなさい、エミリー.......私が悪いの、私は昔から家督を継ぐ様に言われて貴方が羨ましかったの。それでっ、私たら貴方の婚約者のアルに恋をしてしまったの.......」
「ティア、君は悪くないよ。今まで辛かったよな。だけど僕が居るからね。エミリーには僕の従兄弟でティアの元婚約者をあげるよ。それで、エミリーがティアの代わりに家督を継いで、僕の従兄と結婚する。なんて素敵なんだろう。ティアは僕のお嫁さんになって、2人で幸せな家庭を築くんだ!」
「まぁ、アルったら。家庭なんてまだ早いわよ!」
このバカップルは何を言っているの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる