幼馴染が好きなら婚約破棄してください

5話

「デネブ殿……アリーナとのいきなりの婚約破棄、どのように考えているのだ？」

「そうですね……ええと……」

「……」


　デネブは言葉を選んでいるようだったけれど、なんだろうか？　特に焦っている風ではなかった。先ほどからシュルト王子のことをちらちらと見ているし、私の方にも視線を向けているような気がする。嫌な気分ね……正直、気持ち悪いわ。

「私がアリーナのことをどのように扱おうと、王子殿下には関係ないと思いますが？」

「そんなことはない、デネブ殿。アリーナは私にとって大切な人物だしな」

「ほう、大切な人物ですか……どういう意味で大切なのか、お聞きしてもよろしいですかな？」

「馬鹿を言うな。まずはこちらの質問に答えてもらおうか」


　シュルトはデネブの態度に苛立ちを覚えていたようだ。明らかに顔が強張っている。でも、デネブの方は余裕の表情だった。

「答える必要はないと思いますよ、王子殿下。あなたはまだひよっ子のようだ。私の権力の高さを分かっていないように見える」

「……？」

　ああ、そういうことだったのか。デネブが余裕な理由……それはおそらく、彼の持つ領土が関係しているはずだ。デネブは伊達に伯爵を名乗っていないというわけだ。