婚約破棄したくせに、聖女の能力だけは貸して欲しいとか……馬鹿ですか?

マルローネ

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1話 婚約破棄された聖女

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「エメリ、私は別の女性と婚約しようと思う。お前とは婚約破棄をさせてくれ」

「ルドルフ様? それは一体、どういうことでしょうか……?」


 私は突然の婚約破棄という言葉に、状況が呑み込めない状態になってしまっていた。ルドルフ・コーブル公爵令息様は私の婚約者であり、ルザーリオ王国の中でもトップクラスの貴族とされている。その次期当主が彼になるのだけれど……。


「お前の聖女としての能力……それは少し勿体ないがな」

「で、では……! 考え直してくださいませ!」

 私は伯爵令嬢という立場でしかないので、ルドルフ様に強く出ることが出来ない。しかし、この状況での婚約破棄というのは、流石におかしい。その理由も他の女性と付き合うからということだし……。

 私のハーグリーブス伯爵家は「聖女」という能力を代々持っていた。祈りを捧げることで、仕事に従事している人達の作業効率を底上げするというものだ。アバウトな能力にはなるけれど、今まではコーブル公爵家が管理している金鉱山や、鉄道建設に役立っていた。

「ルドルフ様、私の聖女としての能力が消えれば、各事業の作業効率が低下していくかと思われますが……」

「それについては問題ない。従業員の層も以前より厚くなっているからな。いざとなれば、従業員の作業時間を増やせば良いだけのことだ」

「それは……!」


 金鉱山などで働いている人達は平民出身の人がほとんどだ。その為に、ルドルフ様は軽視しているのだろう。賃金を変えずに作業時間だけを増やすことを考えている。

「従業員の作業時間を増やすのは賛成できません……!」

「何を言っているのだ、エメリよ。お前も伯爵令嬢なら分かるだろう? 作業員はたかが平民だ、私達とは住む世界が違うのだよ」

「ルドルフ様……」


 とんでもないことを言っている気がするけれど、大丈夫なのだろうか? 大貴族が平民を軽視するなんて……。


「それから、私が新しく婚約を考えている女性は、お前よりも位の高い人物だ。その者と婚約をする方が私の将来の為にもなるからな。残念だが、お前とは婚約破棄させてもらおうか」

「る、ルドルフ様……! 最低です……!」

「悪いとは思っているのだぞ、エメリよ。本当に申し訳ないな。ふははははははっ」


 罪悪感など微塵も感じさせない態度に、私は怒りを通り越して呆れ顔になってしまっていた。それと同時に悔しくなってしまう……こんな人と婚約をしてしまっていた自分が情けない。

 単純に婚約破棄をするだけでなく、平民軽視の最低な公爵令息……そんな人との婚約なんて、私からも願い下げだった……。
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