婚約破棄したくせに、聖女の能力だけは貸して欲しいとか……馬鹿ですか?

マルローネ

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2話 王子殿下からの呼び出し その1

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「ルドルフ様がそんなことを……まったく、嘆かわしいことだ」

「はい、お父様」

「大丈夫か、エメリよ?」


 お父様は私を抱きしめてくれていた。悲しんでいる私を慰めてくれているのだ。でも、本音としては悲しみよりも悔しさの方が大きいかもしれない。あんな人の為に働いていたと考えると……本当に悔しくて後悔してしまう。

「約1年にも渡る婚約生活……本当にご苦労だったな」

「いえ、お父様……私の方こそ、せっかくの公爵家との婚約を破棄にしてしまって、申し訳ございませんでした」

「なに、気にすることはないさ。それに、お前の話を聞いて、大切な娘をルドルフ様などに渡せなくなったからな」

「お父様……」


 お父様は私のことをまったく責めることはなかった。それだけでも感謝しか出来ない。ハーグリーブス家の家系に泥を塗ってしまったのに……。


「まあ、お前にはきっと素敵な出会いがあるだろう。その時まで、また自分を高めておくと良いさ」

「ありがとうございます……お父様……」

「娘の幸せが私の幸せでもあるからな」

 とても嬉しい言葉だった。

 その後、お母様や兄さまにも同様のことを言われ、私はとても温かい家族に恵まれたのだと、改めて感じるのだった。それにしても、新しい出会いか……流石にこればかりは努力をしないと巡り合わない気がするわね。


「それにしても……ルドルフ様はエメリを捨てたことを後悔しないと良いけれどね」

「……お母様?」


 お母様が最後に言った言葉が少し、不穏だったけれど……どういう意味かしら?



------------------------



「エメリ、手紙が届いているぞ」

「私にですか? テムザ兄さま」

「そうだ」

 婚約破棄からしばらく経ったある日のこと……

 私は玄関先で、テムザ兄さまからその手紙を受け取った。綺麗な封筒に入っており、明らかに高貴な家の方が出したと分かる見た目だった。まあ、貴族街の屋敷に届いた手紙なのだから、当然と言えば当然だけれど。

「差出人は誰だ?」

「ええと……あっ」


 私はその手紙の差出人を見て、目を疑ってしまった。なぜなら……


「王族のフラック・ルザーリオ王子殿下からの手紙のようです……!」

「フラック王子殿下からか! 凄いじゃないか!」

「は、はい……!」


 私は緊張しながら手紙を開け、中を確認した。


「ええと……宮殿に来て欲しいという内容みたいです……」

「ほほう、それはそれは……」


 テムザ兄さまはニヤリと怪しく笑っているけれど、いや、まさかそんな嬉しいことがあるわけがない。と、言いつつも少しだけ期待してしまうのは、婚約破棄をされた反動からだろうか?

 フラック王子殿下とは昔から付き合いがあるから余計にだ。でも、肝心の用件が書かれていないのは少しだけ不安にはなるわね。いきなり投獄されたらどうしようか、とか考えてしまうし。まあ、冗談だけれどね。
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