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4話
しおりを挟む「ライド、お前が悩んでいたのは……シルヴィア嬢の優秀さについてだろう?」
「や、やめろ……シグマ!」
ライド様はとても慌てていた。それも別方向で……なんだか話の方向性が変わって来ている。私はどうしたらいいのか分からなかった。
「くくく、焦っているじゃないか、ライド。照れているのか?」
「て、照れてなどいない……! お前は何を言っているんだ……!」
「シルヴィア嬢が賢く、他の貴族令息などへの態度も良いため、お前は悩んでいたな?」
「うっ……やめろ、シグマ……!」
なんだかすごい話な気がする。ライド様の知らない過去をほじくり返しているような気さえするわね。先ほどまで浮気がどうのこうので婚約破棄の話をしていたとは思えないくらいだ。えっ、なに……この雰囲気は。私はどういう顔をすればいいのかしら?
「なんだか、話が変わって来ているわね。ライド様の過去話になっているわよ?」
「確かに……それに微笑ましい感じがするのは気のせいか?」
周囲の言葉も心なしか柔らかくなっているような……おそらく、気のせいではないはずだ。
「シグマ様。どういうことでしょうか? 私が賢いことと、ライド様が悩むことに疑問が生まれるんですが」
「ああ、シルヴィア嬢からすればそうかもしれないですね。ただ、ライドはあれで必死だったのですよ」
「はあ……?」
なんだかよく分からない回答だった。ライド様が必死だった? それがまず分からない。私が賢いという部分については同意だけれど。自慢ではないけれど、私は学園内でもトップクラスの成績を収めていた。それに、貴族の人々との会話に関しても問題ないレベルに勉強はしていると思う。
「簡単に言えば、優秀過ぎるあなたが目の前に居るから、自分が霞んでしまう。ライドはそういう面で悩んでいました。婚約してからはさらにそれが顕著になり……彼の悩みは大きくなったのです。私に悩みの相談をしたのは、ちょうどその頃だったでしょうか」
「そんなことがあったんですね……なるほど」
知らなかった……ライド様がそんなことで悩んでいたなんて。少しだけ、彼のことを見直すきっかけにはなったかもしれない。自分勝手なところや、プライドが高いところも、そういう劣等感を隠すための去勢だったのかもしれないわね。
「……」
「どうですか、シルヴィア嬢? すこしはライドのことを見直すきっかけにはなったでしょうか?」
「そうですね……」
「お、おい! なにを勝手に話を進めているんだ!? 私を無視するな!」
ライド様は真っ赤になっているけれど、言葉は先ほどよりも明らかに弱くなっていた。なんだろう? 少し可愛いと思えたのは私だけかしら?
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