婚約破棄? 卒業パーティーで何を言ってるんですか?

マルローネ

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7話

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 その日、私はライド様の屋敷に来ていた。あの卒業パーティーの日からしばらく時間が経過している。


「結局、シルヴィア嬢はライドを許したのですね。なかなかの判断でした」

「いえ、シグマ様。ライド様を許したわけではありません。今でもあの婚約破棄のことは許せないんですから。でも、これからのことを考えた上で婚約を継続しようとは考えました。別れたりしたら、色々と問題が出て来るでしょうから」

「なるほど」


 ライド様との婚約は続けた方がいいのは間違いなかった。それはお互いの家系の為にもだ。お父様達に迷惑を掛けるのは避けたい。そんな考えから私はライド様との婚約を続けていた。

 本音を言えば……。


「本音を言えば、私はライド様への愛情はないように思います」

「おや、正直ですね。大丈夫なんですか? ここは彼の屋敷なんですよ?」

「ライド様は今は出掛けていますので、大丈夫ですよ」


 現在、屋敷内にライド様の姿はない。シグマ様と何を話しても問題ないということになる。何を話しても、というところが怪しくもあるけれど。


「ふふ、私とこうして話しているところを見られると大変ですからね」

「確かにそうですね。ライド様は思い込みが激しい方ですから……疲れます」


 シグマ様と話している方が楽に思える時がある。ライド様は色々と疲れる人だから。私はもしかしたら、シグマ様との相性が良いのかもしれない。でも……。


「ライドと一緒にいるのは疲れる、ですか。確かに傍から見ていてもそんな感じはしますね。シルヴィア嬢も無理をされているように思います」

「でも、私思ったんです。そのくらいのことで文句を言っているのは違うって。これから先、幾つも乗り越えなければならない壁みたいなものが出て来ると思います。そんな時の為にも……今は忍耐を鍛えるべきなのかなって」


 私もライド様もまだまだ若い。これから幾らでも進める道は残されている。私はライド様と共に歩み、忍耐力を付ける方向性で考えていた。彼も反省してくれるなら……私も彼を愛せると思うしね。

 私達に必要なのは忍耐力……ライド様には厳しく教えていこうかな。


「忍耐を鍛える……ですか。流石はシルヴィア嬢。あんなことがあったのにしっかりしていらっしゃる。その器量の高さは見習いたいものですね」

「いえ、私なんてそんな。まだまだ、世間知らずの小娘ですよ」


 シグマ様の視線が眩しい気がする。それでいて、なんだか寂しそうにも見えるんだけれど。


「本当のことを言うと、私は残念に思っているんです」

「残念にですか?」

「ええ、シルヴィア嬢。私はライドとあなたは別れると思っていました。そうなってくれれば、シルヴィア嬢に交際を申し込めたのに、と」

「シグマ様……その発言は……」


 非常にマズい。もしも、ライド様に見つかったりなんかしたら大変だし。絶対にまた誤解されてしまう。浮気を疑われていたのに、それが真実になるような言葉は慎むべきだ。それでも、シグマ様は発言した? それって……本気だということかしら?


「私は本気なんです、シルヴィア嬢。しかし、二人の仲を壊そうだなんて考えていません。この話はここまでにしましょうか」

「そ、そうですね……その方がいいと思います」


 沈黙の時間が出来てしまった。その後、私達は一言も発することなく別れる。シグマ様の気持ち……それが本当なのだとしたら、以前、私と話していた時も同じ気持ちだったということになるわね。
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