攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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12話 エミルとのデート その1

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 春人はその日、敢えて酒場の入り口でエミルと待ち合わせをした。しかも、時間は10時からと、普通に人目につく時間帯だ。
 もちろんこれには理由があり、彼女との仲を噂する者を増やす為だ。二人が過ごしているシーンを目撃すれば付き合いについても尾ひれが付くだろうとバーモンドも考えていた。

「いつも通りの服装だ……代わり映えしないな」

 突然決まった疑似デートということもあり、服を用意できなかった春人は冒険に行くいつもの服装で代用してしまった。そこへ遅れてエミルが現れた。小さめのバッグを持っている。
 彼女は突然決まったデートにも関わらず、ホットパンツを着用し、少し涼しさの感じる服装での登場だ。もちろん彼女のむき出しになった脚にも目線は行くが、それ以上に見慣れない格好をしてきたエミルに申し訳なさが浮かんだ。

「おはようございます、遅れて申し訳ありません」
「いや、時間よりまだ前だし……それより、なんかごめん」

 春人としてもいつもの服装に恥ずかしさを感じていた。デートなどしたことがない男の癖が出ているのか。

「どうしたんですか?」
「俺は何時もの格好で……ごめん」

 思わず、自らを卑下してエミルに謝ってしまう春人。しかし、エミルは全く気にしている素振りはなかった。

「いえ、春人さんにとてもよくお似合いですし。私はその格好の春人さんが好きです」

 「好き」という言葉に過剰な反応をしてしまう春人だった。エミルの表情から、おそらく深い意味で言ったのではないだろうとは予想は付いたが、それでも恥ずかしい気持ちはでてしまう。

「そ、そうか……ありがとう。とりあえず、行こうか」
「はい」

 まだ心臓の鼓動が早くなっていた春人だが、必死で平静を装いながら、エミルを連れて歩き出した。17年の人生で初めてのデートである。


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「あの……どこへ行きましょうか?」
「そうだな……」

 デートなどしたことがない春人である為、特に場所を決めず歩いていた。そして、自然と二人は時計塔の前まで来ていたのだ。大通りを歩くと必ずこの広場に差し掛かるようになっている。
 周囲にはカップルと思わしき男女が歩いていた。エミルは服装自体はそこまで目立たないが、春人は左腕をギプスで覆っている状態の為、少し目立つ格好と言える。

「私達も恋人に見えているでしょうか?」
「どうかな……つり合い的な問題で……俺じゃエミルの恋人としては不十分かも」

 春人は本心からそう思っていたが、エミルは首を傾げる。

「どういうことでしょう? 私が春人さんの恋人役には不十分なのは承知ですが……逆なんてあり得るでしょうか?」
「ええ? 本気で言ってないよね?」
「いえ、正直、春人さんにご迷惑なのではと考えていますので……」

 元の世界でいじめられていた反動なのか、春人は自分を卑下する言葉が多い。彼は、現在の自分の立場をわかっていないのだ。春人の持つ圧倒的な強さは、本人の謙虚な態度と相まって好評価に繋がっており、エミルを恋人にするには十分であるという認識が出ている。これは周囲の反応であり、むしろ特別な力を持たないエミルに春人は勿体ないという見解すら出ている。
 こういった見解をするのは女性陣だが、春人は二枚目ではないが、自信に溢れた顔つきは評判も良く、彼の外見を気に入る者も多かったりするのだ。


「以前居た場所では日陰者だったからな、俺は」
「それが信じられませんけど……でも、今が重要なんですし、もっと春人さんは自信を持っていいと思います」

 屈託のないエミルの視線と励まし。彼女の言葉に嘘はない……春人もそれは信じられた。今の彼女にできること、彼女の為になることはしっかりと恋人になることだ。春人はそのように考えた。

「ありがとう、エミル。ところで、行きたいところあるんだけど、いいかな?」
「はい、もちろんです。どちらですか?」
「あそこ」

 春人が指差す方向。そこには武具の製作所があった。時計塔から北に位置する場所で、冒険者の装備を作っている場所だ。

「レアメタルを材料にして、新しい装備の新調をお願いしていたんだ。ちょっと見てみようと思って」
「それでは行ってみましょう」

 春人の提案だが、エミルも新しい装備に興味があるのか思いの外、乗り気であった。そのまま、二人は武具工房に入った。


「あれ、春人さんじゃないすか!」

 中で声をかけてきたのは、目の細い優男。年齢は23歳になるが、比較的軽い口調からもっと若く見られることもあるらしい。

「ケビンさん、おはようございます。武器の制作どうなってるかなって思って」
「嫌だな、春人さん! 俺のことは呼び捨てでいいのに! 春人さんに敬語なんて使われたら恐縮っす!」

 同じ歳や下であればともかく、春人に歳上を呼び捨てにする度胸は持ち合わせていなかった。しかも、それほど親しい間柄でもない場合は余計にだ。

「すいません、俺の国の風習でもあるので。歳上の人は基本的に敬語になります」

 ケビンは残念そうにしていたが、春人に言われれば納得するしかなかった。隣にいるエミルも納得していたが、嘘というわけでもないのでそのまま話を続けた。

「俺の武器って出来てます?」
「はい、バッチリですよ! 受け取ります?」
「左腕はまだ使えないですけど、貰ってもいいですかね」

 春人は受け取りを希望し、ケビンも快くそれに応じた。すぐに奥から、荘厳な鞘に納められた剣を出してくる。

「レアメタルの質も良かったんで、かなりの良品が出来ましたよ」
「これが……」

 鞘から取り出した剣は軽く弧を描いており、鉄の剣よりもはるかに透明感のある銀色をしていた。剣先には黒い文様が描かれた造りになっている。手になじむ印象は、鉄の剣とは比較にならない。

「どうですか?」
「はい、想像以上です。料金は前の額でいいんですか? 正直、足りないんじゃ?」

 春人は依頼の際に、前金で5万ゴールドを渡している。額としては十分なのだが、春人はその剣の出来栄えはさらに上のような感じがしたのだ。

「5万ゴールドも頂ければ十分っす。春人さんが利用されてる店ってだけで集客率が上がりますからね」

 ケビンはピースサインをしながら春人に言った。事実なのだろうが、春人としては喜んでいいのかわからないことだ。自分の影響力が強いというのは、春人の性格的には緊張してしまう為だ。

「あと、これはサービスっす」
「これは?」
「闘気を収束させる籠手ですよ。春人さん、これすら装備してないのが凄すぎですけど、これからは必要になりますよ」

 ケビンはそう言って、小さな籠手を春人に渡した。その籠手は本人の闘気の流れを収束させ、攻撃力と防御力を上げる性能がある。強くなるほど呼応する形で上昇していくので、冒険者の基本装備の1つだ。

 春人は籠手を手に持っているだけだが、確かに自らの闘気の流れを鮮明に感じていた。この籠手と剣を装備すれば、グリーンドラゴンとはいえもはや自分の敵ではない。そんな理解に近い自信が、春人の心に植え付けられた。

「……春人さん、今怖いですよ……」

 ケビンは春人から放たれる強者の雰囲気に気圧されていた。彼の元には、当然腕利きの冒険者も訪れるが、彼が感じた恐怖心はいままでで一番と言えるかもしれない。それほど、彼の表情は強張っていたのだ。

「あ、すみません。籠手、ありがたくいただきます」
「ええ、そうしてくださいっす! 剣の名前どうします?」
「名前……そうだな」

 自分が吸い込まれそうになる銀色の弧を描く刃。その美しくも底の見えない刀身を眺め、春人は考えた。

「ユニバースソード……かな」
「おお、なんか神秘的な名前っすね!」
「それにしても、美しい剣ですね。春人さんにぴったりだと思います」

 剣を眺めていた春人だが、近くで笑顔になったエミルも同じく剣に見惚れているようだった。

「さっきから気になってたんすけど、そっちの御嬢さんは彼女っすか?」
「う……」

 春人もケビンの口からその言葉が出てくることは予期していたが、いざ言われると口籠ってしまう春人であった。エミルも顔を赤くしている。

「まあ……そうなるかな」
「ほほう、なるほど。綺麗なお嬢さんっすね。俺はケビン・コースターって言います」
「あ、エミル・クレンです。春人さんとは、お付き合いしています」

 ケビンとエミルはそれぞれ自己紹介をした。エミルの初々しい態度にケビンも笑っていた。

「春人さんも、意外と恋愛は初めてっすか?」
「慣れてないです、はい」
「いや~、17歳くらいの慣れない恋愛っていいですね~。がんばってくださいっす! 応援してますよ!」
「あ、ありがとう」

 春人とエミルはケビンに言われることが恥ずかしくなってしまい、すぐに武具工房を出ることにした。ケビンに挨拶をして、二人はその場を後にした。


「エミル」
「は、はい」
「まあ、これで多少は噂は流れるんじゃないかな」
「そ、そうですね。よかったです……」

 お互いまともに顔は合わせずに言葉だけで会話をする。なんとも初々しい二人である。ケビンには応援するとしか言われていないが、これほどまでに恥ずかしくなるとは想定外なのだろう。

「あ、あの……春人さん」
「な、なに?」
「手を繋ぎませんか?」

 エミルは顔を真っ赤にしながらも大胆な言葉を口にする。春人は腰に装備した剣を落としそうになった。

「ええ?」
「だ、ダメでしょうか? こ、恋人ですし……えと」
「あ、うん。そうだね……繋ごうか」

 時計塔には腕を組み合っているカップルが集まっていた。それを見ての意見なのだろう。エミルは手を差し伸べている。
 春人も彼女の差し出している手に、自分の手をかけた。もちろん、初めての経験ではあるが意外にも気持ちが落ち着く自分がそこには居た。

「こんな感じかな?」
「はい、そうですね。では、今度は向こうに行きませんか?」

 エミルは笑顔で春人に言った。春人も少し緊張がほぐれる。彼も笑顔で頷きながら、そのままの状態で歩き出した。
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