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21話 アルゼルの動き その1
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「済まない、レナ殿。王は体調が優れない為、本日はお会いできない」
「左様でございましたか。わたくたちも急に訪ねてしまいまして、申し訳ありませんでしたわ。ハインリッヒ様にどうぞお伝えくださいませ」
墓地の近くの大きな別荘に滞在しているレジーナ王国の国王。春人、アメリア、レナの3人は国王に会うために訪ねてはみたが、体調不良のため会えないとのことだった。
レナと話す人物は、王国最強の剣客と称されるイスルギ・オータム 25歳
歳古風な袴のような衣装を身に着けたまさに剣客といった出で立ちをしており、青い髪を腰辺りまで伸ばしている。それを後ろで縛り、ちょうどポニーテールのような髪型になっていた。
顔の線は細いながらも研ぎ澄まされており、閉じた口元からは最強の剣士たる風貌が伺えた。腰には鉄ごしらえの刀が装備されており、そこから抜刀を披露するのだろうと容易に想像できる。
「こっちの世界にも、侍っているんだな……」
春人はレナと話すイスルギの格好を見ながらそんなことを考えていた。まさに古来から伝わる侍の格好をしているのだ。唯一、違うのは髪の長さなどが西洋風というところだろうか。
艶のある髪の毛は女性のそれにも相当しており、彼の二枚目な顔を合わせて人気は高い。
「えっと、イスルギ様ってお呼びした方がよろしいですか?」
レナとの会話に割って入って来たのはアメリアだ。いつもとは違い、それなりに礼儀正しい話し方をしている。
「いえ、アメリア殿にそのように畏まられても困ってしまいます。どうぞ、イスルギとお呼びください」
「じゃあ、お言葉に甘えて。イスルギさんは強硬派の進撃をどこまで把握しています?」
「はい、国王陛下も含め、ラグア様の進撃を読むことは出来ておりません……。ですが、先日の円卓会議で緊張の糸は切れたと見ています。必ずや、近い内に強硬派の攻撃はあるでしょう」
この別荘に尾行が居ないことを確認しているアメリア。だからこそ、入り口でこのような会話が可能なのだ。イスルギ自身も攻めてくることは確信している。彼女としてはそれが聞ければ十分だった。
「わかりました。私たちは常に万全の態勢で待ち構えています」
「お願いいたします。私も可能な限り協力させていただきたく思います。私設部隊の強行を討伐できれば、強硬派の勢力は一気に減るでしょう」
イスルギはそう言って、アメリアに深々と頭を下げる。目の前の人物はレジール王国最強の剣客。そんな者にここまでさせるアメリアに、春人は改めて感心させられた。
「結局、王様には会えなかったね」
「ま、イスルギさんと話せたしいいでしょ」
「少し残念ですが、良しと致しましょう。それより、今後の方針ですが……」
イスルギと別れ、春人、アメリア、レナの3人は歩きながら今後の方針を話し合っていた。この間も尾行が居ないかどうかは常に警戒している。
「あいつを監視だけど……まあ、直接関わらない方がいいわね。警戒されてもやりにくいし。煽られても無視ね、無視」
「その方がいいかもしれませんね。ミューラーはあれで賢い男ですから。こちらからの接触は可能な限り控えましょう」
「……わかりました」
アメリアとレナの提案に春人も承諾した。春人としても、あの不快な男に近づきたいとは思っていない。少し様子を見るのであれば、それに越したことはなかった。
「あれって……?」
「あら、ルナですわね」
そして、彼ら3人はアーカーシャの中心部までやって来た。
時計塔の広場では少し人だかりが出来ていた。いつもカップルなどで賑わっている場所ではあるが、今回は老若男女の人々が集まっている。なにかのイベントを思わせる集まりでもあり、その先にはルナ・イングウェイの姿があった。彼女は無表情ながら、均整の取れたスタイルを誇示するかのようにお腹が大きく開いた服装をしている。
それでいて、遠目からは厚手に見えるズボンを穿いている為、脚は一切露出していない。そのギャップが彼女の魅力にも繋がっているようだ。観客の中には男も大勢いた。
彼女は手の平サイズの銀色のボールのような物を両手に合計8個持っていた。肘まで使って器用に持っており落とす気配がない。
「大道芸でも始まるのかな?」
「春人さま、まさにその通りですわ」
場所や人だかりからも容易に想像はついたことではあるが、レナは彼の言葉に頷く。そして、視線の先のルナは言葉を発することなく、そのボールを一気に天に投げた。始まったのはボール8個を使用したお手玉だ。
「すごいですね、ルナさん」
「いえいえ、あの程度は当然ですわ。わたくし達はああいったショーのようなものも各地で開催しておりますから」
彼女らの衣装からもそれは納得がいった。レナとルナ、この美人姉妹は衣装がいやらし過ぎない絶妙のラインを攻めている。大道芸を行う場合の衣装としては最適な印象を受けた。彼女らのショーであれば、大勢の観客を呼べることは間違いない。
そして、ルナのお手玉は通常のそれとは一線を画していた。普通にお手玉をするのはもちろん、脚も使い、ボールをリフティングのように跳ね上げている。それらのコンビネーションを平然とルナはやってのけていた。全く失敗する様子を見せない。
「あれって鉄の玉ですよね?」
「鋼流球(コウリュウキュウ)と呼ばれるアイテムになりますわ。スライム合金で出来ており、変幻自在に形を変えることができますの。ボール状はあくまでも基本の形ですわ。わたくしが8個、ルナも8個持っており、合計16個になります。硬度は鉄以上でございますね」
そう言いながら、いつの間にかレナの両手には鋼流球が8個用意されていた。急に出てきた球に春人は驚く。
「それって、何時出したんですか?」
「わたくしの魔空間から自由に出し入れが可能です。ルナも同じですが、これはわたくし達の武器でございましてよ」
「レナとルナは魔力でその球を自在に操れるのよ。刃状に変化させて敵を攻撃したりとか、縦横無尽に攻撃が可能ってわけ」
レナの説明を補足する形でアメリアが話した。そうなると自在に操れる球が全部で16個飛び交うことも可能である。相当な武器になることを春人は感じ取った。
「なんだか凄いですね……レナさんとルナさんは召喚士と聞いてましたが」
「うふふ、本業はそっちですのよ? 鋼流球はあくまでもオプションの武器になりますわ」
レナは怪しげに笑みを浮かべるが、春人としてもこの球がサブの性能であるとはとても信じられない。これをサブウェポンと言ってのけるレナに少し驚きを感じた。
「それにしても、春人さまの武器も素晴らしい性能がありそうですわね」
レナが見据えるのは春人の腰に掛けられた黒い鞘。その中には上質なレアメタルで造られたユニバースソードが眠っている。春人が左手に着けている籠手と併せて、装備の性能を彼女は見破っていた。
「これは最近、武具工房で造った物です」
「武具屋「アルトヴァイエルン」でしょうか? あそこのケビン様はとても腕の良い職人でございますものね。なるほど……合点がいきましたわ。春人さまがそれを使えばどれほどの強さを発揮するのか、とても楽しみでございます」
近々、春人のユニバースソードを振るう姿を見ることができる。レナは今後の戦闘も想定し、ほぼ確信めいた言葉を使った。春人もレナ達に、その勇姿を披露することがあるとは感じているのか、彼女に同調するように頷いた。
そして、そんな話の間に広場のショーは続いていた。
「ねね、ルナのあれって魔力使ってないでしょ?」
「ええ、あれは物理的に披露していますわ。本来は魔力で空中を疾走させてこその武器ですので、あのような使い方は致しませんが。あくまでショーの為の披露になります」
魔力を使っているかどうかは春人には判断できないでいたが、ルナのお手玉はさらに加速していった。お手玉、、リフティング、そして華麗な踊りを披露しながら1つも落とすことなく8個のボールを自在に空中へ飛ばしている。
魔力を使えば容易なことだが、それを物理的にやっているのだから相当な技術だ。彼女たちは、例えスーパーボールのような小さなボールであっても同じことが可能なほどの技量を持っていた。
「凄い映えますね……なんて言うのか、ルナさん」
無口な印象のルナが無言であのような芸当を披露している。男であれば、女性とは違うなにかを感じても不思議ではない。当然、春人もそれを感じていた。
「つまり見惚れてるってことね」
「ち、ちが……いや、そういうことかな?」
「ま、わからなくもないけど。単純な格好良さとか可愛さとは違う魅力もあるよね」
春人はアメリアの言葉に頷いた。今のルナはそういった魅力で周囲の人達を湧かせていたのだ。そして、ショーが終わると同時に大きな拍手がルナに向けられて一斉に開始された。ルナの名前を連呼する者達もいるほどだ。ルナは人見知りをしているのか、冷静に手を軽く振っている。なにもしゃべることはなく、鋼流球も消していた。
「あ、あのルナさん!」
「……?」
そんな歓声が広がる中、一人の少年が彼女の前まで来ていた。年齢は12~13歳くらいだろうか。
「こ、これ……ぼ、僕、ずっとファンでした! よかったら受け取ってください!」
少年の手には花屋で購入したであろう、綺麗な花束があった。ルナは少し戸惑っていたが、その花束を快く受け取った。
「……ありがとう、また見に来てくれると、嬉しい」
「は、はい!」
無口なルナの感謝の言葉。少年は目を輝かせてそれ以上はなにも言わずに走り去って行った。
------------------------------------------------------------
「うふふ、ルナもやりますわね」
「いや、恋愛対象ではない気がしますけど……お互いに」
春人はレナに冷静に返す。さすがに年齢差もある。ファンとアイドルといった関係だろうか。
「どうするの、レナ? ルナのショーの成功を労う?」
「そうですわね、といっても今回は無料の見世物でしたが……参りましょうか」
そして、春人たち3人はルナと合流すべく、広場の人だかりへと入った。
しかし、その時である。時計塔の広場に悲鳴が轟いたのだ。
「きゃああああ! 誰か! 助けて!」
観客の中の一人だろうか、若い女性が叫んでいた。そして……その女性の腕をつかむのは
冒険者パーティ「ハインツベルン」のゴイシュであった。春人たちも叫び声を上げた女性の方向に向き直る。ルナもその方向を向いていた。
「人を変質者呼ばわりしやがって……俺の宝を壊したんだ。責任を取ってもらうぜ」
「い、いや……! あなたが私のお尻を触ってきたから、腕を払っただけでしょ?」
広場でのショーとは別に、もう一つ同じ場所で大きな出来事が動いていた。ゴイシュの傍らには……アルゼル・ミューラーの姿もあったのだ。
「左様でございましたか。わたくたちも急に訪ねてしまいまして、申し訳ありませんでしたわ。ハインリッヒ様にどうぞお伝えくださいませ」
墓地の近くの大きな別荘に滞在しているレジーナ王国の国王。春人、アメリア、レナの3人は国王に会うために訪ねてはみたが、体調不良のため会えないとのことだった。
レナと話す人物は、王国最強の剣客と称されるイスルギ・オータム 25歳
歳古風な袴のような衣装を身に着けたまさに剣客といった出で立ちをしており、青い髪を腰辺りまで伸ばしている。それを後ろで縛り、ちょうどポニーテールのような髪型になっていた。
顔の線は細いながらも研ぎ澄まされており、閉じた口元からは最強の剣士たる風貌が伺えた。腰には鉄ごしらえの刀が装備されており、そこから抜刀を披露するのだろうと容易に想像できる。
「こっちの世界にも、侍っているんだな……」
春人はレナと話すイスルギの格好を見ながらそんなことを考えていた。まさに古来から伝わる侍の格好をしているのだ。唯一、違うのは髪の長さなどが西洋風というところだろうか。
艶のある髪の毛は女性のそれにも相当しており、彼の二枚目な顔を合わせて人気は高い。
「えっと、イスルギ様ってお呼びした方がよろしいですか?」
レナとの会話に割って入って来たのはアメリアだ。いつもとは違い、それなりに礼儀正しい話し方をしている。
「いえ、アメリア殿にそのように畏まられても困ってしまいます。どうぞ、イスルギとお呼びください」
「じゃあ、お言葉に甘えて。イスルギさんは強硬派の進撃をどこまで把握しています?」
「はい、国王陛下も含め、ラグア様の進撃を読むことは出来ておりません……。ですが、先日の円卓会議で緊張の糸は切れたと見ています。必ずや、近い内に強硬派の攻撃はあるでしょう」
この別荘に尾行が居ないことを確認しているアメリア。だからこそ、入り口でこのような会話が可能なのだ。イスルギ自身も攻めてくることは確信している。彼女としてはそれが聞ければ十分だった。
「わかりました。私たちは常に万全の態勢で待ち構えています」
「お願いいたします。私も可能な限り協力させていただきたく思います。私設部隊の強行を討伐できれば、強硬派の勢力は一気に減るでしょう」
イスルギはそう言って、アメリアに深々と頭を下げる。目の前の人物はレジール王国最強の剣客。そんな者にここまでさせるアメリアに、春人は改めて感心させられた。
「結局、王様には会えなかったね」
「ま、イスルギさんと話せたしいいでしょ」
「少し残念ですが、良しと致しましょう。それより、今後の方針ですが……」
イスルギと別れ、春人、アメリア、レナの3人は歩きながら今後の方針を話し合っていた。この間も尾行が居ないかどうかは常に警戒している。
「あいつを監視だけど……まあ、直接関わらない方がいいわね。警戒されてもやりにくいし。煽られても無視ね、無視」
「その方がいいかもしれませんね。ミューラーはあれで賢い男ですから。こちらからの接触は可能な限り控えましょう」
「……わかりました」
アメリアとレナの提案に春人も承諾した。春人としても、あの不快な男に近づきたいとは思っていない。少し様子を見るのであれば、それに越したことはなかった。
「あれって……?」
「あら、ルナですわね」
そして、彼ら3人はアーカーシャの中心部までやって来た。
時計塔の広場では少し人だかりが出来ていた。いつもカップルなどで賑わっている場所ではあるが、今回は老若男女の人々が集まっている。なにかのイベントを思わせる集まりでもあり、その先にはルナ・イングウェイの姿があった。彼女は無表情ながら、均整の取れたスタイルを誇示するかのようにお腹が大きく開いた服装をしている。
それでいて、遠目からは厚手に見えるズボンを穿いている為、脚は一切露出していない。そのギャップが彼女の魅力にも繋がっているようだ。観客の中には男も大勢いた。
彼女は手の平サイズの銀色のボールのような物を両手に合計8個持っていた。肘まで使って器用に持っており落とす気配がない。
「大道芸でも始まるのかな?」
「春人さま、まさにその通りですわ」
場所や人だかりからも容易に想像はついたことではあるが、レナは彼の言葉に頷く。そして、視線の先のルナは言葉を発することなく、そのボールを一気に天に投げた。始まったのはボール8個を使用したお手玉だ。
「すごいですね、ルナさん」
「いえいえ、あの程度は当然ですわ。わたくし達はああいったショーのようなものも各地で開催しておりますから」
彼女らの衣装からもそれは納得がいった。レナとルナ、この美人姉妹は衣装がいやらし過ぎない絶妙のラインを攻めている。大道芸を行う場合の衣装としては最適な印象を受けた。彼女らのショーであれば、大勢の観客を呼べることは間違いない。
そして、ルナのお手玉は通常のそれとは一線を画していた。普通にお手玉をするのはもちろん、脚も使い、ボールをリフティングのように跳ね上げている。それらのコンビネーションを平然とルナはやってのけていた。全く失敗する様子を見せない。
「あれって鉄の玉ですよね?」
「鋼流球(コウリュウキュウ)と呼ばれるアイテムになりますわ。スライム合金で出来ており、変幻自在に形を変えることができますの。ボール状はあくまでも基本の形ですわ。わたくしが8個、ルナも8個持っており、合計16個になります。硬度は鉄以上でございますね」
そう言いながら、いつの間にかレナの両手には鋼流球が8個用意されていた。急に出てきた球に春人は驚く。
「それって、何時出したんですか?」
「わたくしの魔空間から自由に出し入れが可能です。ルナも同じですが、これはわたくし達の武器でございましてよ」
「レナとルナは魔力でその球を自在に操れるのよ。刃状に変化させて敵を攻撃したりとか、縦横無尽に攻撃が可能ってわけ」
レナの説明を補足する形でアメリアが話した。そうなると自在に操れる球が全部で16個飛び交うことも可能である。相当な武器になることを春人は感じ取った。
「なんだか凄いですね……レナさんとルナさんは召喚士と聞いてましたが」
「うふふ、本業はそっちですのよ? 鋼流球はあくまでもオプションの武器になりますわ」
レナは怪しげに笑みを浮かべるが、春人としてもこの球がサブの性能であるとはとても信じられない。これをサブウェポンと言ってのけるレナに少し驚きを感じた。
「それにしても、春人さまの武器も素晴らしい性能がありそうですわね」
レナが見据えるのは春人の腰に掛けられた黒い鞘。その中には上質なレアメタルで造られたユニバースソードが眠っている。春人が左手に着けている籠手と併せて、装備の性能を彼女は見破っていた。
「これは最近、武具工房で造った物です」
「武具屋「アルトヴァイエルン」でしょうか? あそこのケビン様はとても腕の良い職人でございますものね。なるほど……合点がいきましたわ。春人さまがそれを使えばどれほどの強さを発揮するのか、とても楽しみでございます」
近々、春人のユニバースソードを振るう姿を見ることができる。レナは今後の戦闘も想定し、ほぼ確信めいた言葉を使った。春人もレナ達に、その勇姿を披露することがあるとは感じているのか、彼女に同調するように頷いた。
そして、そんな話の間に広場のショーは続いていた。
「ねね、ルナのあれって魔力使ってないでしょ?」
「ええ、あれは物理的に披露していますわ。本来は魔力で空中を疾走させてこその武器ですので、あのような使い方は致しませんが。あくまでショーの為の披露になります」
魔力を使っているかどうかは春人には判断できないでいたが、ルナのお手玉はさらに加速していった。お手玉、、リフティング、そして華麗な踊りを披露しながら1つも落とすことなく8個のボールを自在に空中へ飛ばしている。
魔力を使えば容易なことだが、それを物理的にやっているのだから相当な技術だ。彼女たちは、例えスーパーボールのような小さなボールであっても同じことが可能なほどの技量を持っていた。
「凄い映えますね……なんて言うのか、ルナさん」
無口な印象のルナが無言であのような芸当を披露している。男であれば、女性とは違うなにかを感じても不思議ではない。当然、春人もそれを感じていた。
「つまり見惚れてるってことね」
「ち、ちが……いや、そういうことかな?」
「ま、わからなくもないけど。単純な格好良さとか可愛さとは違う魅力もあるよね」
春人はアメリアの言葉に頷いた。今のルナはそういった魅力で周囲の人達を湧かせていたのだ。そして、ショーが終わると同時に大きな拍手がルナに向けられて一斉に開始された。ルナの名前を連呼する者達もいるほどだ。ルナは人見知りをしているのか、冷静に手を軽く振っている。なにもしゃべることはなく、鋼流球も消していた。
「あ、あのルナさん!」
「……?」
そんな歓声が広がる中、一人の少年が彼女の前まで来ていた。年齢は12~13歳くらいだろうか。
「こ、これ……ぼ、僕、ずっとファンでした! よかったら受け取ってください!」
少年の手には花屋で購入したであろう、綺麗な花束があった。ルナは少し戸惑っていたが、その花束を快く受け取った。
「……ありがとう、また見に来てくれると、嬉しい」
「は、はい!」
無口なルナの感謝の言葉。少年は目を輝かせてそれ以上はなにも言わずに走り去って行った。
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「うふふ、ルナもやりますわね」
「いや、恋愛対象ではない気がしますけど……お互いに」
春人はレナに冷静に返す。さすがに年齢差もある。ファンとアイドルといった関係だろうか。
「どうするの、レナ? ルナのショーの成功を労う?」
「そうですわね、といっても今回は無料の見世物でしたが……参りましょうか」
そして、春人たち3人はルナと合流すべく、広場の人だかりへと入った。
しかし、その時である。時計塔の広場に悲鳴が轟いたのだ。
「きゃああああ! 誰か! 助けて!」
観客の中の一人だろうか、若い女性が叫んでいた。そして……その女性の腕をつかむのは
冒険者パーティ「ハインツベルン」のゴイシュであった。春人たちも叫び声を上げた女性の方向に向き直る。ルナもその方向を向いていた。
「人を変質者呼ばわりしやがって……俺の宝を壊したんだ。責任を取ってもらうぜ」
「い、いや……! あなたが私のお尻を触ってきたから、腕を払っただけでしょ?」
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