攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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37話 マニアックなお店 その1

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「なんか、暇よね」
「なんで昼間からだらけてられるんだ、俺たちは……」

 時間は13時、春人とアメリアの二人は昼間の日差しがこれでもかと昇っている段階から、酒場でくつろいでいた。とはいっても、春人達だけではない。何人かの冒険者も同じように飲んでいる。

「あんまり急いでの探索は危険だし。お金は全く心配いらないし」
「まあ、正しいんだろうけどさ……」

 彼らの仕事はオルランド遺跡の踏破ということになる。しかし、それは与えられた仕事というわけではない。春人はこんな風にだらけながら、時間を使うことを許される環境に恐縮しながらも、考えていた。お金は偉大だ、と。

「でも、アメリア。盗人が来て、アメリアの部屋を荒らしたらどうするんだ?」

 春人は稼いだお金は全てアメリアに託している。良く考えると保管方法を聞いていなかった。
今更になって聞く春人は基本、バカなのかもしれない。アメリアが「心配ない」と言っていたので気にしていなかったのだ。これも春人の強さ所以だろう。一文無しになったとしても、すぐに稼ぐことができるのだから。

「100万ゴールドの金貨や10万ゴールドの金貨にして金庫に保管してるわ。私の部屋にあるけど、とてつもなく頑丈な障壁を3重に渡って展開してるから大丈夫よ。例え、「海鳴り」が大爆発起こしたとしても、その障壁内部だけ傷1つ付かないわ」

 アメリアは自信満々に話した。その表情に、春人も安心する。これまでの付き合いから、とんでもない自信を持つ時の彼女のしぐさだったからだ。
 アメリアの部屋には大きな金庫が設置してあり、中には日本円で億単位の金額が入っている。金庫自体が頑丈な鋼鉄製であり、そう簡単に開けられないが、その周囲には特殊な系統の違う結界が3重になって展開されていた。物理的な衝撃には、ほぼ無敵と言えるほどの頑丈さだ。

「しかし、障壁を解除されたら危ないんだろ?」
「どれだけ時間かかるかわからないわよ? レナクラスなら出来そうだけど……その前に警報で私に知らせが入るわ」
「なるほど……ほとんど完璧なんだね。レナさんなら、解除できそうと言うのが凄いけど」
「魔導の能力で、レナやルナ、私クラスの人なんて他にいないくらいだしね。ま、つまりは解除できる人なんてほぼ居ないってこと」

 冒険者に限った話ではないが、アーカーシャの人々はお金を仕舞う時は金庫に入れるのが通例である。若しくは冒険者ギルドに預けるという方法も取られていた。一般的にはそれで安全は確保されるが、高位の冒険者は魔法の力による結界も付与する。

 ソード&メイジの金庫は現状、最高レベルの安全度を誇っていた。国として独立する為、各国のように銀行システムの導入もされるらしいということは、春人も聞いていた。銀行を襲う輩が増えないように、冒険者の仕事がまた1つ増すことになる。


「たまにはパーっと使ったらどうだ?」
「バーモンドさん」

 そんな暇を持て余している二人の前に現れたのはバーモンドだ。どことなくにやけている印象を春人はもった。

「と言ってもさ~、別に大金使うことなんて……なにかあるっけ?」
「さあ?」

 二人は特に大金を使うイベントなどは起こしていない。大河内 悟がここに飛ばされてきて10日ほどになり、春人自身が飛ばされて来てからは3か月以上が経過している。

「春人はあるだろ? ほら、なあ?」
「ん?」

 バーモンドとしては珍しい笑い方だ。アメリアもそれに気付いて訝しげな表情をした。春人としても、意味がわかっていない。

「こっからは俺たちだけで話すか。アメリア、少し春人を借りて行くぞ」
「え? 何でよ? 私には内緒?」
「男だけの会話が必要な時もあるんだよ、よし行くぞ」

 そう言いながら、バーモンドは春人を半ば強引に酒場の外へと連れ出した。当然、影状態のサキアもついて来ている。バーモンドは彼女も話すように合図した。

「ごめん、サキア。俺の部屋で待機しててくれないか?」
「……それは、ご命令でしょうか?」
「すまない、命令させてくれ。風呂の時なんかも同じだろ? 離れてくれるじゃないか」

 当然、サキアは風呂に入る時までは同行させていない。その場合は部屋で待機するように命令している。サキアは全く気にせずについて来るのだが、その辺りを許すとエミルやアメリアがどんな表情をするかわからない為である。

「……ご命令でしたら従います。ただ、オートガードだけ残しておきます」
「うん、ありがとう」

 サキアは人間の姿になり、少し寂しそうにしながら春人から離れた。しかし、影の一部は春人に残している。これは、敵意ある攻撃からマスターを守る盾の役割を果たしているのだ。通称「オートガード」と言われている。

 サキアは春人に挨拶をしてアメリアの下へと歩いて行った。春人は少しだけ罪悪感が出てしまう。

「そ、それで……どこに行くんですか?」
「まあ着いてこい。もう一人呼んでるからよ」

 春人はもう一人というのもよくわからないでいた。誰かを尋ねる間もなくバーモンドは歩いて行った。

「……怪しい、絶対怪しいわ……なにするつもりかしら」

 酒場を出て行った二人をアメリアは不審な人物を見るような眼でいつまでも見ていた。



「ええっと……どういうことでしょうか?」
「いや、俺もわからないんだけど」

 そして、バーモンドは春人を「海鳴り」から少し離れた、裏路地の場所まで誘導していた。なぜかそこには、アルマークの姿もあったのだ。バーモンドが呼んだもう一人とは彼のことであった。

「まあ、お前らは強さの割に経験が少ないみたいだからな」
「はあ……?」

 バーモンドは勝手に話を進めており、肝心な主語がない。アルマークも頭にクエスチョンマークがいくつも出ている。春人も言葉は発していないが同じ気持ちだ。

「あん? この路地にどういう店があるかわかるだろ?」

 バーモンドに言われて、初めて彼ら二人は周囲を見渡す。色々と怪しいネオンが昼間にも関わらず灯っている。結晶石の光ではあるが、そっち系のお店の宝庫というわけだ。

「俺も若いころは色々世話になったもんだ。ぼったくりバーもあってな、けっこう取られたこともあるが、いい経験だったな」

 バーモンドは大笑いしながら楽しそうに語っていた。彼はBランク冒険者に該当するため、力に訴えればなんとかなった可能性は高いが、そのぼったくりも楽しんだのだろう。

「え……? つまり、そういう店で金を使えと?」
「そういうことだ、春人。お前も好きなんだろ?」
「そ、それはまあ……」

 ここに来て3か月以上経過している。春人としても憧れはあったが、エミルやアメリアの手前来ることは避けていた。彼女たちとは付き合っているわけではないので、遠慮するのも変な話ではあるが。サキアも離れるのは相当不満そうにしていたが、現在は春人の部屋で待機しているだろう。
念のため、エミルの護衛をお願いしていた春人であった。アルゼルの件もあった為、エミルを単独で行動させるのは避けたいという思いからだ。

「さすが、春人さん。やっぱり、こっちも結構凄いんだ……」
「え?」

 アルマークからの純粋な尊敬の眼差し。日本では皆無だった現象だけに、春人はこの状態を嬉しく感じていた。
それと同時にがっかりさせた時のアルマークの気持ちも考えている。自分はどのように振る舞えばいいのか? 強さであれば、ある程度わかるが、エッチ系の話では本当に経験なしだ。16歳のアルマークもどうやら経験はないようなのが救いと言えるのかもしれない。

「いえ、春人さん、すごく強いですし……ほら、エミルさんとも……あはは」
「あははははは」

 笑うしかなかった。アルマークは春人がエミルと色々経験していると勘違いをしていた。飛躍する前にバラした方がいいのは確かだが、そうも行かない。全くなにもないというわけではないし、彼ほどの強さがあれば、そういう経験はしていても普通だ。

 一般的に見れば17歳ならば、未経験でも特に恥ということはないかもしれない。特に、このアクアエルス世界では、比較的初体験の年齢層は高い。20歳以上とも言われているのだ。

 春人はまだ知らないが、信義の花などの特殊なアイテムがある為に、長生きする者が多いことが原因の1つとされてはいる。長生きという点は、70歳を超えても現役の老師などから想像が可能だ。

「ま、とにかくおススメの店があるから、二人で行って来い。お前らなら歓迎されるぞ、きっと。まあ、価格はそれなりだが、ただでサービスしてくれることもあるかもな」
「ほ、本当に行くんですか……?」
「でも、春人さん。僕は行ってみたいです……あはは」

 意外にもノリノリのアルマーク。初めての経験と好奇心が強い性格から、新たなことへの挑戦を躊躇わないのだ。歳下の彼にそれを言われては断るわけにはいかない。
青いセンター分けの2枚目。優しい目つきと程よく引き締まった唇。体格はスマートながらも、春人に迫る筋肉質の外見をしている。もちろん、実力差は天と地ほどの差があるが。

 明らかに人気の出る外見をしている。そういった店で、自分が放っておかれたらどうしようという不安を残しながら、春人は頷いた。彼は戦闘関連ではそれなりの自信を持つようになってきたが、こっち方面ではまだまだなのだった。


「まあ、アメリアやエミルにはうまく言っておいてやるから、とにかく楽しんでこい。春人なら、50万ゴールド使おうが屁でもないだろ」
「ええ? 春人さんすご過ぎです……」

 アルマークからはこれ以上ない目線が痛い……確かに春人からすれば出せる範囲だが、50万ゴールドは日本円で600万円に相当する。アメリアならばともかく、春人では、一度に出す料金としては多い。全力を出せば、1日で回収できる程度の額ではあるが……。

「まあ、アルマークの分も出すけど……行こうか」
「は、はい、ごちそうさまです! 春人さんに奢ってもらえるとか……自慢になります!」

 視線が痛い……春人はアルマークに申し訳ない気持ちが出ていた。アルマークとしては、春人の好意を無駄にするのは失礼との判断だ。だからこそ、奢ってもらうのを断らない。

 驚くほど彼は純粋で礼儀正しい。自分の自慢は言わずに相手をひたすら立てる。春人はむしろ立てられる功績が多すぎるわけだが、それでもアルマークの性格は春人としては見習いたかった。

 そして、バーモンドと別れ彼ら二人は紹介された店に向かう。店の名前は「ドルトリン」という名称だ。酒場の一種とのことだが、どういう店かは詳しくは聞いていない。少し緊張しながら春人はアルマークを連れて歩く。
もはや腹をくくるしかない。実力は圧倒的な二人だ。この二人に詐欺を働くことは死を意味する。比較的まともな店であることを願いつつ、春人はその店に辿りつき、思い切って扉を開けた。

「うわ~~~~!」

 中の光景にアルマークが感嘆の声を上げる。中はクラブのような印象を受ける場所だった。客は昼間だが、それなりに多い。そして……店員さんは美女揃いであり、全員バニーガールの姿をしている。舞台上では、妖艶な踊りを見せているバニーガールの姿もあった。バーモンドの紹介店はそれなりのマニアックなお店であった。



 同時刻、アメリアは……

「つまり、アルマークもバーモンドさんに呼ばれたわけね?」
「うん、そうなんだ。何処に行ったのかはわかんないけどさ」

 春人をそれとなく探していたアメリアは冒険者ギルドに来ていた。そこで、イオと出会い話をしている。彼女の相棒のアルマークもバーモンドに連れて行かれたことを聞きだし、ますます怪しんでいる様子だ。

「バーモンドさんが考えそうなこと……なんとなく読めて来たわね」
「え? 本当に?」
「アルマークは浮気してるかも」
「う、浮気って……! べ、別にアルマークとはそういう関係じゃないよ……!」

 アメリアはいたずらっぽく笑いながらイオに話した。アルマークとイオの関係は冒険者の中でも有名だからだ。
白い髪のポニーテールを揺らしながら、イオは真っ赤になって否定した。否定はしているが、意外にもその態度は弱々しい。いつも元気いっぱいのイオらしくない表情だった。

「でも、アルマークが他の女性にデレデレしてたら? それでもいいわけ?」

 アメリアの危険な発言……「他の女性にデレデレ」という言葉に反応するように、 急にイオの雰囲気が変わった。先ほどの態度から180度回転したような感じだ。

「……アメリアさん、アルマーク何処行ったのかな?」

 イオは目つきは鋭く、赤面していた顔も姿を消している。アメリアはにっこりと笑いながら続けた。

「ちょっと裏通りの方に行ってみない? きっと会えると思うわ。春人にもね」

 アメリアは非常に笑顔ではあるが、その眼差しはイオと同じく笑ってはいなかった。春人とアルマークの運命やいかに……。
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