攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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55話 鉄巨人 その3

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「春人と、互角って感じかしら……」

 パイロヒドラのそれぞれの属性ブレスを障壁でガードしながら、アメリアは春人と鉄巨人の戦いを見ていた。彼女の前方から攻撃しているパイロヒドラは残り2体になっている。3体は既に、アメリアによって倒されていた。

 春人と鉄巨人の戦闘はガチガチのパワーの打ち合いと言えるだろうか。数倍の体格差がある二人が真正面から切り合っているのだ。巨体を活かしている鉄巨人であるが、速度も決して春人に負けていない。逆に、春人も鉄巨人の強力無比な攻撃を凌ぎ、ダメージを与えるほどのパワーを有していた。

「単純なパワーでは、いくら春人でも分が悪いわ……春人が鉄巨人の攻撃を捌いている理由は……」

「アメリア……申し訳ありません。魔法障壁が、もう持たないように感じられますが……」

 サキアはパイロヒドラが飛ばしてくる、強力なブレス攻撃を観察しながら口を開いた。アメリアが展開している魔法障壁にもひびが入ってきている。

「残り2体ですが、このままでは押し切られてしまいます」
「あ、大丈夫よ」

 サキアとは裏腹に、アメリアは余裕の表情をしている。手に持つホワイトスタッフを高らかに掲げると、魔法障壁は再展開された。パイロヒドラにもそれは伝わったのか、恐れおののいている様子だ。

「これほど強力な障壁をいとも簡単に再展開できるなんて……あなたは一体」
「一応、「最強の魔導士」だからね。春人にだって、そんな簡単に抜かれるわけには行かないわ」


 そして、アメリアのホワイトスタッフからは強力な電撃の球が形成されて行った。数万ボルトという単位では言い表せられない、強烈な波動を展開している。

「私の奥義を見せてあげる。行くわよ、雷撃球!」

 アメリアの怒号に合わせるかのように、雷撃球は膨張し、人間以上の大きさへと変貌した。そして、そのまま2体のパイロヒドラに向かい高速で飛んでいく。

「ギャオォォォォォ!!」

 1体目のパイロヒドラを黒焦げにしながら飲みこんだ雷撃球は、勢いが衰えることなく2体目のパイロヒドラも飲みこんだ。

「雷撃球……!? いえ、それよりも、2体のパイロヒドラを一撃で……!」
「ま、本気で行くって言った手前、多少は本気出さないとね。先に倒した3体もさっさと片付けた方がよかったわね」

 デスシャドーであるサキアも、雷撃球の威力には驚きを隠せないでいるようだ。レベル240のパイロヒドラ2体を同時に一撃の下に倒した。これが如何に凄いことなのかは、サキアにも想像がついているのだ。

 黒焦げになった最後の2体のパイロヒドラはそのまま肉体を溶かしていき、巨大な結晶石の塊になった。アメリアの前には、結晶石が5つ落ちている。

「1つの金額でも相当高そう……鉄巨人はさらに高価になりそうね」

 守銭奴のようにアメリアは目の色を変えて、結晶石の塊に手を出していた。サキアもそんな姿の彼女には少し引いた表情になっていた。そして、春人と鉄巨人の戦いに向き直る。相変わらず激しい打ち合いを展開している春人。彼は周囲に気を向けている余裕はないようだ。

「マスター……」
「春人の命令なんだから、協力するのは駄目よ」
「わかっています……」

 春人の命令はサキアを想ってのことだ。サキアは春人の半分の実力までしか出せない為、鉄巨人には無力に近い。実際、サキアは壁としての役割ならば十分にこなせるが、少女が傷つくのを春人は望まなかった。かなりの生命力を有するサキアでもそれは同じことだ。

「それに……実力伯仲の相手との戦い。春人にとってこれ以上の経験はないわ」

 最初から才能が開花し始めていた春人にとって、実力伯仲の相手との出会いは少なかった。最初の亡霊剣士、賢者の森のグリーンドラゴン。その後はずっと、余裕の勝利を繰り広げていたのだ。
 現在の春人はさらなる成長の時……アメリアはそんな直感を持っていた。


「剣技を習得すれば、春人は無敵になる。ちょっとだけ、悔しいかな」

 アメリアは少し寂しそうな表情も浮かべていた。

「……私のレベルが……上昇している……?」

 そして、そんな彼女の隣では、サキアが戸惑いながら、自らの変化を感じていた。



「見える……鉄巨人の動きが。慣れてきたのかな?」

 鉄巨人との互角の戦いを繰り広げ、少し疲労の見えてきた春人。鉄巨人へのダメージある攻撃は肩や足付近に集中していた。首を切り落とさなければ目の前の怪物は仕留められない。春人もそのように感じている。

 そして、それと同時に感じる自分の体内の変化……進化の瞬間は互角の戦力を持つ者との間で生まれたのだ。

 鉄巨人からの大きな振り下ろし攻撃を春人はいままでとは違い、最小の動きで捌いて見せる。最小の動きと最小の力の移動……たったそれだけで、強烈な鉄巨人の一撃を地面へと誘うことに成功した。


「受け流し……!」
「受け流し自体は、それほど高度な技ではないけど……鉄巨人の攻撃を受け流せる人間ってなると……ジラークさんでもできないでしょうね」

 アメリアは春人を賞賛する意味合いも兼ねて、自分が知り得る限り、最強の戦士を思い浮かべた。ジラークでも鉄巨人の攻撃をあのように受け流すことはできない。それが彼女の結論であった。

「ヴヴヴヴヴ……」

 春人のその受け流しの行為に鉄巨人は警戒したのか、距離を取り連続での攻撃は控えた。それなりの知能を有している。さすがは親衛隊というべきだろうか。

「体力的に差があるのは変わらない。すぐに勝負を決めた方がいいかな」

 鉄巨人を前にして、春人は余裕が出てきた。先ほどの受け流しで感じた確かな勝利へのビジョンというところだろうか。

 先陣を切ったのは春人の方だ。後ろへ下がった鉄巨人にほとんど考える時間を与えない。そのまま懐まで忍び寄り、鉄巨人の脚を両断した。

「ヴヴヴ!」

 完全に断ったわけではないが、確かなダメージを与えた。鉄巨人は態勢を崩しながらも右腕に携えた大刀を春人に向けて振り下ろした。だが、その攻撃も春人はたやすく受け流す。
 地面に命中した大刀の一撃は、抉り取るようにその場を崩壊させていた。

「春人は、強靭な防御に加えて、受け流しまで覚えたみたいね」
「マスター……まだまだ先が見えません。私のレベルも250を超えているようです」

 加速度的に強くなる春人。それを誰よりも感じていたのはデスシャドーであるサキアであった。自らのレベル×2が主人のレベルになる為、当然ではあるが、自らが春人に最も近い存在であることに嬉しさも感じている。

「サキア? なにか変な勘違いしてない?」
「なんのことでしょうか? 言わせていただきますが、あなたも恋人でもないのに、マスターを束縛し過ぎでは? マスターは現在、フリーな立場なはずです」


 春人が受け流しの技術で鉄巨人の攻撃を次々と捌いて行く中、その近くでは女の戦いが繰り広げられていた。自分が春人に、ある意味で最も近いと感じたサキアはどこか余裕の表情でアメリアに食い下がる。アメリアはそんなサキアの挑発に顔を引きつらせていた。

 そうこうしている間にも、春人の勝利は近づいている。春人は鉄巨人の攻撃を受け流し、脚を切り裂いた。既に鉄巨人は立ち上がることが出来なくなっていたのだ。

「……鉄巨人、決める!」

 そして、春人は天高く舞い上がり鉄巨人の首元目掛けて、ユニバースソードを振り払った。脚を失い、攻撃動作が鈍っていた鉄巨人は春人の一撃を防御することはできずに、まともに彼の攻撃を受けてしまう。

「ヴオオオオオ!」

 春人の一撃を首に直撃した鉄巨人は断末魔の悲鳴と共に、その場に倒れ込んだ。そして、そのまま立ち上がることなく身体は溶けて行き、残されたのは結晶石とレアメタルのみになった。

「マスター! お怪我はありませんか!?」

 戦いは終わった。周囲には少しの間、静けさが広がった。
そんな中、アメリアよりも早く、サキアは影の状態で近づき、少女の姿で春人にしがみついた。

「うわ、サキア! だ、大丈夫だけど……強敵だったよ、本当に……」
「相手は伝説の鉄巨人ですので、それは仕方ないかと。でも、それを破ったマスターは素晴らしいです。私はあなた様に仕えることを心から光栄に思います」
「あ、ありがとう。サキア……」

 春人としても過剰なサキアの言葉に恐縮しつつも、嬉しさも込み上げていた。鉄巨人を倒せたという優越感、達成感は後になって生まれてきたのだ。そのままの勢いでサキアの頭を撫でる春人。サキア自身も、幸せそうにしていた。

「春人、お疲れ」
「ありがとう、アメリア。そっちも怪我がないようで、安心したよ」
「ありがと、鉄巨人を倒したのは凄いわね。これで、ソード&メイジの名もさらに上がるわ」

 アメリアは上機嫌に春人の隣に立ち、彼の背中を軽く叩いていた。それから、春人にじっとりとした目線になった。

「春人~? サキアはあくまで人間じゃないからね? 勘違いして先走らないようにね?」
「えっ? えっ?」
「マスター。アメリアの言葉は気にしないでください。マスターは、ご自分の欲望を私にぶつければいいんです。その後のことはその時、考えましょう」

 アメリアはとても美しい笑顔で春人に念を押す。人外の者に本気になるなという忠告だろうか。
 それとは対照に、自らに欲望をぶつけるよう促すサキア。二人の表情は決して交わることなく、春人を対照的に捉えていた。

 こうして、オルランド遺跡の最深部を踏破することに成功したソード&メイジ。一番奥の隠しエリアへの扉は残っていたが、彼らはそれには目もくれずにその場を後にした。

 一気に春人達を襲った疲労感もあるが、今は鉄巨人を倒した達成感に浸りたい。そのような感情が、春人とアメリアの中には存在していたのだ。オルランド遺跡を踏破した達成感を持ちながら、春人とアメリアはアーカーシャに戻って行った。
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