攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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64話 転生者 天音 美由紀 その1

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 アーカーシャの南の地……アクアエルス遺跡の南岸にて、一人の少女が佇んでいた。青い海を思わせる長髪に瞳……。芯の強そうな引き締まった顔は、責任感の強さの表れか。

少女は一人で立っている。ブレザーを着ており、その中は白いブラウスだ。下に穿いている紺のスカートの丈は比較的短い。



 今宵、3人目の地球からの転生者が誕生した瞬間であった。
彼女の名前は天音 美由紀(アマネ ミユキ)。東京の高校に通う生徒であり、春人や悟とは同じクラスに所属していた人物だ。

「ここは……何処かしら? 日本……ではなさそうね」


 彼女は内心では脅えていたが、焦ったところでどうにもならないのは理解していた。自らの状況を確認する。背後は水平線がくっきりと見える程の海岸……前方には砂浜が広がっており、山岳地帯も近隣には見えている。

「ありえないわ……本当に何処かの外国に飛ばされたの? こんなことって……!」

 彼女の焦りはだんだんと強くなっていた。ブレザーにミニスカートの女子高生。素手状態で何も持っておらず、オマケに学校中でもトップクラスと称された美貌だ。その大きな胸だけでも、男の目線を釘付けにできる才能を持っていた。

 外国人の血が混じっており、青い地毛……そんな神秘的な彼女は「委員長」と周囲からは親しまれていたのだ。
 そんな彼女だけに、こんなわけもわからない異国の地で現地人に狙われたらどうなるか……このような人の気配がしない場所。容易に想像が出来る。


「……うっ」
「……?」

 今、女性の高い声がした。確かに彼女はそれを聴いた。周囲は既に夜になっており、視界は相当に悪い。視力のいい彼女でも簡単には人物の把握が難しかった。

 辺りをしばらく散策して、その声の主を発見した。浜辺の脇、鬱蒼とした茂みの中にその女性は倒れていたのだ。

「……酷い怪我。あなた、名前は?」
「……メドゥ……だよ~」


 今にも死んでしまいそうな表情と細い声。「シンドローム」のメンバーである、メドゥ・ワーナビーが茂みの中には居たのだ。魔導士のローブも切り裂かれ、所々、皮膚は食いちぎられていた。衰弱も激しいのか、視線も虚ろになっている。

「言葉が通じるなんて信じられないけど……英語でもないようだし。まあ、いいわ。助けを呼んでくるから、少し待ってて」
「……近くに、街があるの……可能なら、連れて行って」

 骨が露出している右手でメドゥは美由紀の腕を取った。美由紀からすれば、今にも死んでしまいそうな彼女ではあるが、この世界基準で言えばそうでもないのかもしれない。右も左もわからず、人がどこにいるのかもわからない状況。

 加えて、自らも危険が大きい状況で現地人から、近くに街があると言われれば、断る理由は思い浮かばなかった。

「わかったわ。歩ける? 相当重傷のようだけど……」
「私は~大丈夫……生きてる人が居るだけで……あいつらも近くには……居ないはず」

 今にも消え入りそうな声……しかし、足取りはしっかりしており、美由紀に支えてもらえれば、十分に歩くことができるほどであった。

「……こんな暗い状況で、誰かに襲われでもしたら……」

 街灯もほぼない状況……星空の明かりが周囲を照らしている為、景色を見渡すことはなんとかできるが、物陰に人が居るかどうかなど、全くといっていいほどわからない。

 しっかり者で責任感の強い美由紀ではあるが、こんな命すら危うい状況は恐怖以外のなにものでもなかった。先ほどから表情は引きつっている。

「モンスターはそこまで強いのは、ここには居ないはず……なんとかなる~。それに……」
「え? なに?」

 メドゥは美由紀の姿と表情をまじまじと眺めていた。同じ女性ということもあり、嫌な気分ではないが、すこし恥ずかしくなってしまう。以前に飛ばされてきた悟に、アメリアが様子を伺っていたのと状況は良く似ていた。


「う~ん、あなた~名前は~~?」
「私? 天音 美由紀よ。あなたは……メドゥと言うのよね?」
「そだよ。メドゥ・ワーナビー……よろしく~~」

 ややスローテンポの彼女に美由紀は思わず苦笑してしまった。どことなく可愛らしい雰囲気を受けたからだ。

「アマネミユキ……ミユキが名前~?」
「ええ、そうだけれど」

 メドゥは痛々しい姿ながらも、何度も彼女の名前を連呼していた。まるで、自らの頭のなかに刻むかのように。

「大けがをしているあなたに質問をするのは恐縮だけれど……ここは何なの?」
「……?」

 メドゥとそんな自己紹介を兼ねた会話を重ねながらも、美由紀は全く信じられない光景や状況に、違和感を募らせていた。メドゥも転生者とはわかっていない彼女の質問をよくわかっていないようだ。

 美由紀としても、ボロボロの彼女から的確な回答がくるとは考えていない。先ほどの質問は独り言に近いものだった。そして、そのまま二人は無言でアーカーシャの街を目指した。





「あれが……街かしら?」
「そうだよ……あそこまで行ければ大丈夫……早く、伝えないと……!」

 どのくらいの時間が経過したのか。海岸地帯から相当の距離を歩き、アーカーシャの街が見えてきた。美由紀はそうでもないが、瀕死のメドゥは明らかに衰弱が進んでいる。

「あなた……どれくらいあの場所に倒れていたの……?」
「わからない~~今、何日……?」

 メドゥの服装の汚れ具合などから、何日も意識がなかったか、あの茂みにわざと隠れていた。美由紀はそのように判断した。メドゥ自身も何日経過しているかまではわかっていないが、アクアエルス遺跡から脱出し、数日以上が経過していることは感じている。

「と、とにかく、あの街まで行ってからね……あなたは治療が必要だわ……このままだと、細菌などに感染する」
「ありがと~~、ミユキ~~」

 詳しいことは後だ。美由紀はメドゥの身体を最優先にするべきだと判断し、自分の身になにが起こっているのということも後回しにした。アーカーシャの街は目と鼻の先に迫っている。

 あの街まで行ければ、自分の悩みも解消される……この時の美由紀はそのような確証の無い確信が心の中に宿っていた。
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