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6話

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「姉さま、どういうことですか?」

「なにが?」

「とぼけないでください! 私に覚悟しておくように言ったのは、ラッド様がお越しになるからですよね?」

「まあ、そうなんだけれど……その緊張感を見ていたら、杞憂だったようね」


 クレア姉さまは笑っている。もしかしたら、私がラッド王太子殿下に失礼な態度を取るとでも思っていたのだろうか? いやいや、話し掛けるだけでもおそれおおいのに……私は伯爵令嬢、相手は王太子殿下だ。ドルト様よりもはるかに格上の相手……場違い過ぎる。

「ラッド様はレストランの完成について、視察されているみたいね」

「もしかして、挨拶に行くんですか?」

「当たり前でしょう? 挨拶に行かなかったら、プラット伯爵家が失礼に思われてしまうわよ」

「あ、まあ、確かに……」


 確かに王太子殿下を無視したら大変な失礼と言うものだ。しかし、それにしても……たかが、伯爵令嬢の私達が挨拶って。お父様ならわかるんだけど。お父様は伯爵だから。


「エンデバー君の話は一旦、置いておきましょうか。ラッド様に挨拶に行きましょう」

「はい、姉さま」


 私は頷いたけれど、まだエンデバーの話は持ち越しなの? あんまり姉さまと話したくないんだけれど……姉さまはからかう気満々のようだし。う~ん……。


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「ラッド・フェリックス王太子殿下。ご無沙汰しております」

「ん? ああ、そなたは……ええと」


 ラッド様に挨拶をした姉さま。あんまり緊張していないみたい。すごいわね……流石にラッド様の方は覚えていないみたいだけれど。流石に無理があるわよね。何人もの貴族の顔を見ているだろうし、すぐに思い出すのは。


「クレア殿か! 久しぶりだな。君も来ていたんだな」

「はい。本日は視察でございます。妹と一緒に……」

「妹?」

「あ、はい! クレアの妹のシンディと申します! 王太子殿下……初めまして!」


 私の挨拶は間違っていたと思う。緊張のあまり上手く言葉が出て来なかった。でも、ラッド様は笑っていた。

「ああ、よろしくシンディ嬢。それに……ああ、そういうことだな」

「ええ、ふふふ」

「?」


 なんだか、ラッド様とクレア姉さまの様子がおかしい気がした。ええと……なぜか私の顔を凝視しているような?


「ええと……あの、なんでしょうか?」

「いや、済まない。今回はお互いにレストランの視察だったな」

「そうですね、ラッド様」


 あれ? 質問に答えられてないような気がするんだけれど。さっきの間は一体、なんだったんだろうか?


「レストラン、エンデバー。もうすぐ完成したしますね」

「そうだな、クレア嬢。もうすぐ完成というわけだ。工事の監督に聞いたところ、すぐにでもオープン出来そうだということだしな」

「まあ! それはよろしいですね!」

「ああ」

 クレア姉さまはラッド様と親しいようだった。王太子殿下と伯爵令嬢が親しい? 普通に考えればあり得ないことだけれど。なんだか不思議としっくりくるのよね……なんだろう、この感覚は……?
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