再婚約ですか? 王子殿下がいるのでお断りしますね

マルローネ

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6話

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「これは……!」

「どうかしら、レミュラ?」


 ソアラ姉さまと入ったレベル5相当の舞踏会会場。その中の様子は……一言でいえば「すごい」としか言いようがなかった。煌びやかな衣装を身に纏い踊りを披露している方々の周囲には何人もの貴族や王族の方々が居る。


 驚くべき点はその面子だ。


「信じられません……こんなこと……!」

「そうよね、私自身もこんなに格式の高い舞踏会に出席出来ていることが、今でも信じられないのよ」

「いえ、ソアラ姉さまは分かるのですが……」


 ソアラ姉さまはフォックス・マゼラン大公殿下の婚約者なのだから、立場的にはまったく問題ないはず。でも私は……婚約破棄をされた伯爵令嬢でしかない。

 婚約破棄をされた日から数日が経過しているので、その情報ももしかしたらこの会場に広まっているのではないか……なんだか私は、この場所に立っているのが怖くなってしまった。


 現在、舞踏会の中心で踊っているのは王族系列の方々だ。その周りで見ている人々は……知らない顔ぶれみも多いけれど、おそらくは大公殿下以上。周辺国家の王族、貴族の方々も混ざっていると思われる。

 他国の貴族を本国に招く場合は、必然的にレベル5相当の舞踏会に招くのが習わしだから。となると……私は完全に場違いということになってしまうわね。

「ほら、レミュラ。些細なことを気にしている場合じゃないわよ。出されている料理を見なさい、そのレベルだって私達が普段食べている物からも一線を画しているでしょう?」

「確かに……すごいですね」


 私の家系は伯爵家だ。それなりに豪華な食事をすることが出来ているはず。しかし、その食事が見劣りするかもしれないレベルの料理が各テーブルには並べられていた。あの料理を見ているとお腹が空いてくる。


「ソアラ姉さま、本日はこの舞踏会以外は行われていないのでしょうか?」

「いいえ、隣の会場でも舞踏会は行われているわよ」

「やっぱりそうなんですね」


 マークスタイン王国はレベル別に分けて、同時に舞踏会を行うことが多い。私もそちらの会場に行けば、自然に振舞えるのかなと考えてしまった。

「ソアラ嬢、少しよろしいですかな?」

「あ、畏まりました! ごめんさないね、レミュラ」

「えっ、姉さま?」

「少し用事があるのよ。適当に舞踏会を楽しんでおいて。それじゃあ」

「ね、姉さま……!?」

 ソアラ姉さまは執事らしき人物と一緒に、会場の奥へと消えてしまった。姉様は適当に楽しめとおっしゃったけれど……こ、このレベル5の舞踏会会場で私は一人で何をすればいいんだろうか?

 お腹は空いているけれど、豪華な料理に手を付けるのもなんだか恐縮してしまうわ……。私はしばらくの間、何も出来ずにやや挙動不審な振る舞いをしてしまっていた。



---------------------



「すみません……少しよろしいでしょうか?」

「えっ? わ、私でしょうか……?」


 と、そんな時だった。不安が大きくなっていた私に話しかけて来る人物の姿が。青のベストに白のパンツを組み合わせた清潔感溢れるお方。どこかでお会いしたかしら……?

「失礼ながら、どちら様でいらっしゃいますでしょうか?」


 緊張からか、言葉が上手く出てこない。しかし、相手方は全く気にしている素振りを見せていなかった。


「初めまして、レミュラ・シェルブール伯爵令嬢。私はクラレンス・マークスタインと申します。以後お見知りおきを」

「クラレンス……王子殿下!?」

「ええ、その通りです。こうしてお話しするのは、初めてですかね」


 私の驚きは限界を迎えてしまった。これだけの面々が揃っているレベル5相当の舞踏会……その舞踏会に出席出来るだけでも光栄の極みであるはずなのに。


 突然、私に話しかけて来た人物……しかも、その相手は我が国の王子様である、クラレンス・マークスタイン第四王子殿下だったのだ。思い切り次期国王候補に入ってるお方だった。

 私の思考は正直、しばらくの間ブラックアウトしてしまいそうだ……。
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