再婚約ですか? 王子殿下がいるのでお断りしますね

マルローネ

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14話

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「も、もちろん無料とは言わない! 再婚約の為の料金を払う! これで文句はないだろう?」

「再婚約の為の料金……?」


 意味の分からない料金の話がボイド・カーティス公爵から飛んできた。私は何と返答していいのか迷っている。この王国に再婚約の為の料金なんてないから。あるとすれば、手切れ金、慰謝料という名称だろう。


「再婚約の為の料金なんて、存在しないと思いますが……」

「そうだったな。つまりは慰謝料を支払うと言うことだ。まあ、その後に再び婚約することになるのだから、本来は必要のない料金なのだろうがな……」

「……」

「……」


 ボイド様はこれ以上話さない方が良いような気がする……そもそもの問題として、クラレンス王子殿下の目の前でもあるんだし。特に私は部屋の外から感じる気配が怖かった……。


「ボイド殿、なにかおかしくないか?」

「クラレンス王子殿下? どういうことですか?」


 ボイド様は公爵という立場だからか、意外と第四王子殿下にも強気な印象だった。大丈夫なんだろうか……?

「婚約破棄をしたことと、再婚約は完全に別物と考えなければならないだろう。身勝手な婚約破棄をした時点で慰謝料支払いの義務が発生している。その履行が完了した段階でなら、再婚約という手段もなくはないが……前提からして既に破綻しているし、どうしようもないな」

「さようでございますね……これは、流石に……」


 私もクラレンス様に賛同する。いくら何でもボイド様の理屈は酷かった。わざとやっているのではないかと思えるほどだ。


「むう……どちらでも構わないでしょう? とにかく、レミュラ。私と再婚約をするのだ。今度は特別に大切にしてやるから」


 なんとも身勝手な意見……あり得なかった。


「イレーヌ様はどうするつもりなのですか?」

「イレーヌとは別れるさ。あんなわがまま娘は、私の隣には相応しくないからな。私の隣には従順なレミュラのような女性こそが相応しい」

「……」

 すさまじい二枚舌に私は不快感しか出てこなかった。これでは、勝手に婚約破棄されるイレーヌ様も大変だろう。わがままなのは自業自得としても……。


「ふふふふ、どこまでも私の……私のレミュラを物のように扱う態度。許せませんわね……」

「ぬっ? な、なんだこの気配は……!?」


 ボイド様がソアラ姉さまの気配に気づいたようだ。姉さまは室内にいつの間にか入っていた。ものすごく怒っている……私でなくてもはっきりとわかるほどに。

 どうしよう……ソアラ姉さまは味方のはずなのに、私の方が逃げ出したくなってしまっていた。
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