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15話

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 ええと、なんて言えばいいのかしら……ボイド・カーティス公爵様、ご愁傷様! といったところかしら?


「ボイド様……ずいぶんと楽しませてくださいますわね? 本当に飽きさせてくれませんわね……!」

「な、なんのつもりだ……ソアラ嬢……?」 


 ボイド様は、明らかにソアラ姉さまの怒りの気配に驚いているようだけれど……根本的な部分を分かっていないようだった。私の家系には暗黙の家訓があるのだ……ソアラ姉さまを敵に回してはいけないという。

 実際問題として、フォックス・マゼラン大公殿下の妻になる予定のソアラ姉さまの権力と、ボイド・カーティス公爵の権力とを比べて、どちらが上なのかは分かりにくい。フォックス様の権力はボイド様よりも上だけれど、その妻になる予定のソアラ姉さまと比べた場合、この王国の常識に照らし合わせれば、ボイド様の方が権力は上になるかもしれない。

 それは一般的に、貴族の間でも、女性の身分は低いとされていることが起因している。空気を読まない貴族は、貴族令嬢は後継者を生む為の機械としか見ていないようだし……今のご時世では信じられないけれど、それが現実でもあったりする。

 そんな中で、ソアラ姉さまは下らない男尊女卑の流れを払拭してくれる超新星という見方をする方々もいらっしゃる。私も実はそう思っていたりするけれど……とにかく、ソアラ姉さまは色々な意味で敵に回すと厄介なのだ。特に……自慢ではないけれど、私のことに関しては……。

 私はボイド様に合掌していた。ご愁傷様、という意味合いを込めて……。


「わ、私に何かしようというのか……!? そんな横暴が許されるはずは……!」

「私の大切な大切な大切な大切な大切な妹である、レミュラを悲しませた罪……非常に重いですよ? うふふふふふ」

「ソアラ姉さま……大切な、という言葉が多すぎます……言葉の誤用ですよ?」


 とりあえず、私は姉さまを落ち着かせる為に、突っ込みを入れてみた。どこまで効果があるかは分からないけれど……。


「あら、ごめんさない……つい、多くなり過ぎましたわね……クラレンス王子殿下の前で失礼いたしました……」

「あ、ああ……別に構わないよ……うん。続けてくれ……気が済むまで……」

「あら、ありがとうございます。それでは、遠慮なく……」

「な、なんだ……? 何をする気なんだ……!?」


 クラレンス第四王子殿下が引き気味なのが面白かった。彼の反応を見てなのかどうかは分からないけれど、ボイド様は完全に脅え切っている様子だ。ソアラ姉さまはそんな状況を確認すると、怪しく微笑んでいた。そんな表情はとても美しいけれど、怖過ぎでもあった。姉様はとても楽しんでいるように思える。

 ソアラ姉さまの快進撃? が始まろうとしていた……。
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