再婚約ですか? 王子殿下がいるのでお断りしますね

マルローネ

文字の大きさ
23 / 25

23話

しおりを挟む
「クラレンス王子殿下が婿養子になってもいいと言ったのね? 間違いないわね?」

「はい、ソアラ姉さま……確かに、クラレンス様はそうおっしゃっていました……」

「まあ、なんて慈悲深いお方なのかしら……本当に素晴らしいお方だわ……!」


 ソアラ姉さまはわざとらしく、オーバーリアクションでクラレンス様を讃えていた。ソアラ姉さまからすれば、予想できた事柄の1つみたいね。本当に姉さまは恐ろしい……。

「姉さま、クラレンス様のお気持ちを無下にする態度は控えてくださいね?」

「あら、ごめんなさい、レミュラ。私としても、クラレンス王子殿下に感謝しているのは事実よ」

「それなら良いのですが……」

「クラレンス王子殿下と両想いということが分かっただけでも進展ね」

「そうですね」

 クラレンス様と両想いだと分かった……確かにそれだけでも、私達の関係は前に進んだと言えるだろう。全部、ソアラ姉さまの想定内っぽいのが気に食わないけれど……ソアラ姉さまは大好きだけれど、一度でいいから、思い切り騙してみたいわね。

 よ~し……試してみようっと。


「実はですね、姉さま。これは本来ならば、秘密にしておかなければいけないことなんですが……」

「あら、なにかしら?」


 ソアラ姉さまは完全に油断しているようね。まさかこの雰囲気から、とんでもない爆弾発言が飛んで来るとは予想できないでしょうし。少しだけ怖かったけれど、私は意を決して、ソアラ姉さまに言った。


「実は……クラレンス王子殿下とはもう、その、そういう関係でして」

「……はっ?」


 ソアラ姉さまの非情に珍しい、素っ頓狂な声を聞けた。それだけでも私は満足だ。

「この間、クラレンス様が欲情を抑えきれなくなった時に、私が目の前に居たものですから……その」

「……」

「もしかすると、私のお腹の中には既に、新しい命が誕生しているかもしれません……」

「……」


 あれ? 素っ頓狂な声を上げた後のソアラ姉さまの態度を見てみたかったけれど、無言を貫いている。表情にも大きな変化が見られない。なんだか、これ以上はまずい気がしたので、すぐにネタ明かしをすることにした。

「と、いうのは全て冗談──」

「で? あなたは婚前交渉を行ったというわけね? クラレンス王子殿下と……」


 私のネタ明かしの言葉は簡単にかき消されてしまった。あっ……姉さまの目が据わっている……しまった。後悔が私の心を満たしていくけれど、もう遅い。


「そう……うふふふ、クラレンス王子殿下。いくら、レミュラが国宝級に可愛いからといって、欲情して手を出してしまうとはね……うふふふふふ」

「あ、あの……!」」

「大丈夫よ、レミュラ。安心して、すぐに終わるから……」


 すぐに終わる? 一体何がすぐに終わるというんだろうか? 私はただソアラ姉さまが戸惑う様子を見たかっただけなのに~~~! 想像とは全然違う方向に向かっていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

頭頂部に薔薇の棘が刺さりまして

犬野きらり
恋愛
第二王子のお茶会に参加して、どうにかアピールをしようと、王子の近くの場所を確保しようとして、転倒。 王家の薔薇に突っ込んで転んでしまった。髪の毛に引っ掛かる薔薇の枝に棘。 失態の恥ずかしさと熱と痛みで、私が寝込めば、初めましての小さき者の姿が見えるようになり… この薔薇を育てた人は!?

妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。 民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。 しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。 第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。 婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。 そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。 その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。 半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。 二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。 その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

お母様!その方はわたくしの婚約者です

バオバブの実
恋愛
マーガレット・フリーマン侯爵夫人は齢42歳にして初めて恋をした。それはなんと一人娘ダリアの婚約者ロベルト・グリーンウッド侯爵令息 その事で平和だったフリーマン侯爵家はたいへんな騒ぎとなるが…

近衛騎士は王子との婚約を解消した令嬢を元気付けたい

はくまいキャベツ
恋愛
リリー・ブランチェシカは知っていた。 婚約者が自分ではない人を愛している事を。 「もうやめましょう」 「何をだ?」 「私との婚約を解消して下さい」 婚約解消後、彼女にまつわる不穏な噂に胸を痛める騎士がいた。

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

処理中です...