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15話 その後
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シングマ侯爵令息が私の屋敷にやって来てしばらくの時間が経過した。あの後、彼は憔悴しきった様子で帰って行ったけど、同情する気にはなれなかったわね。
「フローラ、カルロス殿の件なんだが……少し良いだろうか?」
「シングマ侯爵令息のこと? どうかしたの?」
興味がなかったので、あの後の彼の行動は追っていなかったけれど、グランはどうやら違ったようだ。
「カルロス殿はあの日以来、死んだ魚のような目をして生活しているようだ」
「そうなの……? そこまでになるような事態ではなかったと思うけれど……」
シングマ侯爵令息は、それだけメンタルが弱いということを意味しているのかしら? そうだとしたら、今後の侯爵としての活動に支障を来しそうね……とても、侯爵の仕事を行える器だとは思えないし。どこかの片田舎に幽閉されそうな予感がするわ。
「でもそうなると……リディア・スー令嬢との婚約はどうなるのかしら? 死んだ魚のような人なんて、愛せないと思うのだけれど……」
「そこなんだよ重要なのは。どうやら、カルロス殿はスー侯爵家に愛想を尽かされたらしい。リディア殿とは実質的に別れた形のようだ」
「やっぱりそうなるのね……まあ、驚くことではないわね」
私も心の中ではリディア様との婚約は上手くいかないだろうと思っていたしね。リディア様は賢明な判断をしたのだと思う。隣国のボーエル王国の令嬢との破棄になるわけだから、今頃、王家は大慌てだろうけれど。
「まあ、王家の方々は大慌てでしょうけど……私達がどうにか出来ることじゃないしね」
「それは確かにそうだね。カルロス殿は王家から何かしらの罰が下るだろうけどね」
「それは大変ね」
シングマ侯爵令息個人、というよりもシングマ侯爵家そのものに罰が下りそうね……ああ、大変だこと。自業自得だから何も言うつもりはないけどね。
「それならグラン。私達は仲睦まじく生活していきましょう。決して浮気なんてしないでね?」
「ははは、心配しないでくれよフローラ。決して浮気なんてしないさ。約束するよ」
「絶対だからね?」
「もちろん」
グランからの温かい言葉は説得力に満ちていた。彼となら一生を共に過ごせる……そんな大きな予感を感じさせるのだ。私達は笑い合いながら、部屋から窓の外を眺めていた。今日も良い天気ね。
おわり
「フローラ、カルロス殿の件なんだが……少し良いだろうか?」
「シングマ侯爵令息のこと? どうかしたの?」
興味がなかったので、あの後の彼の行動は追っていなかったけれど、グランはどうやら違ったようだ。
「カルロス殿はあの日以来、死んだ魚のような目をして生活しているようだ」
「そうなの……? そこまでになるような事態ではなかったと思うけれど……」
シングマ侯爵令息は、それだけメンタルが弱いということを意味しているのかしら? そうだとしたら、今後の侯爵としての活動に支障を来しそうね……とても、侯爵の仕事を行える器だとは思えないし。どこかの片田舎に幽閉されそうな予感がするわ。
「でもそうなると……リディア・スー令嬢との婚約はどうなるのかしら? 死んだ魚のような人なんて、愛せないと思うのだけれど……」
「そこなんだよ重要なのは。どうやら、カルロス殿はスー侯爵家に愛想を尽かされたらしい。リディア殿とは実質的に別れた形のようだ」
「やっぱりそうなるのね……まあ、驚くことではないわね」
私も心の中ではリディア様との婚約は上手くいかないだろうと思っていたしね。リディア様は賢明な判断をしたのだと思う。隣国のボーエル王国の令嬢との破棄になるわけだから、今頃、王家は大慌てだろうけれど。
「まあ、王家の方々は大慌てでしょうけど……私達がどうにか出来ることじゃないしね」
「それは確かにそうだね。カルロス殿は王家から何かしらの罰が下るだろうけどね」
「それは大変ね」
シングマ侯爵令息個人、というよりもシングマ侯爵家そのものに罰が下りそうね……ああ、大変だこと。自業自得だから何も言うつもりはないけどね。
「それならグラン。私達は仲睦まじく生活していきましょう。決して浮気なんてしないでね?」
「ははは、心配しないでくれよフローラ。決して浮気なんてしないさ。約束するよ」
「絶対だからね?」
「もちろん」
グランからの温かい言葉は説得力に満ちていた。彼となら一生を共に過ごせる……そんな大きな予感を感じさせるのだ。私達は笑い合いながら、部屋から窓の外を眺めていた。今日も良い天気ね。
おわり
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表現確かにへんですかね……変更してみますね
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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「???」がいっぱい残るので、できれば彼女目線の話が欲しいです。
すみません、リディア視点を入れるべきでしたね……
本当に申し訳ございません