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9話 悔しさ その2
しおりを挟むカリファ視点……。
「あ、アメリア姉さま……ゼラスト王子殿下との婚約おめでとう。知らなかったこととは言え、心から尊敬するわ」
「ありがとう、カリファ。うれしいわよ」
「そ、そう……良かったわ」
「良かったな、アメリア。妹に祝福して貰えて」
「そうですね、ゼラスト様」
アメリアとゼラスト様はとても仲が良さそうに見えた……あり得ないこんなこと。私はラニッツ様を手に入れたのに! 姉さまから奪ってやったのに……アメリア姉さまは私の下で悔しさを滲ませていなければならないのに。
どうして私が喚く結果になっているの? ゼラスト様からは五月蠅いから黙れと言われ……こんなことっておかしいわ! 私が悪者みたいになっていて、誠実な姉さまには誠実なお相手が見つかったみたいじゃない!
「カリファ嬢、ラニッツ殿。私から言えることは1つだけだ……どうか幸せになってくれ」
「ぜ、ゼラスト王子殿下……?」
「こ、これは勿体ないお言葉でございます……ゼラスト様……」
ラニッツ様は完全に下手に出てしまっている。いくら公爵と言えども流石にこればかりは仕方がないのかもしれないけれど。先ほどまで私は叫んでいたのにこの対応……さっきまでの態度は水に流すということなんだろうか? それだと私が馬鹿みたいじゃないか。
幸せになってくれ、か。それはつまり途中で別れたりするなよと言うことか……。第一王子殿下に釘を刺されたわけだ。
悔しい……なんとか姉さまに一泡吹かせてやりたいわ! ゼラスト様の前で恥をかかせてやりたい!
「時にゼラスト様は屋敷で姉さまと何をして過ごされていたのですか?」
「ん? そんなことが気になるのか?」
「はい……気になります」
「アメリア、話しても大丈夫かな?」
アメリア姉さまに確認を取るゼラスト様。完全に婚約者になっているのが分かった。私の心の中は穏やかではない。
「お、おい……カリファよ。大丈夫か? 先ほどから様子が変だが」
「大丈夫ですよ、ラニッツ様。私は平常運転です」
「そ、そうか……? なら、良いのだが……」
ラニッツ様は少し黙っていて欲しい……私は今、とても忙しいのだから。
「書斎でお互いの趣味について話し合っていたんだ」
「趣味でございますか?」
「ああ、知っているかもしれないが、私もアメリアも読書が趣味だからな」
読書が趣味……それは私も同じだ。なるほど、ゼラスト様も読書が趣味なわけね、これは貴重な情報を得たわ。私の本の知識で彼の心を引き寄せてみせるわ。姉さまなんかとは読書量が違うことを教えてあげないとね。
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